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「ちゃんと伝えられる、ずっと伝えられるバンドでいたい」
SUPER BEAVERの変わらぬ哲学が形となった
人生の当事者たる君へ捧ぐ『音楽』!
2年ぶり、躍進のアルバムを語るメンバー全員インタビュー

 ライブと音源は別モノで、楽曲と人格は切り離して考えて、本音と建前は違うし、発言と行動は必ずしも一致しない。きれいごとじゃない、世の中そんなもんだ。だが、その真逆の音楽が、全ての活動に貫かれた信念が、そのまま形となった奇跡のような12曲がもしあったら――? SUPER BEAVERの2年ぶりのフルアルバム『音楽』は、熟成と挑戦を繰り返すバンドの爆発力をパッケージする緻密なアレンジで、その“もし”を見事に実現。収録曲の半数がタイアップ曲、総計12万人を動員した自身最大規模のツアーは全公演ソールドアウトと、バンドが実りの時期を迎えている理由を音と言葉で証明する会心の一枚だ。今後も初の野外ワンマンツアー『都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜』に、全県でのホールワンマンを達成する『都会のラクダ TOUR 2024 〜セイハッ!ツーツーウラウラ〜』他、お楽しみはめじろ押し。そこにいる全ての人が傍観者ではなく、当事者である。ライブにおいても、人生においても――。そんな’24年の旅路を共にする重要作、『音楽』にまつわる一連の記事の最後を飾る(!?)、恒例にして決定版なインタビュー。お待たせしました~!




言ってることは一貫して変わってないのに新しい気持ちを歌えてる


――昨年は結局、ライブを102本もやってましたけど、その関西の締めくくりとして年末に出演した『FM802 RADIO CRAZY 2023』のライブ前にバックヤードでたまたま会ったとき、とてもいい空気が4人の間に流れていて...普通に仲良いし(笑)、バンドが今、極めて充実した状態なのは当事者としても感じるよね?

渋谷(vo)「それは感じてますね。ずっと右肩上がりな感じはしてますし、バンドをやればやるほど楽しいことが増えてきて。状況が変化してできることが少しずつ増えてきたのも刺激的だし、充実した日々につながってるなと」

上杉(b)「我々らしく一歩ずつ着実に...特に最近は、怖いぐらいにちゃんと階段を上ってるというか。バンドの歴史で考えると一気にドンッと進んだことはなかったかもしれないけど、規模感であったりも含めて毎年いろんなことにチャレンジして、自分たちのやる気的にも、どんどん音楽に没頭していく感じがあって」

――"最近のビーバーは活動も落ち着いて..."みたいなことが、近年は一切ないもんね。

上杉「何かを絶対に作ってますもんね。メンバーとチームで面白いことをやろうって」

柳沢(g)「ありがたいことにそうですよね。規模で測るわけではないですけど、それだけ見たいと言ってくれる人が多いから、ライブができる会場も増えてるわけで。ただ正直、やってることの本質は本当にずっと変わってない。それは"まず自分たちが何をしたいか"という自発的なところで、そこに対して、タイアップだとかは確かにより多くなってはきてますし、その結論から見える状況の変化は自覚してるんですけど、個人的には今まで通り丁寧に、チャレンジの精神を持ってちゃんとドキドキしながら、すごく健やかな活動ができてるんじゃないかな」

――"活動の規模がデカくなれば変わらざるを得ない、仕方ない"と自分を納得させることが大半の中で、ビーバーを見ていると、ちゃんと変わらずにやれるもんだなと思うね。ちょっと目を離したら福岡でライブ、今日はもう東京でこうやってリモート取材をして、かと思えば大阪でテレビ収録してたの? みたいなフットワークの軽さだし(笑)。

柳沢「そこは本当に大きいですね。メジャーに戻ったそもそもの条件とまでは言わないですけど、これまでのやり方と自分たちが大事にしてきたものを理解・尊重してくださった上で一緒にやらせてもらってるんで。そこに対しての掛け算をしっかり持ってきてくれたのがハマって、今はすごくありがたい環境でやらせてもらえてますね。いまだにライブを軸にスケジュールが組まれてますからね。リリースよりツアーの方が先に決まる(笑)」

