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今号はチョップリンがもっとも似合う場所、と思われる「喫茶店」について。
チョップリンが見た身近なワンダーランド「喫茶店」をご紹介します!

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PROFILE

チョップリン

チョップリン
写真左から小林幸太郎、西野恭之介。平成18年「第36回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞。関西を代表するコントマスターは小学校からの同級生。そのシュールな世界観は、クロウトからの支持も高い。

西野ブログ
『チョップリン西野恭之介 タバコとアイスコーヒー』

現在休止中ではありますが…
小林ブログ
『松竹芸能チョップリン小林のコムデギャルソンや阪神大好き』
『松竹芸能チョップリン小林の告知します。野球』

ON AIR

『チョップリンの話』一覧

第1回『仕事』
第2回『愛について』
第3回『喫茶店』
第4回『金銭感覚』
第5回『人間関係…?』
第6回『理解できない』
第7回『クリスマス』
第8回『幸せについて』
第9回『モテを考える』
第10回『凹劇場、総括』
第11回『2011年』
第12回『新生活』
第13回『劇場

更新が遅くなってすみません! 様々なテーマに沿ってチョップリンに語ってもらう@ぴあ関西「チョップリンの話」。第3回目のテーマは「喫茶店」。好きな喫茶店、衝撃を受けたお店、そしてバイト先での思い出話など、主に西野さんに語っていただきました。主に西野さんに語っていただいた理由も、対談中に明かします。

 

--@ぴあ関西です。今回もよろしくお願いします。今号のテーマは『喫茶店』にしたのですが、まずは喫茶店の好きなところなどを教えてください。

西野「僕が喫茶店にはまり出したのは、バイトがきっかけで。友達と左官屋のバイトをしてて。若い頃はガンガン肉体労働してたんです。で、その仕事終わりに近所にある『アシベ』っていう喫茶店に通い出したんが始まりです。純喫茶。そこに、キャッツアイみたいな3姉妹がおって、お父さんがマスターなんですよ。三姉妹の真ん中にチナツちゃんというお姉さんがいたんですけど、僕より多分、7つぐらい上の人、ハタチぐらいのときやったから、多分、当時チナツちゃんは27歳やったかな。で、ツレがチナツちゃんに惚れて、しばらくしたらそいつは一人で通い出して。それであんまり僕は『アシベ』には行かなくなったんですけど、そっからいろんな喫茶店を探し出すようになりましたね」

--西野さんの喫茶店好きは、『アシベ』が始まりだったんですね。

西野「はい。『ACB』と書いて『アシベ』」

--結局、そのおツレの方はどうなったんですか?

西野「ツレは長いこと、ずーっと通ってて、結局、お姉ちゃんとちょっと付き合ったりしました。チナツちゃんが毎日、喫茶店の鍵を開けるから、バイトの現場に行く前にちょっとだけ早く出て店に寄って、コーヒーを淹れてもらって、仕事に行ったりしとったみたいですよ。僕じゃないですけどね(笑)」

小林「ヤマネくん」

西野「ヤマネくんやったな」

--小林さんの喫茶店の原体験ってありますか?

小林「ああ、僕も、喫茶店に行き出したのは、現場の仕事を始めてからですね。モーニングとか休憩とかで行くようになって」

--小林さんも肉体労働されてたんですか?

小林「途中、西野と一緒に(左官屋のバイトを)やってました。仕事がものすごいイヤだったんで、喫茶店はすごくオアシスでした」

西野「終わってからも行っとったな。もう、そこの左官屋は硬派で有名な会社で。ジジイの職人さんばっかりいたんですけど、まあ若いときはやんちゃした感じで。で、棒でケツをしばかれたりしましたから。『そんなへっぴり腰で! 女のケツばっかり見てんとちゃんとやれ!』って。『イタイイタイ!!』って言いながらやってたな。もう、しんどかったなぁ、あれなぁ…。その帰りに『アシベ』に行ったな」

--喫茶店って、『アシベ』に行くまではあんまり行かなかったんですか?

