ホーム > インタビュー&レポート > 「思いを声にすることで初めて意志が生まれる気がするんですよ」 誰一人儚くはない人生に届け、真っ向勝負の名バラード! 映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』主題歌 『儚くない』を語るSUPER BEAVER全員インタビュー
見てもらえればちゃんと響く
――6月1日は藤原"35才"広明(ds)くんの誕生日ということで。ふと、ビーバーに初めてインタビューした『未来の始めかた』('12)の頃は何歳だったのかなと思ったら、何と藤原"24才"広明でした(笑)。
渋谷(vo)「24!?」
藤原(ds)「ヤバいっすね(笑)」
――ビーバーのWikipediaに、"10代の頃より老け顔であり、自身の名前の間に年齢を入れて自己紹介を行っている"と書いてあって笑いましたわ(笑)。
藤原「確かにその通りなんで(笑)」
――これはいつ、"え、そうなの!? 若いね~!"に逆転するんだろうね?
藤原「今はどうですか? まだダメってことですか!?」
――まだ...かな(笑)。
藤原「アハハ!(笑) 頑張ります!!」
――そうやって、最近は本当に毎日のようにビーバーがSNSのトレンドに何かしら上がっていて。
渋谷「そんなのつい最近まで考えられなかったことですからね」
――6月3日に大阪城ホールで行われた『めざましテレビ30周年フェス』に出演したときもトレンドに入っていて、それを追ってみると初見の方が結構いたのを感じて。まだまだ届けられる場所があるんだなと。
渋谷「あの日はかなり顕著だったなと思いました。普段出ているバンドシーンのフェスでは知っていただく機会が増えてきましたけど、そういうシーンを知らない方々が本当にまだ大勢いて、その方に対してどうアプローチしていこうかなと今、一生懸命動いていたりもするので。INIとLittle Glee MonsterとDef Techと俺らという並びはかなり特殊だったと思うし、ことさら初めて見る人がたくさんいる環境だったと思うんですよ。でも、見てもらえればちゃんと響くと、ちょっと自信になった一日でしたね。ああいう場にもどんどん出ていきたいなと思いました」
――最新シングル『儚くない』は、その一つのきっかけにも成り得る一曲だと思うんですけど、ラジオでの先行解禁でリクエストを募るという、ある意味、アナログな手法を改めて取っていたのも印象的でした。
柳沢(g)「今はCDリリースより先に配信があったり、リリース日の定義自体が多様化する中で、今回は久しぶりにまずはラジオでしか聴けないというところに立ち返ってみて、やっぱりいいなと思いましたね。全国各地のラジオ局が盛り上げてくれようとしてくれて、聴いてくださる方も"初めてリクエストしてみよう!"とか、一緒になって楽しんでもらえた。どこでも誰でも音楽が聴ける時代ではありますけど、だからこそ逆に聴きにいくというか...そういう人がいるから偶然聴ける人が増えるかもしれないし。何かのきっかけになっていたらうれしいですね」
"ライブハウスの匂い"みたいなものと、"歌を届ける"こと
変わらず大事にしてきたその両方を見せられたら
――『儚くない』(M-1)は、2部作の後編にあたる映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌で。前編の主題歌『グラデーション』('23)に関しては、"前編と後編の橋渡しになるような空気感、どこかに続く要素みたいなものがあれば..."という監督のイメージがあったみたいですけど、今回は?
