ホーム > 落研家:さとうしんいちの『2015 落語ライブ見聞録@関西』
笑福亭鶴笑さんの会です。
故六代目笑福亭松鶴師匠の最後から2番目のお弟子さんです。
童顔で若く見えますが、55歳です。ええおっさんです。
“パペット落語”の存在、うわさには聞いてたけど、生で観るのは初めてです。
えらいこっちゃがな!
こりゃ、ちょっとした笑いのクーデターですやん。もう、なんか、無政府状態ですやん。
落語というものが超えてはいけないと思っていた最終ラインを、
スキップしながら鼻歌まじりで、あっさり超えて行って、
向こうの方でこっちを見て、ニタニタしながら手を振っているような、
潔さと力強さと確信犯的な不敵さに満ち溢れてますやん。
で、そのパペット落語が認定されたそうです。“児童福祉文化財”に。
厚生労働省のホームページによると、児童福祉文化財の推薦基準っちゅうのは、
「児童に適当な文化財であり、児童の道徳、情操、知能、体位等を向上せしめ、
その生活内容を豊かにすることにより児童を社会の健全な一員とするために
積極的な効果を持つもの。」ほか、二行。長いわっ!堅いわっ!
つまり、子どもがスクスクと育つために役立つもん、ちゅうことですね。
そんな値打ちもんを“クーデター”とは、失礼いたしました。
さて、その文化財認定公演の中身ですが、
会場の7割くらいが子ども、子ども、子ども。
開演前には、
あっちでお菓子を食べている子ども、こっちでオカンに叱られている子ども、
そっちで走り回ってこけている子ども、と、
ほかの落語会では見られない光景が繰り広げられているのでした。
開演後のステージも目まぐるしかったねぇ~。
一組の持ち時間がだいたい10分で、ぐるぐる変わっていくし、
それぞれの持ち味が凝縮した10分に、子どもたちが次々大喜びしてるし。
くまだまさしの安定感バッチリの小道具ボケで一気に場が温まったあと、
今を時めく8.6秒バズーカ―はさすがの人気者っぷりで、
生で、「ちょとまてちょとまて」なだけで、ワーキャーしてるし、
もりやすバンバンビガロの客いじりも、
“繰り返しがギャグの基本”という原則通りのパターンで笑いを増幅させ、
テンダラーに至っては、超熱演で、筆者の斜め前の男の子なんか、
後半、過呼吸になって、命の危険を感じるくらいに笑ってました。
さてさて主役の鶴笑さんの『紙切り』ですが、
いや、ほんまに、いちいち完成されてるんですよね~。
もちょっとだけ調べてみました、鶴笑さんのこと。
落語だけでなく大道芸を持って世界中を飛び回っていて、
2000年からは拠点を海外に移して活動していたそうで、
2006年には『国境なき医師団』ならぬ、NPO法人『国境なき芸能団』を作ったり、
クーデターどころか、マジで、笑いで世界平和を実現しようと活動してる人ですやん!
かっこよすぎですやん!
『茂造コント』はプチ新喜劇。
ホームであるNGKの舞台で、ギャグ&アドリブてんこ盛りな25分間は、
子どもから大人まで、お客さん大満足の旅館コントでした。
仲入りをはさんで出てきた桂三金さんは、まるまる肥えた自称「落語会の橋田壽賀子」。
虎の皮をかぶって、オリの中に入るアルバイトをする『動物園』というネタを、
筆者が知る限り最短の6分でやりきって、シャッ!と下がっていきました。
いよいよです。文化財鑑賞のお時間です。
ネタは『時ゴジラ』。
『時うどん』と『ゴジラ』の合体版だそうです。
ほらぁ、もう、無政府な感じが漂ってるでしょ。
うどん屋さんに入ってきたお客さん、最初は店員さんとの普通のやり取り。
で、うどんを食べながら見ている店のテレビに映し出されているのが、
『ゴジラ対モスラ』。
一見、普通の着物に袴のスタイルで、「さて、ゴジラがやってきます」のきっかけで、
左足の袴をめくると、スネの部分に緑のパペット、出ました、ゴジラ!
