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チョップリン
写真左から小林幸太郎、西野恭之介。平成18年「第36回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞。関西を代表するコントマスターは小学校からの同級生。そのシュールな世界観は、クロウトからの支持も高い。
西野ブログ
『チョップリン西野恭之介 タバコとアイスコーヒー』
いつのまにか再開してます!
小林ブログ
『松竹芸能チョップリン小林のコムデギャルソンや阪神大好き』
『松竹芸能チョップリン小林の告知します。野球』
第1回『仕事』
第2回『愛について』
第3回『喫茶店』
第4回『金銭感覚』
第5回『人間関係…?』
第6回『理解できない』
第7回『クリスマス』
第8回『幸せについて』
第9回『モテを考える』
第10回『凹劇場、総括』
第11回『2011年』
第12回『新生活』
第13回『劇場』
―― 小林さんは単独ライブとか、そういう場面で切れることはないんですか?
西野「それはないですね。お金が絡んでないから。そのお金が絡むで言うと、今度の単独の小道具を自分たちで用意するのに、僕は小道具はこれがいいってなったら絶対にこれ!ってなるんですけど、買ったら高いじゃないですか。お金が発生するんで。それがまぁ~厳しいですよ。小林オッケーは。小林のゲートはなかなか開いてくれないんですよ。“いや、作れる、俺が作れる”言うて、よう100均に通ってるらしいです。何とか100均で用意して、クオリティ高くしようとしてるみたいで」
小林「この取材は毎回、愚痴を吐き出す場みたいになってるな~(笑)」
西野「そんなことないやろ(笑)。でも、そういう、これはおかしいんとちゃうかって思うことは、誰かが言わないと世に出ないじゃないですか」
小林「理不尽なことが多いからな」
西野「そう。理不尽やからそういうことは言っておいたほうがいいなと。で、全部、自分らが用意しなくちゃいけなくて、チラシも僕がデザインして作ったものが金がかかるってなって、会社のコピー機を使わせてもらってA4のペラペラの紙でコピーしたんです。けど、その紙でチラシを作ると今回のデザインではあんまりよくないんですよ。でも、そこはもう、小林は“情報さえ載ってれば大丈夫!”って力強く言ってましたからね」
―― ゴーサインが出たんですね。
西野「はい。この取材が始まったときも、チープさを消したいとか言うてましたよね。全然嘘なんですよ。全然嘘。お金がマイナスになるぐらいなら、チープでも全然オッケーですっ!っていう」
小林「うん。それを味と捉える」
西野「チラシっていうものは何かな?と僕に聞いてきましたからね。チラシというものはそもそも何かと。情報って答えたら、“情報は載ってる、大丈夫っ!”。そこで僕が“チラシも自腹で全部出すわ”って言うたら、“それやったらオッケー、ええ紙使ってやろっ。それで行こうっ!”ってなるんですよ。それを半々でまかなおうってなったら、“いやそれはちょっと待ってくれ、情報は載ってる、問題ない!”ってコピー機仕様でゴーサインが出るんですよ」
―― 小林さんは一つの基準があると、判断がぶれないですね。切り替えも早いですし。
西野「新幹線のときも、バーンって切れて、席を確保して。2分くらいしたらもう、寝てましたからね。体力温存するために。5、6分前にあんだけぶち切れとった男が、もうスーッと寝息を立てて寝てましたからね。でも、すごい根に持つんですよ」
――もしあの日、新幹線に座れることができなかったら、小林さんはどうなってたんでしょうかね。
小林「まあ、でも切り替えますよ。立ってるときに、立っててもまだ、いい方向に行く感じに精神状態を持っていきますね」
――そういうとき、どういうことを考えるんですか?
小林「大体2時間半でしょう。2時間半立ってる状況はあるよなと。野球で2時間半、立ってるときもあるから、そのときのこと思い出そうとか」
――それはよくあることだから、どうってことないと考えるんですか?
