ホーム > チョップリンの話
チョップリン
写真左から小林幸太郎、西野恭之介。平成18年「第36回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞。関西を代表するコントマスターは小学校からの同級生。そのシュールな世界観は、クロウトからの支持も高い。
西野ブログ
『チョップリン西野恭之介 タバコとアイスコーヒー』
いつのまにか再開してます!
小林ブログ
『松竹芸能チョップリン小林のコムデギャルソンや阪神大好き』
『松竹芸能チョップリン小林の告知します。野球』
第1回『仕事』
第2回『愛について』
第3回『喫茶店』
第4回『金銭感覚』
第5回『人間関係…?』
第6回『理解できない』
第7回『クリスマス』
第8回『幸せについて』
第9回『モテを考える』
第10回『凹劇場、総括』
第11回『2011年』
第12回『新生活』
第13回『劇場』
お待たせいたしました。2011年一発目の『チョップリンの話』をお届けします。今回のテーマは「幸せについて」。チョップリンのおふたりはどんなときに幸せを感じるのか、またその反対に「不幸について」もお伺いしています。彼らの“幸福論”をお楽しみください!
--ご無沙汰しておりました。@ぴあ関西です。よろしくお願いします。今回のテーマは「幸せ」にしてみました。幸せを感じる瞬間、それぞれあると思いますが、おふたりはどんなときに幸せを感じますか?
西野「幸せでもレベルがいっぱいありますよね」
--そうですね。では、西野さんの中で最低と最高を教えてください。
西野「幸せを説明するときに最低っていうのもおかしな話ですけど、例えば、暖かい日とか。歩いてるときに風が吹いて春の匂いがしたんですよ。それがちょっとほっこりしましたね。『あ、春の匂いや』って。それがまあ、小さな幸せですね。一番大きいのは、…まだですね。まだ感じてないですね」
--過去に最高だったことはありませんか? こんなうれしいことはなかったなぁ!っていうこと。
西野「……。うわ、全然出てこうへんわ(笑)。えーっと、テニスをやってて、自分でも思わへんようなショットが打てたとき。走っていって追いかけて、バンって打った時に出たショット」
--予想していない、いい動きだったんですか?
西野「はい。そういうときはめちゃくちゃ幸せです」
--それはテニスをやっているときに結構あるんですか?
西野「ここ最近はあんまりですね。過去にやってたときは、『これはええな~』っていうのがありましたね。それもテニスの醍醐味ですね。あと、練習でも何でも、対戦相手と初めてシングルスの試合をする時はうれしいですね。で、勝つっていうのは」
小林「僕は……爆笑を取ったときですね。へへへ」
--どんな感じなんですか? 爆笑を取ったときというのは。
小林「まあ、ほんまに、包まれてる感じ…。その瞬間はほんまに、透明な膜みたいなんが僕をうわ~って包み込む感じがしますね」
西野「そればっかりはね、ボケの人はやめられんのじゃないですか。中毒的な感覚で」
--ちなみに、小林さんはどういう感覚になりますか?
小林「舞台の幕が閉じた後は、スポーツした後みたいな感じ」
西野「『今日はやったった!』みたいな?」
--飲みに行ったときのお酒も全然違いますか?
小林「違う。滑ったときに飲み行く酒と、全然違います」
西野「例えば、ネタでも、一言ポンってボケて、それがどわ~ってウケ出して。そんで、ツッコミがそれについてわぁわぁわぁわぁ言うてるやん。一応突っ込んでるやん。それによってお客さんの笑いも大きくなるやん。その間、ボケは喋らんと待ってるやん。ボケた後。そのときに気分がいいっていうのはないの? 自分が一言、放った後にかぶせで突っ込んでるときの、ボケの人のドヤ顔みたいなん、あるやんか」
小林「ああ、そこまでは考えてない」
西野「ボケて、突っ込んで、どわ~とウケて来ている間、ボケの人は黙ってるじゃないですか。そこがむっちゃ気持ちよさそうやなって思うんですよね」
小林「まあまあ、気持ちいいというより、ちょっと安心しますよね。どっちかっていうとその方が大きいですね」
西野「思ってたツカミでちゃんとつかめたときみたいな、安心やったらわかるけども」
--ボケでウケたときの安心感ですか?
