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SUPER BEAVER is not DEAD!
過去も10年も超え徹底的に“あなたという1人”を連れて行く
決意表明たる『愛する』ツアークライマックスにバンドの現在を語る
渋谷龍太(vo)&柳沢亮太(g)インタビュー&動画コメント

 ステージに立つのは4人、そして目の前にいるオーディエンスは、泣きたくなるように過酷なゼロ地点から、バンドのステップアップと共に10、20、30、50、100人…と景色を変えていく。その状況の好転に従って、会場は大きく、そして、その顔の1つ1つは小さくなっていく。だが、このバンドはどうだろう? 前作『361°』(‘14)で“あなたたちに歌ってるんじゃない。あなたに歌ってるんだ。”と言い放った彼らは、結成から10年かけてようやくたどりついた今に、徹底して“個”に、1対1の“1”にフォーカスする。最新アルバム『愛する』を締め括る最後の『ILP』に綴られた、“お前にもわかるように お前でもわかるように”という使命感にも似たフレーズは、このバンドにまつわる全ての人間を、誰1人置いていかずに全部連れて行くSUPER BEAVERからの決意表明だ。病床から復帰した柳沢(g)がインタビューでふと話したこの言葉、「1対1って言ってて、相手が1しかいなかったときにそれをゼロに近い感覚で見るのは、やっぱり絶対に間違ってる」。こんなめんどくさいバンド、信頼しないヤツがどこにいる!? 愛すべき4人と、1人1人が集まってみんなになるツアーのクライマックスに贈るこのインタビュー。あなたが孤独なのは、あなたが悔しいのは、あなたが寂しいのは、あなた以外の“誰か”がいるから――。

 
 
ヤナギが作ってきた曲を、俺が歌って、藤原が叩いて
上杉がベースを弾くっていうこのバンドとしての意志を
ヤナギが抜けた状態でどこまで体現出来るのか
 
 
――ホントSUPER BEAVERには、“毎年毎年リリースごとに事件がなくてもいいんだよ”って伝えたい。そんな頻繁にナタリーを沸かせなくてもいいんだよって(笑)。
 
(一同笑)
 
柳沢(g)「起きましたねぇ~本当に(笑)。しかもバンド史上、最もデカいんじゃないかって」
 
渋谷(vo)「初めてだからね。メンバーが“欠けた”っていうのはね(笑)。(先行シングルの)『らしさ』(M-2)のMVの公開が去年の9月1日で、ヤナギが入院したのが…」
 



柳沢「2日とか(笑)。単純にすごい熱が出て、町医者で解熱剤をもらったんですけど、次の日も全然熱が下がらなくて。それこそシングルのリリースが控えてたので、点滴でも打ってもらおうと大きい病院に行ったら、今度は顔に謎の発疹みたいなのが出てきて、一応、皮膚科でも血液検査してもらったら、“とにかく肝臓の数値が良くない”みたいなことになって、いきなり緊急入院って感じでしたね」
 
――渋谷くんはそれに関してどういう風に捉えてたの?
 
渋谷「もう何にも概要が分かんなかったし、どんなに早くても1ヵ月ぐらいはかかりそうって言われても、さっぱり理解出来なくて。ただ、とりあえず手探りでも、この先のライブのことを決めなきゃいけない。それが確か大阪の福島2nd LINEで」
 
――そやね。俺も行ったもんな、それ。
 
渋谷「まぁ動きを止めちゃいけないっていうのは、俺らにとっても、多分ヤナギにとってもそうなんじゃないかって。もし自分がその立場に置かれて、ライブに穴を空けてバンドが止まったら、さらにしんどいかなぁと思うから。その日に関しては、対バンにココロオークションの粟子(真行・vo&g)がいて、彼はSUPER BEAVERをカバーもしてくれたこともあるっていう話だったんで、同じボーカルとして他のバンドでギターを弾いてもらうのはいかがなものかなと思いながらも頼んでみようって。その場でFOX LOCO PHANTOMの(泉田)吉伊さんと、MOP of HEADの(Takuma)Kikuchiにも電話して、あとはsumikaのじゅんちゃん(=黒田隼之介)、Droogの荒金祐太朗、ircleの仲道(良)…もう頼んだ人には全員やってもらえた状況だったんで」
 