小林「そうですね。そうやって数字を置き換えますね」
――なるほど。2011年はほかに何かありましたか?
小林「う~ん。もう終わりか。早いすなぁ。個人的には、毎年梅雨明けをすごい気にするんです。今年、近畿地方は7月5日か6日に梅雨が明けて。例年なら20日前後で。これはちょっとここ数年なかったなという驚きがあって」
西野「雨の話題を出すの好きやな」
小林「雨が嫌いやから。雨はしんどくなるから。晴れてるときの方が体調もいいし。冬場も体重が2、3キロ痩せてくるから。やっぱり寒いのと雨は…。冬場って等圧線の間隔が狭いんですよ。天気図を見ると、ああ、等圧線狭いなぁって思って…。縦縞がもう、あれを見たらいやになるんですよ」
西野「でもそれも、備えあれば憂いなしじゃないですけど、ちゃんと見て、明日あさって、晴れるわってなった時点で、それだけで結構元気になるんでしょうね」
小林「うん、うん」
西野「僕にはわかんないですわ、その辺が」
小林「晴れてる方がええやろ」
西野「もちろん晴れてる方がええけど、それによって精神が左右されるとかは絶対にないし」
小林「ヘッヘッヘ」
西野「安心する材料が不安材料になったら、それで凹んでまうんでしょうね」
――結構、自然環境に影響されやすい。
小林「影響されますね。梅雨が一番嫌なんで、今年一番嬉しかったんは、7月5日に明けたっちゅうのがほんまに。むちゃくちゃテンションが上がりました。食欲も出てくるし、代謝もよくなるし」
――冬場になるとどうなるんですか。
小林「もう、動かなくなるんですよ」
西野「爬虫類やないか、お前」
小林「代謝も悪くなるし、筋肉とかも硬くなってくるし、もちろん内蔵の働きも悪くなるし、全部が悪くなる。冬眠状態になるんですかね、熊みたいに。だから熊なんですよ。食欲も自然となくなってくる」
―― 西野さんはお隣にいてその違いはわかりますか? 夏との冬の違い。生命体としても違うものになっているように見えるのですが。
西野「冬場は、打ち合わせしているときに、ご飯を注文したりするんですけど、小林はご飯が来ても全然食わないんですよ。台本読んで、タバコを3本くらい吸うて。ご飯はもう冷え冷えになってるんですよ。なんでじゃあ、注文したんやっていう。冬になるとご飯を見ただけでお腹いっぱいやとか、胃の準備がまだできてないとか、小林なりの食うための工程が多くなるんでしょうね。食欲ないし、でも胃に入れとかなあかんっていうのは、備えあれば憂いなしから来てるから、一応入れとかな体力なくなるぞっていう不安があって注文する。自分を機械的な感じで考えてるのかわからないですけど、ガソリンを入れとかなっていう。でも実際、目の前に来ても全然入れへん」
―― それにしても、備えあれば憂いなしという座右の銘は、今年一年を象徴するようなことわざですね。…この連載取材で、珍しくまとまりました。しかしなぜ、小林さんは中学生でそのことわざを選ばれたんでしょう。
小林「備えあれば憂いなしって守りに入っているような言葉ですけど、かなり攻めてるんですよ」
西野「これは後付やな。今、イキって言ってますよ」
小林「僕、野球部で9番バッターで、守備がショートで、守りの人やったんですよ、要は。守備という字の中にも備えという字があるように、守りの準備をかなりするんですよ。ピッチャーが投げる前に動くとか、ボールがバットに当たる前に右に左に動くとか、そういう備えをするポジションであって。そういうのがずっと染み付いてきて…、何やろうな…、守ることが最大の攻撃っていうのが感覚的に刷り込まれていって」
西野「イタリアのサッカー選手みたいなこと言うな…」