柳沢「"大団円を迎えるのは後編で、お話自体が完結するから、そういった空気をはらんだものがあればうれしい" と、最初にうかがっていました。ただ、実は順序で言うと『グラデーション』より『儚くない』が先なんですよ。数曲デモをお渡しして、ありがたいことに"『儚くない』を後編でぜひ"と決まって。そこから『グラデーション』が"もうちょっとこういう雰囲気になったらなお、いいですね"という会話もあって、前編の主題歌になったので」
――なるほど、そうだったんですね。そして、『グラデーション』はアグレッシブなロックチューンに仕上がったけど、『儚くない』はそれと対を成す歌い上げる曲に、みたいな意図も柳沢くん的にはあったと。
柳沢「前編/後編でそれぞれ別の主題歌ということだったので、もちろん作品と寄り添うことは大前提なんですけど、せっかくいただいたチャンスなので、やっぱりSUPER BEAVERらしさというか..."ライブハウスの匂い"みたいなものと、どんなところでどういう人と一緒にやろうが、どんなものを好きな人の前でやろうが、"歌を届ける"こと。変わらず大事にしてきたその両方を見せられたらなと。そこで純粋にめちゃくちゃいい曲、ミドルテンポからバラード調のデカい曲を作れたらいいなとは思っていましたね」
――王道のバラードって言葉だったり歌自体の良さが、より厳密に人の心を動かす要素になるから難しいよね。
渋谷「こういうテンポの曲になると、すごく細かいところまで聴こえる=感情の機微を表現する手法も増えるので、速い曲よりも気を遣う部分はあるかもしれない。どっちかと言うと速い曲は、自分の気持ちがどれだけ高ぶっているか、体温がどれだけ上がっているか、みたいなことに重きを置くことが多いんですけど、遅い曲は、どうしたら聴いてくださる人の奥まで入り込めるか、どれだけ染み込ませられるかだと思うんで。なので、日々練習じゃないですけど、そういう歌をこの先も歌えればいいなと、このタイミングで改めて思ったりもしましたね」
――この曲は今聴いて今ドンピシャに響く人も多いだろうけど、5年後、10年後...改めて刺さるタイミングもあるような楽曲だなと思う。それだけ射程距離が長いというか。
渋谷「ただ、めちゃくちゃ難しいのが、(意図的に)遠くに飛ばそうとすると当事者の歌=自分の歌、聴いてくださる方の歌じゃなくなっちゃうようなところもあって。自分の歌の飛距離をちゃんと自分で、もっともっと厳密にコントロールできるようになりたいなと、最近は特に思っていますね」
――その歌が今、自分にとって、聴く人にとって、リアルに響くのはどこなのか。
渋谷「そうそう。歌う方、聴く方の双方が完全にジャストミートするところが絶対にあると思っていて...おそらく答えは出ないと思うんですけど、ずっと模索していますね」
――その瞬間が形になっていたら、自ずと何年後でも聴ける曲になるだろうね。
ロックバンドによるポップミュージックとしての在り方に
より貪欲でありたいと思った
――『儚くない』はデモの段階からピアノとストリングスが入っていて、サウンド面でもしっかりと王道のバラードを作り上げようという意気込みが感じられましたね。
柳沢「今回は本当にいい曲ができたなと思ったので、ロックバンドによるポップミュージックとしての在り方に、より貪欲でありたいと思ったんですよね。SUPER BEAVERの曲を耳にしたことがない人に、"何だろう? 今の曲"と思わせたい。そのためにはピアノやストリングスも、必要とあらば前のめりに取り込んでいきたいと思いましたし、近しいスタッフからの提案で、今回はサウンドプロデューサーの河野圭さんに入ってもらおうという話になって。それもポップミュージックとしての届き方を、より強固にする手段ではあったので」
――今年取材した別のバンドにも河野さんがサウンドプロデュースに入っていて、最近よく名前を聞きます。数いる人材の中で河野さんを選んだのはいったい?
柳沢「スタッフが何人か候補を出してくれて、河野さんはバンドのことを分かってくれるというか、スタジオ内の空気がすごく良かったよというお話を、いろんな方からうかがって。あと、音はもちろんですけど、人間が合わない可能性みたいなところは...俺個人的にやっぱり条件反射のように、アレルギーのように、現場でフラッシュバックするものがあるので(笑)。スタジオでみなまで言わなくとも分かる空気がある中で、何も分からない人がポンと入ってきて、音楽じゃないところで気を遣うのは正直、おっくうだなと思って。そういった心配が一番ない方じゃないかと推薦していただきました。結論から言うと、元あったデモだったり自分たちのアイデアをトリートメントしてくれたというか...それぞれのプレイやアレンジの精度を上げてくれた。とにかく勉強になったなと思っています」
