ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2013 落語ライブ見聞録@関西』
『桂米朝一門会』
発売中 Pコード:433-105
▼2014年3月15日(土) 14:00
神戸文化ホール 中ホール
一階席-4000円(指定) 二階席-3500円(指定)
[出演]桂ざこば/桂南光/桂雀三郎/桂文之助/
桂宗助/桂ひろば
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホールプレイガイド
■078-351-3349
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『談志まつり in OSAKA』
発売中
<昼の部・夜の部>Pコード:433-736
<昼夜通し券>Pコード:433-737
▼12月28日(土) 13:00/17:00
森ノ宮ピロティホール
全席指定-4000円 昼夜通し券-7500円(指定)
【昼の部】
[出演]立川左談次/柳亭市馬/立川志らく/
立川談笑
※トークあり(〔出〕立川談笑/立川志らく/
立川左談次/柳亭市馬)。
※談志 落語上映あり「芝浜」立川談志。
【夜の部】
[出演]土橋亭里う馬/桂文珍/立川談四楼/
立川志らく/立川生志/他
※トーク&歌合戦あり(〔出〕立川生志/
立川志らく/立川談四楼/土橋亭里う馬/
柳亭市馬/桂南光/桂文珍/桂ざこば/他)。
※未就学児童は入場不可。
※出演者、および内容は、予告なく変更になる場合がございます。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『三枝改メ 六代桂文枝襲名披露公演
大千穐楽(おおせんしゅうらく)』
1月4日(土)一般発売 Pコード:433-731
▼2014年3月8日(土) 18:00
フェスティバルホール
1階席-10000円 2階席-8000円 3階席-6000円
1階BOX席-15000円
[出演]桂文枝/桂歌丸/鈴々舎馬風/林家木久扇
/三遊亭好楽/三遊亭小遊三/三遊亭円楽/
林家正蔵/柳亭市馬/春風亭昇太/立川志の輔/
立川志らく/林家たい平/林家三平/
笑福亭松之助/笑福亭仁鶴/桂ざこば/林家染丸
/桂きん枝/桂文珍/三枝成彰
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。尚、変更に伴う払戻しは行いません。車椅子の方はチケット購入前にチケットよしもとコールセンター[TEL]0570(041)356まで要問合せ。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
■0570-550-100
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【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)
【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)
【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり
【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』
江戸時代の町屋が数多く残る奈良町にて開催されている
『奈良町落語ふぇすてぃばる』も今年で九回目。
あちらこちらでいろんな寄席が催されたり、特別メニューを扱う飲食店が出たり
(「べちょたれ雑炊」食べたかった!)活況を呈しているようです。
落語という演芸を、自分たちの手で盛り上げよう!という主催者の意気込みが感じられ、
すごく素敵な“ふぇすてぃばる”になっています。
さて、そんなふぇすてぃばるの一環で開催された『ぴあ寄席』。
フリーペーパーである『ステージぴあ 関西版』の発刊記念と銘打ち、
桂雀々さん桂かい枝さんという、今をトキめく上方落語の雄を迎えての落語会です。
場所は「くるま座」。もともと砂糖蔵だったところを改装して、
イベントスペースとして活用しているとのことで、
歴史の深みと木のぬくもりを感じる、非常に心地いいスペースでした。
約50名のお客さんをお迎えし、寄席としては掟破りの朝10時半開演です。
主催者のぴあさん。普通の寄席では満足しまへん。普通やないこと、企んでます。
その企みとは、何らかのテーマを持った落語会にしましょう、ということで、
今回のテーマは、なんと!あきんど!ジャーン!って、
わりと普通やね。
会場が砂糖の問屋だったという理由は、
ますます普通度アップでぴあさんの名前をけがしてしまいそうなので、
ここでは伏せておきます。って、言うてるがな!
前座で雀々さんのお弟子さん、優々さん。
落語にまっすぐ、修業のまっただ中の27歳。ネタは『商売根問』。
まさに~あきんど落語編~のサブタイトルに相応しいオープニングアクトで、
アホな男が珍商売にチャレンジするという話。
枝雀~雀々そして優々と、枝雀一門に脈々と続く、
「ぢゅぢゅうぢゅう~」のくすぐりではキッチリとウケを取り、
場をあたためるという前座の役割を見事に果たして、
かい枝さんへと繋いだのでした。
続きまして英語落語を引っ提げて、
17か国97の都市での公演を成功させた、落語の宣教師、桂かい枝さん。
文字通り世界を股にかけて・・・えっと、ちょっと待って。
世界を股にかけるって、改めて考えるとどういうことやろ?
