ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2014 落語ライブ見聞録@関西』

立川志の輔

その他のオススメ落語公演

『松尾貴史 芸能生活30周年記念
横好き落語会in新神戸オリエンタル劇場』

発売中 Pコード439-954
▼11月8日(土) 14:00
新神戸オリエンタル劇場
全席指定-4000円
[出演]松尾貴史/立川志の輔/桂吉坊/前田一知
※未就学児童は入場不可。車椅子の方はチケット購入前に会場■078(291)1100まで要問合せ。
ローソンチケット■0570-000-407
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『秋の特選落語競演会2014』
発売中 Pコード436-129
▼11月15日(土) 12:00/16:30
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
A席-5000円 B席-3000円
[15日出演]桂ざこば/月亭八方/柳亭市馬/
桂米團治/桂すずめ/桂優々
[16日出演]桂南光/桂塩鯛/桂文我/桂吉弥/
桂まん我/桂團治郎
※通し券は取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
芸術文化センターチケットオフィス
■0798-68-0255
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『桂雀三郎独演会』
発売中 Pコード439-017
▼11月15日(土) 14:00
サンケイホールブリーゼ
S席-4200円 A席-3700円
[出演]桂雀三郎(「けんげしゃ茶屋」「宿屋仇」「わいの悲劇(作・小佐田定雄)」)/桂雀喜(「牛ほめ」)/桂雀五郎(「手水廻し」)
※未就学児童は入場不可。
ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888
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『柳家三三独演会 男、四十にして・・・惑う。』
発売中 Pコード438-939
▼11月16日(日) 14:00
松下IMPホール
全席指定-3500円
[出演]柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『桂雀々独演会』
発売中 Pコード438-285
▼11月22日(土) 14:00
摂津市民文化ホール
全席指定-2500円
[出演]桂雀々
※未就学児童は入場不可。
摂津市民文化ホール■072-635-1404
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『ヤマキ つるべ寄席 ~若手台頭~』
11月15日(土)一般発売 Pコード439-823
▼12月6日(土) 19:00
森ノ宮ピロティホール
全席指定-4500円
[出演]笑福亭鶴瓶
[ゲスト]笑福亭鉄瓶/桂春蝶/桃月庵白酒
※6歳未満は入場不可。車椅子でご来場のお客様はお手数ですが事前にお問い合わせ先までご連絡下さい。
キョードーインフォメーション
■06-7732-8888
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『夢の三競演2014
~三枚看板・大看板・金看板~』

11月15日(土)一般発売 Pコード439-803
※発売初日は店頭での直接販売および特別電話■0570(02)9550(10:00~18:00)、通常電話■0570(02)9999にて予約受付。
▼12月22日(月) 18:30
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
全席指定-6500円
[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶
※未就学児童は入場不可。
夢の三競演公演事務局■06-6371-0004
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『第八回 初笑い 寿限無亭』
発売中 Pコード439-722
▼2015年1月2日(金) 14:00
新神戸オリエンタル劇場
S席-3200円 A席-2200円
[出演]笑福亭福笑/桂雀々/桂春蝶/桂阿か枝/
春野恵子(浪曲)
※3歳未満は入場不可。3歳以上は有料。車椅子の方はチケット購入前に会場■078(291)1100まで要問合せ。
新神戸オリエンタル劇場■078-291-9999
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『桂雀々新春独演会~ひつじの巻~』
発売中 Pコード439-137
▼2015年1月24日(土) 14:00
京都府立文化芸術会館
全席指定-3500円
[出演]桂雀々(「いたりきたり(桂枝雀作)」「愛宕山」)/笑福亭晃瓶(「天狗裁き」)/桂優々(「転失気」)
※未就学児童は入場不可。
オトノワ■075-252-8255
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『落語ライブ見聞録@関西』一覧

【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)

【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)

【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり

『2012年 立川談春見聞録』一覧

【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』

ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会

 

今年も“志の輔らくご”にやって来ました。
昨年『柳田格之進』で度肝を抜かれた、ガッテンの志の輔さん。
もう、なんか、期待が膨らみ過ぎて、やばいです。

まず出てきたのは、志の輔さんの6番目のお弟子さん、志の太郎くん。
昨年もこの会で『子ほめ』を聞いたのですが、
それよりは、登場人物も多くなり、個性も演じ分け、
着々と名人上手への道を進んでいるようです。

さて、待ってました、志の輔さんです。
軽妙な語り口で、マクラが始まります。
季節の風物詩と言いますか、ちょっとした時事ネタと言いますか、
みんながそれなりに耳にしている、でも、すごく気にしているわけではない、
些細で取るに足らないネタ、そんなのを、いじるのがお好きなようで、
今日のトピックスは「文化庁がやっている秋の日本語の調査」について。
「電子レンジを使うことを“チンする”という人が90%を超えた。」と紹介した後、
間髪を入れず「そんなことを知って、何になるんだ。」
絶妙な突っ込みにして、一気に会場と一体化に成功。
「やぶさかではない」というのが、多くの人は「しかたなくする」と思っているが、
実は、「喜んでする」という意味ですよと披露した流れで、
これからする落語も「やぶさかではない」。
ご丁寧にも、マクラにオチをつけて、さ、本編へ。

