ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2013 落語ライブ見聞録@関西』

桂雀々

今後レポート予定のオススメ落語公演

「立川談春独演会」
▼7月3日(水) 19:00

兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
全席指定-3800円
[出演]立川談春

その他のオススメ落語公演

「米朝一門会」
発売中 Pコード:429-922
▼8月2日(金) 18:30
[出演]桂ざこば/桂南光/桂雀三郎/桂文我/
桂南天/桂吉弥/桂歌之助
▼8月3日(土) 14:00
[出演]桂ざこば/桂南光/桂塩鯛/桂米團治/
桂すずめ/桂しん吉
サンケイホールブリーゼ
S席-5000円 A席-4500円
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888
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「塩鯛 米團治二人会」
発売中 Pコード:429-977
▼8月17日(土) 14:00
KBSホール
前売-3000円(指定)
[出演]桂塩鯛(「花筏」)/桂米團治(「くしゃみ講釈」)
/桂鯛蔵(「開口一番」)
※未就学児童は入場不可。
[問]KBSカルチャー■075-441-4161
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桂文珍 三遊亭円朝「牡丹燈籠」読み語りの会
~五夜連続全編通し~
発売中 Pコード:429-572
▼8月12日(月) 19:00

1日券-3000円(整理番号付)
5日間通し券-12000円(整理番号付)
▼8月13日(火)~16日(金) 19:00
1日券-3000円(整理番号付)
TORII HALL
[出演]桂文珍
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。尚、変更に伴う払戻しは行いません。
[問]チケットよしもとお問合せ専用ダイヤル
■0570-036-912
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「桂ざこば独演会」
発売中 Pコード:429-889
▼9月8日(日) 14:00
サンケイホールブリーゼ
S席-4200円 A席-3700円
[出演]桂ざこば(「百年目」「七度狐」)/
桂出丸(「八五郎坊主」)/桂わかば(「片棒」)/
桂ちょうば(「平林」)
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888
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「柳家三三独演会」
発売中 Pコード429-127
〈夏三三の巻〉
▼9月28日(土)・29日(日)
(土)18:00 (日)13:00

[出演]柳家三三(「唐茄子屋政談」他)
〈冬三三の巻〉
▼9月28日(土)・29日(日)
(土)13:00 (日)18:00

[出演]柳家三三(「柳田格之進」他)
ABCホール
指定席-3500円
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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「桂雀松改メ 三代目桂文之助襲名披露公演」

7月27日(土)一般発売 Pコード:431-015
▼10月6日(日) 14:00
サンケイホールブリーゼ
S席-5000円 A席-4500円
[出演]桂文之助/桂ざこば/桂南光/桂雀三郎/
笑福亭鶴瓶/桂紅雀
※口上(〔出〕桂文之助、桂ざこば、桂文枝、桂南光、笑福亭鶴瓶、桂文我)あり。
※未就学児童は入場不可。
[問]ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888
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7月31日(水)一般発売 Pコード:430-847
▼11月3日(日・祝) 14:00
南座
1等席-6500円 2等席-4500円
[出演]桂紅雀/桂南光/桂文珍/桂春団治/
桂ざこば/桂文之助
※未就学児童は入場不可。
[問]南座■075-561-1155
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9月1日(日)一般発売 Pコード:430-976
▼12月1日(日) 14:00
新神戸オリエンタル劇場
S席-4500円 A席-3500円
[出演]桂文之助/桂ざこば/桂きん枝/桂南光/
桂雀三郎/桂まん我
※未就学児童は入場不可。車椅子の方はチケット購入前に会場[TEL]078(291)1100まで要問合せ。
[問]新神戸オリエンタル劇場■078-291-9999
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『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

桂雀々、柳家喬太郎


2011年10月に活動の拠点を東京に移した桂雀々さんなのでございます。
芸歴35周年の今年、
東京で知り合った名人上手たちをふるさと大阪に招いて勝負を挑む、
そんな3日間5公演にわたる企画の初日初回公演に行ったのでございます。
雀々さんの師匠である故・桂枝雀さんの口真似をしてみようとしたのですが、
もうひとつ面白くないのでございます。すびばせんねぇ。

さて、公演会場の受付を通るといきなりのアンケート。
雀々さん、そして初回の対戦相手(?)柳家喬太郎さんともに
5席のネタ名が書かれてあり、その中からお客さんが聞きたいネタをひとつ選び投票箱へ。
最終集計でそれぞれ最も希望多かったネタを高座にかけるという趣向です。

雀々さんは師匠枝雀さん作の新作2席と、落語作家・小佐田定雄さんの新作1席、
それに古典が2席。
喬太郎さんは自作の新作3席と古典が2席。

初めて訪れたエルセラーンホールは席数約400と、落語を聴くのに適度なサイズ。
(フェスティバルホールの2700っていうのは、特殊環境ですわな。)
開演を心待ちにしていると、「二番太鼓」が鳴り始める。
ここのところ聴きに行っていた談春さんの会では流れなかったので、
ちょっと懐かしい感じ。
♪デンデン!の後は前座専用の出囃子「石段」が流れてくると思いきや…
舞台上のスクリーンに映像が。「桂雀々52歳」バーン! 「5番勝負」ドーン!
登場したのはテレビ大阪アナウンサーゆずりはのぞみさん。漢字で書くと楪望。
なんか知らんが、すごいぞ、ゆずりは! あ、ここはそんなに熱くなるとこちゃうな。

