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ホーム > インタビュー&レポート > 「やっぱり音楽は楽しいし、音楽は悔しいし、全部なんで」 初のドキュメンタリーに刻まれた素晴らしき哉、バンド人生! 『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~』全員インタビュー


「やっぱり音楽は楽しいし、音楽は悔しいし、全部なんで」
初のドキュメンタリーに刻まれた素晴らしき哉、バンド人生!
『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』
Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~』全員インタビュー

 SUPER BEAVER初のドキュメンタリー映像作品『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~』が、9月28日にリリースされた。同Blu-ray/DVDは、最新アルバム『東京』を引っ提げ、3月26日の千葉・森のホール21 大ホールを皮切りに行われた、全国21公演のホールツアーに約3カ月にわたり完全密着。バックヤードやリハーサルの模様はもちろん、オフショットやコメントも満載。彼らの音楽が、言葉が、ライブが、どんな思いを経由してあなたの心臓を突き動かすのか。「日々歌にしてること、口にしてることの根源がどういうところからきてるのか。だから、こういう言葉になるし、こういう歌になるし、こういう活動の仕方になって、こういう人との向き合い方になる」と柳沢(g)がインタビューで語ったのも納得の、101日間=2424時間の旅路を切り取った濃厚なドキュメンタリーとなっている。さらに今作には、7月5日・東京国際フォーラム ホールAで行われたツアーファイナルのライブ映像も収録。『東京』と共に駆け抜けた刺激的な日々が、余すことなくパッケージされている。あなたがSUPER BEAVERを好きな理由が、この記録の中にきっとあるはず――。



"楽しい!"というエネルギーが、この数年で一番大きかった気がしましたね


――7月に入ってからは毎週末がフェスと言っていいぐらい全国を巡ったと思うけど、お初もお久しぶりも含めて顔を出せた全17本、今年はどんな夏でした?

渋谷(vo)「少しずついい兆しが感じられたし、出た自分たちもですけど、見に来てくださった方が抱いている罪悪感みたいなものが少し減ってきて、純粋に楽しむことを楽しめてる感じが、しっかり受け取れました。1年前までは楽しむことへの迷いもまだ感じてたんですけど、今年は他意なく楽しめるようにはなってきたのかなって」

――楽しむことに罪悪感が生まれてること自体が、よく考えたらおかしなことだもんね。

上杉(b)「今年の夏は、一昨年できなかったこと、去年できなかったこと、そのちょっとずつを経て各フェスが形になっていてうれしかったですし、イベントを作る側、出演する側、見る側が、いろんなアクションを起こせる場があることが、何より重要で幸せなんだなと改めて思いましたね」

柳沢(g)「シンプルにステージから見た景色が変わりましたよね。遊びに来てくれた方も実感したと思うんですけど、明確にフロアに"(人が)いるなぁ〜!"と感じました(笑)。もちろん、まだまだ声を出せなかったりする中でも、"楽しい!"というエネルギーが、この数年で一番大きかった気がしましたね。それは何かが緩くなったんじゃなくて、フェスに限らずライブハウスしかりホールしかり、アリーナしかり、音楽に限らずあらゆるイベントがいろんなことにトライして、一つずつ取り戻していったことだから、すごく感慨深いですね」

藤原(ds)「僕らも来てくださった方も、フェスで同じ日にライブをした周りのバンドの空気も明らかに違ったし、ステージを作ってくれる人たちの顔がすごく晴れてるなと、この夏は思いました。本当にいい顔をしてるというか」

――個人的に印象的だったフェスはあったりします?(と全17本のフェスを読み上げる)

渋谷「俺は『E.YAZAWA SPECIAL EVENT ONE NIGHT SHOW 2022』かも。客層も違えば流れも全部違ったし、今までに体験したことがない空気でした。メジャーを落っこちて、自分たちで活動していた頃を思い出しましたね」

――ヒリヒリしてたあの時代を。

渋谷「忘れたつもりは全然なかったんですけど、完全に思い出しましたよね」

――それが夏フェスの一本目だったのはある意味、刺激的でよかったのかも。だって、E.YAZAWAとSUPER BEAVERが対バンする未来なんか、想像したこともなかったから(笑)。

上杉「俺はちょっと視点が変わってくるんですけど、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』。会場が今年から『JAPAN JAM』でずっとお世話になっていた千葉に移って。それでも、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の冠になると、空気がガラッと変わった。ちゃんとフェスがブランドになっていて、そこにファンが付いているからこそ、場所が変わってもあの空気感になるんだなと感じて。それってすごいことだなと」