上杉(b)「デモの段階から、より曲の深みであったり、情報量の多さをもってこの曲を説明してあげる方が生きてくるんじゃないかと思っていて。バラードにピアノを入れたりストリングスアレンジをしてもらうことは初めてではないけど、それに+αで自分たちの引き出しだけじゃない音楽家の脳みそが加わったとき、どんなマジックが起きるんだろうとワクワクしながら挑みましたね。音を鳴らして会話をしながら、最終的にはそれが人間としてのグルーヴにもなっていって。最初は河野さんも"鍵盤は後から入れてもいいので"と言っていたのが、"いや、ベーシックから一緒に録ってください。同じバンドのメンバーとしてせーのでお願いします!"みたいな空気感ができたのも大きかった。4人+1人じゃなくて、5人一緒にあーだこーだ試行錯誤しながら作った感じも『儚くない』には入っていて。いい経験でしたし、すごく楽しかったですね」
藤原「河野さんは鍵盤だけじゃなくてドラムも叩けるんで、"こういう感じがいいんじゃない?"と叩いて提案してくれたりもして...それもすごくありがたかったですね。『儚くない』はハイハットが特徴的というか、僕も知らなかった叩き方で、1番ではまず閉じているハイハットをスティックで叩いて押し出して、ちょっとずつ開いていく。2番はさらにそのニュアンスを増やして、最後は全開でいつもの感じで叩く。しかもそのハイハットに、"後からパーカッションをダビングしたらこういう感じにもなるよ"と、最終形の設計図を共有しながらいろいろと見せてくれたりもしたので。自分的には初めての手法だったし、"これでめちゃくちゃ幅が広がるから、今後のSUPER BEAVERはヤバいね!"みたいに楽しく教えてくださって。あと、僕は性格上細かいことまでちゃんと聞きたいタイプなんですけど、"そこまで真面目に考えなくていいよ、音楽なんだから!"って」
――いいね、人柄が伝わる。
藤原「とてもプロフェッショナルなことを、"みんなで楽しくやれば大丈夫だよ"みたいな空気感でやってくれたので、それだけでいい現場だったなと思いましたね。レコーディングの最後も、"ちょっとお茶でも飲んで、休憩しつつゆっくり録ろう。寂しいじゃん、これで終わっちゃうなんて"みたいな感じで、一緒に楽しんでレコーディングに参加してくれたのがうれしかったです」
――ポップスのフィールドで戦っている百戦錬磨の方から、そういうハートが垣間見られると勇気づけられますね。
渋谷「元々、初めてアレンジャー/サウンドプロデューサーを入れる選考段階のとき、"この人は現場に絶対に来てくれる"とか、"こっちの人は現場にはなかなか来られないけど、ちゃんと話をしてくれる"とかプレゼンしてもらったんですよね。河野さんは絶対に現場に来てくれるし、ちゃんとコミュニケーションを取ってくれる人だというのが、俺らの中では一番響いたことなので、それはやっぱり良かったですよね」
柳沢「個人的には、曲を作っていく中でまた新たな相談相手ができた感覚がすごくありました。今までは基本的にはメンバー4人と、ずっと一緒にやってきたレコーディングエンジニアがいて、レーベルのスタッフもマネジメントも全てをバンドに委ねてくれているので=裏を返せば、全て自分たちで決めることになる。そういったところで、アレンジに特化したプロが隣にいてくれて、"ヤナギ(=柳沢)がやりたいことって、つまりはこういうことじゃない?"ってアイデアを投げてくださったり。あとは、ビーバーってレコーディングで音は重ねますけど、結局、ギタリストは一人なので、コード=和音を弾いたときのいろんな構成音は、意外と俺のさじ加減で変えていけるが故に、フレーズがベースとたまに当たっていたり、歌のメロディラインに対してちょっと親切じゃないこともある。でも、それがバンドサウンドで、だからカッコいい部分もあるので全部が全部というわけではないんですけど、今回はちょっとでも"ん?"と思ったらすぐ河野さんに相談して。今までは何となく抽象的にしか言葉にできなかった部分が、こうやって説明できるんだなと分かった。"この音とこの音でこういう空気を出すんだよ"とか、"切なく聴こえる理由はこの音だよ"みたいに、より具体的にメンバー同士で会話ができたのは面白かったですね」
渋谷「今回は3人の演奏に河野さんの影響がすごく出ているんですけど、そもそもSUPER BEAVERのオケって、毎回ほぼ答えが出ているようなものだと俺は思っていて。こういう歌を歌えば絶対に響くという明確なものがかなり見えるんですけど、今回はより迷いがなかった感じですね。歌の道筋を描いていく作業が簡単だった=呼ばれるものがかなり明確だった。その点においても、オケと歌との関係性の大切さを感じたレコーディングだったと思います」
あまりにも濃過ぎる一人一人の生活というか命は
それぐらい重たく尊いものであることを、何とか歌えないかなって
――あと、『儚くない』では生死ついて歌われていて。音楽的なチャレンジをしつつ、メッセージはしっかり重い。
