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もう一度音楽を取り戻せ! メジャー離脱、自主レーベル設立、
未来を始めるために今を生きる起死回生のアルバム
『未来の始めかた』をリリースしたSUPER BEAVERが
バンド崩壊の内幕からその復活劇を語る怒涛のインタビュー

 夜が、明ける――。SUPER BEAVERのニューアルバム『未来の始めかた』は、まさにバンドとして新たな未来へと動き出したことが分かる躍動感と、葛藤を越えた覚悟を鳴らす素晴らしいロックアルバムに仕上がった。’09年にまだ10代の内にメジャーデビューと聞けば恵まれていると思う人もいるだろう。だが、そこに待っていたのは順風満帆なロックンロールライフではなく、音楽をやる意味を見失いバンドが崩壊寸前にまで追い込まれるほどの苦悩と困難の日々…。遂にはメジャーを離脱、所属事務所をも離れたバンドをドン底から這い上がらせたのは、昨年を通して自らに課した膨大なライブデイズだった。そこで今では自主レーベルを設立し、『未来の始めかた』を引っ提げ全国各地で強烈なライブを展開中の彼らに、バンド崩壊の内幕からその復活劇、隅々まで自分たちの熱い血を通わせた新作に至るまでの怒涛のストーリーをインタビュー。未来を始めるために今を必死に生きることが、いつしか過去=礎となる。そんな輪の中で瀕死のバンドが再び息を吹き返し放った起死回生の一撃は、シーンに何を伝えるのだろう?

メンバー勢揃いの動画コメントはコチラ!

――ニューアルバム『未来の始めかた』は、今までのリリースとはやっぱり違うというか、積み重ねた想いがあると思いますが、今の率直な気持ちをそれぞれ聞きたいなと。

 
渋谷(vo)「自主レーベルになったとはいえ、実は“ここから始まるんだ”とか“新たな気持ちでやっていこう”っていう考えは実はあんまりなくて、一区切りという感じにしか思ってないんですよね。ただ、お店に並んでる様子、聴いた人の意見をTwitterやら何やらで見ていると、やっぱり今回はすごく反応がよくて、今まで聴いたことがなかった人にも伝わっている感触があって。言ってしまえば、大人の影響下にいない状況で自分らだけの感覚で作り上げた音楽を、素直に評価していいと言ってくれる、気に入って聴いてくれた人がいるのは、とても嬉しかったですね」
 
柳沢(g)「曲を作ることもそうだし、このCDを作るというパッケージ作業も、どういうデザインにしようか、どこでプレスしようか、自分たちの力で出来るプロモーションは何なのか…そういったことも全部考えて動いたので、出来上がったときはホントにワクワク感がありましたね。リリースからプロモーションまでの一連の流れを実際にやってみて、自分たちの知らない部分がまだまだいっぱいあるというか。最終的にどうやって店に置いてもらうのかという全行程を経てリリースしたんで、やっぱり思い入れがあるというか、売れて欲しいな! 売りてぇな!っていう気持ちが自然と出てきましたね。しかも自信作というか、とても大好きな作品が出来たので」
 
――不思議なもんですよね。メジャーという音楽を売る場所にいた頃よりもむしろ、それを離れて自分たちでやった今そう強く願うっていうのは。
 
渋谷「多分、僕らにいたっては“順序”だったと思うんですよね。割と初期の頃から大人の影がチラついて、右も左も分からない状態でメジャーに放り込まれて。メジャーの世界を最初に知っちゃって、自分らだけでいざインディーズシーンを体験してみて、やっぱ地に足付いた活動をすることがいかに大事だったのか気付けたのはホントにデカかった。だからこそ、売れろ!! 届いて欲しい!!って強く思いましたね」
 
藤原(ds)「メジャーレーベルにいたときって、完成してから発売日までの過程は自分たちでタッチしないんで、気付いたらリリースされていて、その頃には熱が冷めてるとまでは言わないですけど、そういう感覚のズレがいつもある気がしてたんです。今回はそういうことにも自分たちが関わって、どうしよう?ってみんなで相談もしたし、いざ発売日が来たら、“今までで一番いいじゃん!”って言ってくれる人もいて。じゃあこのアルバムをこれからさらに広めるにはどうしたらいいんだろう?って、今は考えてる感じですね」
 