藤原(ds)「新しいこと、やったことがないことが活動の中にずっとあるので、それはすごくありがたいなと思って。もちろん緊張感やプレッシャーはありますけど一生懸命、一つ一つ頑張ってやってますね」



――ただ、あまりにもライブも挑戦も多いから、過去最大の野外ワンマン2DAYS『都会のラクダSP 〜真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち〜』とか、『FUJI ROCK FESTIVAL '23』の初出演すら、はるか昔のようで。ちなみにフジロックでは、もはや見てるこっちがうれしくて、(エンジニアの)兼重さんとかみんなではしゃいじゃったけど(笑)。

藤原「めちゃくちゃ見えてましたよ(笑)」

渋谷「何なら目立ってました(笑)」

上杉「それがうれしかったですけどね(笑)」

――長く続けるとそういううれしい場も増えて、それこそ『切望』(M-1)が生まれたのも、『[NOiD] -LABEL 10th Anniversary Special Live-』のライブの空気や、歴代のスタッフが集まった打ち上げの雰囲気がきっかけだと。



柳沢「元々この感覚をずっと歌にしたいと思ってて...それはこの1年をかけてやってきたライブであったり、こういう会話一つ一つもそうですけど、'20年のコロナ禍以降、よりいっそう個の捉え方や思考について会話してきたよなって。そういうことがずっと蓄積されてきた上で、SUPER BEAVERというバンドであり音楽を共通項につながってる人たちが増えてる。それはすごくうれしいことだし、『切望』がバンドのテーマソングみたいな側面を合わせ持った曲になったらいいなと思って。あの夜が引き金に、最後の一押しになって、高揚した気分のまま曲作りに入れたという意味では、一つのきっかけがやっぱりそこにはありましたね」

――これが1曲目なら間違いないアルバムだと思わせるパワーがあったし、『さよなら絶望』('21)にも似た瞬発力、爆発力。めちゃくちゃ純度高めでハイパワーなSUPER BEAVERという。

柳沢「このテンション感もちょっと久しぶりだった気がするんですよね。20年目を目前にして、まだこんな気持ちでいられる自分たちもすごくうれしかったですし」

――『歓声前夜』('18)のインタビュー時にも、"SUPER BEAVER節があるとするなら、これが一つのひな型"みたいな話をしたけど、当時、引き合いに出したかつてのTHE BLUE HEARTSのように、言葉の方面で今や完全に時代の象徴、代弁者になってる感じがする。

渋谷「『切望』は、何かもう"いかにもSUPER BEAVER"って感じが好きな曲ですね。一曲なんだけど、ベストアルバム的な曲だなと思う。今までの軌跡を全部踏襲した結果、こういう曲ができて、言ってることは一貫して変わってないのに新しい気持ちを歌えてるような...。それはやっぱり、ちゃんと意味のある続け方をしてきたからこそだと思うので。全部をまとめたような曲だけど、全部をまとめた以上のエネルギーがある曲だと思ってます」

――いざ、アルバム制作に本格的に取り掛かろうというタイミングでこの曲ができたのは、だいぶ推進力になっただろうね。歌録りもめちゃくちゃスムーズだったみたいで。

渋谷「早かったですね、2回しか歌ってないんで」

――それぐらい思いをバシッと乗せられた。ビーバーの取材のためにいろいろ調べると分かるんだけど、基本的なスタンスが本当に一貫してるから、昔からアイデンティティが確立されてたんだなと毎回、確認する作業のような気さえしてくる。『切望』にも、"だからずっと言ってるんだ"という一節があるぐらいで。

柳沢「そこがビーバーのデカいところというか、時代が、状況が、流行が変わろうが、その上積みの趣味・思考が服の好みのように変わっていくことは往々にしてあると思うけど、大事なのはその先で。"服の趣味は違うけど仲良くなれたら楽しいよね"とか、"言語が違うけど分かり合えるとうれしいよね"とか、そんなことをずっと歌ってきたんで」

――そういうThis is SUPER BEAVERな『切望』からズバンと切り込んでくるから、"やっぱりビーバーなら応えてくれる"という信頼感が今回のアルバムにはすごくあったな。あと、どの時期にリスナーと出会えるか分からないから歌い続けることも大事だし、いろんな経験をして新しい視野を手に入れることで、同じことでも違う角度から歌える。