一席目は新作落語の『親の顔』。
志の輔さんがプロになって初めて創った噺だそうで、
小学校の学級テストがテーマの、まぎれもなく新作落語なのにもかかわらず、
登場人物が八五郎の“八っつぁん”。商売も大工(でぇく)の江戸っ子。変におもろい。
子どもの金太が試験で100点満点の5点という点を取って、
学校から呼び出しを食らった八っつぁん。
その答案用紙に書かれた答えは、
「太郎くんと次郎くんが1/2、1/3ずつ草むしりをしたら、草はどれだけ残るでしょう」
という問いに対して、「やってみなけりゃわからない」。
答えに対して怒るなら、書いた金太を怒ったらいいのであって、
自分が怒られる筋合いはない、と、こちらも変な理屈の八五郎。
しぶしぶ学校に行って、教師と八っつあんと金太の三者面談が始まります。
どの答えも、人を食ったような、小馬鹿にしたような答えなんですが、
金太の説明を聞いていると、それも道理、一理あるという気になってくる八っつぁん。
さらにさらに、その上を行く珍回答で、先生を困らせます。
軽~い感じでテンポよく、笑いを収穫していって、オチ。
小手調べにしては、豊作の一席でした。

続いては、出囃子の間に羽織を着て登場。
来年開通の北陸新幹線にちなんで、地元富山ネタのマクラ。
その昔、急行「能登」で12時間かかっていた東京ー富山間が、
2時間8分で行けるようになるという。
まぁ、志の輔さん、嬉しそう。
そんな電車の話から入っていった噺が、おあつらえ向きの『みどりの窓口』。
みどりの窓口に次々とやってくる、無理難題を吹っ掛けるお客さんたち。
というか、その、無理具合が、
「おるおる、こんなオバチャン!」と「こんな奴は、おらんやろ!」の、
絶妙な中間層で、超庶民で、愛すべき曲者で、ついつい、笑ってしまうのです。
「乗りたい客がいるのに、どうして席が売り切れなの?
スーパーのコロッケは、売り切れたら、すぐに揚げてくれるわよ。」と、こんな風。
お話は、みどりの窓口職員でいることに疲れた主人公の男が、友人を誘って居酒屋に。
昼間の仕返しとばかりに、売り切れたメニュー“ワカサギのてんぷら”に関して、
わめき散らします。
「ワカサギを食べたい客がいるのに、どうしてワカサギが売り切れなんだよ?
スーパーのコロッケは、売り切れたら、すぐに揚げてくれるじゃねぇか。」
と、うまい具合のテンドンです。

いやいや、分かってきましたよ、志の輔さん。
マクラでも言っていた通り、出身地の富山というのは関西お笑い圏で、
この人ってば、実は、根っからの“いちびり”なんですわ。
“いちびり”の分からない、関西以外の方にちょっとだけ説明。
もう、どうでもいいような、ちっちゃいところで、嬉しがって“ちょける”ことです。
“ちょける”が分からない、関西以外の方にちょっとだけ説明。
分かっててふざけたことを言うたり、“けったいな”ことをしたりすることです。
“けったいな”が分からない……って、もうええわ!
って、まぁ、こんなんが、いちびる、っちゅうことです。

さてさて、中入り後は、どんな噺をしてくれるのか、楽しみにしていると、
「義につよい ものにかぎって 金がない」の川柳のフリ。
『五貫裁き』です。
談春さんで聴いたこの噺は、師匠談志家元ゆずりの、人間の業の肯定とオチの裏切り。
http://kansai.pia.co.jp/series/tatekawadanshun/bk6.html(あらすじはこちら)
テンポの良さの中にも、重厚で、説得力のある大家さんのタンカは、
大ネタの風情を漂わすのに十分でした。

ところが、です。
志の輔さんの『五貫裁き』は、軽いんですね。
いや、軽いというより、軽妙、という感じでしょうか。
どの人物にも、志の輔さんの“いちびってやろう魂”が、
うっすらとコーティングされていて、いい感じの軽快さを生んでいます。

なかでも八五郎。
いや、もう、嬉しそうさがほとばしっているんです。
いちびることを任務として課せられたいちびり王子は、
アドリブっぽい間合いや呼吸で次々に笑いを取りながら、
それでも、愛されるキャラクターとして噺の中を駆け回っていました。

今回初めて同じネタを、談志家元、談春さん、そして志の輔さんと聴くことが出来て、
立川流の、圧倒的なキャラクター作りのこだわりを感じました。
しかも、志の輔さんも談春さんも、師匠から受け継ぎながら、
自分が、その噺や、その登場人物に納得しないとやらないという、強情さ、頑固さ。
『五貫裁き』で言えば、談志家元と談春さんが、業の肯定にこだわる一方で、
志の輔さんは同じ噺を、さらりと爆笑話に仕立てて、
心地いい読後感を与えてくれました。ま、どっちも、かなり好きなんですけどね。

終演後、今回は5周年なんでがんばって3席やったけど、
疲れたんで、明日はやっぱり2席でいいのかな、と言うて、締めのウケを取ってました。

富山生まれの富山っ子は、
江戸っ子弁を駆使して江戸っ子落語を生業としながらも、
実は、そのDNAは間違いなく、いちびりの本場大阪で、
水を得た魚のように、いちびり倒して、爆笑を取って帰っていったのでした。

ガッテン!

(2014年10月30日更新)