「単独公演を一発だけやる=当たり前ですけどそのときの感覚は一回きりしか味わえないから、どうなるかは予想もつかない状況なわけじゃないですか? だけどツアーを重ねてくと、最初にオンステージしたとき、そして2回目にオンステージしたとき、それに対して“ここでこんなふうにしたらもっと喜んでもらえるんじゃないか? もっと伝わるんじゃないか?”みたいな反省点やら何やらを、何度も反すうできて身になっていくのがいいところだなと。一本一本に対しての予想なんて正直、あってないようなものではあるんですけど、やっぱり感覚として“体験したことがある”というのは全然違うなと思いますね」
改めて映像になるということはどういうことかを
真剣に考えた2年だったと思う
――今回のライブ映像を見ると、ここ近年、無観客配信も含めていろいろ試行錯誤して、その上でお客さんを入れてやるライブを改めて体感して…みたいなこの2年のストーリーの一つの到達点でもあったような。
渋谷「本当にそう思いました。“いいライブができたんだなぁ”という実感もあったし、すごく不思議なんですけど、ひとごとのように“いいバンドだなぁ”とライブをやりながらも感じられたのはまたちょっと新しい感覚でしたね。おそらく、配信ライブで自分たちのことを何度も客観視できたことが、何らかの要因にはなってると思うんです。もちろん、今までも自分たちの映像作品を見直すことはあったんですけど、改めて映像になるということはどういうことかを真剣に考えた2年だったと思うし、それがあったからこそ、やってる最中もある程度、客観的なビジョンが見えた。“今こういうふうに画面では見えてるんだろうな”みたいな新しい視点、新しい実感がありましたね」
上杉「ライブハウスでやって、ホールを回って、試行錯誤して作り上げてきたものを、またネクストレベルの一日として表現できたんじゃないかな。映像的にも、コロナになってからいろいろと配信もやってきて、“どうやったらもっと伝わるんだろう?”と常に考えてきたチームだったので、総合的な成長を感じたというか、ある種の集大成を感じた一日だった。今、回ってる『東京』のホールツアーも、あの日があったから表現できるレベルに達してると思っていて。コロナ禍になってから積み重ねた経験値が、分かりやすく映像になってると思う」
柳沢「改めて誇らしい気持ちになれたライブでしたね。自分たちにとってアリーナでの単独公演は、先にやった’19年11~12月のワールド記念ホール(神戸ポートアイランドホール)の2日間と、’20年1月の国立代々木競技場 第一体育館があって、それがいわゆる普通にできていた最後のライブだったと思うんですよ。その後からコロナでいろいろと状況が変わって、ようやく’21年1月から3週連続で豊洲PITでやったりして…あの日はそういう積み重ねの集大成でもあったし、同時にアリーナツアーというのは、ビーバーが初めてクアトロで、野音で、武道館でやれたとかと同じく、“ビーバーがアリーナでツアーをやれた”という…自分たちの挑戦と積み上げてきたチームとしての誇りが、いい感じにない交ぜになったツアーだったなと。最後のさいたまスーパーアリーナは、こういった状況になって初めての1万人キャパの興行だったみたいで。それも、まだまだ落ち着き切ってない環境下で、ビーバーを好きだと言ってくれる一人一人が考えた上で足を運んでくれた結果だと思うので、バンドとしても一つ信じられるものが増えた感じがする。この手応えは、自分たちに残った財産だと思いますね」
藤原「さいたまスーパーアリーナでのライブを映像作品にするにあたって、配信のチームと作品にするためのチームを変えてみることも可能性としてはあったんです。けど、これはもうコロナ禍もずっと一緒にやってきたチームと絶対にやった方がいいという話になって。それがすごく生かされたファイナルだったし、コロナで自分たちのやりたいことがなかなかできなかったのは、バンドだけじゃなくて音響も照明も舞台も映像もみんな同じで。分かってたつもりだけど、ライブ一本一本の大事さを改めて感じたかな。SUPER BEAVERを中心とした大きな輪の中で、それぞれのセクションが責任を持って頑張ることが、すごくいい空気の中でできていて、自分もその中心にはいるんですけど、何だかその一部というか、一人一人のうちの一人みたいな感覚で。このチームでもっといいものを、喜んでもらえるものを作れるんじゃないかと思った。自分たちがやりたくてやってきたライブが、今はこうやって待っててくれて期待されてるのは本当に幸せだと思うから、もっと頑張りたいなって」
――あの日はお客さんがあれだけ目の前にいて…実際に会って感じる尊さを再度かみ締めた日でもあったのでは?
