ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2014 落語ライブ見聞録@関西』

立川談春
写真:鈴木心

その他のオススメ落語公演

立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』

▼8月23日(土) 17:00 Sold Out!!
奈良市ならまちセンター
全席指定-3900円
※未就学児童は入場不可。
※当日券その他のお問い合わせは下記連絡先まで。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888

発売中 Pコード:435-998
▼10月4日(土) 15:00
あわぎんホール
指定席-3900円
[出演]立川談春
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中は1人4枚まで。
デューク高松■087-822-2520
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▼10月25日(土)・26日(日) 15:00
Sold Out!!
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
指定席-3900円
※未就学児童は入場不可。
[問]芸術文化センターチケットオフィス
■0798-68-0255
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888

 

『ホテル若水 ぴあ寄席~湯けむり落語編~
其の弐』

発売中 Pコード:438-933
▼9月6日(土) 15:00
宝塚温泉 ホテル若水 大観
全自由-4000円(入浴付(タオル付))
全自由(昼食付)-7500円(入浴付(タオル付))
[出演]桂雀々/桂かい枝/桂優々
※未就学児童は入場不可。<食事>ホテル若水 鳳凰(椅子席) 昼食(すき焼き御膳)12:30~14:30 <入浴時間>11:30~20:30 女湯に限り16:00~バラ風呂になります。
[問]宝塚温泉 ホテル若水■0797-86-0151
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『ゆうちょ笑福亭鶴瓶落語会』
発売中 Pコード:437-647
▼9月11日(木)~14日(日)
(木)(金)18:30 (土)(日)13:00 

森ノ宮ピロティホール
全席指定-5000円
[出演]笑福亭鶴瓶
※6歳未満は入場不可。車椅子の方はチケット購入前にキョードーインフォメーション[TEL]06(7732)8888まで要問合せ。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『第1回桂文枝創作落語独演会』
発売中 Pコード:437-772
▼9月13日(土) 14:00 
やまと郡山城ホール 大ホール 
S席-4000円 A席-3500円 
[出演]桂文枝/他
※未就学児童は入場不可。
[問]やまと郡山城ホール■0743-54-8000
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『第40回東西落語名人選 ~記念公演~』
発売中 Pコード:436-359
▼9月20日(土)16:30・21日(日)14:00
神戸文化ホール 中ホール
1階席-5500円(指定) 2階席-5000円(指定)
[20日出演]桂歌丸/柳家小三治/桂文枝/
笑福亭鶴光/月亭八方/柳家三三
[21日出演]桂歌丸/柳家小三治/桂福団治/
笑福亭鶴光/桂文珍/柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホール■078-351-3349
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『桂ざこば独演会』
発売中 Pコード:437-876
▼9月21日(日) 14:00
サンケイホールブリーゼ
S席-4500円 A席-4000円
[出演]桂ざこば(「蜆売り」「皿屋敷」「肝つぶし」)
/桂宗助(「ちしゃ医者」)/桂そうば(「普請ほめ」)
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター
■06-6341-8888
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『柳家花緑・桂春蝶 二人会』
発売中 Pコード:434-264
▼9月23日(火・祝) 15:00
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
全席指定-3000円
[出演]柳家花緑/桂春蝶
※未就学児童は入場不可。
[問]芸術文化センターチケットオフィス■0798-68-0255
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『さやか寄席 桂文枝独演会』
発売中 Pコード:437-759
▼9月28日(日) 14:00
SAYAKAホール(大阪狭山市文化会館)
大ホール
全席指定-3500円
[出演]桂文枝
※6歳未満は入場不可。
[問]SAYAKAホール(大阪狭山市文化会館)
■072-365-8700
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『RAKUGOハルカスinArtkan』
発売中 Pコード:437-565
▼10月13日(月・祝) 14:00
近鉄アート館
全席指定-3000円
[出演]桂雀々/笑福亭銀瓶/笑福亭喬介/
ラッキー舞/なにわの会
[問]近鉄アート館■06-6622-8802
[問]近鉄アート館チケットセンター
■0570-023-300
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『白鳥・三三 両極端の会 in 秋のひょうご』
発売中 Pコード:434-810
▼10月19日(日) 14:00
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
A席-3000円 B席-1000円
[出演]三遊亭白鳥/柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]芸術文化センターチケットオフィス■0798-68-0255
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『柳家三三独演会 男、四十にして・・・惑う。』
発売中 Pコード:438-939
▼11月16日(日) 14:00
松下IMPホール
全席指定-3500円
[出演]柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『桂雀々独演会』
8月23日(土)一般発売 Pコード:438-285
▼11月22日(土) 14:00
摂津市民文化ホール
全席指定-2500円
[出演]桂雀々
※未就学児童は入場不可。
[問]摂津市民文化ホール■072-635-1404
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『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