柳沢「そうなんですよね。曲を書いてると時に"ちょっと矛盾するかもな..."と思うこともあるんです。もっと言うと、矛盾するギリギリでせめぎ合ってる両面があるから、人は考えたり悩んだりするんじゃないかな。でも、どっちに軸足を置きたいかはずっと変わらない気がしますね」


前進しようとする気持ちのきっかけになったもの
エピソードゼロみたいな感情をちゃんと歌にしたい


――ただ、これだけシングルだったりタイアップで先に曲が世に出てる中で アルバムとしてそれをまとめたときに意味のある作品になるかは、配信の時代だからこその課題で。そこに『裸』(M-10)のように弱さが露見した生々しい曲が入ってくると生きてくるよね。そのために書いた曲だとも思うし。

柳沢「まさにですね。元々この曲ができる前からできるだけミニマムな音像で、分かりやすく言うと、前進しようとする気持ちのきっかけになったもの、エピソードゼロみたいな感情をちゃんと歌にしたいなとぼんやり思ってて。今作において『裸』は接着剤になったと思うし、むしろ起爆剤な気もするし、入れてすごく良かったなと思います」

――とは言え、すごくシンプルな曲だからこそ、歌うのはとても難しかったと。

渋谷「めちゃくちゃ難しかったです。我々の曲はどの曲も大前提として、これと定義したメッセージの上に成り立ってる曲じゃないですか。だから、曲のバリエーションはあれど、"ここに立って歌えばいい"という立ち位置が分かるんですよ。あとは、どんな身振り手振りで曲を構築していくのか。こういう楽曲ってそもそも足場がないというか、大前提ですでに迷ってる(笑)。でも、迷ってる上で身振り手振りをすると芝居みたいになっちゃうから、マジで迷ったまま挑んでみたら、本当に迷っちゃって(苦笑)。7~8回は歌ったんじゃないかな」

――『切望』とは真逆ですね。

渋谷「『切望』は自分がどこに立って歌えばいいのか、どんなふうに届けたらいいのか、答えが出しやすい曲だから一切迷わないんですよね。でも、『裸』みたいな曲になると、途端に自分が分からなくなる...。曲に沿って、そういう迷いみたいなものもちゃんと出たと思うんで、これはこれで正解な感じはしてますけどね」

――うまく歌えば伝わるわけでもないから、そこがね。

渋谷「そうなんですよ。歌がうまい人は今、世の中にたくさんいますから。そこじゃないんですよね。なまじ自分もちょっとずつ器用になってきちゃってるんで、油断するとうまくやれちゃうんですよ。それは結構危ないことだと思ってて。困ったら上手にやればいいって、技術の一番良くない使い方だと思うから。ちゃんと曲と向き合って、自分の力量、できることとできないこと、込められた気持ちとのバランスを取らないと。歌には気持ち、感情が出やすいので。『裸』は細心の注意を払ってそれができたかなと思います」

――歌詞の面で言えば、"落ち込みたい 謝りたい 省みたい"というネガティブな衝動の前に、"親愛なる人の 例えばその人のため"というワードを添えることで、一気にポジティブに響くのはすごいなと思いました。

柳沢「よく分からない場所から物を投げてくる名前も知らない人のために、そんな気持ちになってたまるかというか...落ち込んだり悔しくなったり悲しくなったりするのは、メンバーだったり身内のスタッフ、家族、友達...全部そういう人たちの声が理由でありたい。その点は意外とこの曲も、他の曲と通じ合ってるのかなと思いますね」

――柳沢くんでもこんなふうに"あちゃー"と思うことがあるんだね。

柳沢「めっちゃありますよ。普通に日々落ち込んでたりしてますから(笑)」


ギリギリのものはカッコいい


――今作にはシングル『儚くない』(M-11)に引き続きアレンジャーの河野圭さんが参加してますが、同時期にアイナ・ジ・エンドの『宝者』('24)の作曲・アレンジも手掛けてたり、相変わらずの仕事人ぶりで。例えば、『めくばせ』(M-6)なんかもそうだけど、こういう曲があるとバンドとアルバムの幅を広げるなと。