柳沢「『儚くない』では、この命の在り方というか...いずれ終わるのは決定している上で、どう終わっていくのか、終わらせるのか、終わってしまうのか。それを選ぶのか選ばないのか。いろんなものが可視化されてきた世の中で...ただ、それは自分が知らなかっただけで、10年、20年前からずーっと、日々いろんなことがあったと思うんですよ。だからこそ、個人の生活、人生、思考みたいなものを強く思い描く機会が増えたなと。その中で例えば、"人の命は儚いね"とか、"桜、もう散っちゃったね"とか...言わんとすることは分かるんですけど、やっぱり命に関してだけは、"儚いね、あっけなかったね"では終わらせられない。それが10年だろうが80年だろうが、その人にしかない人生があるわけで、儚いの真逆のようなことが毎日起きている。そういったことを曲にしたいなと考えているとき、生まれてきたのが『儚くない』という言葉で。あまりにも濃過ぎる一人一人の生活というか命は、それぐらい重たく尊いものであることを、何とか歌えないかなって。映画『東京リベンジャーズ』自体も、"この人と共に過ごす未来にたどり着きたい"というのがベースにある作品なので、それをきっかけに歌にさせてもらった感じですね。一人一人に理由があるんだと、やっぱり歌にしたかった。それがこのタイミングで書けたのは、すごくうれしかったな」
――"儚い"って言葉にすると美しく感じるけど、ちょっとさらっとしちゃうもんね。
柳沢「でも実際は、思った以上にそんなきれいな話じゃないという。そういうところはちゃんと言葉にしたいなと」
――例えば、生死を歌にするとき、それを匂わせるぐらいにとどめるアーティストもいる中で、死を美化せず、誰にでも分かるように描いて、生死を前に人は無力でも、臆せず物申す。願ったから物事が好転するかは分からないけど、願うことをやめない...この曲はしっかり往生際が悪いし、その素直さに救われるなと。
柳沢「正直、死生観みたいな価値観こそ人それぞれだと思うし、自分の考えはこうだと言えたとしても、それが正しいとも悪いとも言えない。思うことはあれど、うかつに伝えられないことのかなり上位にある話だとずっと思っていたぐらいで。でも、じゃあ口を閉ざすのか? 何も伝えないままでいいのか? この曲を押し付けるつもりも、これが正解のつもりもないけど、こう思っている人がそばにいることが伝わってほしいし、それ故に、最後に"ごめん やっぱり思っちゃうよ"って書いちゃうんだと思いますし」
上杉「"往生際が悪い"という話が出てきましたけど、それがまさにヤナギ(=柳沢)のパワーの一つで。個人的には、分かり合えないことに対して、"もういいや、こっちはこっちでやるから"って突っぱねて考えちゃうこともあるんですけど、この歌の"でも、認めたくないし信じたい"という強い意志表示に、よりヤナギ節が出ている気がしました」
――"しょうがない"とかで終わらせない。違和感を見つけてちゃんと言葉にする。
藤原「そこがヤナギっぽいし、"しぶとく"というのがSUPER BEAVERっぽいなと思う。時にその姿が他人からはきれいに見えなくても、自分たちはやっぱり必死に、しぶとく、頑張って生きていきたい。"しょうがない"と言ってしまうのは簡単だし、僕もそう思ってしまう気持ちもなくはないんですけど、本当の本当は、そんなふうに言いたくないし、したくないし、生きたくないから。そういう方って僕ら以外にもたくさんいると思うんですよ。だからこそ、"それでも"と願うヤナギの歌詞が響くと思うので。届いてほしいなと思いますね」
――世の中やSNSのムードから、"俺たちが何を言ったって変わらない"みたいに思い込みがちだけど、音楽というツールを通して声を上げ続ける人がいれば、力になるかもしれない。ビーバーにその役割を全て担わせるわけではないけど、ビーバーがいてくれることは一つの勇気であり安心感で。
柳沢「今まで歌ってきた他の楽曲もそうで、俺らが何か言ったって変わらないかもしれないけど、言わないで物事が悪化するぐらいなら、言うことで何かが変わるかもしれない方に賭けたい。思いを声にすることで初めて意志が生まれる気がするんですよ。言葉をすごく大事にしているバンドだからこそ、そう思います。自分たちの思うことを何も言わないままなのは、やっぱり何かちょっと違うと思うし、ただ、価値観とか思考の違う人にとっては、ともするとそこに痛みが伴うかもしれないから、できる限り想像力を働かせたいのはありきで。それが人と一緒に生きることなのかなという気もしますし、そういうところはいつだってシビアに、ちゃんと考え続けるバンドであれたらなと」
――いやもう、ビーバーが続くかどうかは本当に他人事じゃなくなってくるよね。もしビーバーがいなくなったら音楽シーンどころか日本の損失だわ(笑)。
(一同爆笑)
柳沢「そんな天然記念物みたいな(笑)」
――このバンドの、このメッセージがない世の中を想像したとき、ちょっと怖くなる。"誰かが代わりに歌ってくれるかな? こういうこと"って考えると...本当にいない気がする。
柳沢「ありがたいですね」
上杉「すごい言葉をいただいた気がします」
――たださ、『儚くない』っていうタイトルは、何かヘンだよね?