渋谷「見に来てくださる方が少ないライブはイヤというほど経験してきましたけど、自分たちがオンステージして、発信する先に誰もいない状況をコロナ禍で初めて経験して…“ここまで違うのか”と。それも無観客ライブをやってみなかったら分からなかったことだし、バンドは18年目に突入しましたけど、このタイミングであの景色とあの喪失感を知ることができたのは、コロナ禍で唯一いいことだったんじゃないかと、今となっては少し思いますね」
――今やこの日に限らずだと思うけど、MCでも“4人だけで成り立つステージをやるつもりはない。4人だけでやってないから音楽は楽しいんだ”と、何度も何度も伝えてくれたライブだったね。
渋谷「何かね、ライブの良し悪しを自分たちのおかげではなくしたいと思ったし、うまくいかなかったライブは“フロアも含めてじゃね?”と思っちゃったり(笑)。これは自分の中では悪くない感覚だと思ってるんですよね。だって、ライブはみんなで作るものだから。みんなで作ってよかったからうれしいし、みんなで作ってよくなかったから悔しい。全責任を双方で負うことができた方が楽しいんじゃないの? って今は思えてるんですよね」
――“何があってもライブの良し悪しの責任はミュージシャンが背負う”と言い切れるのはプロフェッショナルだけど、“お前のおかげだよ/お前のせいだよ”って言い合える関係もいいよね(笑)。
渋谷「それによって“絶対によくなかったとは思わせたくない!”と思うようになってるし、“よくなかったのは私たちのせい”だと思わせたくない感覚もさらに強くなってる。オンステージすることへの責任がさらに増えましたね」
衝動をぶっ放すことって、ロジカルでもできると思ってるんですよ
――そういうお客さんが1万人以上入っている今回のライブ映像を見て、改めてすげーところまで来たもんだなと。
渋谷「しかも不思議なことに、ステージから見るより、フロアから見た方がデカく感じる会場なんですよ。ちょっと生意気なことを言いますけど、オンステージしたときは“あ、フェスで見たことのある規模だな”と思ったんです。ただ、リハーサルのときにフロアに降りていろんな座席から見てみたら、ステージから離れるほど、“ヤッバここ! 超でけぇ”って。一番後ろの座席から見たときは、本当に見なきゃよかったと思いました(笑)」
――だって引きの絵が映ったとき、若干、映画の『ボヘミアン・ラプソディ』のクライマックスぽかったよ(笑)。
(一同爆笑)
――そんな会場で、どこから見ても届くパフォーマンス、音響は、マジで抜かりなくやらないと、というのもあるし。『らしさ』(M-9)で、柳沢くんとリーダーが花道の端まで行くのにかかる時間に合わせて、曲の尺をいつもよりちょっと長めにリアレンジしたり、そのためにあの曲だけベースをワイヤレスに変えたり…特効とか分かりやすいアリーナ演出だけじゃない、きめ細やかな準備をしてるんだなと驚いて。
上杉「ギター、ベース、ドラム、歌しかないミニマムなスタイルの中で、ドラムとベースでアリーナの一番後ろの席までいかに低音を届けられるのか? 実はそういうことを想定して自分の楽器を総入れ替えしてて。だから、アクティブ(※)のベースがメインになったのはアリーナとかでやれるようになってからだし、世の中的にカッコいいと支持されてるサウンドじゃなくて、自分たちの経験を踏まえたリアルな音作りが今はできている気がします」
(※)…弦の振動=音を拾い増幅するピックアップのために専用の電池を搭載したハイパワーでノイズレスな仕様。
――ちなみにアリーナの規模だったらシールドを使う場合は何m?
