ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2015 落語ライブ見聞録@関西』

その他のオススメ落語公演

『第326回市民寄席』
発売中 Pコード:443-711
▼7月7日(火) 19:00
京都芸術センター 講堂
自由席-1500円
[出演]笑福亭鶴光/桂花団治/桂団朝/桂ちきん
※未就学児童は入場不可。
[問]ロームシアター京都 開設準備室
■075-746-3355
チケット情報はこちら

 

『よしもとの落語会 Vol.2』
発売中 Pコード:444-762
▼7月17日(金) 14:30
宇治市文化センター 小ホール
前売指定-2000円
[出演]桂あやめ/月亭方正/林家菊丸/桂かい枝
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので、予めご了承ください。変更・払戻不可。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
■0570-550-100
チケット情報はこちら

 

『桂文枝独演会』
発売中 Pコード:441-859
▼7月19日(日) 14:00
文化パルク城陽 プラムホール
全席指定-3600円
[出演]桂文枝
※未就学児童は入場不可。車椅子の方はチケット購入前に会場まで要問合せ。
[問]文化パルク城陽■0774-55-1010
チケット情報はこちら

 

桂雀々「雀々夏まつり」
発売中 Pコード:442-375
▼8月27日(木) 18:30
京都府立文化芸術会館
全席指定-3500円
[出演]桂雀々(「蛇含草」「らくだ」)/笑福亭仁智(「スタディベースボール」)/笑福亭智六(「開口一番」)
※未就学児童は入場不可。
[問]オトノワ■075-252-8255
チケット情報はこちら

 

『第一回 鶴瓶・鉄瓶 親子会』
6月27日(土)一般発売 Pコード:443-869
▼8月29日(土) 18:00
大丸心斎橋劇場
全席指定席-3500円
[出演]笑福亭鶴瓶/笑福亭鉄瓶/桂治門
※未就学児童は入場不可。出演者は変更になることがあります。
松竹芸能■06-7898-9010
チケット情報はこちら

 

『笑福亭純瓶の南都落語会
 ~笑福亭鶴瓶との親子共演!~』

6月30日(火)一般発売 Pコード:445-385
▼8月30日(日) 13:30
奈良市ならまちセンター
前売-3500円(指定)
[出演]笑福亭鶴瓶/笑福亭純瓶/桂春蝶/桂福丸
※未就学児童は入場不可。
[問]奈良市ならまちセンター■0742-27-1151
[問]奈良町落語館■0742-22-7227
チケット情報はこちら

 

『第41回東西落語名人選』
発売中 Pコード:444-080
▼9月19日(土) 12:00/16:30
神戸文化ホール 中ホール
1階席-5500円(指定) 2階席-5000円(指定)
[12:00出演]柳家小三治/桂福団治/柳家さん喬/月亭八方/笑福亭仁智/柳家三三
[16:30出演]柳家小三治/桂文枝/柳家さん喬/月亭八方/笑福亭仁智/柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホールプレイガイド
■078-351-3349
チケット情報はこちら

 

『たびたびさんざ 柳家三三 独演会』
発売中 Pコード:442-648
▼10月17日(土) 14:00
松下IMPホール
全席指定-3500円
[出演]柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888
チケット情報はこちら

『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」
『百年目』の会

 

「泣かんとこうと思てたのに、いきなり泣いてしもて…。」
高座に姿をあらわすなり、満員御礼のNGK、858名からの鳴り止まぬ歓迎の拍手。
思わず男泣きの文太さん。
この人、きっと、ええ人や。

50歳で失明し、数か月のリハビリを経て高座復帰。
そこからさらに8年以上の時を経て、本日、初めてのNGKでの独演会。
会場全体が優しい空気に包まれて、800人越えの会場ではなかなか感じられない一体感。

この桂文太さん、ホンマにすごい人なんです。
何がすごいって、ご自身が幹事役を務める「田辺寄席」、
41年間、718回も続いているんです。
そこで、この文太さんが、毎回必ず「開口一番」ならぬ「開口0番」と称し、
開演前の10分間、いわゆる前説を受け持っているという。
で! 40年以上って! 700回以上って!!

「文太の落語を聞く“あいうえお”」という、どうやら定番のマクラののち、
(客席に「知ってるで~」感が溢れてました。)入っていったのが『竜宮界龍乃都』。
数ある上方落語の中でも、キテレツの極みといった噺です。
これがなんと、文太さんの師匠である、故五代目桂文枝師匠の初舞台の噺なんだそうで、
「文太は四十四年もかかってしまいました。」とは、清々しい師匠リスペクト。
この人、かなり、ええ人やわ。