(一同爆笑)
――"それでは聴いてください、『儚くない』"って何か。
柳沢「まさに同じことをぶー(=渋谷)も言っていました(笑)」
――例えば、"嫌い"と"好きじゃない"って、ちょっとニュアンスが違う。"儚い"に対してはそういう言葉がないもんね。"儚くない"しかないというか。
柳沢「実は今回、タイトルについては結構いろいろと話し合って。ぶーが一番"『儚くない』で本当にいいのか?"と言っていましたね。でも俺は、この感情を表すのに『儚くない』以外の言葉がどうしても見つけられなかった。"あらがいたい"というのが全面に出ている言葉で、良くも悪くも違和感はあるタイトルだとは思います。けど、"儚いよね、生きるって"ということ自体を否定したい気持ちからこの歌は始まっているから、そうなってくるとやっぱり、『儚くない』が自分の書きたかった感情とマッチするんですよね」
ここ数年の、"オケを聴いてめっちゃワクワクしたトップ3"に入りました
――『グラデーション -Acoustic ver.-』(M-2)は、もはや定番になってきたカップリングでのアコースティックバージョンですが、意外と明るくて。原曲にダークなイメージもあったから、ちょっと予想外のアレンジでした。
柳沢「試しにアコギ一本で『グラデーション』を弾いてみたら、"荒野をさすらう男"みたいになっちゃって(笑)。だったら、思い切ってコードを変えてみようと。全体的に全てが原曲の逆をいった感じがしますね。コード感もすごく開いたし、少しずつ音が増えてグラデーションしていく感じだったのが、割と最初からみんなの音がいたり、どっちかと言うと不穏な空気だったアレンジから、ふわっと日が差し込んでくるような印象のサウンドになった。結果、すごくいいアレンジになったと思いますね」
――リリースからこれだけ早いタイミングでリアレンジしたのも初めてじゃない?
柳沢「そもそも、ライブでもまだ数回しかやってなかったぐらいですからね」
藤原「今回はアレンジするタイミングが近いのもあって、『グラデーション』のために僕が考えたことはもう全部元の『グラデーション』に入っちゃっているので、どうしようかなと。だからスタジオで、みんなフラットにゼロから作ろうぜということになったんですよ。実は細かいことをいろいろとやってはいて、例えば"キックのタイミングを一拍変えよう"とか、みんなでバーッと意見を言い合って、できるだけアイデアを広げまくって、それを全部足していったら、僕も叩いたことがないしメンバーも聴いたことがないようなフレーズとかアレンジになっていった感じですね。結構ダビングもしたので、ちょっと特殊な感じにはなっているかなと」
――今までのアコースティックバージョンの中でも、一番変化が感じられた曲かも。
渋谷「『グラデーション -Acoustic ver.-』は、ここ数年の、"オケを聴いてめっちゃワクワクしたトップ3"に入りましたね。初めて聴いたとき、"ヤバッ!"ってなりましたから。だから歌うのが楽しみでしたし、すごくいい出来だと思うんですよね。歌う前から自信があったし、歌った後にはもっと自信が持てるような一曲になったと思います。オリジナルバージョンとは全然違うかじの切り方がいいですよね。オリジナルバージョンは、どこか室内音楽感があるんですよ。外の環境に影響されない曲というか」
――確かに、ちょっと密室感、閉塞感みたいなピリピリした緊張感はあるもんね。
渋谷「でも、『グラデーション -Acoustic ver.-』は曲の中にちゃんと風が吹いている。外の気温や状況に影響を受けまくっているような...それがすごくいいなと思ったんですよね」
この規模の野外ワンマンをここで2日間打てたら
自分たちもワクワクできるだろうし
見に来てくださる方も楽しんでくれそうだなって
――7月22日(土)・23日(日)山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催される、過去最大キャパにして初の野外ワンマン2DAYS『都会のラクダSP 〜真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち〜』もいよいよ近づいてきて。まず、なぜこのライブをやろうと思ったのか、なぜ富士急なのか。
渋谷「"野外のデカい会場でやりたかった"というよりも、"こんな面白い会場があるよ"って聞いたのでやってみようかと。ライブハウス、ホール、アリーナとやってきて、まだまだいろんなことをやってみたい。それこそ今年は初のアコースティックツアーから始まったし、そういう会場で、しかもこの規模感で、というのを聞いたとき、"めっちゃ面白そうじゃん!"というところから始まりました。だから正直、マジで縁も所縁もないです(笑)。けど、この規模の野外ワンマンをここで2日間打てたら、自分たちもワクワクできるだろうし、見に来てくださる方も普段とは違う楽しみ方をしてくれそうだなって。それこそ単独公演ですけどフェスっぽかったりするのは、自分たちが今までにやっていないことだし。ステージは富士急ハイランドの隣というか、その敷地内にあるんですけど」
柳沢「富士急ハイランドがそもそも超デカい遊園地なんで」
上杉「だからライブとセットで遊べるということですね(笑)」
――キッチンカーの出店やオフィシャルドリンクバーの設置に加え、リーダー(=上杉)考案のフードブース『Yummy!Yummy!』やアパレルブランド『LEADER』のポップアップ、柳沢くんによる『やなPUB』、友の会(=FC)の縁日エリアを藤原くんがプロデュースしたり...準備は順調に進んでいるんですか?