小林「最終的に中3の最後の試合、3年生はそれで引退するっていう試合で、僕のところに打球が飛んできて……。まあ、勝負やないですか。右でも左でも来いと。僕はそれをトンネルして、チームはさよなら負けになりました。あれだけ散々備えてきたのに、一番大事な、ここで取らなあかん、しかも真正面…。取って当然の状況で。……ああ、備えをしていても、そういう隙を見せたらそれですべてが終わってしまうと思って、改めてそこで、もう一度、備えあれば憂いなしという言葉に、備えあれば憂いなしを被せることを学びました」
――まさかの二重構造。
小林「(笑)、二重構造にしたんですよ」
西野「そこが解せないんですよ。“備えあればにさらに備えあれば”じゃなくて、まずナインに謝らないのかっていう。人のためとか、誰かのためにとか、そこが出てきたらちょっと変わってくるかもしれないですね。団体競技で自分がミスして、備えあれば憂いなしの備えあれば憂いなしだとか…。しかもみんな優しいから、しょうがないって肩を叩く奴ばっかりなんですよ。しょうがない、あんなときもあるよって言われてるんですけど、こいつは心の中で“いや、今のミスはしょうがなくないやろう”って思う人間なんですよ。僕、バスケ部やって、同じように最後の試合のとき、僕の絶妙なパスを身長185センチくらいの奴に回したんですよ。1点差で、それを決めたら逆転勝ちやったのに、そいつがガッコーンってリングにぶつけて試合終了。部室ではそいつに誰もがしょうがない、しょうがないって言うんですけど、そいつ捕まえて1時間くらい説教しましたよ。そんとき俺、チビやったんですけど、185センチくらいの奴に散々文句言ったら、最終的にそいつは泣いて。“恭くん、ごめん~”って。周りは“恭くん、やめとけやめとけ、外そう思って外したわけじゃない”と。いや、外そう思ってやる奴おらんやろうと。僕がもし、野球部やったら徹底的に小林を泣かせてますね」
小林「ヒッヒッヒッ」
西野「そんな、肩叩いてしょうがないとか、ないですよ。だって、そんな奴のせいで負けてしまうんですよ。団体戦って。それだから面白いところもあるんですけど。何で団体競技なのに個人で突っ走るんかなって思うんですよ。団体競技しながらも思考は個人なんで。小林は最後の最後でのミスを何回もしてるんですよ。高校でもしてるし」
小林「3年連続で。あれは神がかり的やったわ。中3、高1、高2、全部俺の凡ミスでさよなら負けした。そういうときに限って飛んでくんねんなぁ。来んなよって思ってるのに」
西野「来んなよって思ってるくらいですから、備えてないわけですよ。来るなよに備えてるわけですよね」
小林「ちゃう人のところに飛んでいけばいいのになって」
西野「でも、誰が取るねんっていう場面に遭遇したら、俺が取るから!!って主張したりするわけやん」
小林「それは動き的に理にかなってるから」
西野「いや、じゃなくて、ショートやったら、絶対俺が取って終わらせたるとか、そう思っとかんと。不安でしょう、俺のところ来るなって思ってる奴がおったら。ショートですよ。俺のところ、来るなー!!って思ってる奴、いかんでしょう」
小林「練習はめっちゃうまい。ノンプレッシャーやから。だから使われるんですけど、試合になったら大事な場面やなってわかるやないですか。だから俺のところ来るなと」
西野「練習ではうまくいくわけですから、来年は本番でもうまい小林でいてほしいですね」
――12月25日も。
西野「そうですね。25日も、本番でもうまい、備え抜群の小林に」
――でも逆に、備えすぎて神がかり的な状況になったりしますよね。
西野「ところがそうなんですよ。そこがわからないんですよね。そこが面白いところです」
小林「それで笑えるからな」
西野「お笑いってすごいんですよ!(笑) 失敗する人が主役になるんですから!」
―― そういう奇跡を25日に、ぜひ多くの方に見ていただきたいですね!
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