――すごいね。だって物理的にスケジュールが無理なときもあるからね。
 
渋谷「いや、ホンットそうなんですよ。これはもう頼んでおいて恐縮なんだけど、ヤナギが作ってきた曲を、俺が歌って、藤原が叩いて、上杉がベースを弾くっていうこのバンドとしての意志を、ヤナギが抜けた状態でどこまで体現出来るのかを確かめる、いいチャンスにする以外ないなと思って。どっちかって言うと、割と前向きではあったんですよ。ヤナギの深刻な状況を見るまでは…」
 
柳沢「俺はもう、機械みたいになってたもんね(苦笑)」
 
渋谷「そう! ICUに入ってて、いっぱい管につながれてて。でも、最終的には回復してピンチを脱してくれたので、せっかくだからこの状況を楽しんじゃおうっていう意志になるまでは、結構早かったですね」
 
――それはでも、このバンドならではかもしれないね。様々なアクシデントをすでに体験してきたから、プラスに持っていけるだけのタフさがあって。
 
渋谷「そこからの上杉と藤原のグルーヴであったり、俺のフロントマンとしての意志もものすごく変わったと思うし、ヘンな話、マイナスワンの状態がフラットになるまで3人で持っていかないと崩れちゃうなとも思った。ヤナギには帰ってきたときにステージの上ではプレッシャーを与えたかったし、何も変わってない状況だとヤナギもガッカリするだろうし(笑)。帰ってきたときにさらに爆発出来るように、“お帰りなさい”とちゃんと言える状況にしておかないとっていうプレッシャーを自分らに課して、それを楽しみにも出来ていたので」
 
――柳沢くんはバンドに戻ったときにどう感じました?
 
柳沢「何て言うんですかね…“照れ臭い頼もしさ”、みたいなものはありましたね(笑)。正直言うと、出来上がっちゃってるわけですよ。“俺さえちゃんとやれば、ドンッ!って加速出来るよ?”という準備をしてくれていたというか。そういう意味では、傷だらけになってバンドを守ってくれていたというより、やってみたら俺ら全然戦えたわ、みたいな(笑)。だから、不謹慎な言い方ではありますけど、かなりワクワクしたところはありますね」
 
渋谷「ただ、ヤナギがいなくなったのは1つのドラマとして消化出来るんですけど、ドラマにしてはちょっと長かった(苦笑)。その間に自主企画が2回あったんですけど、最初に関しては、正直どんなことがあろうと感動的なドラマにはなるんです。もうこれはズルだし、それを完全に活用しようとも思ってたんで。でも、次の企画もヤナギがいないとなったら、お客さんも絶対に同じスタンスじゃ観てくれないし、そうじゃない観せ方をどう出来るのかは、やっぱりすごく考えたのはあったんで。ものすごく勉強する時間にもなりましたね」
 
 
孤独という感情は相手がいるから発生することであって
悔しい、寂しいっていうのも、誰かのことを思いながら言ってる
 
 
――そしてその後、今回のアルバムに向うにあたって舵取りの役を担った『証明』(M-3)は、藤原くんのツイート(※)にもあったけど、このバンドを象徴するようなエピソードもあって。
 
(※)eggmanでイベントやって、乾杯だけして富山に夜走りして、朝方やっと着いたと思ったら機材車廃車になってほとんど寝ずにライブやって、明日のミナホのためみんな疲れマックスで移動中もうすぐ大阪!て時に退院したばかりの柳から「証明」のデモが届いて車でみんなで号泣したのが懐かしいです。笑
 



