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チョップリン
写真左から小林幸太郎、西野恭之介。平成18年「第36回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞。関西を代表するコントマスターは小学校からの同級生。そのシュールな世界観は、クロウトからの支持も高い。
西野ブログ
『チョップリン西野恭之介 タバコとアイスコーヒー』
現在休止中ではありますが…
小林ブログ
『松竹芸能チョップリン小林のコムデギャルソンや阪神大好き』
『松竹芸能チョップリン小林の告知します。野球』
ケーブルテレビ
『30秒ケータイ投稿番組「HAMPUNマスター」』
第1回『仕事』
第2回『愛について』
第3回『喫茶店』
第4回『金銭感覚』
第5回『人間関係…?』
第6回『理解できない』
第7回『クリスマス』
第8回『幸せについて』
第9回『モテを考える』
第10回『凹劇場、総括』
第11回『2011年』
第12回『新生活』
第13回『劇場』
様々なテーマに沿ってチョップリンに語ってもらう@ぴあ関西「チョップリンの話」。第2回目のテーマは「愛について」。愛とは何か? そこについてずばり、答えを導きだした(?)対談となりました。
--連載2回目となります。どうぞよろしくお願いいたします。おふたりに対するごく個人的な印象なのですが、「愛」という言葉があんまり結びつかず、あえてそれをテーマにしてみたいと思いました。よろしくお願いいたします。
小林「愛ですか…。まあ、“あ”から始まる言葉は神の言葉やからね」
西野「ん?」
小林「“あ”から始まる言葉は神の言葉。“あい”って50音の最初の2文字やろ。あの……、宇宙エネルギーを注入しに行ったときにさ、俺…」
西野「ああ、うん、その話な。もうちょっと説明してくれてもいいかな?」
小林「宇宙エネルギーというものを注入しに行ったんですよ。ロケで。それには注入方法があって、“あ”っていう言葉をいっぱい書いた敷物があって、岩盤浴みたいな感じでその上に寝っ転がるんですよ。“あ”っていう言葉がすごいパワーを持ってるらしく、その上で寝ると体の悪い部分とかが治ってくるっていう。なんせ“あ”から始まる言葉はすごいパワーを持っている。だから“愛”という言葉も、すごいパワーを持っているんですよ。……それを1000円でやってくれました」
西野「“あ”って書いてる敷物に仰向けに寝かせられて、さらに“あーーーー”って言わされるんやろ」
小林「そうそう。“あーーーー”って」
西野「京都の何や山奥にあるんですわ。先生がふたり、いるらしいんですけど、お名前は?」
小林「ヒカルコ先生とヒミコ先生です」
西野「ヒカルコ先生とヒミコ先生がいろいろやってくれるそうです。で、おっぱいがおっきかったと」
小林「おっきかったな、ふたりとも。その辺に、さらに愛を感じますね」
--宇宙エネルギーを注入して、何か変わりました?
小林「僕、肩こりがひどいんですけど、治療が終わったあとにすーっと取れて楽になりました。で、塩を500円で売ってるんですけど、“これを1ヶ月間、持ってて”って持たされました」
--その塩は…?
小林「市販の塩です。スーパーに売ってあるのと同じ商品でした。それがいっぱい置いてあって」
西野「何でそんな、普通の市販の塩にパワーが…。盛り塩? 食塩?」
小林「うん、食塩。それを1ヶ月間、持っててくださいと」
西野「粉薬みたいな感じでビニールとかに入ってんの?」
小林「うん」
西野「お前……、そんなん持ってたら危ないぞ!」
小林「何で?」
西野「勘違いされんぞ!」
小林「何と?」
西野「愛なんか微塵も入ってない薬と間違えられんぞ。それは厄除けみたいなものなんかな? 仰々しく白い半紙とかに包まれてるわけじゃないの?」
小林「渡されるときは包まれてんねんけど、切れた場合のストックとして、スーパーとかに売ってある特定の塩を買ったらいいですよって言われた」
西野「へえ~、そんなん余裕で見せてんねや。食塩なんて渡されてもな~って俺なんかは思うけどな」
小林「まあまあ、塩やからね。どの塩でも一緒やろっていうのがあるかもしれん」
--今は持ってないんですか?
小林「今は持ってないです」
--パワーが切れた感はありますか?