柳沢「『京都大作戦2022』も印象深かったですね。この2年は開催直前に流行病にかかっちゃって出られなくなるアーティストがいると、物事自体が中止になることも多々あったけど、今年はそうじゃなくて。『京都大作戦』で言うと、四星球がクリープハイプの代打として急きょ出演してたんですけど、そこで底力を発揮するアーティストがやっぱりいて。僕らはこの夏の序盤に、『京都大作戦』でその現象を目撃したので」

――フェスもアーティストも、何ならお客さんも、転んでもタダでは起きないタフさが今年の夏にはあったよね。

藤原「どれも印象に残ってますけど、僕は『MONSTER baSH 2022』かな。せっかくビーバーをトリに選んでいただいたならやっぱり喜んでもらいたいし、今までホールだったりアリーナでやってきた演出を、そういうところでもやれたらいいよねとみんなで話して。バンドとしても結構気合いを入れて、チームをたくさん連れて行って。『MONSTER baSH』ではそれがハマったし、そういうことをフェスでやったことがなかったから新鮮でしたね」


全会場、疲労困憊ではありました(笑)


――前回の『LIVE VIDEO 5 Tokai No Rakuda Special at さいたまスーパーアリーナ』のインタビューでは渋谷くんが、"自分たちにとって初めて立つステージがまだまだ多いので、メモリアルになるような節目はちゃんと残したい"と言っていて。あくまでそのライブ映像に付随する形でドキュメンタリーもあったけど、今回の『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~』はドキュメンタリーありきで、何ならライブ映像が付属してる。これは相当珍しいことだと思ったんだけど。

渋谷「今回は、自分たちがライブに向き合う姿勢であったり、裏でどんなことをしているのか、しゃべっているのか、みたいなことを一つパッケージングできたら、SUPER BEAVERというバンドをより分かってもらえるんじゃないかと、打診していただけたんです。自分たちから"裏側を撮って"とは...なかなか言えない(笑)。近しいスタッフであったりがそう言ってくれるのはうれしいことだし、結果的にバンドの生き方がしっかり撮れていると思うから。SUPER BEAVERのパーソナルな部分にまで触れたいなら、すごく分かりやすいものになったんじゃないかな」

上杉「あと、TV収録(=今年1月に放送されたNHK総合テレビ特番『シブヤノオト Presents SUPER BEAVER あなたと』)で1年ずっと密着してくれたクルーと、またどこかで一緒にやりたいよねというグルーヴもあったし。あの方たちなら信頼できるし、いい映像を撮ってくれるだろうから、選択肢にドキュメンタリーが入ってきたのかなと」

――今作では、ツアーファイナルの最後の最後の模様が導入として一瞬映りつつ、まさかこれが後の大きな前振りになるとは...。こうやって時系列で追いかけてもらえると、ツアーの初日はまだ春だったんだなとか振り返ることができますね。バックヤードでの藤原くんからクルーへのあいさつを見ていても、芸風は変わらないなぁ(笑)。

藤原「いやもう、ずっと変わらないですね(笑)。ステージを降りた先でもこれは」

――初日の千葉公演が終わった時点で、渋谷くんが"これは大変なツアーになるな..."と言ってましたね。

渋谷「結構ね、大変なセットリストでしたよ。ゲネ(=通しリハーサル)のときも思ったんですけど、いざ対峙してみたら、すごくエネルギー使いました。それをもらえる場所と、与える場所と、それぞれ感覚が全然違うんですけど、与える割合が今回のツアーはすごく多かった気がする。全会場、疲労困憊ではありました(笑)」

――前回のインタビューでもリーダー(=上杉)がアルバムを評して、"表現するためにエネルギーが必要"と言っていたから、まさにという感じですね。

上杉「それによって、バンドとしても個人的にも集中力のレベルが高まった気がしました。本当にいろんな表情がある熱量の高いセットリストだったし、しかもそれを右肩上がりで演奏するには、常にゾーンに入って集中しないと最後まで持っていけないんだなと。それを踏まえてツアーの最初から挑んでいったし、手応えも感じていましたね」

――MCに関しても、柳沢くんから"一言一言がもっとちゃんと聞けたら感動できるんじゃないか"みたいな指摘があって、素直にチャレンジしようとする渋谷くんとか、逆にスタッフから"何を言ってるか分からないからもっとシンプルに"みたいに言われる柳沢くんとか(笑)。チームでより良いものを求める姿勢というか、ズバズバ言い合えてちゃんと聞き入れられる空気がとてもいいなと。