柳沢「今まさに絶賛やっていますね」
藤原「マネージャーたちが大変そうです!(笑)」
上杉「俺はこの後またブランドの担当の方に会いに行ったり、時間さえあればコツコツ毎日準備していますね」
渋谷「俺はよく着させてもらっているアロハのブランド『NIPOALOHA』とコラボして、当日に着る限定のシャツを作って。それを抽選受注で買えるようにしようかなって」
――7月30日(日)には『FUJI ROCK FESTIVAL '23』のGREEN STAGE出演も控えていて。『アイラヴユー』('21)のインタビューで俺は、"『パラドックス』はカサビアンの『クラブ・フット』('04)的な雰囲気もしたし、この曲なら『FUJI ROCK FESTIVAL』に出ても違和感がない。GREEN STAGEでこの曲をやってほしいわ"と言っております!
渋谷「あ、すごい!」
――なので、『パラドックス』は絶対にやってください(笑)。
(一同爆笑)
渋谷「これはもうインタビューのやりとりじゃないじゃないですか(笑)。ヤバいなぁ~」
上杉「要望ですね(笑)」
――『パラドックス』、GREEN STAGEでやったらめっちゃ映えると思うんだよね。
柳沢「確かにカッコよさそうですね」
――ビーバーのああいう一面を見てもらいたいのもあるし。ちなみにフジロックには行ったことがある?
渋谷&上杉&藤原「ないですね」
上杉「俺はあえて出るまで行かないと決めていました」
柳沢「俺は1回だけありますね。ただ、ちょうど'14年に体調を崩して入院する直前で。だから、行ったはいいけどめちゃくちゃ体調が悪かった思い出が(笑)。でも、空気感は経験しました。めちゃくちゃ気持ち良かったな」
――あそこは地上で天国に一番近い場所だから(笑)。いやでも、フジロックは人気があっても誰もが出られるわけじゃない洋邦混合のフェスだし、そこにビーバーが、しかも最もデカいステージに立てるなんて。
渋谷「俺らはROOKIE A GO-GO(=フジロックの新人の登竜門ステージ)も踏んでないですからね」
柳沢「いやマジで、当日はどうなるのか分からないですけど」
上杉「気合いが入りますね...頑張ります!」
何だかずっと元気ですよ(笑)
――その後は、8月3日(木)宮城・SENDAI GIGSを皮切りに、対バンツアー『都会のラクダSP 〜サシ飲み五番勝負、ラクダグビグビ〜』と。前回のインタビューで自主企画『現場至上主義2023』の話もしましたけど、やっぱりフェスに出る100組としての共演じゃなくて、ツーマン、スリーマンぐらいのビーバーをもっと見たいと思ったから。ああいう対バンのビーバーが一番破壊力があるんじゃない?
渋谷「よく言われます!」
――しかも今回は各地バチバチのツーマンで。対バン相手に、マカロニえんぴつ、Saucy Dog、DISH//、ハルカミライ、My Hair is Badの5組を選んだのは?