上杉(b)「さっき順序が違ったっていう話がありましたけど、それこそ去年メジャーレーベルを離れると決めて、各地のライブハウスとかいろんな方に、改めて“SUPER BEAVERはこういうバンドなんだ”って知ってもらうために、いっぱいライブをしたんです。それに対してお客さんもちょっとずつ付いてきて、じゃあ次のステップとしてはやっぱりリリースをしたい。最初は事務所やレーベルを探そうかという話もあったんですけど、やっぱり自分たちにとって一番いいタイミングでリリースをしようと。そういう下地みたいなものがあった上での今回のアルバムだったんで、何だろう…本当にリアルな、今の自分たちのそのまんまというか。メジャーのときは、自分たちの作品なんだけど、どこか自分たちのモノに成り切れてなかったというか、ちょっとした距離感みたいなものがあったと思うんです。逆に言うと、この形でメジャーでやれてたらどうなってたんだろう?とか、そういうことも今さらながら考えさせられましたね。いずれはそういうことも視野に入れたいとは思いますけど、とりあえずはまず自分たちが思いっ切りやって、活動とリンクをしたリリースが出来た。自主でもこれだけ展開出来たのはホントに感慨深いというか」
 
――リリース日がいついつだから、いつまでに何曲作ってくださいっていうのとは全然違うと。
 
柳沢「ホントにそうっすね。まぁ全部経験したからこそ言えることなんですけど。いわゆるメジャーレーベルが全部が全部悪いわけじゃないと思うし、お陰さまで学んだこともいっぱいあって。ただ、よく考えたら何のための制作なのか分からなくなることもあったんで」
 
――SUPER BEAVERの存在はもちろん知ってましたけど、でも、ホントに最近はよく“今のSUPER BEAVERのライブはヤバい”って聞くようになりましたよ。
 
柳沢「ホントですか?」
 
渋谷上杉「おぉ~嬉しい!」
 
――でも、それって今までは聞こえてこなかった声なんですよ。そういう声がここ1年頻繁に関西にも届くっていうことは、やっぱり“変わった”んだなってすごく思いましたね。
 
渋谷「やっぱり今回の作品だったり、こうやって自分たちが動き始めることで関係が密になって、それこそライブに顔を出してくれたり、力を貸してくれる人も増えて」
 
――自分たちが変われば、周りも変わる。
 
柳沢「今までは多分、僕らの実態が分からなかったと思うんですよね(笑)。どういう“人となり”なのかっていう」
 
渋谷「SUPER BEAVERは自分らの意思でやってるのか、やらされてるのか、みたいな見え方をしていた部分もあったと思うんです。それを払拭するじゃないですけど、“ライブ観てくれたら分かる”ってずっと思ってた。去年はライブを地道に続けてきて、結果そういう風に“ライブがヤバい”って言ってくれる…僕はライブを評価されるのが一番嬉しいですから。こうやって自分たちで動いてることに正解も不正解もないと思うんですけど、やってよかったんだなぁっていうのは思いますね」
 
――それこそさっき、“SUPER BEAVERはこういうバンドなんだ”って伝えるためと言ってましたけど、具体的にバンドのどの部分を伝えるために各地を廻ってたと思います?
 
上杉「柳沢の歌詞であったりメロディであったり渋谷の歌があった上で、4人がそこに集約したエネルギーをバンッ!とぶつけるみたいな感覚…あと、CDとライブの印象が全然違うってずっと言われ続けていたんですね。今は全部一発録りで録ってるんですけど、それまではプロトゥールスを駆使したリズム録りから、結構細かくやっていて。それはそれで今の主流なのかもしれないですけど、僕らがライブでやりたい、なりたいバンド像が、CDを手に取った人には全く伝わってなかった。だから各地のライブハウスの人にも“こんなバンドだったのか”とか“ライブバンドじゃねーか!”って言われたりして(笑)。それを少しでも分かってもらうには、生で観てもらうしかないんだなって。前作『SUPER BEAVER』(‘10)のコンセプトが“ライブとCDの一体感”というか、そのギャップをなくしたいのがあったんで、その盤を持って去年は全国を廻ってたんですよ。これを聴いたら今の僕らが分かると思うって」
 