上杉「スーパーコンシェルジュ河野さんがいてくれると、"サビのベースは食い気味なんですけど大丈夫ですかね?"、"全然いいでしょ!"みたいな会話ができるので、演奏の幅も相当広がりましたね。この編成でのライブを考えたとき、ベースってまだ意外とやれること、やった方がいいことがいっぱいあって、それが音楽的に整理された。しようと思えば何だってシンプルにできるけど、もっといろいろとやってみようとしたときに、学がないとできないことがやっぱりあるので。自分のアイデアだけじゃない道筋を、今回もしっかり教えてもらえた気がしますね」

――今作はライブの合間に制作したのもあってか、この曲なんかもかなりスケジュールがタイトだったみたいで。

藤原「そうなんですよ。そうじゃないと後々いろいろ詰まっちゃうのもあって、やれるときにやっちゃおうという感じだったんですけど。まぁでも昔から考えたら、よっぽど時間はありましたけどね」

――自分たちだけでバンドを運営していたインディーの頃なら、ミニアルバムの収録曲のリズムを一日で全部録る、なんてことも全然あり得るもんね。

藤原「そうですそうです、だてにここまでやってきてないよなという感じで。さっきリーダー(=上杉)が言ってたフレーズとかヤナギ(=柳沢)のギターもそうだけど、今回は"全体像としてカッコいい"という考え方で河野さんと作ったので、ドラムは派手なことや大げさなこと、"ちょっとひねったフィルを入れないと"とか、こねくり回したりせずに曲を良くしようと。シンプルなビートを、ちゃんとカッコいいテイクで録る。この曲に限らず、今回のアルバムは特にそういう場面が多かったですね」

――あと、『リビング』(M-4)とかを聴いて、コーラスワークもビーバーの特徴の一つだなと改めて思いました。

柳沢「そもそもぶーやん(=渋谷)が歌えばSUPER BEAVERになるのはありつつ、最近は自分たちのアルバムだけじゃなくてカバー曲で参加させてもらったりもするんですけど、確かにシンガロング的なものもハーモニーとしてのコーラスもそうですし、"ビーバー印"みたいなものはできてきたかもしれないですね」

――そして、直近で書き下ろした曲が多い今作において、『奪還』(M-7)だけはコロナ禍の頃にはあった曲で。個人的にはこっち系のバンドサウンドバキバキな曲がもっとほしいな~めちゃカッコいい。

柳沢「この曲は'20年の末ぐらいにはもうあって、すなわち、そういう状況の頃にできた曲ではあるから、何とか意地で突破しようとしてる言葉が並んでるんですけど(笑)。元々は速いビートだけだったんですけど、試しにデカいリズムパターンを入れてみたら笑っちゃうぐらいにハマって。俺らは、笑っちゃう=紙一重を一つのOKの基準にしてたりもするんで。ギリギリのものはカッコいいと思うから」

――まさに前作『東京』('22)における『VS.』のような役割ですね。


ライブに来てくれた人にもっと胸を張らせてあげたい


――『幸せのために生きているだけさ』(M-9)は、ドラマ『マルス-ゼロの革命-』の主題歌で。ドラマを見てると、もはや劇中のセリフがビーバーの歌詞のようでもあって、ここまで相互に共鳴し合ったタイアップも珍しいなと。



柳沢「いやもうこんなこと、大きい声じゃ言えないですけど、むしろ寄せてきたんじゃねーかって(笑)」

(一同爆笑)

柳沢「っていうのはあくまで想像なんですけど(笑)。俺らが(物語の序盤の)脚本を読みながら曲を作ったように、今度は曲と共鳴して何か物語をひらめくことはなくはないと思うから。そもそも、"今回のドラマは青春時代の10代の子たちが、大人や憤るものに対して反旗を翻すのがテーマなんです"とは言われてたんです。でも正直、このプロジェクトのよーいドンのときから"ちょっと困ってるな俺"と思ったのは、大人の中にも最高にいい人がいることを、もう俺たちは知ってしまってるから」