渋谷「ただ、本当にいい曲が上がってきたのは間違いなかったんですけど、その感動が果たしてどこから来ているものなのか。ヤナギがいなくなった大変な状況で、このタイミングで曲が届いて、俺らの中では完全に背景が出来上がってて。曲がすごく強かったのもあるんですけど、ここで泣けるのは言ってしまえば当然なんですよ。このタイミングでこんな曲が来たら、感動するに決まってる。でも、俺らがそこだけに感動してたら、この曲がものすごく縮こまっちゃうなって。自分らの背景抜きに、何も知らない人間が聴いたとき、感動させるにはどうすればいいのか。実は俺はその車の中ですっごい考えてたんですよ。だから、この曲で感動出来たのはその4日後ぐらいでした(笑)」
 
――そう考えたら、ドラマの渦中の自分たちに酔う感じは全然ないね。この曲にはめちゃくちゃメッセージが詰まってるけど、発想としてはポップミュージックの作り手というか。
 
渋谷「あぁ~そうかもしれないですね。ただ闇雲に放り投げるにはもったいない曲なんで、最善の状態で世に出すには…って。確かにその考え方は、ポップミュージックを自分らだけじゃないものにする期間だったかもしれない」
 
――“産まれて死ぬまで一人なのは 誰も独りきりでは無いという「証明」”というワンフレーズは、本当に発想の“発明”やと思うし。この1行で景色がガラリと変えられる発想の転換、それを音楽に乗せて不特定多数に聴かせられるって、すごいことよね。
 
柳沢「自分の身体に代わりがないからこそ本当に何も出来なくて、“個”としての“1”を身をもって痛感したし、唯一無二でありたいと言いながらどこかに属してなきゃイヤだとか、どこかに属していたいけど人とは違う自分でありたいとか…そういったことを考えていたとき、結局、孤独という感情は相手がいるから発生することであって、悔しい、寂しいっていうのも、誰かのことを思いながら言ってる。だから、孤独ぶっちゃうと、いろんなものがグチャグチャになってくるというか」
 
――それはこのSNS全盛の時代もあるかもね。
 
柳沢「いや、ホンットにそうだと思いますね。顔を合わさなくたってつながってるという実感が、本当の“実感”なのか。単純に身体が動かないこともあって、そういうことをすごく考えましたね」
 
――前作にも“あなたたちに歌ってるんじゃない。あなたに歌ってるんだ”という象徴的なフレーズがあったけど、今作はさらに進んで、本当に徹底的に“個”に訴えかけてる。
 
渋谷「うんうん。どんどんパーソナルになってる実感はありますね」
 
――メッセージというか眼差しは、聴いてくれる人に対してドンドン個に向かってるけど、その一方でバンド自体は、ドンドン塊になってるというか。
 
渋谷「お互い一時的に喪失感を覚えたからだと思うんですけど、ヤナギは失わせちゃう辛さ、俺らは失う辛さを味わったのは、やっぱりかなりデカかったですね。1人欠けたって意志は貫けるけど、改めてヤナギが戻って来たときに、やっぱりこの4人がSUPER BEAVERなんだって、ハッキリと実感出来た。でも、ヤナギがいない状態でそう思ってたら、多分それまでだったと思うんですよ。ヤナギがいない間、この3人でもSUPER BEAVERを確立した上で、ヤナギが帰ってきて改めてそう思えた。それが塊になれた大きな理由なんじゃないかな」
 
 
本当の現在進行形って、過去も振り返られるんだと思うんですよ
 
 
――それにしても、冒頭の『誰か』(M-1)『らしさ』『証明』の流れはすごいよね。もうグイグイ内に入っていって、心の奥で自分が考えてることに気付かせてくれる感じというか、無意識下だったものを意識させてくれる感じ。
 
柳沢「嬉しいですね。そういうことを狙ってきたというか、歌いたいと思ってきたバンドなので。蓋をしていた部分というか、“知ってた。実はここにあったのは…”って言わせちゃうような部分。だから渋谷もライブで、“敢えて口に出さなくてもいいことなのかもしんないけど、でも…”って言ったりするのは、そういうことなのかなって」
 
