ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2014 落語ライブ見聞録@関西』

立川談春

その他のオススメ落語公演

天満天神繁昌亭〈第82回 創作落語の会〉
発売中 Pコード:597-700
▼4月30日(水) 18:30
天満天神繁昌亭
全席指定-3000円 補助席-3000円(整理番号付)
[出演]桂文枝/笑福亭福笑/桂あやめ/月亭遊方/他
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
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天満天神繁昌亭〈第83回 創作落語の会〉
発売中 Pコード:597-700
▼5月30日(金) 18:30
天満天神繁昌亭
全席指定-3000円
[出演]桂文枝/笑福亭仁智/桂三風/桂三語/他
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
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『談春 大阪二夜
立川談春 三十周年記念落語会
「もとのその一」inフェスティバルホール』
発売中 Pコード:434-474
▼5月31日(土)・6月1日(日) 15:00
フェスティバルホール
S席-4860円 A席-3240円
2階バルコニーペア券-2500円
(2500円×2(合計5000円))
3階バルコニーペア券-1500円(1500円×2(合計3000円))
[5/31出演]立川談春(「らくだ」「除夜の雪」)
[6/1出演]立川談春(「たちきり」他)
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『らくご組曲 西村由紀江×桂春蝶』
発売中 Pコード:436-226
〈桂春蝶芸能生活20周年記念特別企画vol.2〉
▼6月4日(水) 19:00

近鉄アート館
全席指定-4500円
[出演]西村由紀江/桂春蝶
※未就学児童は入場不可。
[問]近鉄アート館チケットセンター
■0570-023-300
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『鶴瓶・晃瓶親子 京都落語会』
5月7日(水)一般発売
 Pコード:435-995
▼6月10日(火) 14:00
京都府立文化芸術会館
3500円(指定)
[出演]笑福亭鶴瓶/笑福亭晃瓶/笑福亭瓶吾/
桂吉の丞/桂宮治
※未就学児童は入場不可。
[問]松竹芸能■06-7898-9010
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『東西吟選落語会~七夕寄席~』
発売中 Pコード:435-530
▼7月6日(日) 13:00/17:00
神戸文化ホール 中ホール
全席指定-3500円
[出演]桂雀々/笑福亭三喬/笑福亭銀瓶/
柳亭市馬/林家三平/三遊亭兼好
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホール■078-351-3349
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『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

立川談春独演会

 

なにを、どこから書いていいものやら…
思い悩んでいるうちに、テレビの方でもえらい興行(?)が行われました。
「笑っていいとも!グランドフィナーレ超特大号」です。
冠レギュラー番組を何本も抱える超売れっ子芸人が次々と登場し、
ここ10年は観ることのできなかった絡みがあちこちで繰り広げられ、
もはや、収拾する役目に回るのは損とばかりの無秩序三昧。
と、思いきや、どこまでいっても主役は主役。
黒メガネのおじさんがどっしりと真ん中で存在感を示したまま、大団円のフィナーレへ。

これに負けず劣らず豪華絢爛、百家争鳴、光彩陸離、一切合切だったのが、
この襲名披露公演大千穐楽。
ただ、大きく違うのが、
こちらはフィナーレではなくて、未来に向かって颯爽と進んで行くスタートであり、
異業種、別ジャンル、新機軸を取り入れたチャレンジがあり、
なによりも、
2700人という、限られた人だけに提供されたスペシャルなものであったこと!
と、国民的番組フィナーレイベントを比較の対象にしてしまうほどに
値打ちある時間が流れたのでございます。

でも、まぁ、だいたい、2700人も入る大ホールで落語って、どうなん?
と言いたいところですが、なんのなんの、これでも小さく見えたというか、
これで、なんとかさまになったというか、
そもそも、これは落語の会だったのかどうだったのか。
夢なのか、うつつなのか。ここは、誰?わたしは、どこ?な、
圧巻のフィナーレからレポートしないわけにはいかないでしょう。

センターには黒メガネさんに全く負けない存在感の六代文枝師匠。
そこに第一部、第二部で高座を飾った東西の名人上手、約20人がずらり。
五代目文枝師匠のお弟子さん、つまりは六代の弟弟子たち19人に続いて、
六代文枝師匠のお弟子さんたち19人も、ぞろぞろぞろぞろ。
なにより、舞台上半分を締めているのは、
たった今、文枝師匠と高座でコラボレーションしたばかりの
六本木男声合唱団に指揮者にピアノの80余人。
全約150人と、さらには客席2700人による瀧廉太郎「花」の大合唱。

♪は~るの~ うら~らあの~ す~み~だ~がわ~

この時点で開演から4時間を超えてます。
でも、なんか、光が射してます。
これまでの五代の伝統を受け継ぎつつも、
すでに新しい文枝として歩み始めている自信のオーラがキラキラです。

東西すべての噺家の元になっている「文枝」という名跡。
上方に継ぐ人がいないなら、江戸に持っていくという話も、あったとかなかったとか。
それくらい大きい名前だからこそ、
1年8ヵ月という時間をかけ
(中入りのトークでさんまさんが1年半と言って訂正され、1年半も1年8ヵ月も一緒でっしゃろと言って叱られてた!)、
文字通り世界を股にかけ(フランス、ベトナム、タイでも公演)、
さまざまな演出を試み(プリンセス天功によるイリュージョンやディナーショー形式)、
112公演目の、今日の、大千穐楽に向かってきたのでしょう。