柳沢「あの感じはどの会場でも頻発していたと思いますね(笑)。もっともっと細かい会話もあったと思いますし、それこそ自分らにとっては割と日常的な、常にある光景なんですよね」


本当にいろんな人生が一つの会場に集まってくる


――あと、時折ファンの方のライブ後のコメントを拾ってるのもいいなと。

柳沢「そこに関しては、ずっとカメラを回して編集もしてくれた監督が、どういうドキュメンタリーにしたいのかという部分で、最初から狙ってパッケージしてくれたところでもあります。『東京』というタイトルのツアーで、ビーバーはみんな東京出身で。そういったことからも、メンバーにはもちろん密着するんだけど、その街だったり、ライブを楽しみに来てくれるその土地が故郷である人にもフォーカスできたらと。監督が唯一コンセプトを設けたのがそこで、僕らがどういう映像にしたいというよりはドキュメンタリーなので、その辺はお任せしました」

――確かに、意図とか作為性が増えるとドキュメンタリーからは離れていくもんね。もう明らかに渋谷くんのことが好きやんみたいな格好のカップルとか(笑)、年に何回か集まる機会がビーバーのライブだと言ってくれてる家族とか...その街に待ってくれている人がいるんだと、こうやって一本一本確かめられるのは幸福ですね。

渋谷「俺らにとっては21本のツアーだけど、見る方にとってはほとんどが初日でファイナルなわけで、そこは絶対に忘れないようにしたいなと、また強く思いました。"ツアーが始まったばっかりだから、ここは未完成な状態でも仕方ない"とかは、あってはいけないことだと思うから。今までもちゃんと一本一本親身に考えてやってきてはいますけど、全部注ぎ込めなきゃ支えていただいてることに対して返せないし、やっぱり本数じゃないなとも思いましたね」

――いわゆるホールツアーの会場になる市民会館とかって、街のみんなの思い出にあるような成人式、はたまたその人自身が何かの発表会で舞台に立ったりもするだろうし...そこに生きる人々の人生により関わる感じがしますね。

柳沢「確かに、ある意味ではライブハウスという文化より地域性があるというか、地元の企業のネーミングライツとかもあるぐらいですからね。コンサートだけのためにある場所ではないから、そこに暮らしてる人たちが集まるモチーフの一つでもある。そういうところを回れるのは本当にいいなと思いますし、ホール自体に歴史を感じるところもいっぱいありました。その土地の匂いみたいなものもすごく感じられましたね」

――映像の随所に差し込まれるコメントでリーダーが、"今でもいい意味でちゃんとおびえてます。逆にその恐怖心がなくなったらおしまいだと思う。見てくれる人がいるから意識するし、責任を感じる"とも。

上杉「一本一本にそれだけ集中して、"ならでは"のものにならないとダメだと思ってるし、本当にいろんな人生がそうやって一つの会場に集まってくるから、それぞれがそれぞれにいい時間であってほしい。そこに対して全力でやるのは最低限の礼儀で、そういう気持ちで挑むとやっぱり緊張もするし、いい意味での恐怖心みたいなものは常にあるので。でも、それがあるから頑張ろう、さらに挑んでいこうとなるし、それをずーっと繰り返してる感じで」

――札幌公演で、事前に客席を巡ったときに渋谷くんが会場の傾斜を見て、指を差してあげてないと客席に目線がいってると伝えられないと気付くシーンからも、一本一本のライブを大切にしてくれてるのが分かりました。

渋谷「作品でもそうですけど、"(後ろの方まで)見えてるよ"ともし自分が口にするなら、その景色を本当に知らないといけないし、見えてる先で自分たちがどう見えてるのかも分かる必要があると思うから。だから会場のいろんなところを歩き回って、発する言葉一つにちゃんと重さを持たせられるように...軽薄な言葉が一番怖いし、それは多分相手に伝わると思うので。そこには時間をかけるようにしてますね」

――今回のツアーでは、ライブでのシンガロングが印象的だった楽曲『秘密』('16)が演奏されていて。今や声を出せなくてもちゃんと成立しているのが、今回のツアーの肝な気がしました。