主役である雀々さんと、大物ゲスト角淳一さんを招いてのオープニングトーク。
さらには、喬太郎さんも登場で、舞台上には女子アナ、ベテランアナ、
上方落語家、江戸落語家という、なんとも不思議な4ショットでの丁々発止。
雀々さんが角さんに「はよ帰って!」と言うなど、あまりにもゆるい自由なやり取り。

さて、まずは、“勝負”とは別の演目、雀々さんの『代書』。
無筆のため履歴書の代書を頼みに来た留五郎と、
とんちんかんな応対に困り果てる代書屋さんのやり取りという話。
なんといっても、自分の名前すらまともに言えない留五郎なのです。
「と~め~、お前のほんまの名前は留五郎やわいな~。こてっ!」
中身は亡き師匠枝雀さんの独創ストーリーを踏襲。
噴出す汗、飛び散るつば、はじけるテンション!
血管切れそうな押せ押せムードのまま、驚きのオチ「ポーーーーーーーン!!」

さて、再び4名が舞台に上がり、演目の発表。
雀々さん『いたりきたり』vs喬太郎さん『ハワイの雪』

まずは喬太郎さん。昭和38年生まれの49歳。
雀々さんの3つ下。談春さんやワタシの3つ上。
日本大学落語研究会から一旦サラリーマンになるも、
平成元年柳家さん喬師匠に入門という経歴。
ここのところ関西の落語会に出ることも多く、また週刊文春の川柳連載や
BSの番組をやっていたりして、人気知名度ともに上昇中。
っちゅうか、最近、江戸の落語家さんのほうが、関西で受けまくってるんちゃう?

高座に上がるなり、
「仲間うちで勝負なんてするもんじゃない。」と、今回の企画を全否定して、爆笑。
淡々と喋っているかと思えば、急に立ち上がって歩き回ったり、
練馬の弁当屋の「5000円出せ強盗」という“小ネタ”でも、ドッと沸かせたり。
かなりの“小ネタ”遣いの名手と見た。

で、『ハワイの雪』。名作でした。
新潟のおじいさんの家に同居する女子大生の孫娘。
ハワイに住む幼馴染、ちーちゃんから手紙が届くところが物語の始まり。
「バカじじい!」「だまれ、バカ孫!」という、
至近距離での剛速球キャッチボールのようなやり取りや、
専攻がメソポタミア語であるとか、貯めた金を富山のホストに貢いだとか、
いちいちの“小ネタ”がドッカンドッカン!
ハワイ旅行がもらえる商店街の腕相撲大会。85歳以上、ディープシニアの部。

越後の飛び魚と言われたおじいさんの長年のラバウル、高田のサルスベリ。

ほらぁ。もう、“小ネタ”すぎて文字では全く面白さが伝わらないです。
みっちり30分間、のどちんこ全開でたっぷり笑った後、
おじいさんと孫娘がハワイにやってきてからは、急に人情話の様相を呈します。
上方落語の手法である三味線のBGMの力も借り、
目の前には実際のハワイの風景が広がっているかのようでした。行ったことないけど。
“小ネタ”で客の気持ちをぐいぐい持っていって、
いつの間にか心の奥の方をも揺さぶる感動に繋げてしまう。
紛れもない“大ネタ”でした。

替わって雀々さん。
出囃子は枝雀師匠が使っていた「昼飯(ひるまま)」。
そんな予感がしてました。なんとなく。

上がるなり「やりにくい!っちゅうねん。」そらそうでしょ。
普通の寄席で、こんなネタ並び、ありえへん。逆ですわ。

『いたりきたり』は、枝雀さんの最後の新作であるという。
穴のところを出たり入ったりしている“いたりきたり”と、
穴の前を行ったり来たりしている“でたりはいったり”を飼っている男。
さかさま違うんか?それは、人間の都合や。
餌は“とったりみたり”で、餌のほうから言うたら取られたり見られたり違うんか?
それは、人間の都合や。
他にも、ノラリクラリしている“のらりくらり”と、
寝たり起きたりしている“ねたりおきたり”も飼っていて、
それは、そのままなんか?
というような話です。

こんなわけの分からん生き物から、
哲学めいたことを語るという独特の枝雀ワールドを、
噴出す汗、飛び散るつば、はじけるテンション!という雀々バージョンで、
文字通り“必死のパッチ”で演じ尽くしました。

かたや、台詞の一言一言まで吟味され作りこまれ、海をも越える35分の大作、
こなた、たった二人が狭い空間で不条理トークを繰り広げるモヤモヤの10分ネタ。
比較のしようがないですわな。

ただ、50歳を超えた雀々さんが、東京で新たなる人脈を作りつつ、
上方落語、中でも枝雀落語にこだわり、さらには独自の雀々落語を築いていこうという、
この“必死のパッチ”の取り組み、めっちゃめちゃ応援したいです。

ま、雀々さんだけに、“着々”と進んでいくわけでございます。
“必死のパッチ”で、目標達成が“必至”なわけでございます。
観客からの喝采の拍手が“パッチパッチ”なわけでございます。
最後に再び、枝雀さんの口真似をしてみようとしたのでございますが、
やっぱり、もうひとつ面白くなかったのでございました。とほほ。

 



(2013年7月19日更新)