ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2013 落語ライブ見聞録@関西』
「立川談春独演会」
▼7月3日(水) 19:00 Sold Out!!
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
全席指定-3800円
[出演]立川談春
※未就学児童は入場不可。
※当日券その他のお問い合わせは、下記連絡先まで。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
「立川談春独演会」
▼6月7日(金) 19:00
京都府立文化芸術会館
当日引換券-3800円
[出演]立川談春
※未就学児童は入場不可。
※チケットは、インターネット・店頭にて販売。電話での受付はなし。公演当日会場にて開演1時間前より座席指定券と引換え。離れたお席になる場合があります。1人2枚まで。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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天満天神繁昌亭
〈第15回 笑福亭松喬一門会〉
発売中 Pコード:597-700
▼6月9日(日) 18:00
天満天神繁昌亭
全席自由-3000円
[出演]笑福亭松喬/笑福亭三喬/笑福亭遊喬/
笑福亭右喬/笑福亭喬若/笑福亭生寿
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
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天満天神繁昌亭
〈福笑・仁智二人会〉
発売中 Pコード:597-700
▼7月3日(水) 18:30
天満天神繁昌亭
全席指定-3000円
[出演]笑福亭福笑/笑福亭仁智/笑福亭たま
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
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「東西吟選落語会~七夕寄席~」
発売中 Pコード:427-211
▼7月7日(日) 13:00
神戸文化ホール 中ホール
1階席-3500円 2階席-3000円
[出演]桂小枝/桂雀々/柳亭市馬/笑福亭三喬/
柳家喬太郎/春風亭一之輔/なにわの会(お囃子)
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホール■078-351-3349
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天満天神繁昌亭
〈春蝶・かい枝・吉弥三人会〉
発売中 Pコード:597-700
▼7月9日(火) 18:30
天満天神繁昌亭
全席指定-2500円
[出演]桂春蝶/桂かい枝/桂吉弥/桂紋四郎
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
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「志の輔らくご in 森ノ宮 2013」
6月16日(日)一般発売 Pコード:429-431
▼8月1日(木)~4日(日)
(木)(金)18:30 (土)17:00 (日)14:00
森ノ宮ピロティホール
全席指定-4500円
[出演]立川志の輔
※未就学児童は入場不可。
※発売初日はチケットぴあ店頭での直接販売および特別電話[TEL]0570(02)9560(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。
[問]キョードーインフォメーション■
06-7732-8888
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桂文珍 三遊亭円朝「牡丹燈籠」読み語りの会
~五夜連続全編通し~
6月15日(土)一般発売 Pコード:429-572
▼8月12日(月) 19:00
1日券-3000円(整理番号付)
5日間通し券-12000円(整理番号付)
▼8月13日(火)~16日(金) 19:00
1日券-3000円(整理番号付)
TORII HALL
[出演]桂文珍
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。尚、変更に伴う払戻しは行いません。
[問]チケットよしもとお問合せ専用ダイヤル
■0570-036-912
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「立川志の輔独演会」
6月5日(水)一般発売 Pコード:428-973
▼9月7日(土)・8日(日)
(土)17:00 (日)14:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-4000円(指定)
シニア-3600円(指定、60歳以上)
[出演]立川志の輔
※未就学児童は入場不可。
[問]京都芸術劇場チケットセンター■
075-791-8240
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【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)
【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)
【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり
【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』
いや、もう、どえらいもん見てしもた!
もう、今回は、この一行で勘弁してもらえないでしょうか?
ええもん、すごいもん、を超えた、どえらいもん!
すさまじいもん、はんぱないもん、えげつないもん、なんじゃこりゃなもんと、
言い換えてもいいくらい、どえらいもん、でした。正味のところ。
4年と約4ヶ月のリニューアル期間を経て、以前と同じ大阪・中之島の地に
威風堂々、見事な姿を現したフェスティバルホール。
そのオープニングを記念した“祝祭”落語会とは、うまいネーミングですね。
緞帳が上がる。高座に二つのシルエット。
奥には屏風ではなく、都会のビル群を模した切り出しパネル。
2700人の歓迎と期待の喝采。
口火を切ったのは、談春さん。
閉館直前の2008年12月25日、
さだまさしさんとの縁から、フェスティバルホールで独演会をやった談春さん。
「舞台上の天井から拍手が降ってくる」という、信じがたい話を身を持って体験し、
また、このホールにいらっしゃる神様の存在をも体感した談春さんが思ったのは、
「ここで志の輔兄さんの落語を聞きたい。」
それなりの覚悟を持って、今回の企画を打診したところ、
「いいよ。」という、あまりにもあっさりとした、軽すぎるお返事。
続いて、志の輔さん。
「軽く返事をした志の輔です。」でつかみはオッケー。
ぐるり見廻して、やっと談春さんの覚悟に気が付きつつ、
一昨日、同じ舞台にキース・ジャレットが立っていたという話で、
ぐいぐいお客さんの心を持って行きます。
落語家の、場所としての高座へのこだわり。
このフェスティバルホールの特殊性。神様の確かなる存在。
その神様に、300年の伝統を持つ落語が受け入れられるかどうか、
今日の落語会には、そんな意味があるということ。
自由自在に笑いを集めながらも、ピリリとしまった決意表明の『口上』でした。
さて、まずは談春さんの『大工調べ』。
べらぼうめ!あたぼうよ!の江戸っ子満開ネタ。
大工の棟梁・政五郎が与太を仕事に誘いに来たところがお話の始まり。
道具箱を家賃のカタに大家さんに持って行かれたと聞いて、
その家賃を肩代わりしようとするが、わずかに足りない。
そこは、うまく言って、何とかするようにという棟梁の思惑に反して、
内幕をばらし、かえって大家さんの怒りを買い、手ぶらで帰って来る与太。
やむなく自ら大家さんのところに出張った棟梁ですが、
ちょっとした口のきき方に、さらに大家さんの態度はかたくなに。
ついにブチ切れた棟梁の、縦板に水のタンカが炸裂!
