ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2013 落語ライブ見聞録@関西』

その他のオススメ落語公演

『桂雀松改メ 三代目桂文之助襲名披露公演』

▼10月6日(日) 14:00 Sold Out!!
サンケイホールブリーゼ
S席-5000円 A席-4500円
[出演]桂文之助/桂ざこば/桂南光/桂雀三郎/
笑福亭鶴瓶/桂紅雀
※口上(〔出〕桂文之助、桂ざこば、桂文枝、桂南光、笑福亭鶴瓶、桂文我)あり。
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888

発売中 Pコード:430-847
▼11月3日(日・祝) 14:00
南座
1等席-6500円 2等席-4500円
[出演]桂紅雀/桂南光/桂文珍/桂春団治/
桂ざこば/桂文之助
※未就学児童は入場不可。
[問]南座■075-561-1155
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発売中 Pコード:430-976
▼12月1日(日) 14:00
新神戸オリエンタル劇場
S席-4500円 A席-3500円
[出演]桂文之助/桂ざこば/桂きん枝/桂南光/
桂雀三郎/桂まん我
※未就学児童は入場不可。車椅子の方はチケット購入前に会場[TEL]078(291)1100まで要問合せ。
[問]新神戸オリエンタル劇場■078-291-9999
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『三枝改メ 六代 桂文枝襲名披露公演』
発売中 Pコード:431-692
▼11月2日(土) 14:00
和泉シティプラザ 弥生の風ホール 
全席指定-3500円 
[出演]桂文枝 [ゲスト]月亭八方/
大木こだま・ひびき/桂きん枝/桂文喬/他
※未就学児童は入場不可。
[問]和泉市生涯学習センター■0725-57-6661
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『立川談春独演会』
11月2日(土)一般発売
 Pコード:425-816
▼12月14日(土)・15日(日) 15:00 

森ノ宮ピロティホール 
全席指定-3800円 
[出演]立川談春(「芝浜」他)
※未就学児童は入場不可。
※発売初日はチケットぴあ店頭での直接販売および特別電話[TEL]0570(02)9560(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。
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『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

米朝一門落語会シリーズ2013 米朝一門会

 

サンケイホールブリーゼ。キャパシティーは約900席。
改装前のサンケイホールの1500席に比べるといくらかこじんまりしたとは言え、
落語を聞くには立派すぎるハイソなホール。
1971年、そのサンケイホールで行われた「桂米朝独演会」が、
米朝一門とサンケイホールとの歴史の始まりだそうな。
42年ですわ。
この年に生まれた男の子は、今年なんと後厄ですわ。えらいこっちゃ。

まず上がりましたのは歌之助さん。
陽気な語り口で、上方落語では定番とも言える“おばちゃん”マクラ。
受けるねぇ。テッパンやねぇ。いやいや、わろてるオバチャン、あんたのことやで。
噺は子どもを寝かしつけるために昔話をしようとするお父ちゃんが、
逆に子どもにたしなめられた上に、うんちくを語られるという『桃太郎』。
一言一句、米朝一門の『桃太郎』。キバリ方まで米朝師匠。
先代の歌之助さんのような個性が発揮されるのを楽しみにしてますよ~。

次いで、吉弥さん登場。
さすがはNHKレギュラーさん。出てくるだけで、会場内に漂うメジャー感。
ネタは『蛇含草』。
人間を丸のみにした蛇が、この草を食べると一気に消化するという、
魔法のような草の名前。
噺の中身はと言えば、餅好きの男が、とにかく餅を食べまくる話。
ただひたすらに食べまくるわけですが、これがまた、ハフハフホフホフと実に美味そう。
いや、そんなに餅ばっかりは食えないでしょ~、って感じなんですが、
ついつい惹きこまれ、あまりの見事な食べっぷりに思わず拍手!
食べ過ぎた餅を消化するために『蛇含草』を飲んだ男は…。

さてさて、お次は南天さん。
『牛ほめ』としておなじみの噺が、最近では、
オチまで行かずに『普請ほめ』として演じられているんですね。知らんかった。
アホが小遣い欲しさに普請を褒めようとして、
スカタンを言って笑いを取る、という前座噺なわけですが、
この、南天さんの演じるアホは、なんとも味のあるアホで、
米朝一門としてはちょっと異質な、シュッとしていない感じが漂っていて、
噺の中盤から客席をグイグイ引っ張っていきました。