――相変わらずライブで言ってること、今ここで話してること、楽曲も全部つながってるもんね。柳沢くんが今言ったことは、『言えって』(M-8)の歌詞にも通じるし。あと、この話は前回のインタビューのときからもう始まってて、あのとき“どうでもいいことほど、ちゃんと言わなきゃいけない。どうでもいいことほど、歌にしていく。それがSUPER BEAVERなんだと思う”って言ったあの言葉が、まさに今回のアルバムだと思うし。
 
柳沢「いや、本当にそうですね。でも、改めて僕らもちょっとホッとする部分があるというか。別に答え合わせは必要ないんですけど、今言ってくれたように、実生活と、楽曲と、インタビューと、この3つのどれかが=じゃなくなった瞬間に、全てが崩れる気がするんですよ。無理に意識してるわけじゃないですけど、やっぱり全部がつながってて初めて成り立つ気はしてますね。実は今回、『未来の始めかた』(‘12)ぐらいからもう1回音源を聴き直したりもして、“これ、前にも言ったなぁ”とかを特に恐れなかったのもあるんですけど、何か異常につながってるんですよね」
 
――だって、前回ですでに“今は誰かがカッコいいって言ってるものがカッコいいみたいな風潮がどうしてもあって。情報が多い分、自分で考えなくなっちゃってるのを感じるんですよ。誰かがカッコ悪いって言おうが、自分がカッコいいと思うものが一番カッコいいに決まってるんだから”って言ってたり。何かもう、このときから『誰か』を書いてたんじゃないか?っていう(笑)。
 
柳沢「アハハハハ!(笑) いやでも、こないだちょっと話してたんですよ。こうやって話すことによって、改めて自分たちの考えが整理されていく感覚がすごくあって。こういうインタビューもそうですし、たまたま飲みに行って話してるときに、“あ! 俺、こういうことが言いたかったんだ”って考えをまとめさせてもらえる場があったり。そういうのがそのまんま曲になったりすることが、やっぱりあるんですよね。あと、これまでのモヤッとしたもの、内に向いているもの、自分と向き合う時間みたいなものを、『361°』で清算し切ったと思うんですよね。ようやく今の僕たちに追いついたというか。これまでは過去を振り返って自分と対峙しながら少しずつ外に向くようになっていってたのが、ようやくフラットになったからこそ、本当に思いっきり外に向けて言えるようになったのかなぁって」
 
――今までは過去の困難から受ける波動が大き過ぎてね(笑)。
 
柳沢「そうですね(笑)。だから過去と今を照らし合わせて葛藤を歌ってたんですけど、そういう時期も踏まえて、“僕らはこういうことまで思うようになりました”というか。純粋に自信を持ててきたのもあると思うんですけど、本当の現在進行形って、過去も振り返られるんだと思うんですよ。本当に思い出を思い出として捉えられる、というかね」
 
 
無理に共有しなくてもいい
 
 
――サウンド的に気になった部分があって、『結果論』(M-4)のサビのワイドな音色は何?
 
柳沢「あれはE−bow(イーボウ)で、いわゆるストリングスっぽい音を演出して。実はこのE−bowは『生活』(M-9)でも使ってるんですけど」
 
渋谷「メジャー時代に手に入れたヤナギの得意技だよね(笑)」
 
――エモいメッセージを込めながら、そんな小技も(笑)。『生活』というタイトルの曲ってどのアーティストもグッとくる曲が多いけど、SUPER BEAVERにとってもそう名付けるだけあって。
 
柳沢「生活感はね、何か今まで出せなかったんですよね。正直言うと、僕らの生活は人に知られなくていいと思ってたから。でも、それが歌えるようになったのは、自分らで言うのもアレですけど、単純にそれだけキャパがデカくなったのかなって気はしますよね」
 