小林「そうそう。序盤でウケたらあとは安心して、余裕が出てくるし、もうちょいたたみ込めるなみたいな計算とかできるし。でも、その気持ちよさに僕は浸ったりはしないですね。次のことに切り替えて、この笑いをどう見せていくかって考えますね」
西野「初めて聞きましたね、そういうの」
--最近で、そんな瞬間は?
小林「最近はあんまりないですね。残念ながら(笑)」
--『あのときの舞台はすごかった』とか、覚えているものはありますか?
小林「あのときの舞台とかですか? 僕、すぐ忘れてしまうんで。笑いとったことは。どっちかっていうとスベったことの方が覚えてますね」
--良いことのほうは忘れるんですか?
小林「あんまり覚えてないですね」
--幸福感だけ残る感じですか?
小林「そうです、そうです」
--では、他人の光景とか、状況を見て幸せだなと感じることをはありますか? 例えば、子供と親が戯れているとか。
西野「僕、それダメですね。それ見てブルーになりますわ」
小林「何でなん?」
西野「わからん」
小林「僕、公園に行くからその光景はよく見ますけどね」
西野「公園とか行くじゃないですか。そこで目撃する子供と親が遊んでる姿、あれがダメですね。僕は」
--ブルーになるっていうのは、悲しくなるんですか?
西野「悲しくなります」
小林「なんで?」
西野「見た感じ、普通の、いわゆるよくいるような、教科書に載るならこの家族っていう感じの人っていっぱいいるじゃないですか。それが教科書っぽくなればなるほど、ブルーになるんですよね。ブルーというか、マジかよ?おい……、ウソつけ……て」
小林「ああ、何となくわかる。新築マンションに住んでる、そこまで若くない主婦、僕より下の人とか見たらちょっとブルーになる」
--それは羨望とかでもなく?
小林「なく。…何やろ、何かブルーになる」
西野「あれは何なんやろうなぁ」
--張りぼてみたいに見えるってことですか?
西野「そういうのもあります。確かに。ほんまに?って思います。でも、あのね、お父さんと子供が2人で歩いている状況。それは何とも思わないです。そこにお母さんが入ってきたら、僕の中でのバランスが崩れるというか。あれ、何なんでしょうね……、見た感じ。ウソをつけ……って」
小林「幸せそうな風景やで」
西野「俺はそれを見ても幸せを感じないですね。全く感じないです」
--なるほど。
西野「まったく知らん人を見て、こっちが幸せを感じるときって、やっぱ僕は……おっさん。おっさんとか、ちょっと変なおばさんとか、おばあちゃん、おじいちゃん。あと、変な子供。電車とかにおる、全くモラルがなく自由に発言している子供とか。やっぱ面白いから、そういうのを見たときは、ああ、ラッキーって思います」
--おじいちゃんも、おばあちゃんも、「変な」がつくんですか?
西野「おじいちゃんくらいになってきたら、「変な」は要らないですね。たまたま電車でおじいちゃんが僕のまん前に座ってたりしたら、『このおじいちゃんはどうやってこの電車に乗ってきたんやろう、こっから何分前に家を出て、ここに来たんやろう』って思うだけで、もう、顔見てたら笑けてくるんですよ(笑)」
--で、いたずらもちょっとしたくなる?