上杉「コロナ禍に入って自ずとセットリストから外れた部分もあったと思うけど、今のタイミングでまた新たなストーリーを...今まで自分たちがやってきたライブのスタイルじゃなくて、『秘密』を入れることに意味があるんじゃないかって。いつもコール&レスポンスをしてから曲に入ってましたから、一番最初のラ〜ラ〜ララ♪から自分たちで歌ってイントロを弾いて曲に入るなんて、もう長らくやってなかった(笑)。新曲ぐらいの感覚でしたよ」

――逆にコロナ禍によって生まれた新たな信頼関係を、ひしひしと感じたシーンでしたね。


僕らがちゃんとカッコいいライブができてたら
マジで一生の自慢にしてほしいな


――広島公演ではいいバイブスが終始流れていて、ライブのMCで広島Cave-Beという小キャパのライブハウスを長年埋めることができなかったという話になったとき、その公演中にスタッフがCave-Beの年内のスケジュールを押さえちゃったあのノリとスピード感(笑)。もう最高のチームだなと思った。

柳沢「あれはもう完全にノリでしたからね(笑)。今回のドキュメンタリーでは、そういう側面も見ていただきたくて。ビーバーってライブが多いよね、なぜならああいうスピードで決まってるからだよって(笑)」

上杉「ああいうノリを楽しいと思ってるし、素敵なことだなと思ってる。ワクワクしちゃうし、それでみんなが"イェ〜イ!"ってなれたらいいじゃんという(笑)」

――後日でもグッとくるけど、あの場で決めちゃうところが最高だったわ。

柳沢「正直、あの日に関してだけは、僕らへの確認もなく決まってましたからね(笑)」

――アハハ!(笑) 藤原くんがあの場で、"うちのスタッフは仕事ができ過ぎるから"と言っていたのにも納得です。

藤原「僕たちが言ったことにうそをつかせないというか、今やりたいと本気で思ってる気持ちを一瞬で分かってくれたから本当に押さえたんだろうし、勝手に(笑)。そういうところもちゃんと読んでくれるチームといると盛り上がるし、すごくいい仲間とやれてるなぁと感じますね」

――松山では、ビーバーの歌詞を10曲選定してさまざまな場所で展示した『道後からあなたへ』という素敵な企画も行われていて。そこでは藤原くんが、"自分の大切な場所だったり思い出のあるところで好きな歌、音楽を聴けるのが、僕がリスナーだったらうれしいから。だから行きたいと思えたし、行っていいライブやりたいなと思えた"と。

藤原「絶対にうれしいですよね。さっきも話した市民会館とかだったら、見に来てくれた人がもしかしたらステージに立ったことがあるかもしれないし、そこに好きで応援してるバンドが来たら、"俺も同じステージ立ったぜ!"とか思うだろうし。そういう場所で僕らがちゃんとカッコいいライブができてたら、マジで一生の自慢にしてほしいな。その会場に行くたび、バンドって楽しいと思ってもらいたいし、ライブっていいなという気持ちになってくれたら」

――そして兵庫県に入って、いつもライブの撮影をしてくれるカメラマンの青木カズローさんが、サングラスを取ったらこんなに目元が優しいんだなということを知るという(笑)。

(一同爆笑)

――名古屋では渋谷くんから、"今日は山を作らなきゃいけない日だったんで、すごい大変だった"と、少々苦戦しつつも充実感がにじみ出る発言もありました。

渋谷「その日の会場の性格は、自分がそこに立ってみるまではやっぱり分からないから、立ったその場で考えて、感じて、決めていく。どのスタンスの人間にもちゃんと伝えたいと思うからこそ、心を開いてくれる瞬間とか、自分の中で一つ山を作れれば...そういうことを考えながら、しっかりと伝えたい、向き合いたいと思った上での発言ですね。絶対にこれだけやっておけば間違いないという答えがないので」

――他にも、ビーバーのスタンスが分かる発言が多々あって、滋賀公演後に渋谷くんが発した、"やっぱり音楽は楽しいし、音楽は悔しいし、全部なんで"というのもいい言葉だなと思うし、岩手公演のときは柳沢くんが、"心から感動する日を一日でも多く作りたい。昨日見に来てた一人にとっては人生で一番感動する日だったかもしれないけど、そればっかりは分からない。俺らはそうであってほしいと思いながら、そのための全力のライブをするだけ"だと。こうやってインタビューする前に、このドキュメンタリーには見出しになるような名言がいっぱいありましたよ。


その日の手応えとか思い出を
胸にずっととどめておかないようにはしてるかもしれない


――さっきは夏フェスで思い出深い箇所を聞いたけど、ツアーに関してそういう場所はそれぞれありました?