地球儀を股に挟むっていうこと?違う?ま、ええか。
どの言語で落語をするかを判断するためと英語で小噺をし、
「今日は日本語でやらせていただきます」と、絶妙の間で大爆笑。
自由自在なマクラでポンポンと面白いように笑いを取って、
入ったネタは『初天神』。
何にも買ってと言わないという約束で、
お父ちゃんに縁日に連れてきてもらった子どもが、
ぼちぼち、いろいろ買ってと言いだす。
子ども、お父ちゃん、そして飴屋さんや団子屋さんとの丁々発止という、
まったく他愛のないやり取りのお話です。
だって、もう、かい枝さんの見た目が、
すでに、ちょっと悪知恵がはたらくガキンチョだったりするわけで、
面白くないわけがない。
微妙で緻密な人物描写よりも、
瞬間瞬間でギャグを爆発させるドッカンドッカン型の落語。
お客さんの小学生女子もキャイキャイ言って笑っています。
あれ?今日のテーマは~あきんど落語~ですけど…
飴屋と団子屋が出てくるやんか、とは本人の弁。
主催者の狙いとは若干違っているような気もしますが、ま、ええか。
さて、このかい枝さん、
この日は午後から寝屋川市の方でもうひと高座かけもちということで、
下げの後、楽屋に戻ることなく、着替えることもなく、
袖においてあったコロコロを引っ張り出すと、そのまま出口へ一直線。
愛想を振りまき振りまき、消えていったのでした。
さすが、ぴあ寄席。普通やない演出です。
さらに、ここから、普通やない演出、その2。
次は雀々さんの一席と思いきや、
ノコノコ出てきたのは、このワタクシ、さとうしんいちではありませんか。
トリの出番を控えた雀々さんを高座前に呼び入れてのトークショーです。
テーマは「落語における“商い”と“あきんど”」。
開演前から一緒に楽屋にいたにもかかわらず、
下打ち合わせ全く無しのぶっつけ本番トーク。
さとうがテーマに沿うように話を持っていこうとするのを、
わざとあっちゃこっちゃに拡散させて、
それでも、要所要所ではキッチリ受けを取り、
あとろうことか、最後はこのワタクシをいじってネタにするという、
なんとも、まあ、畏れ多くもありがたいひと時でした。
ワタクシは、とっても楽しかったです。聞いてた人は知らんけど。
しばしの余興のあとは、雀々さんによるトリです。
マクラでは、自分がいかに“いらんこと言い”で、
いろんなトラブルを巻き起こしてきたか、という話。
故・小さん師匠とのやり取りは秀逸で、
「バカヤロー」を連発する小さん師匠と、ついついそう言わせてしまう雀々さん。
もう、そこに、若かりし日の小さん師匠がいらっしゃるかのような息遣いで、
会場をどんどんヒートアップさせていったのでした。
そうして入っていったネタは『猿後家』。
奈良での寄席、テーマがあきんど、ということでピッタンコなセレクトです。
ある大きな商家の後家さん。猿に似ていることがコンプレックスで、
「さる」という言葉を使った使用人は即刻くびになるという。
そこへやってくるのが、おべんちゃらの天才、太兵衛さん。
「綺麗にお化粧しはって」「化粧なんかしてへんがな」
「ほんまですか?素顔でそれとは恐れ入る、大津絵の藤娘に生きうつし」
「これ、太兵衛にお酒と鰻持って来たって」と、こんなあんばい。
伊勢参りに行きたいと言っては小遣い銭をせびって帰っていきます。
数日後、お伊勢参りの報告にとやって来た太兵衛、
帰りによった奈良の町を紹介するくだりが、お見事で、
時にこの部分を称して「奈良名所」と言われたりする所以です。
調子に乗ってべらべらしゃべっているうちに「猿沢の池」でしくじって、
なんとかも一度取りつくろうとして…
奈良の商家の蔵を改装したこの場所で、
奈良の名所を聞く優雅な時間が過ぎていき…という風情では決してなく、
いつものパワフル雀々さんが汗を撒き散らせつつの名所の紹介。
ギャグが数多くちりばめられているわけでなく、
淡々と風景を紹介するシーンが長くてウケが少ないはずのこのネタも、
雀々さんにかかれば、熱演モノの爆笑モノに。
ふと思ったのですが、最近主戦場を東京に移した雀々さん、
江戸の落語家さんと接することが多くなって、
その描写スタイルをうまく取り込んでいるようにも感じられます。
ますます進化・発展する雀々落語と、
テーマを設定して、ネタだけでなくお客さんを楽しませようとする『ぴあ寄席』、
これからも注目ですね。
次も、トークで出していただけると嬉しいなぁ。
ワタクシは、めっちゃ、楽しかったし。
聞いてたお客さんは、知らんけどね。
(2013年12月24日更新)