テーマソングを口ずさみながら、どんどん迫ってきます!
紙に描かれたビルを踏みつぶしながら、ズンズンやってきます!
ふと真顔になって、客席を見て、「アホです。」
分かってはるんや!
ひとしきりゴジラが都会を破壊したら、「うどん屋もどるよ。」でズズズズーッ!
あんなところ(左足)にゴジラがいたってことは、
右足にはきっとモスラが潜んでいるはずで、
ゴジラはズンズン進めばいいけど、モスラは飛ぶよなぁ。って、
そんなことが気になりだしたら、もう、次のシーンが楽しみで楽しみで。
案の定、右足から出てきたモスラが活躍し、
なんと、さらに、その先には全く信じられないことが!
頭にモスラの頭をかぶり、腕にモスラの羽をつけ、自らがモスラに!!
飛ぶのか?飛んで行ってしまうのか?
いやいや、それではゴジラとは戦えない。
どうする、鶴笑。どうなる、ゴジラ。
次の瞬間、衝撃の光景が!
鶴笑さん自身が頭をこちらにして高座にゴロンと横になったかと思うと、
両足をすっぽりとゴジラのぬいぐるみで包み込んで、
手前のモスラとくんずほぐれつの大攻防。手に汗握る、白熱の怪獣対決。
「ガオー!ビビビビ!ガオー!ビビビビ!」
“児童の道徳、情操、知能、体位等を向上せしめ、その生活内容を豊かにする”落語は、
もしかしたら55歳のおっさんが、変な格好して高座でのたうち回っているだけ、
のように見えなくもないし。
いやいやいやいや、ところが、これぞ確かに文化財、でした。
ふと見回すと、観ている子どもたちの瞳がキラッキラ!
ウヒャウヒャもあり、キャハハハもあり、フキャキャキャもあり、プフフフーもあり、
文字通り、鶴笑さんの大きな一挙手一投足に、
会場のあっちこっちからいろんな種類の笑い声が上がっています。
あー、子どもたちの笑顔が集まるってことは、こんなに幸せな気分になれるのか、
と、ちょっと感動すら覚えたのでした。
「笑いは健康のもと。また来てね。来年もやるよ~。」と、
どうやら、この公演「夏のファミリー劇場」はレギュラー化されるらしいです。
今年、文化財になって「ゴジラ対モスラ」を演ってくれたので、
来年は、世界遺産にでもなって、
是非「富士山対エベレスト」でも観せてくださいませ!
(2015年9月9日更新)
天満天神繁昌亭
〈枝光・雀々二人会〉
▼9月17日(木) 18:30
天満天神繁昌亭
全席自由-2500円(整理番号付)
[出演]桂枝光/桂雀々/桂華紋
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
チケット情報はこちら
『第41回東西落語名人選』
発売中 Pコード:444-080
▼9月19日(土) 12:00/16:30
神戸文化ホール 中ホール
1階席-5500円(指定) 2階席-5000円(指定)
[12:00出演]柳家小三治/桂福団治/柳家さん喬/月亭八方/笑福亭仁智/柳家三三
[16:30出演]柳家小三治/桂文枝/柳家さん喬/月亭八方/笑福亭仁智/柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]神戸文化ホールプレイガイド
■078-351-3349
チケット情報はこちら
『よしもとの落語会 Vol.4』
発売中 Pコード:445-956
▼9月20日(日) 13:00
三木市文化会館 小ホール
前売指定-2000円
[出演]桂あやめ/桂かい枝/月亭方正/林家花丸
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので、予めご了承ください。変更・払戻不可。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
■0570-550-100
チケット情報はこちら
『大阪ラフフェス!in中之島 6DAYS LIVE
上方落語を10倍楽しく観るワンコイン寄席』
発売中 Pコード:446-229
▼9月22日(火・休) 15:30
大阪市中央公会堂 特別室
自由席-500円
[出演]笑福亭鶴笑/桂福車/桂ひろば
※5歳以上は有料。4歳以下はひざ上のみ無料、但し、お席が必要な場合は有料。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので、予めご了承ください。変更・払戻不可。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