西野「ハタチになるまで喫茶店に何回か行ってたんですけど、当時はタバコを吸ってなかったので、タバコの煙が鬱陶しくて、『誰が行くか!』って思ってんたんですよ」

--ああ、忌み嫌う場所だったんですね。

西野「嫌な場所でしたね。くっさいな~っつって。タバコ吸うてるオッサンをずっと横から睨んだりね。18、19歳くらいのとき。何も言わんと30秒ぐらい、ずっと睨んでましたね」

--タバコを吸い出してからは気にならなくなり?

西野「勝手ですが、気にならなくなりましたね(苦笑)。喫茶店はほんま、落ち着きますね。僕は流行ってる、いわゆるカフェみたいなところにほとんど行かないので」

--オシャレなカフェには?

西野「あんなんはイヤですね」

--純喫茶だけですか。チェーン系は?

西野「そういう、ドトールとかは、現場の近くにあったら入りますよ。いわゆる堀江あたりにありそうな感じのところとかにはほとんどいかないですね」

--小林さんは?

小林「ああ、もう、行かないです。喫茶店自体、ほとんど行かないですから」

--え? ……そうなんですか。

小林「一人では絶対、行かないです」

西野「小林は時間つぶしのためだけに行く感じですかね。通天閣の劇場に出てるとき(注:毎週土日、SUTDIO210で開催中の『TENGEKI』)とかね。通天閣のすぐ横に『通天閣』っていう喫茶店があるんですよ。そこに入ったりとかね。

--あのあたり、純喫茶が多そうですね。

西野「めっちゃ多いですね。『スター』っていう純喫茶があるんですけど、『TENGEKI』に出てるときは、僕、いつもそこでメシとコーヒーを食って、2回目の番に出るんですけどね。そこの喫茶店も面白いですね。招き猫とか置いてあるスペースがあるんですけど、誰か知らんけど、そこに小銭を置いて行ってるんですよ。だから、招き猫の周りにむちゃくちゃ小銭がたまってるんですよ。誰かが置いていく習慣を作ったらしくて、置いてても誰も取らへんし。で、僕は店に入ったら必ず、招き猫の周りの小銭をチェックしてるんですよ。それが、僕が見る限りは誰も置いていくヤツはいないんですけど、徐々に増えて行ってるんですよね。あと絶対、来てるオッサンね」

--ある種、都市伝説的ですね。そして、そのオッサンたちっていうのは西野さんたちが行ったら…。

西野「絶対居てます! 4人。どんどん集まってくるんですよ。『おお~』とか言いながら入ってきて。一人は犬を抱いてて。もう常連なんでしょうね。店員さんも何も言わず。で、徐々に4人が集結して行くんですよ」

--そのうちの一人が入ってきたら、続々と。待ち合せしたかのように。

西野「そうなんですよ。でも偶然っぽく。別に『じゃあ、来週な!』っていう約束はないと思います。『おい~!』『おお~!』みたいな感じで、顔を合わせてますよ。で、ちょうど『ケンミンショー』の再放送をやってる時間なんで、それをオッサンらがああだこうだと言いながら見てますわ。バンクーバーオリンピックのときは、『番組をオリンピックに変えてくれ』ってオッサンらが言うて、4人でオリンピックを見てましたわ。あと、その4人のオッサンのひとりがちょくちょく、若い黒人を連れてくるんですよ。その関係性とかも全然、わからへんし。いっつも割り勘やし。黒人も自分の分は自分で出してて。どんな関係なんやろ。」

--オッサンたちは奢ることもなく?

西野「ないんですよ。『お前、あれ、え~……』っつって、カタコトの英語で『お前、何ぼや』とか言って。」

--その黒人の方は、4人と一緒に談笑してる感じなんですか?