――単に大人を仮想敵とした構造だとね。

柳沢「結果、どこにつながっていくんだろうと考えると、一見、敵と思えた人も、意見が合わない人も、全ては自分にとっての幸せのために行動していて...そこで『幸せのために生きているだけさ』という思考に行き着いた。それは別にドラマの話だけじゃなくて、日々何かを頑張っていたり、頑張れないことに対する葛藤みたいなものすら、そこに大なり小なり理想があるからこそ生まれる感情だし、我々バンドにおいても言えることだと思う。そういういきさつでこの曲ができたんですよね」

――『幸せのために生きているだけさ』と聞いたとき、何かもう将棋で詰められた気分というか、参りましたと思った。本当に端的にズバッと人生を集約した、言い当てられたようなタイトルだなと思って感心しました。

柳沢「それは必ずしも前向きな意味だけじゃなくて、みんな大それたことは求めてなくて、小さな意味でも幸せと思えるために生きているだけなんだから、放っておいてあげたらいいのになと思う気持ちも込めて、こういうタイトルを付けたところはありましたね」

――ドラマの中盤から『小さな革命』(M-12)が新たに挿入歌に起用されましたが、この曲は『RUSH BALL 2023』出演時の渋谷くんのMCが土台になっていて。当日のオフィシャルレポートを担当したからよく覚えてるけど、まだコロナ禍の名残もあってゆっくり見たい人、はっちゃけたい人、それぞれの思いをくみ取った上で敬ったMCで、「現場にあるものは、ルールではなくモラルだと思ってる」と言ってましたね。

柳沢「あの後、ほろ酔いでホテルに戻って、もう1回ライブの同録を聴きながら、"ぶーやん、やっぱりあのMCはマジでヤバいと思う"ってLINEを送ったぐらい(笑)、すごく痛快だったんですよね。俺たちが言いたいことをクリティカルに、必要なときに必要な言葉を投げ掛けられた気がして」

――"このMCの後のライブ、絶対いいじゃん!"と確信した、心に刺さる言葉でした。

柳沢「さらに最後にぶーやんが、"愛だとか夢だとか希望だとか、そういうことを胸張って言うヤツを守るためにここにいるんだよ!"って言ったんですけど、ああいうたんかを切ったときにグッとくるのが、このバンドの特性でもあると思う。間違いなくヒーロー的な、根拠はないけど救い出せるんじゃねえか、助けてあげられるんじゃないかという自信みたいなものが、あの瞬間にはすごくあった。あの感覚を今ビーバーが歌にして届けたとき、ものすごい勇気になるんじゃないかと思ったから、何とかパッケージングしたくて」

――"こういうメッセージ、今の時代に聴きたいわ"と心から思った曲でした。世にバンドもアーティストもたくさんいるけど、案外、みんな発言しないというか、音楽にしてくれない。時代を反映しつつ、ちゃんと音楽で言うことを言ってくれる人が意外といない気がする。

柳沢「いや、本当にそう思います。俺が出会えてないだけかもしれないけど、今の自分にビックリするぐらい刺さる曲がないんですよ。"うわ、全部言ってほしかった言葉だ"っていう感覚が、外から入ってくることがほとんどない。だったら俺たちが歌にできたらいいなとは思うけど、自分自身もそれが何か分かってるわけじゃないからこそずっと探し続けて、もがいてるんだと思う。故に、『RUSH BALL 2023』のときのような言葉がふいに入ってくると、人生という一本の映画を見たような、"ついに見つけた!"ぐらいの興奮を覚えるんですよ。ああいう瞬間を逃がさず曲にできたらと思ってるんですよね」

――本当に替えの利かないバンドになったなと、この曲で思いましたね。その『小さな革命』の最後の最後に「音楽」という一言があって、これがアルバムタイトルにもなってます。これまでも、"お前ら"でも"みんな"でも"あなたたち"でもなく、"あなた"という一対一の視野を生み出したSUPER BEAVERだけど、名詞ではなく行為として"音楽をする"という新たな視野を、またもMCから生み出して。