柳沢「曲も演奏も何にしてもそうですけど、日常生活の中での手の届く部分をピックアップして、何故そういう感情になったかまで、ちゃんと分かった上で先が見える歌というか。いい先であろうと悪い先であろうと、先を見るためには今をちゃんと見ないといけない。僕らのライブはそれを体現してるというか、ホントに誠心誠意、精一杯表現してこそ=SUPER BEAVERだと思うので。例えば、僕らが思ったのとは違う意図で受け取ったとしても、何かしら共鳴して一緒に歌うシンクロ感は、単純に楽しいし素敵なことだと思うし。そういうところでつながる人と人との関係性もやっぱ大好きだなぁって、改めて感じましたね」
 
 
あんまり怖いものがなくなっちゃったんですよ
 
 
――ここ1~2年はバンドにとっても激動の時期だったと思うんですけど、単純に事務所やメジャーレーベルを離れるということはやっぱり一大事というか。何せバンドの活動自体…。
 
渋谷「死活問題になるところはやっぱりありますからね」
 
――そのタイミングで脱退するヤツもいたり、解散したりするバンドもいっぱい見て来た中で、ちょっとさかのぼって具体的にどうして事務所やレーベルを離れることになったのか、そしてどうして自分たちでやろうと思ったのかを聞かせてもらいたいなと。
 
柳沢「まぁメジャーデビューして、レーベルが決めたリリースタイミングありきの楽曲製作があって、こういうバンドみたいな曲を書けとか、こういうボーカルみたいな歌い方をしろとか、そういう注文がものすごく増えてきて」
 
――そんな具体的に言うんや。まぁ分かりやすいけど(笑)。
 
渋谷「分かりやすいけど、ただのストレスですからね(苦笑)」
 
柳沢「まぁ楽曲製作や歌詞のやり取りは誰にだってあるにしても、一番最初に自分から湧き出てくるのは少なからず“歌いたいこと”なわけで。なのに“その部分は要らない”っていったいどういうことなんだろう?みたいな。とは言え僕らはまだ10代だったんで、まぁメジャーとはこういうものなんだろうと。でも、そうなってくるとメンバーの仲もホンットに殺伐としてきて、2枚目のシングル『二つの旅路』(‘09)の頃にはもう、バンド内がものすごいことになっていて。先輩のツアーに連れて行ってもらった打ち上げの後、ホテルの中で殴り合いになったり(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 若いね~。
 
柳沢「そういうのが続いて、ストレスがどんどん溜まっていって…。でも、“このやり方はやっぱり違う”と認めた瞬間に、ここまでやってきたことが総崩れするような気がして…“俺らの経験がまだ足りてないからだ!”って無理に言い聞かせてたところはあったんですよ。でも、最終的に1stアルバム『幸福軌道』('09)のレコーディング中に渋谷が倒れたんですよ。リアルに救急車で運ばれて」
 
渋谷「ずーっとつまんなくて、つまんないつまんないつまんない、辞めたい辞めたい辞めたいってずっと思ってて」
 
柳沢「(笑)」
 
渋谷「そんな状態で録り終わった自分の歌を聴いたら、めっちゃくちゃ気持ち悪くなっちゃって、動けなくなって」
 
柳沢「イスから転げ落ちるように倒れて、入院と(苦笑)。その日のレコーディングはとりあえず中断になって、渋谷が“辞めたい”と言っているのを聞いて…当時のマネージャーがこれを機にホントに腹を割って話した方がいいって、4人集まってみんながみんな思うことを言って」
 
上杉「そのときにやっとみんなで話したんですよ。各々がやらなきゃいけないこともあったし、いつの間にか干渉しないようになっちゃって…離れ小島みたいになってたんですよね」
 