上杉「10mですね。逆に10m以上にはしない。ベースは面白くて、ワイヤレスになった瞬間になくなるうまみがあるから、普通にシールドをつないだときのいい音といかに近づけられるか。『らしさ』一曲のためだけの音作りにめちゃくちゃ時間を割くんです。でも、それをしないと演出的には華やかになったけど、音はスコッと抜けちゃったねということになりかねないから。それも試して試して、音として譲れない部分をチームとディスカッションして…」
――いや~もう『GiGS』(=バンドマン/プレイヤー向け音楽雑誌)みたいなインタビューになってますけど今。
(一同爆笑)
――他にも、もう随分前だけど打ち上げで聞いた話が印象的でずっと覚えていて。渋谷くんはロックバンドとして衝動的に言葉を放ったり動いたりしてるんじゃなくて、どう伝わるか、どう見えるかを結構緻密に考えてパフォーマンスしてるんだなって。それがビーバーにプロフェッショナルを感じた最初のタイミングだったかも。
渋谷「衝動をぶっ放すことって、ロジカルでもできると思ってるんですよ。それは衝動までロジカルにするわけでも、気持ちが薄まってるわけでもなく、“こうしたらきっとより届くだろうな”みたいな、プレゼントを買いに行くワクワク感に近いというか。縦横無尽に歩き回るんだけど最低限の柵だけは作っておく、次の一歩の位置までは決めないけど、ある程度のルートを思い描いておくのはすごく大事な気がします。その中で大爆発させてるイメージかな」
――その辺はやっぱりビーバーの歩みを感じるね。
渋谷「より届くなら、よりちゃんと伝えられるなら、そっちを選びたいとやっぱり純粋に思うんですよね」
やっぱりライブのさなかで曲が生まれていった方が
ビーバーにとっては健全だと思う
――今作のライブパートには全17曲収録されてるけど、さっき藤原くんがガチガチに緊張したと言っていたオープニングの『ハイライト』(M-1)は、やっぱり最高にカッコいいよね。あの導入はライブならではだし、1曲目ならでは。
藤原「ありがとうございます! よかった〜やってよかった!」
上杉「結構ね、このアリーナツアーの象徴的なシーンだなと」
藤原「そうね。初めてやったしね、ああいうの」
上杉「5年、10年経っても、このアリーナツアー=あのイントロダクションのイメージがすごい残ると思う」
――あの時点で、“こんなん今日のライブ、絶対いいじゃん!”ってなるもんね。あと、『美しい日』(M-4)もよかったな~。何でかと言うと、まずはイントロで自ずとクラップが沸き立ったときの柳沢くんのうれしそうな顔(笑)。
柳沢&上杉&藤原「アハハハハ!(笑)」
――そして、映像の躍動感=カメラワーク。リーダーがカメラへの挑発度が一番高いけど(笑)、そういった映像としての良さと、ライブ自体の良さみたいなものがこの曲には集約されてるなと思いました。
柳沢「ビーバーのライブにおいて、カメラマンががっつりステージ上にいることがまず初めてで。何ならぶーやん(=渋谷)を追いかけたりもして、ああいう撮り方は一つの演出とも呼べることだったと思うし、すごく効果的で。オープニングもそうですけど、今回は初めての挑戦がいろいろあったなと思いますね」
――ステージ上にメンバー以外の人がいるのは、無観客と違って実際にその場にいるお客さんの目線もあるから、本来ならちょっと気を遣うところもあるもんね。
柳沢「そうなんですよね。ただ、実際にフロアにいると自分が見たものしか見えないじゃないですか。だからこそ、自分の姿も含めた俯瞰的な絵や、映像作品ならではの絵が視覚の正面にあるのは、気持ちが高揚する要素ではあるなと思うので。あのオープニングも最初はセッション的にやってみたんですけど、もっといける感触がして。脳みそを切り替えて、ほぼ新曲を作るみたいな気持ちでしたから。要所要所で、自分たちからそういう高揚感をどう提示できるかはすごく考えた気がしますね」