立川談春三十周年記念独演会

 

前回のレポート、フェスティバルホールに引き続き、
今回も立川談春三十周年記念落語会「もとのその一」の神戸公演。
フェスティバルホールの2700人×2日を完売した後も、
日本全国で着々と満員御礼を続けている公演で、
もちろん、ここ神戸朝日ホールも超満員です。
フェスティバルホールでは、「上方の話をやります。」と宣言して、
『らくだ』や『立ち切れ』をやってくれたので、その流れかと思いきや、
まったく逆の、江戸落語ならではのネタが出てくるとは!
そのあたりは後半に書くとして…

♪ポケットの中にはビスケットがひとつ~
「ふしぎなポケット」の出囃子で現れたのは、談春さんの一番弟子、立川こはるさん。
立川流初の女流落語家で、入門してから1年の間、
談志家元は女性とは気がつかなかったというマクラでつかみはOK。
こまっしゃくれた子どもが、話術巧みに、
おとっつぁんから小遣いを巻き上げる『真田小僧』という噺。
いやぁ、受けてましたね~。
テンポがよくて、声のメリハリも効いていて、若手の見本!って感じ、
な・の・で・す・がっ!
子どもが時折見せる“ちょっとわる~い”感じが、
談春さんの弟子、というアイデンティティーを感じたりして。今後に大きく期待です。

さてさて、談春さんの登場です。
このホール、神戸朝日ホールは2012年に月一独演会を敢行し、
なんだか、家族のようになった場所。
「一所懸命やんなきゃなぁ~」としみじみ語ったのもつかの間、
今、出てきた自分の弟子が受けたことに「イラッとした!」って。なんで?
「談志の気持ちが分かった」って、
ほんまに、もう、噺家っちゅうのは、どれだけ自分だけが好きやねん!
気分を切り替えて、の話が、兵庫県の号泣会見で名を馳せた(?)元県議の話。
いや、もう、あかんって!というくらい放送禁止用語連発。
ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』が辛かった話と、
本来は落語で感じないといけない劣等感をドラマで感じてしまい、
落語に対して申し訳ない気持ちになった、などという言い回しは、
さすが、これと決めた道を進む人ならではやな、と、感心したのでした。

噺は『へっつい幽霊』。
落語らしい落語です。よくできた話です。大好きです。
登場人物もバラエティー豊かで、なんといっても幽霊がチャーミング。
ほかの誰よりも“人間臭い”。
もともとは上方の話で、とはいえ、かなり前に江戸に移っていて、
いろんな名人上手が、独自の演出でやっています。
古道具屋に置いてあるへっつい(かまど)が、売れるけど必ず返品される。
どうやら、幽霊が出るという噂。
こんなものを置いておいたのでは、店の信用に関わると、
1円をつけてもらってもらおうという話をしていたところ、
聞き付けてやってきたのが、熊五郎。
遊び人の若旦那、銀ちゃんと一緒に1円付きのへっついを引き取って帰る途中、
体制を崩して、ぶつけたへっつい、そこから出てきたのが、なんと300円。
山分けをした150円と50銭。
熊さんも銀ちゃんもすっかり一日で使ってしまいます。
このお金に魂が残って、出てきていた幽霊。
なくなったと聞いて、がっかり。そして、呪う、と。
銀ちゃんの実家でお金を借りて、返そうとする熊五郎が幽霊に持ちかけたのは…。

ここからの熊さんと幽霊の掛け合いがクライマックスなのですが、
ま、それは、実際に聞いていただくとして、
面白かったのは、一般的なオチを言った後、
「というのが、昔のオチ、だよな。談志の作ったオチを伝えるのが、弟子の使命…」
と、エピローグ的に落として、デンデン。