――それこそポップミュージックとしての題材みたいになってきたと。
 
柳沢「もはや自分自体がネタだもんね(笑)。人様からお題をいただかなくても、自分の人生の中にヒントがいっぱいあるんですよ」
 
――この歌詞もすごく哲学的だし、よくこんな発想がポンポン出てくるなとも思ったよ。
 
渋谷「まず周りにインプットしてくれる人間が多いよね。いろんな刺激であったり、そういう姿勢を見せてくれる人が増えたから。でも、それは自分らが変わっていったことによって出会ってきた結果だとは思うんですけど。友人知人、先輩方、後輩もそうですし、場をわざわざ設けなくても、パッと言われたひと言であったり、飲みの席での言葉であったり、ビビッとくるものがたくさん転がってるんだなって、今になってすごく分かるから。だからこそ、漠然とした自分らの今の状況みたいな曲がポンッと出るようになったんだと思ってるんですけど」
 
柳沢「逆も然りだよね。中には、ホントつまんねぇなとか、何かすっごくイヤだなぁって思えちゃう人もいるし。そういう姿を見るからこそ、これはカッコ悪い、絶対こうはなりたくないって思うものもドンドン見えてくるし」
 
――それこそ、人がいるからこそ自分が分かるよね。そう考えたら本当に全部つながるね。この世に1人だったら、それは感じられないことで。
 
柳沢「いや、ホンットそうだと思うんですよ。だからやっぱり、人と向き合おうと、膝と膝を突き合わせようと思うようになってからだと思いますね」
 
渋谷「“誰々と一緒じゃなきゃいけない”みたいなことではないと思うし、SUPER BEAVERはそうじゃないと聴けない音楽ではないと思ってるんで。潜在的に何か感じる部分、自分でもビックリしちゃうような考え、ウワァーッて感動しちゃうこととかは、きっとそれぞれの中にあるものだから、無理に共有しなくてもいいと思ってるんで。共有出来たら一緒に楽しめばいいし、そうじゃないなら各々感じたらいいし。何か最近は、自信を持って丸投げ出来るようにはなってますね。僕がまず曲に感動してるから、多分この先もライブで喋り続けるだろうし(笑)。ヤナギがその中から何かを見付けて歌にしてくれたら、それはもうバンドとして強いなって思うので」
 
――だから歌詞も自ずと言葉数が多くなると(笑)。
 
柳沢「アハハ!(笑) いやはや、大変失礼いたしました」
 
――覚えるの大変だよね?(笑)
 
渋谷「もう大変ですよ! ちょっとニュアンス違う言葉がまたここに入ってる! みたいな(笑)」
 
 
1対1って言ってて、相手が1しかいなかったときに
それをゼロに近い感覚で見るのは、やっぱり絶対に間違ってる
 
 
――『わたし』(M-5)とかも、最初はウェディング・ソングなのかなって思うような節があったけど、バンドとファンの関係性とも言えますね。
 
渋谷「大きなテーマですけど、やっぱりそれだけ大勢の人が周りにいてくれてることに気付いたときに出来た曲なんで。小っ恥ずかしかったのはあるんですよ。周りにいろんな人がいると気付いた反面、MCでも、友達と飲んでても、偉そうなことをポンポン言ってるのに、自分1人じゃ出来ることなんてあんまりないんだなぁって。でも、裏を返せば、そんな自分でも今ここにいられるのは、それだけ大勢の人が手を貸してくれたからなんだって。それはすごく自慢出来ることで、自分が今この場所に立たせてもらってるんであれば、同時にそれだけ大勢の差し伸べてくれた手を一気に引っ張り上げることが出来るのも、俺らしかいない。SUPER BEAVERはそういうバンドであるべきなんだって感じたんで、すんなりと出て来た言葉、歌ですね。うん」
 
――あと、最後の『ILP』(M-11)がすごいなと思ったのは、“お前にもわかるように お前でもわかるように”っていうフレーズで。全部連れて行くというか、誰1人置いていかない感じ。この大きさ、この覚悟、これを言葉にしてくれる安心感。SUPER BEAVERにまつわる全ての人を、全部連れて行くよっていう。
 