西野「いや、姿勢を正して、あんまりしゃべらないです」

--なんとも不思議な光景ですね。『TENGEKI』の昼席って、毎週土日ですし、おふたりは毎回、出られるわけでもないですし。それで毎回会うってすごい確率ですね。

西野「毎回、おっさんらも行ってるんでしょうね、あの時間に。いつ行ってもいるんで」

--向こうも思ってるかもしれないですね。最近、あの兄ちゃんら、いっつもおるなって。

西野「なんかね、オッサンってね、その辺、全然、気にしてないような気がするんですよ。フォルクスもネタ合わせで毎日のように行ってますけど、必すこの時間にこいつが来てっていうのが見えてくるんですよ。ずっとおったら。でも、向こうからしたら、『またこいつら来てるやん!』って思われてるかもしれないじゃないですか。ただ、あんまりそういうのがないねんな。オッサンらって。気にしてないというか、あいつらまたおるなって顔をしないんですよ」

小林「いや、でも、思ってることは思ってるわ。フォルクスの場合は。客が少ないから。4、5人やん」

--じゃあ、その、『通天閣』あたりは人間観察的にも…。

西野「面白いですね。ジジイとかね。ジジイあたりは純喫茶に行ったらいますからね。ちっさ~~い声で何かブツクサ言うてたりね。面白いですね」

--純喫茶って、どういう系統ですか? その町の住人たちが行くようなところと、昔からあるようなクラシック系とか。

西野「両方ですね。個人でやってるところも行きますし。『風車』っていう、地元にある純喫茶。あれもええ感じやったなぁ…。奥に入っていったらちょっと湿気くさいんですよね。で、客も誰もおらんしな。店員さんも全然話しかけてこうへんおばちゃんやし。まあ、なくなりましたけどね」

小林「あ、なくなったんや」

--小林さん、あんまり喫茶店に行かないんだったらアレですね、この取材は…。てっきりお好きなのかと思ってました…。

小林「1回、三宮のオシャレなカフェに入って、トイレ詰まらせてもうて…。そんなことがあって…」

--そのお店には…。

小林「二度と行ってないですね」

西野「僕もこないだ、ある喫茶店のトイレに行って、詰まらせてもうたわ。ほんで、詰まってるとは知らんと水を流したら、ドゥ~~ンと水かさが増えてきて。これはどうしようか!と思って、ロッカーみたいなところを開けたらトングみたいな長いのんが出てきたんで、それで便器をガコガコガコガコ~~~!!!ってやったんですよ。でも、ぶわ~~って水かさどんどん増してきて、もうこれであかんかったら逃げたろって思ったんですけど、ギリッギリのところですーっと引いていって。何事もなかったかのようにその後、コーヒー飲みましたね」

--おお~、危機一髪。水害映画なみのスペクタクルですね。小林さんは、オシャレカフェでトイレ詰まらせて以来、オシャレカフェ自体にも行ってないんですか?

小林「あんまり…。オシャレカフェはちょっと落ち着かへん」

西野「そうやねん」

小林「やっぱ、静~なところがいいですかね」

西野「情報がいっぱい入ってきて忙しいんですよ。若いヤツがいっぱいおったら。耳と目が忙しい。『もう、何やねんあいつら、しょ~もない話をして…』とか思ったりしてね。オッサンらのしょーもない話はおもろいけど若者やったらね…」

小林「どうでもええ」

--純喫茶の落ち着きが。

西野「いいですね~」

--お気に入りのお店はありますか?

西野「僕、好きな喫茶店は『にしむら珈琲』かな。『にしむら珈琲』はいいですね。『にしむら珈琲』があったらとりあえず行きますね。ほかにも薦めたい喫茶店はいっぱいありますね。京都の『イノダコーヒー』も好きですね。あと何やろ…。あ! もうね、もうなくなったんですけどね、京都にあった『クンパルシータ』。ここはおもろかったですよ! 四条川原町にあって」