全体的に、ゆるめの感じでしたね。
というか、そもそもこの噺、登場人物がゆるめではあるのですが、
そんな登場人物が、自由にやり取りをしている感じ。
時折、談春さん本人がずかずかと顔を出してきては、
「この噺はね、ちゃんとやった方がいい噺なんですよ、本当は」と、
自分自身を戒めたり。
「三連単が当たりやすいなんて、誰が言ったんだ!」と、
ボートレース礼讃のフレーズを挟んだりして、
ほどよく力が抜けていたように見えたのは、
もしかしたら、実はすっごく緊張していたのかも…。

というのが、中入りを挟んで語り始めたのが、
三遊亭圓朝の代表作、『真景累ヶ淵~豊志賀の死』。
まず、冒頭に「ひとつも面白くない。ただただ長いだけの噺。」と“言い訳”?
でも、かつて、談春さんが「面白くない」と言ってから始めた噺で、
本当に面白くない噺はなかったわけで、
上方落語に慣れ親しんできた筆者としては、
江戸落語の未知の魅力や計り知れない深さに、
ずぼぼぼぼーっと引きこんでくれるような噺が多かったわけで、
今日もきっとそうなんだろうと、かえって期待してしまうわけで。

三遊亭圓朝作『真景累ヶ淵』。恥ずかしながら、初めてでした。
もう、これ、つまりは、あらすじを文章にしてどうなるという種類のものではなく、
なんか、“すごいもん”なわけですよ、噺自体が。
深見新左衛門という旗本が皆川宗悦という鍼医者を切り殺したことが発端で、
その子孫たちが、次々と、“呪いのせい”としか言えないような運命をたどっていく。
超長編のサスペンスでバイオレンスでスペクタクルでパンクロックな怪談噺の、
中でも、ピークとも言える、
“嫉妬”に狂った女の性(さが)をあぶり出したような作品が『豊志賀の死』です。
年の離れた若い男、煙草屋の新吉、これが線の新座衛門の息子だったりして、
この新吉といい仲になった常磐津の師匠、豊志賀、これが宗悦の娘だったりする。
自分の弟子であり、どちらかというと健気に稽古に励む若い羽生屋のお久に、
凄まじいばかりの嫉妬の炎をたぎらせる。
「嫉妬、くらい自分が思い通りにならない感情はない。」
談春さんが語ったこの言葉、深いです。
その深さに、感動すら覚えていたのも束の間、
かつて、談春さんの弟弟子である志らくさんが、
とある出来事で、絶対に言ってはいけない相手に対し、
「あのヤロー」を連発していた、という暴露話へ。
そんな、軽めの地噺を挟みつつも、
益々迫力を増していく、病床の豊志賀の描写。
かほそい声で「早く死にたいよ~」と言った時には、
ゾッとしました。ゾクッときました。ほんで、ぶるっと震えました。
マジです。
江戸落語っていうのは、噺でこんな反応もさせるんや、と、
また、新しいものを見せつけられました。

三遊亭圓朝、恐るべし。そして、立川談春、凄まじい。

終わった瞬間、「もう、二度と、この噺はやりません」というのは、
冒頭の、「面白くないです」と対になっている、独自のジョークと受け止めたいです。

落語が、芸であり、芸能であり、
時として、芸術まで昇華する可能性があるとしたならば、
こういう噺が伝承されていった時の、
演者に何かが乗りうつって出る迫力によるものなんだろうなと、
そんなことを、ぼんやりと感じる読後感でした。

締めの告知は、三十周年記念全国ツアー、秋の高座。
10月4日(土)徳島あわぎんホールでの落語会。
10月という3カ月も先の四国の公演ですが、、
「今年、西の方で『芝浜』をやるのは、ここだけです。」と、
関西のお客さんの心を思いっきりくすぐるひと言。
っていうか、筆者の実家が徳島なんですよね。
両親への金婚式のプレゼントが談春さんの『芝浜』っちゅうのも、
これは、かなり悪くない、むしろ、イケてるんじゃないかなと思ったのでした。


(2014年8月19日更新)