西野「そうですね(笑)。近所のタバコ屋におじいちゃんがおるんですよ。もう、ヨボヨボのフラフラの。で、タバコを注文してお金渡したときに、僕、葉っぱを渡したんですよ。あの、1枚、2枚、3枚、4枚って数えながら。そのときのおじいちゃんの顔。『ふえぇ?』っていう顔がもう笑けますねぇ。それで、『ああ、間違えた』って言うて、すぐ小銭を払ったんですね。その、間違えたって言ったても、『何やねん、お前』って力もおじいちゃんにはもう、ないんですね。葉っぱ出して、『ふえぇ?』っていう顔されて、普通に『ああ、すみません。間違えました』って小銭出して払って。で、タバコを持って帰るときに一瞬、、そのおじいちゃんが『何やこいつ?』っていう、さっきまでのおじいちゃんではない鋭い顔をするんですよ。それで、『あ、最後に何やこいつ?っていう顔した』って思って、『うわ~、めっちゃ可愛いな……』って思いますね」
--そういういたずらって小学生が好きな子にちょっかいかけるみたいな感覚なんですか?
西野「どうなんですかね? でも、勝手ですけど、いたずらするときは、僕の中では一応、愛情がありますよ。相手に対して。小学生の頃なんかは愛情も何もありませんでしたからね」
--小林さん、その時代はご存知ですか?
小林「小学生時代ではないですけど、葉っぱ関係はよく…。公園とかに子供がおったら、葉っぱを食ってるふりするんですよ。『おいしいわ~』とか言いながら。で、子供は好奇心あるから『それ、うまいん?』とか言いながら寄ってくるんですよ、。『うん、むっちゃうまい!』って西野が言ったら子供も同じように葉っぱ食うて、『まずーーー><』って言うんですよ。小学生が『まずーーー><、こいつ変や~!』って言うっていう、そういうことは二十歳の頃にやってましたね」
西野「二十歳過ぎてからも、小林とあと3人、仲ええヤツがおって、そいつらと日曜日に集まって学校のグラウンドでスポーツ大会したんですよ。僕が笛を持って、50メートル走とか幅跳びとか、できる限りの競技をやらせるんですよ。どんな競技をやっても僕が優勝するのはわかってるんで、僕以外で誰が1位かを決めて。『よ~い!ドーン!!!』って言うたら、みんな二十歳越えてるのに、50メートルを真剣に走って僕の方に向かってきたりとか、そんな姿にええなぁと思いますね。最初はイヤイヤなんですけど、幅跳びは小林が1位になったとか、50メートルでは誰でとかって、4人もだんだん楽しなってきて、競技する前に『よーし!!!』とか言い出すんですよ。それが可愛くて仕方がない。最初はイヤイヤやったのに、徐々にテンションが上がってくる4人を見てたら、『ああ、ええ大会を開いてよかったなぁ』って思ったりするんですよ」
--人の頑張る姿を見て。
西野「そう。最初イヤがってたのに、ノリノリになってきてるやんって」
小林「あの時、俺が幅跳びをめっちゃ飛んだから、お前、飛ぶのやめたやろ?」
西野「あれは言うてるだけや」
小林「いやいや(笑)。飛ばへんかったやん。俺より負けるのが嫌やったから。俺、かなり飛行距離が伸びたから」
西野「それはお前を立てたんや。4人の中で小林は幅跳びだけめっちゃ飛んだんですよ。なんかむっちゃおもろい飛び方で。助走はめっちゃ遅いんですよ。『なんや、めっちゃ遅いやんけ、アイツ』って言ってて。わ~~~~~~んって走ってきて、いざ飛んだら、『おお?』って。意外と滞空時間が長い飛び方やって、めちゃ飛距離が長かったんですよ。そんで小林が『おい、西野、飛んでみろや』って言うから、『いや、俺は今日はええわ』と。そしたら小林が『俺にビビっとう。あんな仕切ってやってるくせに、全部の競技勝てると思ってるくせに、俺が飛んだから、あいつ飛ばへんかったで』とか話してるんですよ。はっきり言って飛んだら全然……」
小林「いやいやいや」
西野「立てたんやって。それでまあ、いろんな競技をやったんですけど、だんだんスポーツ大会ではやらへんような競技になってきて。ぼくが壁に登って、ポテトチップを壁の上に置いて。4人のうち誰がそれを真っ先に取れるかを競ったり。4人が下でぶつかりあったり、『やめろや~』とか言うてるのを上から見てるのが、も~、むちゃくちゃおもろい(笑)。『押すな、おい~!』とかってケンカが始まったり。そういうのがむちゃくちゃオモロイですね。『マジか、こいつら!』と思って(笑)」
--小林さんは、乗せられてしまうんですか?