渋谷「今回は"若い子とやろうぜ!"って(笑)。自分たちが『現場至上主義』で呼ぶバンドって、ライブがカッコいいとか、この人のライブを見たいなと思う=必然的に年上になっちゃうんですよね。そういう目で見てきた人たちと一緒にやりたくて『現場至上主義』を始めたから。ただ最近は、年下のバンドから感化されることも多いし、自分たちと違う層のお客さんもにも俺らのことを見てほしい思いもありましたし、逆もじゃないですか? そういう対バンの醍醐味をしっかりと詰め込んだバンドをそろえられたなと」
柳沢「北村匠海(vo&g)くんのいるDISH//が一番若くて、25歳とかじゃない? ビックリしますよね」
渋谷「彼は音楽に対してもすごく真面目ですからね。ビジョンがしっかりしているから」
――最近、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の舞台挨拶の流れで、彼の方から"ビーバーのMVに出たい"と言ってくれて...! これはうれしい発言でしたね。
渋谷「いや〜それがTVで放送されちゃいましたから! やったぜと思いました、本当に(笑)」
藤原「すぐ回収しますよ!(笑)」
――気が変わらないうちに形に(笑)。
渋谷「気が変わったとしても、あの映像があるから。裏付けがいっぱいあるんで(笑)」
――ヤな先輩の詰め方じゃん(笑)。あとは各地の夏フェス出演はもちろん、追加で発表された『SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~』が来年まで続くと。毎回、"だいぶ先までいろいろと決まっているので"と聞いて、実際に発表されるたびにマジでそうなんだなと思うね(笑)。
柳沢「'24年なんてもうほとんど決まっていますから!(笑)」
――毎日のようにライブがあるこのスケジュールで、みんな本当によく体調管理ができているね。常に自分が元気にパフォーマンスできる状態をキープすることの難しさを最近改めて感じるから、ビーバーってすごいなと。
渋谷「今はそれが一番大変なことかもしれないですね。俺はバンド歴よりずっと長くトレーニングはしているので」
上杉「だから、よく食べて、よく動いて、よく寝る、を毎日やるのが仕事ですね。いかにスタミナを貯蓄できるかはいつも考えていることで。それもやっぱり精神性とリンクしていますから。睡眠も10時間以上取りますし」
――素晴らしい。声とかは、ちょっと風邪を引いたらすぐに出なくなるから怖いよね。
渋谷「コロナとか関係なく、風邪を引いたら終わりなんで。1日1公演でも声が出なかったら、そこからマジでずっと治す時間もないので、本当に気を付けています。でも、どのお仕事でもそうなんだろうな。これも俺の一つの役割だし、楽しくできているので。何だかずっと元気ですよ(笑)」
――ビーバーは今30代半ばだから、これからもバンドを長く続けて、まずは藤原"60才"広明になるまで(笑)。
柳沢「アハハハハ!(笑)」
藤原「丈夫に産んでくれた母ちゃんに感謝して頑張ります!」
Text by 奥"ボウイ"昌史
ライター奥"ボウイ"昌史さんからのオススメ!
「分かり合うこと、伝えることを諦めず、"それでも"と願う。今回の新曲『儚くない』からは、そんな柳沢くんのソングライターとしての執念と、人としての信念、理想をむちゃくちゃ感じたな。どうせなら、死にざまではなく生きざまを、どう死ぬかではなくどう生きるのか。ゴールは決まっていても、どんな過程を選ぶのか...そういった意味では、『グラデーション』に通じるものも存分にある、新たな名バラードの誕生ですね。MVも四季折々の雪、花びら、枯葉が舞って雨、そして光へと移り変わっていく光景がドラマチックで、文字の出し方もイケてる。あと、今年は私、4年ぶりにフジロックに行きますよ! ビーバーのGREEN STAGE、どんなライブになるのか楽しみだわ。そこら中のみんなと乾杯したいわ(笑)。ただね、コロナ禍も落ち着いて、ほぼほぼ通常運転になった世の中に体がビックリしてるのか、最近は風邪を引いてもなかなか治らない。だからこそ、あれだけのハードスケジュールをこなすビーバーに、マジすげーわと感心しきり。残り約1カ月で完璧なフィジカルに調整して、夏のビーバーのお楽しみに挑みたいところです!」
(2023年6月29日更新)
Single
『儚くない』
【初回生産限定盤Blu-ray付】
発売中 3000円
Sony Music Records
SRCL-12553~4
<収録曲>
01. 儚くない
02. グラデーション -Acoustic ver.-
<Blu-ray収録内容>
・儚くない Music Video
・儚くない Music Video
-Behind The Scenes-
・グラデーション Music Video
・名前を呼ぶよ
SUPER BEAVER×東京リベンジャーズ2
Music Video
・SUPER BEAVER×東京リベンジャーズ2
Music Video -Behind The Scenes-
※特典映像のみプレイパス対応
【通常盤】
発売中 1100円
Sony Music Records
SRCL-12555
※ジュエルケース
<収録曲>
同上
スーパー・ビーバー…写真左より、上杉研太(b)、藤原“35才”広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)。’05年、高校の先輩・後輩である渋谷&上杉・柳沢に、柳沢の幼なじみである藤原を加え東京にて結成。’09年、シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。’11年には所属レーベル・事務所を離れ、’12年に自主レーベルのI×L×P×RECORDSを設立。’14年2月には、eggmanのロックレーベル[NOiD]よりアルバム『361°』を、9月にはシングル『らしさ/わたくしごと』をリリース。アニメ『ばらかもん』のオープニングテーマに『らしさ』が起用され、YouTubeの再生回数は2290万回を超える(’23年6月現在)。’