柳沢「1対1の対話というときに、聴く人に逃げ道を出来るだけ与えたくなかったというか、しっかり受け止めて欲しくて。そういう風に僕らから人に伝えるのであれば、逆に言うと、僕らにも逃げ道があっちゃいけないと思った。自分たちも言い訳をしたくないので。だから、この『ILP』だけ、かなり自分らの歌っていうイメージがあって」
 
渋谷「そうだね。“ライブハウスソング”だね、これは」
 
柳沢「実はこれはあんまり言ってないんですけど、結構ビックリしてるのが、この曲の今言ってくれたフレーズの部分は、音もしっちゃかめっちゃかになってるんですけど、自分でも何度聴いてもグッとくるんですよね。何故なら多分そこが、僕らが思う大前提でありつつ、最大目標である気がしていて。だからライブとかでも、自分の中の気持ちがグワッと入るんじゃねぇかなって」
 
渋谷「いずれスタジアムロックをやりたいと思ってるんですけど、それにはこういう基盤が絶対に必要だと思うんですよ。人は変わっていくし、それは当然なんだけど、自分らにとっては本当にブレない芯の部分で逃げ道をなくすための、いい曲になってると思います」
 
――いや、デカい愛ですね。そりゃタイトルも『愛する』になるわ。
 
柳沢「いや、本当にそうですね。“愛する”って恋愛のLOVEの要素がないわけじゃないですけど、それよりも人としてというか、“ありがとう”に近いというか」
 
――今作は、音自体もめちゃゴツくなったなと思っていて。それはここ1年半ぐらいで対バンしてきた異種格闘技的なバンドと渡り合っても負けないサウンドというか。でも、そこに込められてるメッセージが何より強い、というよりは深い。ちゃんと戦える身体の中に、ちゃんと戦える意志を持って音楽を作ってる感じが、このアルバムの印象。
 
渋谷「いや~嬉しいですね」
 
柳沢「何か今こうやって話してて思ったんですけど、よく出来てるよね(笑)」
 
渋谷「よく出来てるよ!(笑) 正直、ここまで考えてなかったじゃん。当然、曲のストーリーは自分らで組んだはずなんですけど、やっぱりこうやってインタビューしてもらったり、自分らで曲についてのことを話した後で見返すと、偶然の要素もすごく多かった気がする」
 
柳沢「1曲目の『誰か』とかは、正直言うと自分でも自覚してるところで、嫌味だなって思う気持ちもちょっとある。ただ、『ILP』でそこに対してバランスを取ってるというか、それを言うからには僕たちもちゃんとしますよっていう曲でアルバムが終わるのが何か…自分たちで言うのもアレですけど、カッコいいですよね?(笑)」
 
(一同爆笑)
 
柳沢「だって、『愛する』(M-10)で言いっ放しで終わってたら、“とは言え、お前らはどうなの?”って言われたときに答えられないというか。このアルバムに限らず、そういうところをすごく大事にしてきたバンドだと思うんですよ。“お客さんが1人でも待っててくれるんだったら、全力でライブやります!”って言ったんだったら、本当にやろうよって。それが去年四国でやった無料ワンマンだったと思うし、“口にして実際にそれをやらないのはカッコ悪いでしょ!”っていう感覚は、すごいありましたね。1対1って言ってて、相手が1しかいなかったときにそれをゼロに近い感覚で見るのは、やっぱり絶対に間違ってると思うし」
 
――だからこそさっきの“お前に”なんだもんね。いや~もう本当にビーバーは“こってり”しか作らないよね(笑)。
 
渋谷&柳沢「アハハハハ!(笑)」
 
――とは言いながら、『Q&A』(M-6)は何ともアーバンで、柳沢くんが持ってるポップセンスを駆使して、微妙な心の動きを描いたオトナな楽曲で。
 
柳沢「これはもう“オシャレ・ビーバー”を意識しただけですからね(笑)。単純に好きなんですよね。ぶーやん(=渋谷)がよく夜の高速道路で運転しながら、一十三十一とかを聴いてて」
 