小林「そうですね。動き出したらもう、そこは。みんなもそうですけど」
西野「その4人っていうのが、もともとチョップリンを一緒にやろうって言ってた奴らなんで、動きもめっちゃオモロイんですよ。小林も動いたら何か変でしょ。みんなそれぞれ違う動きがあって」
--そうなんですね。その、小林さんの幅跳びは見てみたいですね。
小林「あれは伸びたな~…」
--予想外だったんですか?
小林「いや、以前から幅跳びめっちゃ伸びるなって思ってて。たまたま、そのときのタイミングとか、跳躍までのストロークがよかったと思うんですけど、ほんま2段階ぐらい、空中でグッ、ググッと伸びて。『こ、これ、どこまで伸びんねん!』ってなりましたね。砂場の範囲を超えるんちゃうかなっていうくらい伸びていったんですよ」
西野「ハイパーオリンピックや」
小林「確かにあのとき、幸せ感じましたわ。ぐい~~~んって伸びていって」
--それ以来、幅跳びは?
小林「してないですね。怖いんで、次にやっても伸びんかったら」
--では、小林さんが幸せだなと思う光景とかはありますか?
小林「………何やろうな……。釣りしてる人を見るのとか。……人のを見てええなっていうのはあんまりないな」
--幸せな気持ちにさせてくれるようなこと。
西野「散歩とかな、よくない? 散歩してて、歩いてるうちにさ、何も考えず、ただただずーっと歩いてる瞬間があるやろ? はっと気づいたら、『わあ、こんなところまで歩いてたわ』っていうようなときとか」
小林「それはないな。ズボン……ズボンを染めたとき…」
西野「出た」
小林「完成度の高さが、も~」
西野「自分に甘いよ、お前。完成度が高いって、お前が染め上げたズボンを見たことない」
小林「自分の思い通りの色になったときと、自分が思ってた以上になるのと、2パターンあるんですけど」
西野「結果オーライみたいな感じ?」
小林「思いどおりになったときも、ものすごい幸せなんですけど、思ってた以上に違う色になったときも向上心みたいなものが沸いてくる。次に染めるための…」
西野「陶芸の世界みたいやな」
小林「ものすごい大変なんですよ」
--染の作業は?
小林「はい。ほんまに。もうね、手が真っ黒になるし、しばらく。混ぜてたら飛び散るしね、染色液が。あっちこっちに」
--部屋の中でしてるんですか?
小林「はい。バケツに入れて」
西野「むちゃ臭いんですよ、お湯に溶かした染め粉の匂いが。もう、工場みたいな匂いがする」
小林「まあ、絵の具の匂いとかと同じかな」
西野「染め続けてもう15、6年経つんですかね、こいつは。買ったばかりの白シャツを、染めてみようかってちょっと思うんでしょうね。で、黒にするって言って染めて、ごっついまだらな灰色のシャツになったりするんですよ。黒シャツは買わないんですよ。あえて自分で染めて黒にする。で、結果、灰色になるっていう」
--染めるのは難しいんですか?
小林「灰色にするのは簡単」
西野「白のものを真っ黒にするっていうのは無理でしょうね」
小林「まあ、ちょっと…。綿じゃないと難しい」
--職人さんみたいですね。
西野「いろんなもの染めてますよ」
--靴でしたっけ?