18年4月には初の日本武道館公演を開催、即日ソールドアウトし大成功を収める。’20年4月1日をもって結成15周年を迎え、6月にメジャー再契約後、初のシングル『ハイライト/ひとりで生きていたならば』をリリース以降、数々のタイアップ曲を担当。’21年7月リリースのシングル『名前を呼ぶよ』は、人気コミックス原作の実写映画『東京リベンジャーズ』主題歌に起用された。10~11月には3都市6公演の初のアリーナツアーを開催し、チケットは完売。'22年2月にはフルアルバム『東京』をリリース。3~7月まで全国ホールツアー、そして10~12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーを再び開催。11月には、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期オープニングテーマとなった『ひたむき』を、’23年4月には、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の主題歌『グラデーション』を、そして6月28日には、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌『儚くない』をリリースした。7月22日(土)・23日(日)には、過去最大キャパにして初の野外ワンマン2DAYS『都会のラクダSP ~真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち~』を開催する、今最も注目を集めるロックバンド。
SUPER BEAVER オフィシャルサイト
http://super-beaver.com/
『都会のラクダ HALL TOUR 2023
〜ラクダ紀行、ロマン飛行〜』
【高知振替公演】
▼7月3日(月)高知県立県民文化ホール
オレンジホール
【東京振替公演】
▼7月5日(水)TACHIKAWA
STAGE GARDEN
【山梨公演】
『都会のラクダSP
〜真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち〜』
Thank you, Sold Out!!
▼7月22日(土)17:30
チケット発売中
▼7月23日(日)17:30
富士急ハイランド・コニファーフォレスト
指定席8000円
ディスクガレージ■050(5533)0888
(平日12:00~15:00)
https://info.diskgarage.com/
e+■050(3101)7711(10:00~18:00)
※3歳以上チケット必要(3歳未満でも座席が必要な場合はチケット必要)。お客様を含む会場内の映像を配信させていただき、写真が公開されることがありますのであらかじめご了承ください。
※雨天決行・荒天中止となります。公演途中での中止の場合、払戻しはいたしませんのでご了承ください。
『都会のラクダSP
〜サシ飲み五番勝負、ラクダグビグビ〜』
【大阪公演】
▼8月3日(木)SENDAI GIGS
マカロニえんぴつ
【愛知公演】
▼8月7日(月)Zepp Nagoya
[共演]Saucy Dog
【香川公演】
▼8月24日(木)レクザムホール 大ホール
[共演]DISH//
【大阪公演】
▼8月31日(木)Zepp Osaka Bayside
[共演]ハルカミライ
【福岡公演】
▼9月14日(木)Zepp Fukuoka
[共演]My Hair is Bad
『都会のラクダ TOUR 2023-2024
〜駱駝革命21〜』
【広島公演】
▼9月29日(金)・30日(土)
広島文化学園HBGホール
【宮城公演】
▼10月14日(土)・15日(日)
仙台サンプラザホール
【福岡公演】
▼10月21日(土)・22日(日)
福岡サンパレス
【新潟公演】
▼10月28日(土)・29日(日)
新潟県民会館 大ホール
【愛媛公演】
▼11月11日(土)・12日(日)
松山市民会館 大ホール
【北海道公演】
▼11月18日(土)・19日(日)
札幌文化芸術劇場hitaru
【愛知公演】New!
▼2024年1月27日(土)・28日(日)
日本ガイシホール
【大阪公演】New!
▼2024年2月10日(土)・11日(日)
大阪城ホール
【埼玉公演】New!
▼2024年3月23日(土)・24日(日)
さいたまスーパーアリーナ
『ハイライト/
ひとりで生きていたならば』('20)
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『予感』('18)
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『歓声前夜』('18)
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『真ん中のこと』('17)
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『美しい日/全部』('17)
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『27』('16)
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『ことば』『うるさい』『青い春』('16)
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『愛する』('15)
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『361°』('14)
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『世界が目を覚ますのなら』('13)
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『未来の始めかた』('12)
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