--あ! めっちゃおばあちゃんのお店ですか。

西野「知ってますか!? 『つ』の字のおばあちゃん。『く』じゃなくて、背中が『つ』の字です。そんなおばあちゃんがカウンターの中にいるんですけど、『つ』の字やからお店に入ったときは一瞬、誰もおらんって思うんですよ。ほんで、カウンターをぐっと覗き込んだら、『つ』の字のおばあちゃんが『いらっしゃいませ』って言うんですよ。で、アイスコーヒー、2時間待ちとかありましたよ。おばあちゃん、首も垂れ下がってるから、しゃべるときは自分の手であごをグインッと上げてしゃべるんですよ。で、「今日、アイスコーヒー、できません」って言われる。ほんでまた、あごから手を離して、顔がガク~~ンと下がるっていう。2時間待って出来へんのか~!って(笑)。そのときは、来店2回目だったんで、まあ、遅いっていうのもわかってたから、まあ、ええかと。面白いからええわって」

--その2時間、おばあちゃんは何してたんですか?

西野「あのね、途中で店を出ていったんですよ。この段階で買出しか?って思ってたら、ちょっとして帰ってきたら、葡萄買ってきてました。葡萄、今いるか!?って(笑)。早くアイスコーヒー作ってくれよっていうね。待ってる間、おもろいからちょいちょい、カウンターに見に行くんですよ。『まだですかね~?』って聞いたら、氷をね、ザックザック砕いてましたわ。妖しい館の中で、氷をザックザック。『今、アイスコーヒーで使う氷を砕いてますから、もう少々お待ちください』って。アイスコーヒーは全然、できへん。あのお店は僕の喫茶店史上、一番おもろかったですね。衝撃的でしたね、『クンパルシータ』は。僕、『探偵!ナイトスクープ』にも依頼出しましたからね。素人として出してくれって言うたんですけど、スタッフの人に止められました。ただ、『クンパルシータ』には食いついて、『ちょっと調べてみるけど』とは言ってましたけどね(笑)

--それにしてもおばあちゃん、そんなお体が曲がっていらっしゃったら、だいぶご高齢ですよね。

西野「あのおばあちゃんはほんま、すごかったですよ。店では、タンゴのレコードをずっとかけてるんですけど、で、レコードが終わると止まるじゃないですか。そしたらさっと出てきて変えるんですよ。新しいレコードに。そんでまた、さーっとカウンターの中に消えていくんですよ。レコードに関しては早かったですね。あとね、2回目に行ったとき、入った瞬間姿が店内に見えなくて。カウンターの中やろって思ってパッと見てもいないんですよ。また買い物に行ったんかな~って思ってたら、僕のすぐ目の前にあるテーブルの下にすっぽり入り込んでたんですよ。どうも椅子に座ってたみたいなんですけど、背中が『つ』の字過ぎて、イスに座ってもテーブルの下に入り込む形になったみたいなんですよね。そこから『いらっしゃいませ』って声が聞こえて…。おおお!となりましたね」

--それは衝撃的ですね。小林さん、何かそういう、衝撃的なことは…。

小林「僕はあんまりないですね…。今の話以上のものは間違いなくないですよ」

西野「小林は一時期、マンガ喫茶によく行ってましたね。くつろぎのスペースとして考えるから、同じような値段やったらマンガ喫茶で寝とくわっていうふうに途中から切り替わってきましたね。僕が喫茶店に誘っても、いや、マンガ喫茶に行くからって」

小林「今はマンガ喫茶にも行かんようになりましたね。不衛生っていうイメージを抱き始めて…(笑)。普通の喫茶店の方に戻りましたね。まあ、行くとしたら基本、寝たいときぐらいですかね。喫茶店やったら寝れないから」

--500円ぐらいで寝れるとなったら安いですよね。

小林「飲み放題やし」

西野「飲み放題、好きやな~」

小林「僕はドリンクバーが好きなんですよ。『フォルクス』の横に『ビッグ・ボーイ』っていうファミレスがあるんですけど、そこはドリンクバーなんですよ。やから、そこに行こうやって言っても、西野が『フォルクス』から動かへんから…」