柳沢「やっぱりこれはおかしいと。そこで話し合って、“元々俺たちが歌いたかった歌は、やりたかった音楽はこういう音楽じゃない!”って直談判したら、レーベル内の体制を変えてくれたんですよ。でも、細かいところまで言うと、時すでに遅しというか、前体制のときに2年間で使い切るはずの予算を1年で使い切ってたんですよ。3枚目のシングル『シアワセ』(‘09)はインディーズの頃からの大事な曲で、“その曲にピークを持っていこう! その後にアルバムでトドメを刺そう!”って言ってたんですけど、そのアルバムを出す頃には、もうポスターすら作れない(笑)」
 
(一同爆笑)
 
上杉「自費でポスター刷りましたからね。メジャーなのに」
 
――マジで!? それもすごい話やな…。
 
柳沢「もちろん悪い人ばっかりじゃなくて、むしろいい人ばっかりだったんですけど、その頃にはもうレーベルも“SUPER BEAVERはインディーズで自分らでやった方が…”って…まぁそれは同時に=これ以上出来ないよっていうことなんですけどね。でもそのときに歌いたい歌がいっぱいあったんで、最後にちょっとワガママを言って出させてもらったのが、前作『SUPER BEAVER』なんですよ。それがさっき話にも出た、ライブ=音源っていうところに近付けて、取り繕わない言葉で、耳馴染みのいいメロディがある、僕らの大好きな音楽を作って。そこにはいわゆる原点回帰、初期衝動だけがあったんです。で、そういうモヤモヤした気持ちすらパッケージして。まぁそれで状況が劇的に変わるわけでもなかったんですけど、響くのは響いてたみたいで。“このままレーベルにいてもいいけど、自分らでもう1回やってみた方がいいんじゃない?”って。その頃はバンドの空気もそういうムードだったんで、ヘンに違う事務所とかレコード会社に行って、出したいときに出せなくなるくらいだったら、自分らでもう1回イチからやってみようって。当時のマネージャーも一緒のタイミングで事務所を辞めて、去年1年はグルグルグルグル100本以上全国を廻って。その中で、何なら新曲だけでセットリストを組めるくらい曲はあったんで、やっぱり盤を出したい。よく考えたら金さえありゃ出来るということで(笑)、ライブ会場限定のワンコインシングル『歓びの明日に』(M-3)を先行で出して、アルバムを作って今に至る感じですね。振り返れば、元マネージャー然り、レコード会社の人とも、いまだに個人的に付き合いがあるというか、助けてくれる人がたくさんいるんです。それがすごく嬉しかったですね。正直自分らだけでバンドを回すのはなかなか厳しいけど、さっきからみんなが口を揃えて言っていたように、今回の『未来の始めかた』では改めて表現したいもの、好きなものが100%そのまんま形になってるんで」
 
――でもヘンな話、よく解散とかにならなかったね。
 
柳沢「持ち直したからじゃないですかね。渋谷が倒れたときが一番の解散のポイントだったんで。それを乗り越えたことによって、レーベルがどうこうで解散するようなテンションじゃなかったです」
 
渋谷「僕は正直続けてみてどうしようかって感じでしたね。結果自分も、メンバーも何も変わらなければ続けることは出来ないと思ったし。でも…このまま終わるのがどうしても腑に落ちなくて。この4人だけで、どれだけ出来るのかもう1回やってみたかった。メジャーにいたとき、唯一侵されなかった領域であるライブにもう一度重点を置いてやってみたかった。そうやってライブを続けてきて、やっぱりこのバンドは大丈夫だって思ったんですね。今となっては辞めなくてよかったなってすごく思います(笑)」
 
柳沢「(笑)」
 
渋谷「倒れたときはホンットに辞めようと思ってましたし。自分で自分の立ち位置を確立出来なかったのが悪いんですけど、フロントマンとしてのプライドみたいなモノも、少なからずあの当時でもあったと思うんで。自分の歌も歌えないし、もっと表現したい歌もあった。ここにいたら俺の好きな音楽が好きじゃなくなってしまう。だから、このメンバーで、この4人のグルーヴでどれだけのモノが出来るんだろう?って考えながらずっとライブを廻って作り上げた『未来の始めかた』は、いろんな意味でホントにデカイですね」
 