渋谷「MCで特許は取れないから、これも今後いろいろと流用されていくのは分かってるんですけど、今のところSUPER BEAVERだから成り立つ言葉しか言ってないとは思うんで。それが自分たちの音楽になって、一緒に音楽しようぜと相手に投げ掛けられる。何を言うかより誰が言うかだと思ってるし、こういうことをしっかり本質の部分で投げ掛け続けることができれば、奥さん(=筆者)が今言ってくださったみたいに、唯一無二というものにどんどん近づけるのかなって。ちゃんと伝えられる、ずっと伝えられるバンドでいたいなと思いますね」

――そこにいる全ての人が傍観者ではなく、当事者である。ライブにおいても、人生においても。

渋谷「俺らの音楽を聴きに来てくださる人によって、その日の俺らは構築されてるし、そういう人たちのおかげで俺らは今活動できていて、こういうバンドになれてると思うから、その自覚をもっと持ってほしいんですよね。たくさん褒めていただけるのは光栄なことだけど、その背景には家族、仲間、友達とかチーム、何より見てくださってる方がいる。それが表面化されたのがこの4人でSUPER BEAVERである。だからこそ、ライブに来てくれた人にもっと胸を張らせてあげたいので、こういうことを一つ一つちゃんと伝えていけたらいいなって」

――"責任"って普通は面倒くさいものだけど、ビーバーが現場で投げ掛けてくれる、"あなたは当事者なんだ"という責任はうれしいし、奮い立つものがあります。

渋谷「だとしたらこっちがうれしいです。責任は負担になるものだけじゃないし、俺は喜びの側面を持って初めて責任という言葉の本当の意味が出てくると思ってるから。迷惑な話かもしれないですけど、"責任を持ってね"というのは、そういう気概が一番大きいですね」

――『音楽』はビーバーの変わらない哲学とか美学が形になったアルバムだと思う。でも、そういう作品が1枚できたってそうは聴こえない。今までのビーバーの歩みがあるからこそ、今回のアルバムにそれをとても感じましたね。


ホールワンマンを47都道府県でやれるのは
なかなかカッコいいんじゃないのと思って



――まぁ年中ライブはやってますが、6月・9月の『都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜』は発表されているものの、『音楽』の明確なリリースツアーがないのもある意味、大胆ですね。

柳沢「1年を通して新曲はやっていくし、結局はリリースツアーみたいなことになっていくと思うんですけどね(笑)」

渋谷「あと、10月から『都会のラクダ TOUR 2024 〜セイハッ!ツーツーウラウラ〜』があって、それで47都道府県のホールを制覇です。全県に行ったことはあったんですけど、ホールワンマンを47都道府県でやれるのは、なかなかカッコいいんじゃないのと思って」

柳沢「ただ、6月の沖縄と徳島だけその流れに組み込めなかったんで、事前に『都会のラクダSP 行脚 〜ヤットサー、イーヤーサーサー〜』として発表して。実はほんのり伏線だったという(笑)」

上杉「で、締めは12月の日本武道館2DAYSだから、今年は武道館を5回やることに」

柳沢「来年は結成20周年に突入するんで、もう'25年の末ぐらいまでいろいろ決まってますよ」

上杉「さらにこの前の打ち合わせで、'27~'28年の話もしましたから(笑)」

――頼もしいね。ホント良かったな~バンドが続いて(笑)。

渋谷「マジでそれに尽きますよ(笑)」

藤原「アハハハハ!(笑)」

――そうなると今後も変わらず忙しくなりそうですね。

渋谷「結果的にそうなりますね(笑)。本当にありがたいです」

――また今年も全国各地で会うことになるでしょう。本日はありがとうございました!

Text by 奥"ボウイ"昌史




ライター奥"ボウイ"昌史さんからのオススメ!