柳沢「僕はいろんな意味で初日の千葉、森のホール21 大ホールですね。前日に初めて会場ゲネをやったんですよ。しかも実はここ、『アイラヴユー』('21)のMVを撮った場所でもあるんです。がら〜んとした空間にセットもなければ照明もなくというところに、人の手が加わっていろんなものが足されて、その場を楽しみにしてる人が来るだけで、景色がガラッと変わる。MV撮影にしたときと、ライブをしたときで、全く違う場所に感じたんですよ。目的と準備が違うとこうも違うのかと。それを初めて体感できたので、そういう意味でも面白かったなと思います」

――ちなみに、『アイラヴユー』のMVは何であそこで撮ったんだろう?

柳沢「単純にホールっぽい場所を使って撮りたかったみたいで。他にも候補はあったんですけど、いろんな条件がハマったのがあの会場で、ツアーを組んでるときに"あれ? 『アイラヴユー』のMVを撮った場所じゃん!"みたいな」

上杉「俺は東京のTACHIKAWA STAGE GARDENかな。(『『アイラヴユー』Release Tour 2021 〜圧巻のラクダ、愛のマシンガン〜』ではコロナ禍で延期になって)インスタの生配信ライブを一曲だけやったり、ファイナルの後に追加公演として行ったんですけど、今回は満を持して、ちゃんとツアーの本編でステージに立てたストーリーがあるから。会場の方もすごく親切で、さらに距離がグッと近くなって...そういう独特の感慨深さはありましたね」

藤原「大阪のフェスティバルホールは音がすごくよかったし、ライブに手応えもあったから、あの日のあの感じを"次に行くときに絶対に更新してやる!"みたいな気持ちになりました」

渋谷「選べない...! 不思議な感覚なんですけど、その日のテンションや空気は計画的に作り出すものじゃないから、ライブが終わった後も"あのMC、よかったね"と言われても、"何をしゃべったっけ?"となることも多くて。その場で考えて、その場でパッとしゃべってるから。人との会話に限りなく近いですよね」

――確かにインタビューでも、"あのときの会話が"と言われても、案外覚えてないかも(笑)。

渋谷「ライブに関しては一本ずつ更新したいと思うからこそ、その日の手応えとか思い出を胸にずっととどめておかないようにはしてるかもしれない。それは反省すべきことを忘れるわけではなく、マンネリ化してしまう何かをあんまり自分の中に置いておきたくない感覚で。毎回、新しい気持ちで臨みたいし、その場をしっかり楽しめるように」


バンドマン以前に人としての部分が
どういう形であれ垣間見えたシーンだと思う


――ただね、このドキュメンタリーでは最後に事件が起きるという...。でも、これをあえてカットせずに見せたのがすごいなと。ファイナルの東京の、本当にもう最後の最後で、渋谷くんがやらかしてしまった...。あれはまるで、映画のどんでん返しを見ているかのようでした。

渋谷「自分が歌詞というか、曲の一部をそのまんますっ飛ばした。あれ、何も意識してないんです。だから間違えたことも、(最初は)あんまり分かってなかったんです」

――これが形に残ったら忘れたくても思い出すから、渋谷くんは見るたびにお腹が痛くならへんかなと思った(笑)。怒ってるリーダーも、凹んでる渋谷くんも、なかなか見ることがないし、結構刺激的な映像だなと。

上杉「面白いもので、ドキュメンタリーを撮ってるツアーのファイナルで、ああいうことって起きるんだなと思いましたけどね(笑)。でも、あのまま"イェ〜イ! 最高だった!! 乾杯〜"で終わるより、あのことがあって、チームやメンバーとまた打ち解けて話し合って...結果、よかったなと思ってますね。あの日、家に帰る車の中で俺はもう、あれを踏まえてすごくいいツアーだったんじゃないかという心の充実感の方がよっぽど強かったから」

――ライブって、バンドって面白いね。18年やってもこういうことが起きるから。あと、何かうれしさもあったね。こういう弱さも腹割って見せてくれたリアルが、見る側としては一つの信頼になった気もする。