西野「喫茶店の条件に、落ち着けるかどうかっていうのがあるので。いまさら『ビッグボーイ』って。で、『フォルクス』のアイスコーヒーって、ほかのファミレスに比べるとおいしいんですよ」

--今回のテーマはアレですね、小林さんは特になしって感じですね…。すみません、お題を選び間違えました…。

小林「喫茶店は特に行かないですからね…。わざわざ家を出て、喫茶店に行こう!とは思わないですね」

西野「すごいな、偉いよな、お前。すっとな、自転車で行って、コーヒーとか飲まへん?」

小林「それは……コーヒーをブラックで飲む人の言うセリフちゃう? 砂糖とミルクいっぱい入れて、あま~いの飲む人が言うことではないやろ」

西野「それは関係ない(笑)」

小林「ブラックで香りとか楽しむ人が言うことやと思うけどな」

西野「よう驚かれるんですよ。後輩とかとちょっと行こか~って喫茶店に行ったら、よう言われます。『あれ? 喫茶店、めっちゃ好きやって聞くんですけど、結構……フレッシュもシロップもガッツリ入れるんですね』…って」

--(笑)。ちょっとコーヒー通みたいなイメージがありますけどね。

西野「コーヒーの豆とか、種類とか、あんまり知らないんですよ。もう、味で好きか嫌いか。あと、場所が落ち着くか」

--多少まずくても落ち着く方を取る?

西野「味がうまいところって大体、落ち着けるんですよ。トーストがめちゃおいしかったりね」

--そうやってフレッシュとか、シロップとか入れるそうですが、だからといってカフェオレは頼まないんですか?

西野「カフェオレは頼まないです」

--その違いはあるんですか? 結構フレッシュとか入れてたら、限りなくカフェオレ色に近づいていくと思いますが。

西野「カフェオレはいいです。アイスコーヒーですね。実はね、ブラックもね、何回か挑戦してるんですよ。で、昔よりわからんこともないんですよ。あ、これもおいしいなとはちょっとは思うんですけど、やっぱり…」

--なるほど。あんまり喫茶店に行かない小林さんですが、そんな中でもお好きな店はありますか?

小林「『丸福珈琲』は好きですね。本店。あそこぐらいかな、ちょっと行こうかなって思うのは」

西野「丸福な」

--雰囲気とかも?

小林「雰囲気と味と。アイスコーヒーに元々砂糖が入ってるでしょ。その甘さがちょうどいいんですよね」

西野「甘すぎと思うけどな」

小林「甘すぎぐらいの方が疲れが取れるんですよ」

--小林さんが率先して行くのは、『丸福珈琲』ということで。

小林「あと……『ありんこ』…」

西野「『ありんこ』な!お前、よう思い出しなぁ。尼崎で一緒に働いていた喫茶店があったんですけど、その2軒横が純喫茶の『ありんこ』で。バイト終わってから、ちょっと休憩しよかって『ありんこ』でコーヒー飲んでたっていう。お店のおばちゃんも普通に、ああ、もう、仕事終わったん?とか言ってて」

小林「仕事中も行ってたよな。ちょっと隣の味と比べてみようとか言って。10年以上行ってないし、行ってみたいな」

西野「俺、前、行ったで。ツレがあの辺に住んでて。僕らが働いていたところはつぶれてて、『ありんこ』はまだあって。お店のおばちゃんに『覚えてる?』みたいなこと言うたら覚えてくれてて」

小林「へ~」

西野「あの、僕らが働いてた喫茶店もな、『魁!男塾』に出てくる富樫源次っていうキャラクターそっくりなオッサンがよう来てたよな。学ラン着て、学帽かぶって。めちゃめちゃ怖かったですよ。あの人はあかん。多分、40代…、いや……今の僕らぐらいやったかもしれないです。バリ怖かったな~!」

小林「あれ知ってる? 年末にカランコロンって入ってきて、なんか変な置き物を持ってきて、『これ、毎年、2万6000円で買ってもらってるから買ってくれ』って言ったん」

西野「あの人が?」

小林「うん。人の置き物……仏像みたいなんを」

西野「仏像で2万6000円ってまた安い感じするなぁ」

小林「仏像っていうか、木彫りの人形。買わされた。買わなしゃーない」

西野「怖いから」

--そこはよくトークに出てくるお店ですか?