「SUPER BEAVERの代表的コピーライトと言えば、"あなた"。それまでオーディエンスを"お前ら"とか"みんな"と呼んできた幾多のロックバンドが、しれっと"あなた"に移行していくこの数年は痛快でもありましたが、"ビーバーみたいなこと言うなこのバンド"と内心思ってしまうのも事実、多用され記号化していく"あなた"が本来の意味を失いつつあるなと感じたのも本音。そんな中、『小さな革命』では久々に、"あなた"ではなく"君"が歌詞に使われています。以前、『シアワセ』('09)を9年越しで再録した際、わざわざ君からあなたへ歌詞を変え録り直したビーバーがですよ。でも、例えば"あなたに言ってるんだ"より、"君に言ってるんだ"の方が、当事者感があるというかグサッとくる近さがあるなと納得。とか思ってたら、今度は名詞ではなく、"音楽をする"という動詞を新たに発明するビーバー。ただ鳴らすだけでもなく、ただ受け取るだけでもない。両者がいて行き交う気持ちがあるから成り立つ『音楽』。しかも、聞いたこともない造語とかじゃなく、ありふれた言葉なのに、ちゃんとオリジナルに響く。信頼と実績のSUPER BEAVERは、こういう開発力があるから強いですよね(笑)。2月の大阪城ホール公演で聞いた、"ここにいる誰一人かぶってない"一万人という、当たり前だけど新たな視野のMCも、いずれ曲になりそうで期待大です!」

(2024年4月15日更新)


Check

Release

2年ぶりのフルアルバムは
半数がタイアップ曲という強力盤!

 
Album
『音楽』
発売中 3300円
Sony Music Records
SRCL-12775

<収録曲>
01. 切望
02. グラデーション
03. ひたむき
04. リビング
05. 値千金
06.めくばせ
07. 奪還
08. 決心
09. 幸せのために生きているだけさ
10. 裸
11. 儚くない
12. 小さな革命

Profile

スーパー・ビーバー…写真左より、上杉研太(b)、藤原“35才”広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)。’05年、高校の先輩・後輩である渋谷&上杉・柳沢に、柳沢の幼なじみである藤原を加え東京にて結成。’09年にメジャーデビューを果たすも、’11年には活動の場をインディーズへと移し、’12年に自主レーベルのI×L×P×RECORDSを設立。’13年よりeggmanのロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、’18年4月には初の日本武道館公演を開催。結成15周年を迎えた’20年にメジャー再契約以降、人気コミックス原作の実写映画『東京リベンジャーズ』主題歌の『名前を呼ぶよ』(’21)ほか、数々のタイアップ曲を担当。’23年には過去最大キャパとなる初の野外ワンマン2DAYS『都会のラクダSP ~真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち~』を開催。同年9月よりスタートした自身最大規模となる全国10都市21公演にわたるツアーは全公演ソールドアウト、総計12万人を動員。’24年2月21日には、最新アルバム『音楽』をリリース。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間約100本のライブを行い、今最も注目を集めるロックバンド。

SUPER BEAVER オフィシャルサイト
https://super-beaver.com/

Live

野外ワンマンツアーに加え
新たにホールツアーが発表!

 
『都会のラクダ 野外TOUR 2024
~ビルシロコ・モリヤマ~』

【東京公演】
▼6月2日(日)日比谷野外大音楽堂

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼6月16日(日)18:15
大阪城音楽堂
全自由7700円
GREENS■06(6882)1224
※3歳以上チケット必要(3歳未満でも座席が必要な場合はチケット必要)。お客様を含む会場内の映像を配信させていただき、写真が公開されることがありますのであらかじめご了承ください。
※雨天決行・荒天中止となります。公演途中での中止の場合、払戻しはいたしませんのでご了承ください。

【山梨公演】
▼6月22日(土)河口湖ステラシアター

【香川追加公演】
▼9月1日(日)さぬき市野外音楽広場
テアトロン
【北海道公演】
▼9月7日(土)札幌芸術の森 野外ステージ
【北海道追加公演】
▼9月8日(日)札幌芸術の森 野外ステージ
【長崎公演】
▼9月21日(土)稲佐山公園野外ステージ


『都会のラクダ TOUR 2024
〜セイハッ!ツーツーウラウラ〜』 New!

【東京公演】
▼10月4日(金)J:COMホール八王子
【山梨公演】
▼10月6日(日)YCC県民文化ホール 大ホール
【大分公演】
▼10月11日(金)iichiko グランシアタ
【宮崎公演】
▼10月13日(日)都城市総合文化ホール
大ホール
【埼玉公演】
▼10月17日(木)大宮ソニックシティ 大ホール
【秋田公演】
▼10月19日(土)あきた芸術劇場ミルハス
大ホール

Pick Up!!