小林「ないですね(笑)。まあ、でも、肩こりは治りました」
--では「愛」を描いたものといえばコレ! というものがあれば、教えてください。
小林「フランス映画の『トリコロール』ですね。あれも愛の話です。昔、見たけど、さっぱり意味が分からんかった。赤白青のフランス国旗があるじゃないですか、その色のテーマに基づいた愛の話……やったような。あと、昔、僕が小学生くらいのとき、ヤクルトに相っていうピッチャーがいたんですよ。背中の文字がローマ字で“AI”」
西野「愛を背負って投げてんねんな」
小林「そんなふうには見えへんかったけどな(笑)。ノーコンやった」
西野「ああ、不器用なんや。不器用な愛やな。ストレートは強いん?」
小林「ストレートは、まっすぐで」
西野「ああ、なるほどね。まっすぐ押していく」
小林「でもノーコンやねん」
西野「不器用やねんな……」
小林「的はずしよんねん、相は」
--西野さんは何かありますか?
西野「スペイン映画の『トーク・トゥ・ハー』とかね。あれは、ほんますごいと思います。これ、めちゃ有名な映画ですけど、これは…これはね…すごいですよ、本当に。看護士が主人公で、男なんですけど、昏睡状態の女性をずっと世話してるんですよ。実は、その男はその女の人にめっちゃ惚れてて。で、ある時、女の人の様子がおかしいってなって、検査したら妊娠してるんですよ。それは、その看護士の男との子どもなんですよ。それくらいカーッとのぼせ上がっている人の話なんですけど。男は自分だけがバーっと考えて、突っ走ってまうわけでしょ。でも患者さんの方は何にも思ってない。ストーカーみたいですけど、それも愛のパワーですよ。歪んでいるんじゃないですか、愛は」
--そのお話、最初の方は無償の愛だなって思って聞いていましたが、後半は全然違いますね。そこがなんとも…。
西野「そうなんですよね、全然違うんですよね。ストーキングのつもりじゃないですよ、本人は。愛するがゆえの行為なんでしょうけど、異常に見えるんですよね。そこは……、難しいですね」
--では、「コンビ愛」とよく聞きますが、コンビ愛ってなんだと思いますか?
西野「う~ん、それはあんまり分からへんなぁ。ただ、よくテレビとかでコンビ愛を見せる番組があるじゃないですか。ああいうのって、そうせなしゃあないっていう、感動させなあかん感じになってるじゃないですか。あれはちょっと…。まあ、それを見てむっちゃ喜ぶ人のほうが断然多いんでしょうけど、それがね、ちょっとムカつくんですよね。ええ話をしたら、見てる人が感動するっていうのが腹立つんですよ」
--例えば、幼い子どもの感動系とかも? いわゆる“おつかいモノ”とか。
西野「なんとも思わないですね、僕は。それだったら、ずっと引きこもってるおっさんにバーンとおつかいに行かせるほうが、まあ、感動はしないでしょうけど、面白いですよね。小林のピンネタにも、そういうのがありますけどね。小林はそれで(『R-1ぐらんぷり2009』の)準決勝まで行って。僕は3回戦で落ちたんですよ。でも、まあ、小林が準決勝に行ったんでよかったなっていうのがちょっとあるんですよね。……これはまさにコンビ愛じゃないですか!?
--そうですね、自分は落ちたけども。
西野「自分は落ちたけど、小林が行ってくれたら、まあ、ええわっていうのがコンビ愛じゃないですかね~、これ!」
--そこにはいやらしさとかもなく、純粋に。
西野「そうですね。3回戦は僕のほうが出番が早かったんですけど、普通に頑張ってくれって思いましたけどね、ええ。すぐ帰りましたけど。見届けることもなく。見届けるのも、ちょっと恥ずかしいですしね、もう。だって、他の芸人さんってほんま、相方に興味ないよな? 相方がピンで何やってるかとか全然、我関せずみたいなところがあるんじゃないですか。そういうのがあるから、僕も帰りますけど。そういう風潮がなかったら……客席で見るんちゃいますかね~! アイススケートの監督みたいな感じで見るんじゃないですか!」
--そんな西野さんのご発言に対して、小林さんはどう思われますか?