西野「靴は塗るんですよ」
小林「スプレー(笑)」
--作業をしてるときも、やっぱり幸せですか?
小林「一番そうですね。夜中に陰干しするんですけど、2時間おきぐらいに様子見に行ったりして」
西野「こいつ、ちょっと前に自転車のフレームをもらったんですよ。ドロップの、割とええスポーツタイプの。で、僕、ドロップの自転車に乗ってるんで、『なあ?』っつって、『どんな感じぃ?』ってめっちゃイキって自転車のことを聞いてきたんですよ。よくよく話を聞いてみたら、もらったけども、どうしても色を変えたいらしくて。どんなペンキがええんやろうなと。それやったら知り合いの競輪選手も使っているっていう塗装会社に頼んだろうか?って言ったら、いや、自分でやると。その時点でもう、マイホームどうしよう!?っていうぐらいドキドキしてるんですよ。どうやってペンキを塗って、ピッカピカにしたろうかって。でも、今までも、バイクをキレイに塗り替えるって言うて最終的にはスプレーで塗りつぶして。雑やから、途中でぐっちゃぐちゃになって断念するんですよ。自転車もまたそうなるってわかってるんですけど、本人はのめり込んでてやる気満々で。今までのことも忘れて絶対できると思ってるんですよ。で、東京で仕事があったときに、ライブが終わってホテルに帰ろうとしたら、『俺……夜行で帰るわ』って。『早く帰って、早く色を塗りたい』って。もう信じられないですよ、その意欲が。だって2時間ぐらいの差ですよ、言うたら。夜行バスで帰っても関西には7時前ぐらいに着くでしょ。新幹線の始発で帰ってもたった2、3時間の差なんですよ。でも、『もう、早く塗りたい。早朝から作業し出したら晩には乾くかもしれん』って」
小林「深夜バスにしたら新幹線代がちょっと浮くじゃないですか。それで、いいニスとか、いい工具とかも買えるんですよ。そういうのもあって。……今回はちゃんとやろうと思って、とりあえず早く帰って、ホームセンターが開くまでの時間に下地をちゃんと削って、それからホームセンターに行って、浮いたお金で必要なものを買って、あとは塗るだけにして、日中は乾かす時間に使って、夕方にはできるっていう計画が東京に行く前から既にできてて。とにかく色を塗る」
西野「むちゃくちゃやったな。異常ですよ」
小林「色を塗るっていう執着心がすごかった」
--で、結局、どうなったんですか?
小林「……あの、その、今は放置ですね。ヒヒヒヒ(笑)」
西野「それ聞いちゃダメですよ(笑)」
小林「1月が寒かったんで。外での作業になっちゃうんで。そういうのもあったんで。うん、まあ、暖かくなってからやろうかな」
西野「もう熱が冷めてるんですよ。もういいんですよ。すごいんですよ、熱が冷めたときの投げっぷりが。今まで全部、そうやった。投げ方半端ないんですよ。むか~しな、好きになった女の人に対して、ぐわ~~~~!!!!って行くんですよ。人が1年以上かけて注ぐ愛情を、わずか2日ぐらいでグググ~~~!!っと注ぐんですよ。で、一緒にいたい。ちょっとでも離れたくないって言って、ずーっとくっついてるんですって。何にもしないんですって。ただ、ずっとくっついてるんですよ。『離れたくない、そばにいる間はずっと横にいてほしい』って言って。で、小便も我慢してたから膀胱炎になったんですよ(笑)。『俺がトイレ行ってる間、離れるのがイヤ! だから俺はいい、いい』って言ってずーーっと我慢してたら膀胱炎になった(笑)」