【大阪公演】

一般発売日未定
▼10月23日(水)・24日(木)18:30
フェスティバルホール
指定席7500円
注釈付き指定席7500円
GREENS■06(6882)1224
※3歳以上チケット必要(3歳未満でも座席が必要な場合はチケット必要)。お客様を含む会場内の映像を配信させていただき、写真が公開されることがありますのであらかじめご了承ください。
※注釈付き指定席は、ステージの全体および一部演出が見えにくい、または見えない場合がございます。

【愛知公演】
▼11月2日(土)・3日(日)名古屋国際会議場
センチュリーホール
【香川公演】
▼11月7日(木)レクザムホール 大ホール
【鳥取公演】
▼11月9日(土)米子コンベンションセンター
BiG SHiP
【富山公演】
▼11月20日(水)富山 オーバード・ホール
大ホール
【福島公演】
▼11月22日(金)いわき芸術文化交流館
アリオス アルパイン大ホール
【佐賀公演】
▼11月26日(火)佐賀市文化会館 大ホール
【東京公演】
▼12月3日(火)・4日(水)日本武道館
 

Column1

「思いを声にすることで初めて
意志が生まれる気がするんですよ」
誰一人儚くはない人生に届け、
真っ向勝負の名バラード!
映画『東京リベンジャーズ2
血のハロウィン編 -決戦-』主題歌
『儚くない』をSUPER BEAVER
全員が語るインタビュー('23)

Column2

「割り切れない人間らしい感覚を
 今、自分たちが鳴らせたら」
点という出会いを線という絆に
変えたSUPER BEAVERの最前線
映画『東京リベンジャーズ2
血のハロウィン編 -運命-』主題歌
『グラデーション』を解剖する
全員インタビュー!('23)

Column3

「常に全力でいたいし、そういう
人が集まってビーバーは動いてる」
SUPER BEAVERが貫いてきた
一生懸命というプライド
アニメ『僕のヒーローアカデミア』
テーマ曲『ひたむき』から
自主企画『現場至上主義2023』
'22年の総括etcを語る('22)

Column4

「やっぱり音楽は楽しいし、
 音楽は悔しいし、全部なんで」
初のドキュメンタリーに刻まれた
素晴らしき哉、バンド人生!
『The Documentary of
 SUPER BEAVER 『東京』
 Release Tour 2022
~東京ラクダストーリー~』
全員インタビュー('22)

Column5

「“初めて”を見られなかった人にも
  見た人にも、ちゃんと届けたい」
SUPER BEAVERの
ライブのこだわり、映像のもてなし
『LIVE VIDEO 5
 Tokai No Rakuda Special
 at さいたまスーパーアリーナ』
副音声的徹底ガイドな
全員インタビュー('22)

Column6

「もらった気持ちをもらった
 以上にして返したいんですよ」
17年の全てを伏線に変えてきた
SUPER BEAVERの
ロマンと人間冥利を語る
『東京』全員インタビュー!('22)

Column7

「“飛び級をしてないバンド”
っていうのは今でも変わってない」
言葉に違和感のない活動を
共感だけではなく説得力を――
映画『東京リベンジャーズ』
主題歌『名前を呼ぶよ』
SUPER BEAVERが17年目の勝負
を語る全員インタビュー!('21)

その他インタビューはコチラ!

『愛しい人』('21)
特設ページはコチラ!
『アイラヴユー』('21)
特設ページはコチラ!
『突破口/自慢になりたい』('20)
特設ページはコチラ!
『ハイライト/
 ひとりで生きていたならば』('20)

特設ページはコチラ!
『予感』('18)
特設ページはコチラ!
『歓声前夜』('18)
特設ページはコチラ!
『真ん中のこと』('17)
特設ページはコチラ!
『美しい日/全部』('17)
特設ページはコチラ!
『27』('16)
特設ページはコチラ!
『ことば』『うるさい』『青い春』('16)
特設ページはコチラ!
『愛する』('15)
特設ページはコチラ!
『361°』('14)
特設ページはコチラ!
『世界が目を覚ますのなら』('13)
特設ページはコチラから!
『未来の始めかた』('12)
特設ページはコチラから!