小林「僕は見てましたからね、3回戦のときの西野のネタは。……まぁ……後半、かわいそうやなって…(笑)。前半はウケてたんですよ。そしたら、あれ? あれ?って思いながら見ることに。でも、どうせやったらコンビで準決勝に行ったほうが得なんちゃうんかっていうのがあったんで、行ってくれって思ってたんですけどね」
西野「ハハハ!」
小林「僕は余裕があったんで、2回戦から行けるやろうなって思ってました」
西野「それは言うてましたからね。ネタにかなり自信があったんじゃないですか」
小林「だから、初めて西野を心配しましたね。大概、逆なんですけど。普段は、僕が一人でやるのを西野が心配するんですけど。今回はちょっと僕のほうに余裕があったんで」
西野「……今、ものっすごい調子に乗って言ってるんでしょうね、小林は。『R-1』に参加して、僕は3回戦で落ちた。小林は通った。この、誰もがわかるこの差を今、ガンガン、アピってきてますよ! 横からビシビシ、感じます!」
小林「いや、今、調子に乗っとかんと、この先乗るときがないからな」
西野「僕がさっき、頑張ってくれっていう感じで、これは愛じゃないですかみたいなことを一応言うたんですけどね、思いっきり乗ってきましたね。ただ、これはもう、仕方ないですけどね」
小林「やっぱでもなー、通ってほしかったなー!」
--私には小林さんがアピッてきている、その電波が伝わってこないです。
小林「そこが僕のいいところです」
西野「ひとつだけ言わせてもらっていいですか。コイツほど…コイツほどいやらしい人間はいないですよ。それだけは言わせてもらいます。コイツほどいやらしい人間はいない」
--小林さんを凌ぐほどのいやらしい人はいまだかつていないと。
西野「そうですね。みんな、騙されてるなって思いますよ。まあ、これは企業秘密みたいなところがあるんであんまり言えないんですけども。テーマが愛なんでね、嘘はつけないなと」
小林「嘘も愛ですけどね」
西野「やっぱりねぇ、小林は異常なところで冷静なんですよ。むちゃくちゃ奥のところでちゃんと見てるコイツがいるんですけど、それは僕以外はわかってないんですよ。だから、“ああ、バカにしてきたらええやん。うんうん、ええよええよ。それでお前が楽しいんやったら何ぼでも言って。はい、はい。もういい? 気が済んだ? はい、じゃ帰るわ。おつかれさん”って、こういう感じなんですよ。興味本位に近づいてきた人に対して」
--ああ、それは怖いですね。
西野「怖いでしょ~~。今、横で笑ってますけどね、この笑いも嘘なんでしょうね」
小林「これは嘘じゃないよ(笑)。そうなったら全部が嘘になるやん」
--人がバカにする態度を丸ごと飲み込むっていうのも、すごい深いところで、誰にも触らせない自己愛があるからこそのことで、そこに触れられなかったら別に何を言われてもいいっていう、小林さん像はそんなふうに見えました。それが全然、表には出ていないですね。
西野「全然、出てないですね。ほんま、究極の嘘つきじゃないですか? ええ意味で。僕なんか素直やからすぐバレてしまいますけどね」
小林「俺もすぐ騙される。意外と騙されるよ」
--詐欺師? 詐欺ではないかな。
小林「まあ……フェイクですね、すべて。フェイクで人は喜ぶのだと」
--本当の姿は見せることがない?
小林「……うん」
--西野さんは、小林さんの本当の姿を見てますよね。
西野「小林のほんまの姿? 一番僕が見てるんじゃないですか、ええ」
--ますます謎が深まる小林さんですが、ご家族はどんな方なんですか?
西野「この家族がね~、僕、分かんないんですよ。家も近所で、小中高とずーっと一緒なんですけど、こいつの親父をいまだかつて肉眼で見たことがないんですよ。おばちゃんはあるんですけど、親父が…。1回だけ見たことがあるんですけど、小林が小3ぐらいのときに親父と一緒に撮った写真なんで。僕の友達は“え?見たことないん? よぉ、おっちゃんと公園でキャッチボールしてんで”って言うてたんですけどね。親父がね~、肉眼で見たことないんですよ。だからね、ほんまにおるんかなって」
--およそ30年間、周りの目撃証言があるにもかかわらず…
西野「だからね、絶えずふっと“小林の親父……見てみたいな…”って思うんですよ。シャワー浴びてるときとか、“見たことないなぁ。ちょっと親父を見たいなぁ…。”って。で、『凹劇場』の企画で親父に会いに行かせてくれって言ったんですけど、なかなか敷居が高いみたいでね、親父に会わそうとしてくれないんですよ、小林が。VTR出演もNG。ただ、ここまで来たらね、棺おけの中に入って初めて見るっていうのもアリかと。コイツの親父の葬式のときに、パカっとふた開けて初めて見るっていうのが理想なのかもしれないですね。もう…、僕…、間違いなく笑うでしょうけどね。こんな顔なんや!って(笑)」
--ちなみに小林さんはどちら似なんですか?