渋谷「俺がシティポップを聴いてて、ずーっと男女のユニゾンやりてぇなとかいう話から、本当にやってみたらおもしろいかもねって」
 
柳沢「やっぱりいろいろとキャパが広がったのかもしれないし、ヘンな抵抗がなくなってきたのは結構デカいなぁって思いますね。これはあんまり触れてこなかったですけど、候補は実際いろいろ考えたんですよ。でも、関係性と、それこそ本人の強さと、もうSCANDALのMAMI(g&vo)ちゃん以上の人は思い付かなかったんですよね」
 
 
珍道中、続けたいっすねぇ
 
 
――そして計らずしも、今年は結成10周年のアニバーサリーイヤーということで。いやぁ~よく10年続いたね。
 
渋谷「いやぁ~本当っすね。10年続けようぜって始めたわけじゃ全然ないから」
 
柳沢「続いたっていうかまぁ、“10年経ったね”って感じですね。それこそ以前のインタビューでも言ってると思うんですけど、(SUPER BEAVERが)“人生”になっちゃいましたね。これまで1つの物事について、10年前を振り返ることがなかったので。小学6年生から仲良いわけですから(笑)。飽きさせてくれないぐらいいろいろあるからねぇ」
 
(一同笑)
 
渋谷「本当にねぇ。イベントが起きるからなぁ~(笑)」
 
柳沢「僕らも望んでるわけじゃないんすけどねぇ(笑)」
 
渋谷「でも、それも1つずつ武器に変えられてきたから。折れなくてよかったって、その都度その都度思うんです」
 
――だからこれからも、この珍道中をね、見届けていきますよ(笑)。
 
渋谷「ホンット珍道中っすよ!(笑) 珍道中、続けたいっすねぇ」
 
柳沢「俺はすぐにでもレッドカーペットを歩きたいんだけどねぇ。何なんですかねぇ(笑)」
 
――本日はありがとうございました! じゃあまたね。
 
渋谷&柳沢「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(2015年6月25日更新)


Check

Movie Comment

やりとりおもろい(笑)。仲良しな
渋谷(vo)&柳沢(g)からの動画コメント

Release

突き動かされる言葉とポップセンス
結成10周年の幕開けを飾る最新作!

Album
『愛する』
発売中 2500円(税別)
[NOiD]/murffin discs
NOID-0004

<収録曲>
01. 誰か
02. らしさ
03. 証明
04. 結果論
05. わたし
06. Q&A
07. おかげさま
08. 言えって
09. 生活
10. 愛する
11. ILP