柳沢「今、奥さん(=筆者)が言ってくださった"信頼"みたいなところは、自分でもちょっと感じるところかもしれないですね。日々歌にしてること、口にしてることの根源がどういうところからきてるのか。だから、こういう言葉になるし、こういう歌になるし、こういう活動の仕方になって、こういう人との向き合い方になる。バンドマン以前に人としての部分が、どういう形であれ垣間見えたシーンだと思う。そこは"信頼"という人間臭さとすごく密接だったと思うし、そういう意味では、ポジティブなものとして伝わるんじゃないかなって」

――言うことは言って、謝るところは謝って、修正するところは修正して。そこにヘンなプライドとか意地が介入しないのは、ビーバーのライブの良さの一つの理由で説得力だなと思いました。そして、渋谷くんに"もう1回やらなくていい? 不完全にならない?"と声を掛ける柳沢くんの優しさ、バックヤードにちょこんと座った藤原くんの表情だけで伝わる、いかんともしがたい何か(笑)。

(一同笑)

藤原「やっぱり普通にやろうとしてたら、平均点を狙ってたら、ああいうことって起こらないですから。勝負してるからああいうことが起きるんですよね。その先に120点が見えたからこそ、今後もガンガンそこを狙っていきたいから、また起こしたくはないけど、また起きる可能性はあるなと思うんですけどね(笑)」

――まさかこんなオチが待ってるとはと思ったけど、ただハッピーなだけじゃない、これぞドキュメンタリーだなと。最終的にしっかり1時間半という尺も映画並みで。

上杉「でも、撮影してる時間を考えたら、もう何分の一だよというぐらいずーっとカメラを回してたので、編集はマジで大変だろうな、よくまとめたなと思いましたよ。あと、このドキュメンタリーを見てもらってからライブを見ると、気持ちの違いがあると思うんです。自分たちは常にこういう感覚でライブをやってるけど、それと同じように、4人のもっと素の部分、ステージに挑むときの姿勢みたいなものを感じてから、ライブを見られる。今までにない感覚を味わってもらえる映像作品にはなってるのかなと思ってます」





好きでいてくれた理由が見つかるような
なるほどなと合点がいくようなものになったと思う


――次の動きもすでに見えていて、11月30日(水)には大人気TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期のオープニングテーマに決定したニューシングル『ひたむき』がリリースされたり。




柳沢「もう年内のみならず、すごくいっぱい...」

上杉「怒濤です! いつのどれの話をしてるのか分からなくなるぐらい(笑)」

柳沢「何せビーバーはいつだってライブの予定が決まってるので!(笑) あくまでそこが主軸であることは変わらない。そこから生まれる何かを、どんどん歌にしていってるバンドだと思うから」

――10~12月にかけては、アリーナツアー『都会のラクダSP 〜東京ラクダストーリービヨンド〜』もあるわけで。

柳沢「こういう規模でのチャレンジが自分たちにはまだまだ少ないし、純粋に楽しんでもらいたいですよね。1年中ずーっとライブをやってきて、タイミング的にも今年のいろんな"あれ、よかったな!"がギュッと詰まってくる気はしてます。東京の有明アリーナも、愛知のポートメッセなごや 新第1展示館も、8本という規模も初めてですけど、経験値は一昨年よりも去年よりも間違いなく今年が一番あるので、今までで一番いいツアーになったらなと思いますね。映像作品に関しては、これまで以上に人となりが分かるものになったのかなと。バンドであり、そのバンド以前に同類の人間が4人いて、SUPER BEAVERをやっているという側面を見てもらえると思うので」

上杉「我々のライブが好きでいてくれる人、曲が好きでいてくれる人、いろいろあると思うんですけど、今回の映像作品は、その好きでいてくれた理由が見つかるような、なるほどなと合点がいくものになったと思うんです。この人となりというか、こういうコミュニケーションから生まれるものと、自分たちの音楽は密接だと思ってるから。18年やってきて、周りからこういう作品を出したらと言ってもらえるようになったのはすごいことだし、そこに魅力を感じてくださる人が増えた証拠だとも思うので。その気持ちに応えられるように引き続きアリーナツアーにも挑んでいきたいので、これからもよろしくお願いしますという感じですね」

――今回のドキュメンタリーを見ていて、リーダーはやっぱりリーダーなんだなって、何か思ったわ。

上杉「そうですか?(笑)」

藤原「アハハ!(笑) 映像には僕からしたらいつも通りの楽屋の3人が映ってるんですけど、見てくださる方にとっては初めて知る新鮮なメンバーなのは面白いなと思いますし、バンドのことはインタビューでお話させてもらう機会があるんですけど、ツアーになるとたくさんのスタッフが関わってくれて、4人だけじゃないいろんな人が映ってるから。そういうところも知ってもらえたら、僕らの言葉だったり音楽が響く意味合いもちょっと変わるのかなと」