そんな、感慨深い時の流れの中で、ふと思い出したのが「ワニ」という新作落語。
故桂枝雀さんと当時桂三枝さんが、同じタイトルで作ろうということになったそうで、
でも、なぜか、三枝さんのは「ワニ」、枝雀さんのは「わに」。
三枝さんのは、飼育係がワニを助けるええ噺。
枝雀さんのは、ある日いきなり家にわにがいたという不条理話。
実は文枝さん、今回の襲名披露フランス・パリ公演で、
この「ワニ」を演じているんですよね。
落語という芸能の普遍性と、ちょっとした郷愁を、
パリに届けたかったのではないかなとは、ほとんど妄想に近い考え過ぎやと思います。

さてさて、第一部のレポートです。
文珍さんの、めったに見られない“前座”で始まり、
志の輔さんが短いネタをショートプログラムと言って客席を掴めば、
市馬さんは、変幻自在なネタにご自慢ののどを披露、
ざこばさんは、開口一番「離婚しまんねん!」からざこばトーク全開で、
馬風さんの美空ひばりのモノマネは関西のファンには物珍しく、
笑点メンバーの渋滞による到着遅れで出てきたきん枝さんの、
東北での襲名披露公演顛末記は、今でもオチが気になっていて、
歌丸さんの枯れた味わいに、江戸落語の本質を感じ、
そして、いよいよ六代文枝師匠登場。
母親の文句を父親に告げに来たところ、
実は、その文句は「言わせている」ものであり、
普段の夫婦関係の中で父親がどれだけ苦労しているかを聞くことになる、
『妻の旅行』。
練られてる。練り込まれてるなぁ。
日常感あふれる描写の中に、小気味よく笑いをちりばめた、文枝さんの真骨頂。
オチに客席がどっと湧いて、時間を見ればすでに1時間半経過。

緞帳が、下りて上がって、ずらり並んだ18人。第二部開始。大口上。
そら、もう、全員が面白くないわけがないやないですか。
志らくさんが、本物と見間違うほどの立川談志さんで口上を披露したり、
ざこばさんが「やっぱり離婚するのやめました」で爆笑をとったり、
木久扇さんが片岡千恵蔵やら大河内伝次郎やらのモノマネを繰り広げたり、
最後は歌丸さんの音頭で手締め。
2700人による三本締め!
しかも、いつもはフルオーケストラやオペラが鳴り響く場所。
いやぁ、手を叩いて、あんなに気持ちの良かったことは記憶にないですね。

で、ここから30分の休憩。
明けて緞帳が開くと思いきや、緞帳前に文枝さん。
呼び入れたのは笑福亭松之助師匠と、“その弟子”明石家さんまさん。
『ヤングおー!おー!』から40年の時を経ても、相変わらずの丁々発止。
そこに、ええ感じで絡んでくる松之助師匠。
「きみ、へーこいたやろー!」「こいてませんよ!」「今のはボクのへ―やったわ」って、
88歳の言うことかっ!中学生かっ!
「せっかく口上で時間を稼いだのに、また押してしもた」と、
ぼやきながら下がっていく文枝師匠も、お客さんは大満足の15分間でした。

さてさて、メインイベント、第三部の始まりです。
80名の男声合唱団を背負っての創作落語、自身234作目となる、
『~熱き想いを花と月に馳せて~瀧廉太郎物語』。
23歳で夭逝したにもかかわらず、7年間で数々の音楽を作曲し、
日本における近代音楽の祖と言われた瀧廉太郎。
彼のドイツ留学時にその下宿をたびたび訪れた直木倫太郎。
二人の友情を物語の背骨に、
時代の空気感やほのかな恋物語、さらには、
ちょいちょい現代の落語界や文枝としての意気込みを盛り込んで、
わりと、淡々と噺は進みます。
時間と場面の展開に、三枝成彰さん編曲の瀧廉太郎ナンバーが、
六本木男声合唱団によって息吹を吹き込まれ、フェスティバルホールに鳴り響きます。
ラスト、無念にも23歳の生涯を閉じようとする廉太郎に対し、
「死線をさまよっているんでしょうか?」
「五線の上を歩き始めたんです。」
というオチは、まさに、五代目の上を目指して、
六代としての道を進み始めた自身の輪郭をはっきりさせた“文枝の宣言”でした。
こんな、チャレンジングな70歳を目の当たりにしたら、
47歳くらいのひよっこ(ワタクシのことです)が、
小さいことでくよくよしてる場合ではないなと、
すんごく勇気づけられたのでした。

昨年4月に再オープンしたフェスティバルホール。
ここで落語を観たのは、実は『志の輔・談春 祝祭落語会』という江戸落語。
2700人の落語会というものが成立するということをまざまざと見せつけられ、
ドッカンドッカン笑いを取っているのが、
大阪弁ではなく江戸っ子弁というショックから10カ月。
上方落語も2700人に立ち向かえることが確認出来て、いい夜でした。

と、手元のチラシの束を見ると…
「立川談春 大阪二夜」というでっかい文字。真正面から睨みつける談春さん。
なんと、入門30周年の全国ツアーのスタートを、ここ大阪、
しかもフェスティバルホールから始めるというではありませんか!

そして…じぇじぇ!(すでに、古いっ)
そのチラシに書かれた、談春さんが演ろうとしている、ネ、ネタが…
『らくだ』『除夜の夜』『たちきり』…!
2012年の月一独演会の時には決してやろうとしなかった“上方ネタ”を、
ついにブッ込んで来るのでしょうか?

2700人を湧かせて落語会のてっぺん取るのは、江戸落語か、上方落語か。
この目で、その真実を確かめようではありませんか!
これは、もう、仁義なき戦いなのです!!

って、まぁ、ぼくら両方面白かったら、それでええねんけどね


(2014年4月18日更新)