――高揚感と言えばそれこそ、『正攻法』(M-8)はMVさながらの細かいカット割りで気持ちを高ぶらせていく。照明も含めてバンドの迫力を魅せてくれた、映像ならではの手法というか。『人として』(M-11)なんかは、お客さんの表情の抜きも多くてグッとくるなぁって。あと、特筆すべきは藤原くんの顔面のエモさね(笑)。
(一同笑)
――渋谷くん越しに藤原くんが映って、“やっぱりこの顔で叩く感じがいいよなぁ”って。
渋谷「もう気持ちが抑えられない(笑)」
藤原「顔で叩いて18年、ずっとそれでやってきてるんで(笑)。ヘンだとかイヤだとか言われても変えられない(笑)。けど、うれしいですね、奥さん(=筆者)からそう言われると」
――マイクで拾ってなくても歌ってるとか、顔をグシャっとさせて叩いてるのって、さっきも言った視覚的な高揚感にめちゃくちゃつながると思うし、そういう絵をきちんと押さえてくれてるのもうれしいなと。そして、アンコールの『時代』(M-17)のMCでは、『東京』のインタビューでもキーワードになった“人間冥利”という言葉が聞けます。
上杉「アリーナツアー中は、もろ『東京』のレコーディング中でしたから、今まで以上にクリエイティブな目線が入ったライブでもありましたね。それもあって、1日目で新しいアイデアが生まれたら2日目にぶち込んじゃおう! みたいに、どんどん変化していく瞬発力があったツアーな気がします」
柳沢「胸を張っていいことかは分からないですけど、ビーバーは音楽が先にあるんじゃなくて、言いたいこととか気持ちとか、人間的なところが先にあるからこそ音を鳴らすという順番なので。例えば3年こもって音楽的な実験をするより、人と会ってる方がいい曲ができるんじゃないかと思うし。スケジュール的にバタバタすることもいっぱいあるんですけど、やっぱりライブのさなかで曲が生まれていった方が、ビーバーにとっては健全だと思う」
――何かね、改めてこういう光景を奪われたくないなと思った。ライブを見てていつも思うけど、長い拍手とかだけでもちょっと泣きそうになるもん。よくみんな耐えられるよね。
渋谷「もう責任感のみですよ。最後まで全うしようと思わなかったらすぐ感動しちゃうんで」
――お客さんが思ってる以上に、お客さんは力を持ってるのを思い知らされるよね。
時にはレコーディングとは違うプレイを
ライブならではの音、弾き方に変えないと成立しないこともある
――もう一方のドキュメントパートは、まずライブ直後の映像から入るから地続きで感情移入できるのがいいね。鏡張りのスタジオでのリハーサルの光景も映ったりして。ああいうリハってツアー前にどれぐらいやるものなの?
上杉「3~4日ぐらいですけど、ああいう時間は年々増えていってますね。今、回ってる『東京』のホールツアーではもっと時間を取っていて、音作りから毎日コツコツと、一人単位、バンド単位、最少スタッフ単位、最後に大所帯とか、そのレベルでやるようになってます」
柳沢「ただ、いわゆる流れとかも全部決めて通すのは最終日だけで、お客さんもいないのに意外と緊張するんですけど(笑)。自分たちがライブで使う機材もギターも置いてあって、ライブと同じテンポ感でギターチェンジもやってみて…とかいうのはやっぱり4人だけではできないので。さっきのリーダーの話じゃないですけど、ライブの規模やセットリストによって音も変わってきますし、僕は最近はずっとワイヤレスを使っていて。それもギターチェンジで毎回ライブの流れを止めたくないからで、自分一人でバーンと音を出したまま別のギターに交換できるように、動きというよりは流れを優先したかったんですよね」
――ライブ映像とドキュメンタリーを見ても、何ならこのインタビューもそうだし、ビーバーがライブに向けて緻密に準備してくれてるのが分かるね。
柳沢「めっちゃ細かい話ですけど、リハのとき、僕とリーダーの前はカーテンを閉めてるんです。あれは何でかと言うと、知らず知らず鏡越しに手元を見ちゃってるなと気付いたんで」
上杉「鏡越しにアイコンタクトしちゃったり、振り返ってドラムを見るんじゃなくて、目の前の鏡を見ながらドラムに合わせちゃう自分がいて(笑)」