小林「おしっこ何回しても、おしっこしたい感覚が…。何やろうって思って…」
西野「気持ちがぐわっとなったとき、とりあえずぐっと行くんです」
--何か出るんですか? 小林さんの中に。
小林「出ますね、すごい。携帯とかでも、色を変えたい思って手を加えたんですけど、結構すぐ飽きましたね。色塗り替えても完成度がいまいちやったら、何にも思わん。どうでもええわって」
西野「携帯をペンキで塗って、色変えるわって。もうむちゃくちゃになってるんですよ。塗る前はやる気満々なんですよ。で、きったない携帯見せろやっつって、バッテリーのふたをぱかっと開けたら、バッテリーの蓋の裏にね、当時の彼女とふたりで撮ったプリクラを貼ってたりするんですよ。『何やねん、これ~、気色悪いことしとるな~』て(笑)」
小林「クククク(笑)」
西野「そこは普通のことすんねや~と」
小林「携帯は蓋が一番、塗るのが難しくて。蓋がすっぽり入る容器にペンキを入れて、そこにポチャンって漬けたらキレイに塗れるんですけど、いかんせんプリクラ貼ってたから、それができへん。で、結局、蓋だけヤスリかけて塗ったら、いろいろはみ出たりして汚くなって。あとはもうどうでもいいや、とりあえずいてまえってなって」
西野「とりあえずいてまえっていうのがすごいありますね」
小林「プリクラを大事にした結果で」
西野「昔な、買ってきたばっかりのソニー・エリクソンの割とカッコイイ携帯。『渋いな、その携帯』とか話しながら、タバコ吸ってて。『ああ、あああ、あああぁあああ』って言うてる思ったら、携帯のレンズのところにタバコの火種落としてて、『ああああぁあああ』言うとるわけですよ。で、とりあえずカシャって撮ってみたけど、レンズが焦げてるから真っ黒けなんですよ。で、『うわ~~~~~』言うてるんですけど、メールも電話も無傷やから、もうええわって。その居直りがすごいんですよ」
小林「まあ、ええわって思わんかったらどうすんの? もし自分の携帯に火種を落としたとして」
西野「俺はまず、火種が落ちそうなところに携帯を置いたりしない。日々、注意してるわ。お前みたいにならへんように」
小林「めったに落ちへんから。それは…」
西野「確かにホールインワンやったわ。火種。レンズに直撃するとか、もう考えられない。持ってるんでしょうね、何かを。そういうのをいっぱいやらかしますから、飽きずに」
--何でも夢中になるんですね。
小林「そうですね。色を変えるときが一番楽しいですね」
--段取りとか考えてるときもですか?
小林「まず、何か染めるものが見つかったときが幸せですね」
--ああ、染める対象が見つかったとき?
小林「そうですね」
西野「俺が、この俺が染めるに値するものが出てきたとき…」
--伝説の職人が動く感じですね。何でもっていうわけじゃないんですね。
小林「そうなんですよ。頻繁にめぐり合わないですから」。
--塗るのも同じですか?
西野「塗るに関しては、高校のときからですね。ビオレ洗顔とかも、めちゃくちゃ顔に塗ってましたからね、そんなに塗らんでええやんっていうくらい」
--どういう心理状態なんですか?