■0570-550-100
チケット情報はこちら
『たびたびさんざ 柳家三三 独演会』
発売中 Pコード:442-648
▼10月17日(土) 14:00
松下IMPホール
全席指定-3500円
[出演]柳家三三
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888
チケット情報はこちら
天満天神繁昌亭
〈第95回 創作落語の会〉
発売中 Pコード:597-700
▼10月30日(金) 17:30
天満天神繁昌亭
全席指定-3200円
[出演]桂文枝/桂塩鯛/笑福亭右喬/桂三幸/桂ぽんぽ娘
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭■06-6352-4874
チケット情報はこちら
『立川志の輔独演会』
9月9日(水)一般発売 Pコード:446-107
▼11月13日(金)~15日(日)
(金)18:00 (土)17:00 (日)14:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-4000円(指定)
シニア-3600円(指定、60歳以上)
[出演]立川志の輔
[ゲスト]和力-WARIKI-
※学生&ユースは取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
[問]京都芸術劇場チケットセンター
■075-791-8240
チケット情報はこちら
『桂雀々新春独演会~さるの巻~』
9月19日(土)一般発売 Pコード:446-121
▼2016年1月9日(土) 14:00
京都府立文化芸術会館
全席指定-3500円
[出演]桂雀々(「どうらんの幸助」「子ほめ」)/笑福亭晃瓶(「上燗屋」)/桂優々(「開口一番」)
※未就学児童は入場不可。
[問]オトノワ■075-252-8255
チケット情報はこちら
『さやか寄席 桂文枝独演会』
10月10日(土)一般発売 Pコード:445-963
▼2016年1月23日(土) 14:00
SAYAKAホール(大阪狭山市文化会館) 大ホール
全席指定-3500円
[出演]桂文枝
※6歳未満は入場不可。
[問]SAYAKAホール(大阪狭山市文化会館)
■072-365-8700
チケット情報はこちら
【其の一】立川談春独演会
【其の二】志の輔・談春 祝祭落語会
【其の三】桂雀々 必死のパッチ 5番勝負
【其の四】立川談春独演会「デリバリー談春」
【其の五】志の輔らくご in 森ノ宮 2013
【其の六】米朝一門会
【其の七】ぴあ寄席 ~あきんど落語編~
【其の八】立川談春独演会
【其の九】三枝改メ六代桂文枝襲名披露公演
【其の十】ぴあ寄席 ~湯けむり落語編~
【其の十一】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(大阪)
【其の十二】立川談春 三十周年記念落語会
『もとのその一』(神戸)
【其の十三】ゆうちょ 笑福亭鶴瓶落語会
【其の十四】志の輔らくご in 森ノ宮 2014
【其の十五】立川談春 三十周年記念落語会「もとのその一」『百年目』の会
【其の十六】志の輔らくご in 森ノ宮 2015
【其の十七】桂文太 ぷれみあむ落語会 in NGK
【其の十八】笑福亭鶴笑の夏休みファミリー劇場~笑福亭鶴笑のパペット落語~
【其の十九】夢の三競演2015~三枚看板・大看板・金看板~
【其の二十】よしもと落語 若手まつり
【1】4月公演見聞録『慶安太平記』
【2】5月公演見聞録『百川』『文違い』
【3】6月公演見聞録『岸流島』『品川心中』
【4】7月公演見聞録『包丁』『紺屋高尾』
【5】8月公演見聞録『かぼちゃ屋』『小猿七之助』『景清』
【6】9月公演見聞録『おしくら』『五貫裁き』
【7】10月公演見聞録『九州吹き戻し』『厩火事』
【8】11月公演見聞録『白井権八』『三軒長屋』
【9】12月公演見聞録『冨久』『六尺棒』
【10】最終回 森ノ宮ピロティホール3周年記念祭 特別公演見聞録『芝浜』