上杉「去年はホントに毒抜きっていうのがあったんですよね(笑)。今一度音楽を取り戻せ!じゃないですけど、そういう感覚を持ってライブもしてましたし、逆に言うと、ステージの上に立つ人間として足りないところがいっぱいあったことにも気付いて。今作では柳沢の歌詞も変わったと思うんですけど、引っ張っていけるようになれたというか。だからお客さんにも胸を張って、“これがSUPER BEAVERです!!”って言えるアルバムが出来たと思います」
 
藤原「僕があの頃思ってたのは、自分も含めてメンバーに対しても“違う”と思ってるのに、そう言えない自分が悪かったなぁって…それは今でも思ってて。そう言えない自分、そう思ってるくせに言わないアイツ、そういうところですごくグルグルして…誰が悪かったわけでもないけど、自分にもプライドはありますし、やっぱりNOって言えなかったことが一番悔しかった。だから4人でまたやろうっていう気持ちになれたら、自分の中で絶対にこれと思える軸をまず持たなきゃと思いましたし、それがあったなら誰に何と言われようがNOと言える。いや、そんなことすら言わせないくらい、いい音楽をいつでも出来るように毎日練習しなきゃとか、そういう風に意識がシフトしましたね」
 
――やっぱりみんながSUPER BEAVERがまだ可能性を残しているのを感じてたんでしょうね。もう誰も邪魔するモノはないというか、今度は自分たちが何をどう発信するのかが問われるじゃないですか。その中でどういった作品を作ろうというのはありました?
 
柳沢「“歌を聴かせよう”、ホントにそこに特化したかもしれないですね。4人で鳴らせない音以外は入れないみたいなところもあったんですが、今は渋谷から出てくる絶対的な自信をすごく感じるんです。僕らもそもそも渋谷の歌を押し出したかったことに気付いて、言葉やメロディをホント重点的に…いわゆる弾き語りでいけちゃうモノを作って。そして、その景色やイメージを広げるために、ピアノとかシンセも入れてみたり。あと、今回の一発録りって、ホントに歌も一緒に録ってるんです。まぁそれはライブをやってきた賜物だと思うんですけど、ホントに1~2テイクくらいで終わらせて、終わった人からビールを飲んで(笑)。あと、エンジニアの人も昔から一緒にやってる人で」
 
上杉「SUPER BEAVERの全てを見て来た人ですね」
 
柳沢「曲のイメージをその人に話すと、“だったらピアノ入れてみたら?”って言うので、フレーズも何も考えてない状態でその場でキンコンカンコンやって(笑)。曲に合うなら机を叩く音でも入ったんじゃねぇか?みたいな、“音楽って楽しー!”っていう自由な空気満開のレコーディングで。でも今回作りたかった音源って、まさにそういうことで」
 
上杉「その場その場の思い付きが成功に導いた音が、ホントにいっぱい入ってる」
 
柳沢「名前の分からない打楽器とか(笑)」
 
上杉「それこそ『your song』(M-5)の女性コーラスは、カメラマンの娘がやってくれているんです。レコーディング風景を撮ってもらっていたときに、“歌ってみれば?”ってやってもらったら、すごくよかったっていう(笑)」
 
柳沢「そのときには、渋谷くんはもう焼酎飲んでましたから(笑)」
 
渋谷「メジャーのときだったらありえないじゃないですか。でも、今回はその場の空気感で生まれたものがドンドン形になっていく感動みたいなものがあって。みんながストレスを感じてないのもすごく分かったし、僕が一番感じてなかったかもしれないですけど(笑)。前作『SUPER BEAVER』から一発録りを始めて、今回は俺が歌いたいと思ってる波とか、この4人で出せるグルーヴを一番活かせるのを分かった上で、歌を聴いて演奏してくれてるのをすごく感じた。俺はもうただただ気持ちよくて、歌いたいように歌わせてもらって。ただ、こいつ(=柳沢)が持ってきた世界観は僕も大事にしたいと思ってるんで、そこだけは損なわないようにね。あと、去年はライブを100本ちょいやってきたこと、自分らでこうやって動いてきた経験でかなりの自信も付いてきたので、あんまり怖いものがなくなっちゃったんですよ。そういう空気感とか、ライブのワクワク感、その場でしか得られないグルーヴや高揚感もちゃんと入ってるCDになったなぁと、今回はホントに思いますね」
 