西野「この店と、僕の家の近所の方と。両方ともとんでもない店やったんで。近所の方は「シュガー・シュガー」っていう店で。バイトの募集も何もしてなかったんですけど、ここ入っていったろかなっていう感じでパーンと入ったら、客が誰もおらんくて。で、『シュガー・シュガー』のママがね、新聞読みながら『いらっしゃいませ~』って言って。『すみません~、バイト募集してないですよね?』『してませんけど!』。それで、『あ、そうですか、ちょっと……いいですかね』って言ったら、ママがこっち見て3秒くらい黙ってから『一旦、座ってください』『はい』『ここ、かけてください。何か飲みますか?』『あ、じゃあ、アイスコーヒーください』。そんで、『じゃあ、明日から来てください』って(笑)。それでバイト決まってん」

小林「そうやったん?」

西野「そうや。俺、履歴書も何も持ってないで。電話番号だけ。ママは『明日からですね、いいですよ、いいですよ』って。で、時給も全然決まらずに働き始めるんですよ。ほんでね、3日目くらいかな、『時給、どうします?』『いや、それはママが決めてくださいよ』『厨房やからな~、850円とか……どうですか? 900円の方がいいですか?』って適当なんですよ。ほんで、僕が、『いや、900円とかの方がいいですけど、別に850円でもいいですよ』って言ったら、『じゃ、とりあえず850円で行ってみましょう』って決まり。むっちゃアホなんですよ、ママ。あのね、アホなんですよ、ホンマに。暇なときにね、ウェイトレスの子と僕が厨房でしょ。で、ママがフロアにおって。14時くらいむっちゃ暇なんですよ。で、みんなボーっと立ってたりするんですけど、ママは新聞読んでて。で、急に新聞をバタバタバターーーってキレた感じで畳んで、ウェイトレスの子に『シャッター下ろしてください! 閉めましょ! シャッター下ろしてください! ムシャクシャする!!』って言うんですよ。『いやいや、急に閉めたり開けたりしたらいかんで、ママ』『いいです! 今日は14時までにしてもう、終わりましょ! 閉めましょ! 」って言ってその後、『みんなで5時までポーアイ(ポートアイランド)に行きましょ!! ジェットコースター、乗りに行きましょ!!!』って。そりゃ、オモロイから行ってきましたよ。女の子とママと3人で行って。ママの車の運転が何よりも怖かったけど。ブンブン飛ばして」

小林「入場券とか、全部出してくれんの?」

西野「出してくれたよ。『ムシャクシャしてますからね! パーっと行きましょ!』って」

小林「それは時給は発生してるん?」

西野「時給は14時まで。ほんで、ブランコが上空でくるくる回るやつあるやろ、あれ見て、『あれ、面白いです。あれにふたりで乗ってきなさい! カップルです! ふたりで乗ってきなさい!』って言って、バイトの女の子と俺が乗せられて。で、ブランコがグイーンと上がっていって、下の方を見たらママが、顔が半分くらい隠れるでっかいサングラスかけて、ほとんどテロリストみたいな格好で、これまたものっすごいデカイソフトクリームを食べてて。こっちがグルグルまわってる間、ずっと食べてたわ」

--ママはジェットコースターとか、アトラクションに乗らないんですか?