小林「親父ですね」
西野「いや! ちょっと似てんねやろ。僕、絶対笑うわ!」
--ご近所で小林さんに似た年配の方を見かけたことはないんですか?
西野「ないですね」
小林「3年ぐらい前の単独ライブには来てましたけどね」
西野「らしいな」
--そのときも楽屋でご挨拶とかもなく?
西野「はい。舞台上から見てみたけど、暗いから見えず。シルエットだけが…。その単独ライブを見た方からは、“小林さんにそっくりなおじさんが観に来てた”とか聞いたんで、やっぱり似てるんでしょうね。その似てる人が入ってるわけでしょ、棺おけに…」
--背格好も似てるんですか?
小林「似てます。細いですし」
西野「これはもう…! もう、先言うときますわ。絶対笑う!」
小林「トム・ウェイツに似てるわ」
西野「ああ、もう、絶対オモロイ、そんなん(笑)」
--同じご町内ですよね。その町内で同時に動いている場合もあるだろうし、駅ですれ違っていることもあるでしょう。でも、接点がなく。
西野「ないです、ほんまに。写真で見た姿……色あせた姿ですよ。『人間失格』の始まりみたいな感じですね。『この1枚の、この子どもが…』みたいな、そんな感じになってるんですよ、だから、僕の中では、小林の親父は、小林が小3のときから行方不明で、あの写真が最後の姿っていうふうになってもうてるんですよ。普通に家におるんでしょうけど」
--最後、棺おけで初めてご対面するというのは、結構壮大な企画ですね。そしたらもう、大事にしたいですよね。些細なことで目撃したくないですね。
西野「そうですね。それは冷めますね。織姫と彦星ですか? それのちょっと違うバージョンというか、おっさんとおっさんのバージョンで。そして1年に1回ではなく、一生に1回」
--ドラマが出来てますね。
小林「親を探し続けるっていう(笑)」
西野「親を見てみたいですね、ほんまに。だから、“小林の親ってどんなやねん?”っとかって周りの人が言いますけど、一番思ってるのが僕ですからね。一番近いところで思ってますからね。小林に興味があるから親を見てみたいんですよ、周りは。“どんな親やねん?”っていう。僕、違いますからね。単純に親父が見たいだけ。小林には一切興味がない。親父が見たい」
--周りの目撃証言があれば余計思いますよね。ずっと一緒にいるのに…。
西野「そうなんですよ。だからちょいちょい、親父の情報とかもそれとなく聞いたりはしてるんですよ、小林に。まあ、普通に生活してるんですよね。マヨネーズのキャップを閉めへんくて怒られたとかね、あ、そんなんで怒る親父なんやとか思ったり」
--急に人間味が出てきましたね。
西野「急にね。飯のときとかしゃべんの?って聞いたら、“いや、しゃべらへんよ”とかって、軽く親父の情報を聞いてるんで。水を出しすぎたら怒るとか。親父は本当、見たいですね。……これもやっぱり、愛じゃないですか!? 親父を見たいという純粋な愛。欲ではなく“想い”ですからね。純粋に見たいという“想い”」
--なるほど。では、最後に、愛の対義語ってなんだと思いますか?
小林「……“愛”ってえひめの“愛”?」
西野「そうや」
小林「愛媛の対極は……徳島か。徳島ですね」
--ちなみに愛知県もありますけど。
小林「ああ、そうか。愛知県もあるんか…」
西野「ムズいなぁ。愛が分からないので、どうにもできないですね、これは…。何やろうな…。……愛の対義語は愛じゃないですか? 愛の対義語は愛ですよ」
小林「深いね。深いですね!」
西野「愛の対義語は愛にしましょう。だから永遠なんですよ。新しい恋が芽生えたりすると、その前の対象が消えるわけですよ。でも愛というものは変わらないんですよ、対象となる人が変わるだけで。中心にある愛は変わらない。愛の対象だけが変わっていく。これは……対義語じゃないですか!?」
--なんだか最初の“宇宙エネルギー”に通じるものが…。宇宙には太陽があって、周りを惑星がうろうろしてるじゃないですか。愛ってその太陽みたいなもので。太陽の周りを惑星がくるくる回るように、愛の周りで人間がくるくる回っていると考えると……。
小林「宇宙エネルギーですね! 愛と対をなすものは愛であり、愛とは、宇宙エネルギーです!」
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