――少なくともライブだけはやってきた自負がどこかにあるし、作品を作ることでそれを証明出来るというか。
 
渋谷「自分らでライブバンドだって公言しなくても魅せられるのが僕が一番望む形なんですけど、それは今回のCDに確実に出てると思うし、むしろ前作よりも聴きやすくポップにもなってると思う。僕は前作がすごく大事な作品だと思ってるんで、その作品をどうにか超えないとというか、いい点をちゃんとビルドアップした作品にしないとなとは思ってましたね。そういう面でも、前作を踏まえた進歩が見える作品になったと思います」
 
 
現状のキッツイところを含めた上で、今をちゃんと歌いたかった
 
 
――作品作り自体はずっとやってきたことですけど、それこそ事務所も何もないわけだから、レコーディングの段取りも、エンジニアのスケジュールを抑えるのも、それこそどこにプレスを出すのかとか、全てが新しい経験で。今まで全くやってきてないですよね?
 
柳沢「やってないですねぇ。でも、出来たっすねぇ(笑)。というのも、全部“つながり”だったんですね。何なら最初はエンジニアの人がレコーディング・スタジオ代を立て替えてくれてましたから(笑)」
 
――マジで!?(笑)
 
柳沢「この日のライブでこれだけの金が稼げるはずなんで、それまで待ってくれって。それを渡した後は、エンジニアとしてギャラも払いたいからちょっと待ってもらっていいですか?って。しかもさらに分割で払ったり(笑)。プレスにしても渋谷のライブハウスがプレスもやってて、そこのブッキングが同い年なんで聞いてみたり。そういうときに、“人としてつながってたんだなぁ”って改めて感じましたね。みんながみんな出世払いでいいよみたいなテンションでやってくれて、そういったことがあった上で、出来上がった作品をその人たちに聴かせたとき、“超イイじゃん!!”って言ってもらえたのはすごく嬉しかった。あと、元マネージャーにもいまだに、すごく助けてもらってて。この人がだいたいの窓口につないでくれてるんです。こういうことを知らずにやってきたから痛い目に遭ったというか、自分で学ぶのは大事だなと思いました。あとは、電話代がホントに高くなったっていうくらいで(笑)」
 
――いろんなところに連絡しないといけないからね(笑)。
 
柳沢「もうビックリしちゃった俺(笑)」
 
――最終的にこんなに人のつながりで決まることがあるのかっていうくらい、音楽の世界ってそれが肝ですもんね。
 
柳沢「他にも“あの番組のDJさんに会いに行って直接音源を渡そう”ってTwitterのDMで連絡を取って。持って行ったその週の番組でホントに流してくれたりしてね。あと、こういうインタビューもそうですし」
 
――嬉しいよね。
 
柳沢「ホンットに。でも、それもたまたま打ち上げにその人がいて…っていうところからの始まりだったりするんですよね。つながりは大事だってよく聞かされてきましたけど、ようやく実感してきてるのはありますね」
 
――それにしても、盤を自分たちで作ることで得るものが多過ぎますね(笑)。
 
渋谷「ホントにそうですね。でも、今こんな風に力を貸してくれる人にたくさん出会ったのは、メンバーみんなが仲悪くなってグッチャグチャのメジャーのときだったりもするんで(笑)。あのときはあんな状態だったけど、俺らの財産はちゃんと蓄えられてたんだと再確認しましたね」
 
――よかった。だって辞めてたらこのことにすら気付けなかったから。そして、今作のタイトルは『未来の始めかた』ということですけど、今までの話を聞いていると、納得のタイトルですね。これはいつ付いたんですか?
 