柳沢「そう! 実際のライブだとそんなのあり得ないじゃないですか。これが馴染んじゃうとマジでよくないぞと」
――逆に渋谷くんは鏡がある方が、フロントマンの自分がお客さんからどう見えてるかが確認できていいよね。
渋谷「だからずーっとそれを見てますね(笑)。俺の場合はカラオケだったりで散々練習して、ゲネの前にはほぼ完成してるので、完成したものが俯瞰でどう見えるかが結構大事だから、時間の使い方は3人とちょっと違うかもしれない。まだ楽器陣が調整してる段階では俺はリハに行かなかったりもするし」
――2DAYS公演だから、当然1日目の後に反省してるところも垣間見えて新鮮でした。
柳沢「実際に音を出すと、特に新曲とかは“あれ? このまんまだとドラムがちょっと弱いんじゃない?”みたいなことも起きるから、時にはレコーディングとは違うプレイを、ライブならではの音、弾き方に変えないと成立しないこともあるので。それを録って俯瞰で聴いたり、結構綿密に確認させてもらってますね」
――俺、ミュージシャンじゃないのに昔からよく夢で見るんだけど、まだ全然準備ができてないのにライブが始まっちゃうの。で、“うわ…夢でよかった~!”っていつも思う。
渋谷「それは俺らがよく見る夢!(笑)」
上杉「しょっちゅうありますよ。全然違うバンドに入ってて、いきなりワンマンで演奏する夢とか(笑)」
――今回の映像からライブ前の緊張感がひしひし伝わってくるからこそ、そんなことを思ってしまいました(笑)。同時に、“温度、大丈夫だった?”って何回も確認してくれる優しいスタッフとかの姿も見えて。
渋谷「ステージ上の温度はマジで大事です。空調を何度に設定して、これぐらいになったら下げてとか。温度って、知らないうちに見に来てくださってる方のテンションにも、俺らのテンションにも影響するんで。寒いと縮こまっちゃうから高揚しにくいし、暑過ぎると体力がもたないし、絶妙なところを突くのが難しいんですよね」
今までのビーバーのライブを知ってる人が見ても
すげぇなと思うレベルでやれてるんじゃないかな
――最新アルバム『東京』に関しては、完成した瞬間というより“お客さんに届いて徐々に仕上がっていく感覚”とリーダーもインタビューでは言ってたけど、現在開催中のリリースツアーの途中経過としてはどう?
渋谷「いいアルバムだなぁとめちゃくちゃ思ってますし、歌っていてかつてないほどくたびれるんですよ(笑)。でもそれは、込めるエネルギーの純度がどんどん高くなってるからだと思うし、聴いてくださる方に寄り添えるアルバムがやっとできたんだなと。それを受け取った気持ちを声が出せない中でも自分たちに届けてくれて、それを受け取ったこっちがまた発信してるからくたびれるんだなと分かるし。そういう気持ちの往来が過去一番できてる実感があるし、いいバンドだなって改めて思ってますね」
柳沢「『東京』のリリースツアーに向けての準備期間は今まで以上に長かったので、そういった意味でも、いいものを届けられてる感覚が初日からありましたし、待っててくれる人がいることを改めて感じるツアーですね。かつ、届き方もどんどん変わっていってると思う。さっきの話じゃないですけど、1日目を踏まえての2日目みたいに、毎公演ごとにいろんなことを提案しては試して、これまでのツアーよりも速いスピードで研ぎ澄まされていく。見に来てくださる方の表情も素敵だから、もっとキャッチしていきたくなる。すごく濃くていいツアーだなと思います」
上杉「『東京』はものすごいアルバムなんだなと実感するのは、ちょっと前の自分たちのキャパだったら逆にやられちゃって、ヘナヘナになっちゃう可能性もあるぐらい表現するためにエネルギーが必要なんですよ。でも、アリーナツアーを経てチームとしてもどんどん強くなってる今だからこそ、そのクオリティに到達してちゃんとライブができてる。バンドがまた今までに体験したことがないネクストステージに入ってるというか。だから、今までのビーバーのライブを知ってる人が見ても、すげぇなと思うレベルでやれてるんじゃないかな?」