小林「隠すっていうのがあるんですよね。本当は、古い、中古のもの、汚れたものを上塗りするというか、上塗りして隠す作業っていうのが……」
西野「まあ、全部ひっくるめて簡単に言わせてもらうと『安物買いの銭失い』とはこの人のことですよ、結局は。安いから言って、ネットでよう買い物するんですけど、写真を何枚か見て『これええんちゃうん?』ってぽんっと買うんですよ。まず、携帯ですぐに買えるというシステムがすごい好きみたいで。家におったら届くねんからって。買い物以外の経費がかからんのがええんでしょうね。で、届いてみたら、ソウルが一日でボコーンって取れたバッシューとか。ゴムが劣化してもうてて」
小林「ほんで、バッシューや思うてて買った靴の裏には金具ついてたんですよ」
西野「スパイクやったんですよ。それも写真でちゃんと説明してないから、ナイキのエアフォースか何かと思ったんでしょうね。で、買ってみたらスパイクやって」
小林「でもそれは野球で使えるようになったけど、街でも履きたかった」
--小林さんは特に、良い悪いのふり幅が、広そうですね。
西野「そうですね。ただ、小林に起ったことは、こっち側の『あいつ悲惨やな』っていう悪い印象であって、本人はもういいんですよ。本人の中ではもう終わってることやから。何が悲惨やねんっていう。やってみて失敗しても、俺はもうええねんって折り合いついてるんですよね。『あんなにキレイにしようって言ってたのに、こんなになったやん』っていうことは、こっちの勝手な見解で、本人は納得してるからそこでのストレスはないんですよ。だから同じことを永遠に繰り返すんですよ」
小林「楽しかったことが残るんですよ」
西野「結局、失敗している自分も好きやったりするんですよね。こんだけ続くと。俺が成功するわけがないと思ってる」
--となると逆に成功する日が怖くないですか?
小林「成功させるための工程はわかってるんですよ。でも、それがものすごい面倒臭いんですよ。だから、面倒くさいことをやる人が成功するんですよ、早い話。でも、そこを省いて一か八か、掛けてみて…」
--奇跡を望んでしまうんですね。それを省いても、もしかしたらできるかもしれないと。
西野「やっぱり小林はギャンブルも好きやし、宝くじ買ったりするし、それと同じなんでしょうね。そこが僕とは全く逆ですね。一か八かなんてそんなうまいことあるかいって思うから」
--西野さんはそういうのは全く。
西野「宝くじなんか当たるわけない。宝くじ買うのに並んでる中で、あと千円どうしようかなとか考えるのもどうかと。一億円狙ってくるヤツが何を千円で悩んどんねんと」
小林「でも当たってる人いるやん」
西野「当たってる人もいるよ。でも俺の周りにはおらんし、知らんやん、そんな人」
--一攫千金という言葉も特に興味ない?
西野「全然ないですね。そんなわけないやんって」
--では不幸。自分自身がこれは不幸やなって思うときは?
西野「それはいつもでしょ。ずっとありますよ。悲惨やなって思うときのほうがむっちゃあります。大体そうやないですか。生活もそうですし、仕事もそうですし。俺、悲惨やなって思いますよ。悲惨なヤツなんていっぱいいるんでね。人と比べるものではないですけど、基本、悲惨でしょう、みんな」
小林「ヒヒヒ(笑)」
--では、悲惨がベースにあったとして、それでもやっていかなくちゃいけない。そのモチベーションとか、どうやって上げますか?
西野「モチベーション保つためには、あるときはすっごい適当にならなあかんやろうし。な?」
小林「うん」
西野「みんな悲惨ですから。逆に、悲惨という状態がもうスタンダードになってると思いますよ。こないだ朝4時くらいに、トライアングルの森から電話がかかってきたんですよ。でね、『ちょっと兄さん、お笑いのことじゃないんですけど、話聞いてもらっていいですか。すみません、こんな時間に』って」
--声、暗いんですか?
西野「暗いです。森はその頃、朝までやってる喫茶店で働いてたんですけど、その日、夜10時にバイト先に行ったら文書を渡されたと。それをさっき読んだら『今月の給料は半額しか払えません。この店ももう閉めます。すみませんが、よろしくお願いします』と書いてあると。で、一緒に働いている社員さんに聞いたら、何とも言われへんと。そんで、社員さん曰く、そのとき、森が働いている間に時給は発生してなかったと。このまま働いても時給は発生せぇへん。ただ、朝になったらモーニングが始まるし、忙しなるし、このまま残れるんやったら残って手伝ってくれへんかと言われて、『兄さん、どうしましょう……。僕、残るべきですかね……』って電話かけてきたんですよ(笑)。それがもう、オモロくてね(笑)。お前、何してんねんと。制服に着替えて、時給発生してへんのに働いて」
小林「その何時間か、社員は何も言わへんかったんや」
西野「バイトに入ったときに文書はもらってんねん。で、多分、社員といろんな話をしながら、マジすか!?、マジすか!?ってなって、朝も無給と知ってて手伝うのって『僕、お人よし過ぎます?』とかって」
--それで結局、森さんは?