――ビーバーが常日頃言ってる"チーム"って、この人たちのことかと思うだろうね。

渋谷「『東京』のツアーは自分にとってもいろいろと思うことがあったツアーで、人に対しての向き合い方が割と変わった、すごくいいきっかけになったツアーだった。スタッフの方に対して、メンバーに対して、見に来てくださる方への向き合い方もいい方に転ぶと思うし、この先もっといいバンドになりたいと思ってるんで」

――渋谷くんが映像の最後に言っていた言葉があって。"自分たちの音楽が及ぼした影響により、その人の人生で笑う回数が増えたら最高だなって思う"と。もう大共感というか、それこそ素晴らしいバンド人生だなと思うし、今作はそういう日々が濃縮された記録という気がします。

渋谷「まぁ真面目なのは絶対に分かりますよね(笑)。普段から口にしてることがうそじゃないという裏付けにもなってると思うし。俺たちがいつだって真剣なのは、きっと伝わると思うから」

Text by 奥"ボウイ"昌史



ライター奥"ボウイ"昌史さんからのオススメ!

前回のさいたまスーパーアリーナのライブBlu-ray/DVDに引き続き映像作品の取材となりましたが、今回はドキュメンタリーが主役というレアな逸品(とは言え、ライブシーンの音質と臨場感も秀逸!)。案外、"バンドって楽しそう! やってみたい!!"と思うのって、ストレートなライブ映像より舞台裏に迫ったこういうドキュメンタリーかも...なんて、UNICORNのはちゃめちゃなビデオを見ながらたぎっていた若かりし頃を思い出しましたよ(笑)。ちなみにメンバーにとってそういう映像があるかを聞いてみたら、渋谷くんは『ブルーハーツが聴こえない HISTORY OF THE BLUE HEARTS』('04)、リーダーはレッチリの『LIVE AT SLANE CASTLE』('05)をセレクト。きっと今作も、誰かにとって同じように忘れられない作品になることでしょう。映像を見て改めて、彼らは自らが発する言葉の重さを知ってるなと思いました。だからこそ、そんなビーバーから言葉を預かる責任も感じたなぁ...。4人の意志、この文章であなたに届いていたら幸いです!

PS. インタビューでツアーファイナルの例の最後の事件に触れた後、如実にしょんぼりしていた渋谷くん、珍しいやらかわいいやら、でしたね(笑)」

(2022年9月30日更新)


Check

Release

生きざまを投影した2424時間に密着!
初のドキュメンタリー映像作品

 
Blu-ray/DVD
『The Documentary of SUPER BEAVER
『東京』 Release Tour 2022
~東京ラクダストーリー~』
発売中 
【Blu-ray】7200円(税別) SRXL-359
【DVD】6200円(税別) SRBL-2064~5
Sony Music Records
※三方背ボックス仕様、
 60Pフォトブックレット付。

<収録内容>
・『SUPER BEAVER 『東京』
 Release Tour 2022
~東京ラクダストーリー~』
ドキュメンタリー映像

・2022.07.05 東京国際フォーラム ホールA
『SUPER BEAVER 『東京』
 Release Tour 2022
~東京ラクダストーリー~』ライブ映像
01. スぺシャル
02. 青い春
03. 人間
04. 突破口
05. ふらり
06. VS.
07. 美しい日
08. 318
09. 未来の話をしよう
10. 愛しい人
11. アイラヴユー
12. 名前を呼ぶよ
13. 東京流星群
14. 秘密
15. 東京
16. ロマン
en. 最前線