藤原「僕は今までのツアーで一番準備してるのに、一番しんどいかもしれないですね(笑)。それでも毎回、みんなで“おっしゃ!”みたいな感じで終われてるし、いろんな意見を吸い上げて、いい意味で反省会もちゃんとやれてるので。僕個人的には、ライブが終わったらその日の音源をもらって、チェックしながら聴くんですけど、“もっとやれるな”みたいに落ち込むことも多いんです。けど、何でそう思えてるのかというと、『東京』を聴いてくれた人たちがものすごく期待してツアーに来てくれてるのが分かるからで。だからこそ、より良い形で『東京』を表現したいと思えてるし、各セクションのスタッフも全員すごい熱量で動いてるから、もう修行みたいなツアーになってる(笑)」
――そして、昨年のアリーナツアーも相当な規模でしたけど、それ以上のものが今年もあって。横浜アリーナなんかは、かつて無観客配信をやった場所にお客さんが入ったとき、どう感じるかも楽しみだね。
渋谷「結構いろんな人から、“リベンジできてよかったね”と言われるんですけど、あの日はあの日で完結してる感じもあるから。ただ、できなかったことを一つずつ回収して、実直に歩めてるのはいいよなと。あの場で見たかった人はやっぱりいるんだなと思ったし、配信はフロアでやったんで、今度は全然違う景色になることは間違いないので」
――逆に今回のアリーナツアーで、大阪城ホールは前回と全く同じシチュエーションだからこそ、経験値があるからこそ、よりいい景色を見せてくれるんじゃないかというのも。
渋谷「自ずと比べられる対象になるので、“この1年で、ちゃんともっといいものを作ってきたよ”と見せたいですよね。今、ホールツアーを回ってて、本当にチームとしてデカくなっていってるのを感じるし、すごく頼もしいなと一日一日思えてる。当たり前かもしれないけど、“みんなが真面目に頑張ってる現場っていいな”と思いました。だからこそ、そこでフロントを張っている俺が守らなきゃと、18年目にしてまた新しい感覚でいられるのは幸せなことだなと。見てくださる方にも支えてくださる方にも、よりいい景色を見せたいし、より楽しいなと思ってもらえるように、そして、より楽しいなと思えるように、頑張りたいなと思ってます」
藤原「さいたまスーパーアリーナの映像は、間違いなくいいものが撮れた実感があるから楽しみにしていてほしいし、このアリーナツアーをやってたときに『東京』を作ってたのもあって、2つにはすごくつながりを感じるから、CDを聴いた人は映像を見てほしいし、映像だけじゃなくCDも併せて楽しんでほしい。その続きで今、新たなツアーを回ってるので、物語のようにちゃんと地続きでやれてる面白さを、ぜひ目撃してほしいと思ってます!」
柳沢「こうやって話しながら、今一度燃えてきた気がします。初めてのアリーナツアーを経たいい映像作品が出ますし、’21年もひたすらライブをやってきたバンドだからこそ、今はもう“ライブができる喜び”だけのライブではないと思ってるので。この先のホールツアー、イベントにも全力で向かいますし、秋にはまたアリーナツアーもあります。とにかく楽しみに、期待して、足を運んでもらいたいなって」
上杉「
『東京』のインタビューでも言った通り、より聴いてくださる方=あなたという存在があってのアルバムができた実感があった上で今、ツアーを回っていて。いい意味で責任をシェアしてる感じのおかげで、バンドとしての腹のくくり方とかライブに変化を感じていて、互いに信頼してるからこそ作り上げられるエネルギーがよりいっそう強くなってるし、自分たちがもっと本腰を入れてやらなきゃいけない部分、そうじゃないと見えてこない景色を目の当たりにしてる。そういう成長のときだと思っているので。アリーナツアーまでずーっとこの感じで向かえたらものすごいことになると思うので、これからもよろしくお願いします!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 青木カズロー、日吉“JP”純平