Profile

スーパー・ビーバー…写真左より、上杉研太(b)、藤原“27才”広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)。’05年結成、東京都出身。’07年に下北沢CLUB251にて初のワンマンライブを行いソールドアウト。’08年11月インディーズにてミニアルバム『心景』をリリース。初の全国ツアーファイナルの渋谷O-WESTワンマンもソールドアウトを果たす。’09年6月にシングル『深呼吸』でメジャーデビュー。同年11月に発売された3rdシングル『シアワセ』は魔法のiらんどとM−ON!の連動企画『ボクとキミ.com』で視聴回数100万回を超えるなど、そのメロディと歌詞の世界感は多くの共感を得る。同年11月には1stフルアルバム『幸福軌道』をリリース。ツアーファイナルの代官山UNITは大盛況の内終了。’10年10月に3rdミニアルバム『SUPER BEAVER』をリリース。映画『ソラニン』のプロデューサーの耳に止まり、劇中に登場するバンド“ロッチ”に『SUPER BEAVER』収録曲『ささやかな』を提供し話題に。’11年秋、所属レーベル&事務所を離れ、’12年には自主レーベルI×L×P× RECORDSを設立。同年4月にはシングル『歓びの明日に』を会場限定リリース、7月にはアルバム『未来の始めかた』を発表。’13年4月にはミニアルバム『世界が目を覚ますのなら』をリリース。同年10月に渋谷eggmanのmini muff records内に発足した新ロックレーベル[NOiD]とタッグを組むことを発表。12月には『あなた(Another Ver.)』を会場限定発売。’14年2月にアルバム『361°』をリリース。過去最多動員を記録したリリースツアー後も、『京都大作戦』出演やMAN WITH A MISSION、ROTTENGRAFFTY、coldrain、Northern19、ゲスの極み乙女。などのツアーに参加。7月より日本テレビ系アニメ『ばらかもん』オープニングテーマに『らしさ』が起用され、再生回数が200万回に迫る勢いに(‘15年6月現在)。9月には同曲を含むシングル『らしさ / わたくしごと』を発売し、ロングセールスを記録。今年4月1日には結成10周年を迎え、同日にアルバム『愛する』をリリース。なお、柳沢は堤真一主演の映画『俺はまだ本気出してないだけ』主題歌となったSCANDALのシングル『会わないつもりの、元気でね』の作詞作曲を手がけるなど、ソングライターとしても活躍中。

SUPER BEAVER オフィシャルサイト
http://super-beaver.com/
 

Live

リリースツアーも残すは東名阪!
夏には『RUSH BALL』に初出演も

Pick Up!!

【大阪公演】

『『愛する』Release Tour 2015
~愛とラクダ、10周年ふりかけ~』
チケット発売中 Pコード254-971
▼6月27日(土)18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3000円
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。
小学生以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード256-669
▼7月3日(金)19:00
名古屋クラブクアトロ
スタンディング3000円
サンデーフォークプロモーション■052(320)9100

【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼7月11日(土)18:30
LIQUIDROOM
オールスタンディング3000円
ディスクガレージ■050(5533)0888
※3歳以上はチケット必要。
 

Pick Up!!

【大阪公演】

『RUSH BALL 2015
 feat.GREENS 25th Anniv.』
一般発売6月28日(日)
※発売初日は店頭での直接販売および特別電話■0570(02)9510(10:00~23:30)、通常電話■0570(02)9999にて予約受付。
Pコード257-454
▼8月29日(土)11:00
泉大津フェニックス
1DAY(大人)6500円
1DAY(小学生)3500円
[出演]BIGMAMA/BRAHMAN/Dragon Ash/FIRE BALL/the HIATUS/Ken Yokoyama/RAZORS EDGE/RIZE/SiM/10-FEET
[オープニングアクト]Keishi Tanaka
[ATMC出演]Rhythmic Toy World/SUPER BEAVER/This is Not a Business/WANIMA/Wienners/感覚ピエロ/在日ファンク/サイプレス上野とロベルト吉野/プププランド/密会と耳鳴り
GREENS■06(6882)1224
※雨天決行。未就学児童は保護者同伴に限り無料。小学生以上は有料。小学生はチケットを購入の上、保護者同伴に限り入場可。出演者の変更・キャンセルに伴う払い戻しは行いません。【オフィシャルHP】http://www.rushball.com/

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Column1

今しか歌えないし、今だから歌える
歌がある。SUPER BEAVERの
“譲れないもの”とは――?
前作『361°』インタビュー

Column2

まだまだあります!
歴代のインタビューはコチラ

 
“NO SUPER BEAVER, NO LIFE”
人生を懸けたミュージック・ライフ
は何処へ向かうのか――?
問答無用の歌力が覚醒した
傑作『世界が目を覚ますのなら』
全てを語ったインタビュー

特設ページはコチラ!

もう一度音楽を取り戻せ!
メジャー離脱、自主レーベル設立
起死回生の新作『未来の始めかた』
SUPER BEAVERがバンドの崩壊
とその復活劇を語る!
大反響を呼んだ初登場インタビュー

特設ページはコチラ!