今年1月に聞いた談春さんの『芝浜』。
談志家元の流れを確かに受け継ぐ、立川流ならではの魂のやり取り。
ほかの『芝浜』とは、ひと味もふた味も違う、人間の“業”のぶつかり合い。
(詳細は、http://kansai.pia.co.jp/series/tatekawadanshun/index.html)
一方、今回の『大工調べ』は、
大師匠の五代目の小さんから師匠談志家元に剛速球で伝えられ、
さらに、骨太さを増して談春さんが受け継ぎ、ゆるぎない名作になっていました。
「タンカがお見事」とか、もう、そんなレベルの褒め言葉では、
フワフワ過ぎて、かえって愚弄しているようにも感じます。
そう、確かにこのホールにおわす神様に挑むような鬼気迫るタンカ!
人間という物体が、ここまで速く言葉を発することが出来るのか、
という、限界をはるかに超えたセリフ回しの中に、
江戸っ子の粋と気風と洒落っ気がこれでもか!と、込められていて、
軽い催眠術にかけられているような陶酔感。
噺の最中に拍手をすることを、よしとしないワタシの両手が、
パンパンパンパン、音を出していたではありませんか!なんだこれは!?
拍手や!っちゅうねん。
20分間の休憩をはさんで、志の輔さん登場。
ワタシ、志の輔さんを生で見るのは初めて。
すごく嬉しそうです。
談春さんに誘われたのが嬉しいのか、
談春さんといっしょに落語会をするのが嬉しいのか、
このフェスティバルホールという場所に興奮しているのか、
そのすべてなのか。
昨年1年聞き続けた談春さんとの、明らかな違いは、
“すきあらば、笑わせてやろう”という、芸人気質、みたいなもの。かな?
絶妙の間で、「聞いてますか?」という笑いの取り方は、ずるいって。
そんなこんなの絶妙トークで2700人を自分の世界に連れ込んでから始めたのは、
『徂徠豆腐』。初めて聞きました。
まずは、豆腐屋夫婦の他愛ないやり取りの数々。
夫婦仲良く豆腐を作っている様子や、腕もよく味もいいんだろうなという感じが、
絶え間ない笑いの中で場内にしみわたります。
ある日、腹をすかせた学者に呼びとめられて、豆腐を一丁売ったところ、
非常においしそうにぺろりと食べた。
が、お金がないので、明日まとめて払うと言う。
翌日も、その翌日もお金はないがおいしそうに食べる。
聞けば、そもそもお金がないという。
それなら、と、ここが江戸っ子の人情の見せどころ、
おからを中心に差し入れを始めました。
ある時、2週間ばかし風邪で寝込んでしまった豆腐屋さん。
回復して、あわてて学者先生のもとに駆け付けたら、もぬけのから。
ああ、薄情な学者先生だと思いつつも、豆腐屋の方は連日の大繁盛。
ところが、好事魔多し、この豆腐屋がある日大火に飲まれてしまう。全てを失った夫婦。
このまま、別の土地に行こうか、ほかの豆腐屋に勤めようか、
それとも、全く別の商いを始めようか。
土壇場に追いつめられている二人を描いているのに、
悲壮感が漂うというよりは、ちょっとのん気さすら感じさせるのは、
志の輔さんならではのガッテン演出。
と、見ず知らずの人からの大金10両の差し入れ。
それを使いきった頃に、今度はまっさらな豆腐屋を一軒差し上げましょう、
という人が現れる。
この人こそ、以前、忽然と姿を消した豆腐好きの学者先生で、
徳川五代将軍綱吉の側用人、柳沢吉保に取り立てられた荻生徂徠だという。
立派になった先生と豆腐屋さんの情に満ちたやり取りに、思わずぐっと来て、
まだ、直前の笑いがひききらないうちに涙が浮かんでくる。
これ。これです。この感じ。
登場人物のひとりひとりが(ちょい役の門番にいたるまで)、
たしかに生きている人間として描ききられているからこそのドラマの深みが生まれ、
さらに、細部まで計算された笑いが全体を覆いつくしている。
師匠立川談志家元が人間の“業”にこだわり、進化させ、
300年の伝統を受け継いだ落語の完成形がここにあります。
そして、それを確かに具現化できる存在が、
立川志の輔であり、立川談春であることを見せ付けられた瞬間でした。
一旦幕が下り、再び幕が上がると、高座に二人。ともに、放心状態。
「オレなら、もっとうまくやる。」と、
師匠談志家元は、きっとそう言ったであろうという二人のお話。
いえいえ、なんのなんの、家元、ご安心召されよ。
ご自慢のお二人のお弟子さんは、間違いなくこのホールの神様に気に入られたようです。
しばらく鳴り止まない拍手が、それを物語っておりましたよ。
もうないであろうと言った、この二人の兄弟落語会。
ぜひぜひ、なんとか、もう一度開催してくださいませ。
あ、これ、ワタシたちからだけのお願いではなく、
フェスティバルホールの神様もそう願っておられますよ。きっと。
(2013年6月5日更新)