柳沢「全部録り終わった後ですね。『始まる、未来』(M-9)という曲が最後に出来たんですけど、未来って先のことを歌ってるようで、実はホントに今話してたような現状のことなんです。現状があるのは過去があるからで、現状のキッツイところを含めた上で、今をちゃんと歌いたかった。それを歌うことで自動的に先が見えてくるというか。それが次の瞬間なのか明日なのかは分からないですけど、未来とか過去とか現在って境目は本当に曖昧だと思うんです。だったら今この現状を見据えた瞬間にすぐ、“はい、SUPER BEAVERはここから夢を始めます。よろしくどうぞ!”っていうような気持ちで、このタイトルが生まれたんですよね」
 
――なるほど。それでは最後に、ツアーに向けてそれぞれの言葉をもらって終わりたいと思います。
 
渋谷「新譜を出してツアーを廻ることで、少なからずいろんなところで待ってくれている人がいる。そういう人たちに会いに行って、目の前で新しい曲をやれることは何よりも嬉しいんで、ただただ楽しみですね。このCDには悲しいも嬉しいも含めていろんな感情が入ってると思うんです。そういうのを全部引っくるめて、自分の感情をぶちまけていいところがライブハウスだと思ってるんで。何かしら得るものを与えることが出来るツアーだと思うので、そういう気持ちで残りのツアーを廻りたいと思ってます」
 
柳沢「『歓びの明日に』っていう曲に“酷い顔で笑いながら”っていう歌詞があるんですけど、何かそんな空間が出来たらいいなって思ってますね。自分らもそうだし、それを観ているお客さんもそうだし、何らかの感情がそこには渦巻いてるわけで。唯一の共通点が今やってるその瞬間の1曲だとして、そこに向かってあらゆる感情が爆発したときの、あのグッとくる感じをたくさん観れたらないいなぁと思います」
 
上杉「期待感みたいなものはやっぱありますね。どれだけ多くの人に『未来の始めかた』が届いて、その人たちが足を運んでくれるだろう?って。あとはやっぱりこのツアーで次の俺らの“のびしろ”をちゃんと見せたいし、同時に得たいなと。バンドとしてもこの状況のまま行けるところまでドンドン行ってやろうと思ってるんで」
 
藤原「リリースツアーって何か楽しいんですよ。そこにいる人全員がおめでとうと言ってくれるし、大抵トリだし出番も長い(笑)。反応も含めてこっちは楽しみにしているんで、お客さんも楽しみに待っていて欲しいですね!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 



(2012年10月18日更新)


Check

傷付いてもがいてそれでも生きていく
胸を打つ言葉とメロディに溢れた全9曲

Album
『未来の始めかた』
発売中 2500円
I×L×P× RECORDS
DQC-922

<収録曲>
1. 星になりゆく人
2. ゼロ距離
3. 歓びの明日に
4. ルール
5. your song
6. 幻想
7. そして繋がる
8. その日を待つように
9. 始まる、未来

Profile

スーパー・ビーバー…写真左より、藤原"24才"広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)、上杉研太(b)。’05年結成、東京都出身。’07年に下北沢CLUB251にて初のワンマンライブを行いソールドアウト。’08年11月インディーズにてミニアルバム『心景』をリリース。初の全国ツアーファイナルの渋谷O-WESTワンマンもソールドアウトを果たす。‘09年6月にシングル『深呼吸』でメジャーデビュー。同年11月に発売された3rdシングル『シアワセ』は魔法のiらんどとM−ON!の連動企画『ボクとキミ.com』で視聴回数100万回を超えるなど、そのメロディと歌詞の世界感は多くの共感を得る。同年11月には1stフルアルバム『幸福軌道』をリリース。ツアーファイナルの代官山UNITは大盛況の内終了。’10年10月に3rdミニアルバム『SUPER BEAVER』をリリース。映画『ソラニン』のプロデューサーの耳に止まり、劇中に登場するバンド“ロッチ”に『SUPER BEAVER』収録曲『ささやかな』を提供し話題に。’11年秋、所属レーベル&事務所を離れ、’12年には自主レーベルI×L×P× RECORDSを設立。4月にはシングル『歓びの明日に』を会場限定リリース。ツアー初日となるShibuya O-Crestワンマンはソールドアウトに。7月11日にはアルバム『未来の始めかた』をリリース。現在は同作に伴う全国ツアーを展開中。

SUPER BEAVER オフィシャルサイト
http://www.super-beaver.com/


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※未就学児童は入場不可。

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