噺の中身は、まずは小倉船に乗り合わせたいろんな人たちの風景から。
お金をかけて、なぞなぞをする二人の男。
ぼんやりしてるふりをして、最後に大逆転、見事に一両を巻き上げた男、
船の艫の方へ行って用を足そうとした時に、五十両入りの財布を落としてしまいます。
落とした大金を拾うため、別の人が持っていたフラスコに入って海の底へ。
ほらほら、キテレツ感出てきたでしょ。
財布を取ろうとして、割れたフラスコから放り出された男の行先は、何と竜宮城。
浦島太郎と勘違いされてもてなされた後、
本物の浦島太郎がやってきて、偽物だと追いかけられ、
ここから何と、歌舞伎『忠臣蔵』のパロディーになって噺は展開。
海の底で、忠臣蔵って!
いや、もう、ほんまに何が何やら、アッチョンブリケ!
文太さん、楽しそうに演ってましたねぇ。
なぞなぞのシーン、フラスコからの海の底を見るシーン、竜宮城のシーン、
そして、お芝居がかった仕草と台詞回しのシーン。
老練というよりは、まだまだ若々しい、かなりファンキーな文太さんでした。

二席目は『厩火事』。
江戸ではめっちゃポピュラーなネタで、いろんな人がやっていますが、
上方では、あんまり聞いたことない噺ですね。
ざこば師匠がやっていますが、こちらは情を前面に出してのざこば節。
文太さんのは、どちらかというと、江戸の噺に忠実なタイプ。
大家さんがやめておけと言ったのに結婚した年上女房、髪結いのおさきさん。
亭主は昼から酒を飲んでいる。
何かというと、喧嘩しては大家さんのところにやって来るおさきさんに対し、
呆れ果てて別れろと言う大家さん。
「あいつは、性根が腐ってしもた。」と。
でも、人に悪口を言われると、逆にかばってしまうおさきさん。
ここで、大家さんがある提案をする。
亭主が大切にしているものをこわして、
もし、おさきさんの体の心配をせずに、モノの心配しかしなかったら、別れろ。と。
家に戻ると、優しくなっている亭主がいて、
作戦実行の気持ちが揺らぐおさきさん…。

還暦を過ぎても色気とお茶目さがある女性の描写は、文太さんの得意技。
ぼやきに来てるのか、のろけに来てるのか、
聞いている方がアホらしくなってくる感じ、絶妙でした。
『竜宮界』が濃かった分、全体的には、あっさり風味の上品な仕上がりでした。

さて、中入り後。
緞帳が上がると、“寄席”の雰囲気が葬り去られて、舞台は歌謡ショーに。
中村美律子さんの新曲『潮騒』です。
歌い終わると、盲導犬デイリーに連れられた文太さんが登場。
なんと、このデイリーを文太さんに贈ったのが中村さんというご縁だそうで、
なんとも、ええ話のミルフィーユやがなぁ。
そのきっかけとなった歌『壺坂情話』で、歌謡コーナーは終了。
たまには演歌もよろしいな。

さてさて、メインディッシュは『八五郎出世』。
これも、上方では、あまりやる人を見たことがないネタです。
手元のパンフにも「今自分の中で一番やっていて楽しい噺のひとつ」と書いてある通り、
いや、もう、キャッキャ言うて演ってました。

貧乏長屋に母親と住んでいる大工の八五郎。
妹のお鶴がお殿様の後継を産んだということで、お城からお呼びがかかる。
身分が違うために初孫を抱くこともできない母親からの手土産、
お鶴の好物、水なすの漬けもんと御守りを持って、お城にやって来た八五郎。
世話係である三太夫を三ちゃんと馴れ馴れしく呼び、
振る舞われた酒を飲むにつれ、酔いが回り、
お殿様にきつく当たったり、母親の不憫を訴えたり。
演者によっては、かなりしんみりと、泣かせにかかる演出もあるけれど、
文太さんのは、そちら方面に行きそうで行かないタイプ。
いや、だって、文太さん自身が八五郎さんになってしまっていて、
もう、その場を楽しみまくっていて、
そして何よりその文太さんの八五郎さん、というか八五郎さんの文太さんが、
思いっきり、ええ人なんですもん。
落語を見ていて時々感じる、演者と登場人物が一体化してしまった時の爆発力。
オチも決まって(江戸とは違うオチ。オリジナル?)、
登場の時より2割増しくらいの拍手喝采!

おじぎをした後、頭を上げて出囃子を止めて、ご挨拶。
なんと来年、第二回をすることが決定したという嬉しいサプライズの発表で、
さらに2割増しの拍手。都合4割4分増し!

ご自身の瞳から光を失った文太さんですが、
そのことで、どうやらご自身が発光体になってしまったような、
ええ人オーラ満開のキラキラ輝く落語会でした。
演る人がええ人やと、観る人もええ人になって、
会場の係の人やスタッフの人たちも、もちろんみんなええ人で、
さらには、NGK周辺の人も全部ええ人になってしもたような、
もういっそ、なんば一帯がええ人で溢れかえっているような、
この日、財布落としても、絶対に出てきたと思うし、
なんやったら、拾った人が財布にお金を足しててくれそうな、
そんな落語会でございました。って、どんなんやねん!

 

(2015年6月26日更新)