西野「あの人は乗らないんですよ。『私は結構です。若いふたりで乗ってください』って言って、ジェットコースターでもまた上からママ見たら、下のベンチにじっと身を潜める感じで座ってましたね」

小林「ママは結局、何も乗ってないん?」

西野「ママは乗ってない。あとね、また別の日なんですけど、ママと仲がいい、昔からいる店員にオキさんっていうおばちゃんがいて、結構朝から忙しい日にふたりで入ってるときに、『恭くん! ちょっとね、出ます! いいですかね、(店を)出ても。一人で大丈夫ですか? 今、オキさんを連れて行くところを思いついたんですけど! ちょっといいですか』って言い出したんで、もう鬱陶しいから、『ええ、ええ、もう、俺がやるから』って言ったら出て行ったんですよ。その日、そっからほんまに忙しくて。ランチもむちゃくちゃ忙しくて」

--帰ってこないんですか?

西野「全然、帰ってこうへん。そしたら15時半ぐらい、ようやく落ち着いて初めてのタバコを吸えるぐらいのときにふたりがカランコランカランって帰ってきて。『いや~、オキさん、飛ばしますね~!』『ママには負けますよ!』って言うてるんですけど、どうやらゴルフの打ちっぱなしに行っとったんです。このオキさんっていうおばちゃんもアホでしたよ(笑)。ランチのとき、食べ終わったおっちゃんに何か言うてるんですよ。で、おっちゃんが、『いや、もういいです! いいです! いいですよ!!』って言うてて。そしたらオキさんが、『なんで? いいですよ! そんな遠慮せんと!』『いや、いいですって、お構いなく!』ってちょっとモメてる感じなんですよ。で、僕が行って『どうしたんですか?』って聞いたらオキさんが、『いや、この人な、ご飯残してるから、おにぎりにして1個持って帰るか?って聞いても要らない!って言うから……。恭くん、昆布でも入れてあげて、おにぎりにしてあげて!』って。おっちゃんも、『僕、いいですから、そんなん~』って。要らんから残してるだけやん、何でオニギリにして持って帰らなあかんねんってその表情が明らかに言ってて。オキさんも 『オニギリにできるぞ!』ってちょっと東北訛りで言い続けて。全然、引かないんですよ。」

--お二人とも個性的ですね(笑)。そのバイト先はどのぐらいいたんですか?

西野「1年以上、いましたね。結局お店はつぶれたんですけど、14時に閉めたり、急に夜9時まで営業したり。ランチを急にやめたり。そのあとまた急にステーキランチ始めたりとか、もう発想がすごいんですよ。時間帯もころころ変わるし。それで客も離れていって。ほんで、最終的に『恭くん、ちょっと話があるんですけど。……あの、この店、知ってのとおり暇です』『ああ、もう、わかるよ。ほなら俺、辞めようか?』『いや、あの、辞めるというか、……家で待機するっていうのはどうですか?』『えーっと……、どういうことですか?』『あの、私、これから一人でやっていくんですけど、ランチ、忙しいなって思ったときに恭くんに1本、電話入れます。それで、いけるときは来てください!』って言われて。『それは無理ですよ~!』って言ったら、「無理? あ、無理か……? そうかそうか……」って。とんでもない仕事の話を持ちかけてきましたからね。デリヘル嬢やないねんから、待機って何やねん(笑)。『ほかの仕事をしてくれても別に構いません。ただ、こっちがやばいときに1本電話していいですか? 1本電話するのもダメですか?』って。それやったら辞めますわ~って言って、そこのバイトも終わって」

--小林さんは、そのお店は行かれたことは?

小林「ありますね。その店でネタ合わせとかしたな」

西野「ああ、4人でネタやってるときですわ。そこの喫茶店の営業時間が終わってからママが店を貸してくれて」

--4人って4人組だったんですか?

小林「4人組。2丁目劇場に出ようかって言ってて。素人の時ですね。その喫茶店で夜中、ネタ合わせしてましたね」

西野「貸してくださいって言ったらママも、『ああ、いいですね! 面白そうですね!  面白そうなこと、私、大好き! どうぞ!』って貸してくれました」

--ああ、いい人ですね。

西野「いい人といえばいい人ですね。ま~、アホでしたけど(笑)」

 

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