いわゆる“場が温まった”状態になったところに登場したのが南光さん。
あ、そっか、南天さんは南光さんのお弟子さんなんやね。
しっかり場を温めて下りるとは、なんて師匠孝行なんでしょう。
と、思いきや、上がるなりそんな温まった場をしらけさすような言葉。
「この『いたりきたり』をはじめ、(枝雀)師匠の晩年の新作落語は、
どれもこれも一般受けしないもんばっかりで…」
そうそう、今日のお目当て、この南光さんの『いたりきたり』。
今年の5月に南光さんの弟弟子である雀々さんのを観て、
軽い脳震とうくらいの衝撃を受けた、その『いたりきたり』。

枝雀さんがSR(ショート落語の略とされてはいますが、多分にSFの要素が
含まれています)に凝っていた時の作品だそうで、
「まともな人間には分からない」だの、「面白いと思う人がおかしい」だの、
言いたい放題。

まずは、ウォーミングアップと言ってやったのが、たとえばこんなの。
「あっ、こんな所に定期券が落ちてる。落とした人困ってるやろなぁ。
誰が落としたんやろ?ん、名前、書いてへんがな。
あ、そうか。これは期限が切れて捨てたんやな。期限…、期限も書いてへんなあ。
だいたい、これ、何駅から何駅までの定期券なんや?あれ、駅名も書いてへんがな…。…これ、何で定期券やと分かったんやろ?」
こんな噺を、二つ三つしつつ、お客さんの反応をいじりつつ、
着実に、いつもの南光さんとは違う、SR南光ワールドを作っていったのでした。

『いたりきたり』のストーリーに関しては、この連載の【其の三】をご参考に。
雀々さんのように、噺にクレッシェンド(音楽用語:だんだん大きく)がかかって、
ハイテンションになっていく『いたりきたり』も、
ええ味が出ていましたが(ツバも出まくっていましたが)、
南光さんの『いたりきたり』は、主人公はあくまでも不思議ワールドの住人。
そして、相手が、その世界に徐々に染まっていく様子が非常に味わい深く、
ラストは、二人の意識の融合に、聞いているこちらも混ざっているような、
なんとも、サイエンスフィクションな感じを体験しました。
うーん、ボクだけかなぁ…。

中入りをはさんで、雀三郎さんと文我さんのリレー落語で『三十石』。
上方落語でおなじみの喜六と清八による伊勢参りの顛末、
そのフィナーレも間近の、京都から舟に乗って大川を下る一席です。
お伊勢さんに縁が深い文我さんの、リアルお伊勢参りの話や、
時に満腹ブラザーズを率いてヨーデルを歌い上げる雀三郎さんの船頭さんの歌。
旅情たっぷり、上方落語の真髄がちりばめられた、すてきなひと時でした。

トリは、ざこばさん。ネタは、『狸の化寺』。
珍しい話です。ぶっちゃけ、そんなにオモロいことはない話です。
米朝師匠が復活させた落語だそうで、
いや、もう、そんな話はごまんとあるのですが、
面白さよりも、風土やあじわいを活かして脚色した、
笑いというよりは伝承することを目的としてリバイバルさせた、そんな噺。
決壊した川の畔を埋めるのに、ある村にやって来た若い衆たち。
それを束ねる、ひときわ勇ましい頭領の領五郎。
化け物が出るかもしれないと言われる古寺に、あえて泊って、
そこに出てきた狸と知恵比べ、という噺です。
ざこばさんの落語って、ほぼ間違いなくさこばさん自身が出てくるんですよね。
この話では、頭領がざこばさん。
面倒見がよくって強情っぱリで、で、どこかにちょっと愛嬌もあったりして。
米朝師匠とは、また違った味わいをちりばめて、
噺は確かに語り継がれていくんですね。

ここのところ独演会を観ることが多かった筆者にとって、
「特選落語の詰め合わせ」は、懐かしさと新鮮さの入り混じった心地よい時間でした。
久々のサンケイホールブリーゼは、
900名という大きなホールながら、落語の聞きやすさは変わらず。
米朝一門の若手の噺家さんにとって、ここでの独演会が、
ひとつの大きな夢となっているんですよね。
そういや、今から28年前、ここで初めて「米朝独演会」を観た日、
ボクもそんな夢をちらっと見たような、見なかったような…、
そんなことを思い出したりもした夜でございました。

(2013年9月30日更新)