Profile

スーパー・ビーバー…写真左より、上杉研太(b)、藤原“34才”広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)。’05年、高校の先輩・後輩である渋谷&上杉・柳沢に、柳沢の幼なじみである藤原を加え東京にて結成。’09年、シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。’11年には所属レーベル・事務所を離れ、’12年に自主レーベルのI×L×P×RECORDSを設立。’14年2月には、eggmanのロックレーベル[NOiD]よりフルアルバム『361°』を、9月にはシングル『らしさ/わたくしごと』をリリース。アニメ『ばらかもん』のオープニングテーマに『らしさ』が起用され、YouTubeの再生回数は2147万回を超える(’22年9月現在)。’18年4月には初の日本武道館公演を開催、即日ソールドアウトし大成功を収める。’20年4月1日をもって結成15周年を迎え、6月にはメジャー再契約後、初のシングル『ハイライト/ひとりで生きていたならば』を、10月にはテレビアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマ『突破口』が収録された第2弾シングル『突破口/自慢になりたい』を、’21年2月には、メジャー再契約後、初のフルアルバム『アイラヴユー』をリリース。数々のチャートにランクイン。収録曲『時代』がNTT西日本のCMソングに。その後も、5月リリースのシングル『愛しい人』がテレビ朝日系金曜ナイトドラマ『あのときキスしておけば』主題歌に、7月リリースのシングル『名前を呼ぶよ』が、人気コミックス原作の実写映画『東京リベンジャーズ』主題歌に起用される。10~11月にかけ、さいたまスーパーアリーナを含む3都市6公演のアリーナツアーを開催し、チケットは完売。'22年2月にはフルアルバム『東京』をリリース。3~7月まで全国ホールツアー、そして10~12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも控える、今最も注目のロックバンド。9月28日には、初のドキュメンタリーBlu-ray/DVD『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~』をリリースした。

SUPER BEAVER オフィシャルサイト
http://super-beaver.com/

Live

1年を締めくくる最大のアリーナツアー
関西は大阪城ホール2DAYS!

 
『都会のラクダSP
~東京ラクダストーリービヨンド~』

【神奈川公演】
▼10月19日(水)・20日(木)横浜アリーナ

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
▼10月25日(火)・26日(水)19:00
大阪城ホール
指定席7300円
立見7300円
GREENS■06(6882)1224
※3歳以上チケット必要(2歳未満でも座席が必要な場合はチケット必要)。

【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼12月10日(土)・11日(日)有明アリーナ
【愛知公演】
▼12月24日(土)・25日(日)
ポートメッセなごや 新第1展示館
 

Column1

「“初めて”を見られなかった人にも
  見た人にも、ちゃんと届けたい」
SUPER BEAVERの
ライブのこだわり、映像のもてなし
『LIVE VIDEO 5
 Tokai No Rakuda Special
 at さいたまスーパーアリーナ』
副音声的徹底ガイドな
全員インタビュー('22)

Column2

「もらった気持ちをもらった
 以上にして返したいんですよ」
17年の全てを伏線に変えてきた
SUPER BEAVERの
ロマンと人間冥利を語る
『東京』全員インタビュー!('22)

Column3

「“飛び級をしてないバンド”
っていうのは今でも変わってない」
言葉に違和感のない活動を
共感だけではなく説得力を――
映画『東京リベンジャーズ』
主題歌『名前を呼ぶよ』
SUPER BEAVERが17年目の勝負
を語る全員インタビュー!('21)

Column4

「もっともっとSUPER BEAVERの
 音楽を身近に感じてほしい」
今SUPER BEAVERが届けたい
ラヴソングを超えたラヴソング!
松坂桃李主演ドラマ『あのときキス
しておけば』主題歌を含む会心の
『愛しい人』を全員で語る('21)

Column5

「僕ららしいし僕らにしか
 歌えないんじゃないかな」
全ての出会いを運命に変えてきた
4人が王道を引き受ける
最高純度のロックアルバムにして
『アイラヴユー』という愛と音楽
SUPER BEAVERが語る('21)

Column6

「歌ってることに恥じない15年を
 4人で過ごしてこれたのかなと」
徹底的に今と向き合う執着と
出会ってきた全ての人との歓びを
感情を歌にするSUPER BEAVERの
イズムとリアルを刻んだ
『突破口/自慢になりたい』
全員インタビュー('20)

Column7

「悔しさだったり、哀しさだったり
 怒りみたいなものも全部捨てずに
 持ってきたからこそ
 今人一倍喜べてる気がする」
痛みもロマンも携えて
SUPER BEAVERがメジャー再契約
『ハイライト/ひとりで生きて
 いたならば』インタビュー('20)

Column8

「目指すべきところの入口に
 立った感がすごいありました」
ライブハウスから
お茶の間に届けこの『予感』!
『僕らは奇跡でできている』主題歌
から飛躍の2018年を語る('18)

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『歓声前夜』('18)
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『真ん中のこと』('17)
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『美しい日/全部』('17)
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『27』('16)
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『愛する』('15)
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『361°』('14)
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『世界が目を覚ますのなら』('13)
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『未来の始めかた』('12)
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