西野「電話切った後、帰ったみたいです。それがね、最近小林が、ブログで小説みたいなものを書き続けてるんですよ、それを森が読んでるみたいで、僕に説明してくれるんですよ。『勝手に店に来て、勝手に働いてるオッサンの話なんですよ』って。『結構面白いんですよ~』言うてて。小林にも『続き早く書いてください』って言ってたり。で、僕がそのときの電話で『小林の小説のモデル、お前やん!』って言ったら『あっ……、ほんまですわ…』言うてましたわ。小林がブログで書いてるオッサンと森とが、完璧にシンクロしてましたわ」
--そのモデルは架空の人物ですよね?
小林「もちろんです」
西野「『お前やん!』言うて(笑)。その、無利益なことをする滑稽さというか。でもそれを見てて誰も得しないけど、本人が納得してたら、それはそれで幸せなんだろうなとも思いましたけどね」
--その偶然はすごいですね。
西野「すごいですね。森やったんやっていう(笑)」
小林「ちょっとちゃうけどね。森にぴったりですけど、入り口はちょっと違います」
--では、最後に、読者の方やファンの方に向けてメッセージをください。
西野「ここを読んでもらっている方に一番言いたいのは、ライブをやっていきますので、ライブに来れるときはぜひ、ライブに来て、一緒に楽しみましょう。これだけですね。小林が握手で見送ってくれますから」
--あ、そうですね、第12回の凹劇場で小林さん、終演後にお客さんと握手されましたね。
小林「あれはね、全員がやるべきですね」
に「へ~~」
小林「やった方がいいんですよ。あの時は罰ゲームでしたけど、そうじゃなくてやってる人いるじゃないですか。何となくそういう人の気持ちがわかりました」
西野「あれ? 選挙で握手するやん、それみたいな感じ?」
小林「いや、政治家とは違うから」
西野「……ものっすごいイヤそうな顔された。そんなんちゃうんやと。よっぽどよかったんでしょうね、握手が」
小林「一票がほしいとかそういうことじゃなくて、もっと純粋な気持ち。全員やるべきです」
--西野さんも、トライアングルのおふたりも?
小林「そうです。また来てくださいという気持ちを込めて。最初は『何でしやなあかんねん』って思ってましたけど、それが一気になくなりました。握手をしたことで」
--終演後の握手は初めての試みだったんですか?
小林「今までないですね。まあ、Tシャツ売るときだけでしたね。それももう、小銭がほしかったから必死でやりましたけど、そういうのもないですから。うん」
--儲けとか関係なく。
小林「関係なく、次また来てねっていう気持ちが伝わったと思います。まあ、毎月、全員がやったら飽きるからね、誰か一人で」
西野「俺は別に全然いいよ」
小林「全然いいよっていうのはよくない! やってみないと変わらへんから! そう思う気持ちもわかるよ。でも1回やったら違うから!!」
西野「何か……何か幸せな感じするわ~。信じるべくものが見つかった感じ。今、ガンガン勧誘されてますから、握手教に(笑)」
小林「でも得るものがありましたね!」
--いい経験でしたね。
小林「そうですね。一人一人、地道に握手していったら伝わるから!」
西野「でも、握手することがすべてじゃないから」
小林「うん、まあね。でも、まずは握手から!」
年明け1回目の凹劇場が、“小林さんとの握手”で締めくくっただけに、2011年はまたまた握手会があるかもしれません!? こちらにもご期待しつつ、今後もぜひ、凹劇場に足をお運びください!
本コーナーに関するご意見・ご感想を、こちらまでお寄せください。