10年ぶりのメジャー再契約後、初にして最高純度のロックアルバム『アイラヴユー』のリリースからわずか3カ月で、こんな強力な3曲を世に問えるSUPER BEAVERの現状に、驚きと喜びが湧き上がる。5月19日に発売されたニューシングル『愛しい人』の表題曲は、松坂桃李、麻生久美子、井浦新出演のテレビ朝日系金曜ナイトドラマ『あのときキスしておけば』主題歌となった、彼らにとって久々のラヴソング(を超えたラヴソング)。他にも、バンドの信条と荒ぶるサウンドが痛烈なメッセージを呼び寄せた『ほっといて』、さらには、形のないものばかりを歌にしてきたSUPER BEAVERの真骨頂であり、感情が雨のように降り注ぐエモーショナルな『はちきれそう』と、その真価を話題性ではなく音楽で見事に証明してみせた充実の1枚に。サブスク全盛の今、シングルを配信でなくフィジカルで出す理由と心意気、歌詞カードの最後やCDの帯の裏に添えられた言葉に至るまで徹底的にSUPER BEAVERな新作を、メンバー全員で語るインタビュー。SUPER BEAVERにとって、そして、あなたにとって『愛しい人』とは? その存在に想いを巡らせるだけでもう、この音楽には意味がある――。
――タイアップと言えども、ドラマや映画にガッツリ沿ったものというよりは、自ずと目線が重なるところを見出せるのがビーバーの楽曲だと思いますけど、今回は柳沢くん的にラヴソングを作りたかったと。
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柳沢 「『アイラヴユー』を作って、あらゆる意味での愛だったり、愛に限らずエールに成り得るもの…そういったメッセージを自分たちなりに発信してきた中でさらにもう一歩、聴いてくださる方の日常に近付きたいというか、もっともっとSUPER BEAVERを身近に感じるシーンを増やしたいなと。そういう気持ちになれたのが、いわゆる恋愛にフォーカスを当てたラヴソングを書きたいなと漠然と思ったきっかけの一つなんですけど、それをいつ書こうかな、どう曲にしようかなと考えてる最中に今回のお話をいただいて。プロデューサーの方とお話しさせていただいたり、台本を読ませていただいたりした中で、“それがこのタイミングじゃないか?”と思えたんですよね。もちろん、価値観というか精神性みたいなものは変わらずSUPER BEAVERとして思ってきたことから出てきてるので、今回はそういった姿勢とタイミングが合ったのが一番大きかったなって」
――例えば、25歳でそのオファーが来るのと、30歳を過ぎて今書くラヴソングは変わるだろうし、お題としては改めて面白いチャレンジかもしれないですね。
渋谷 「恋とか愛って普遍的なテーマだと思うんですよ。なので、要はそこに対しての気持ちの持っていき方なんですけど、20代で書く/歌うラヴソングと、30代のそれの違いを出せるのは素敵ですけど、今回はあえて変え過ぎないようにしようと。いろんな経験をしちゃったから新鮮に感じられないこと、いろいろと見えちゃうところも増えてきたかもしれないけど、あのときの心の動き方って、幾つになっても限りなく近しいと思うんですよね」
――あの気持ちの高ぶりとか。
渋谷 「そう! “この人はすごく素敵だな”と思ったり、“この人のことが好きかもしれない”というあの感じを、そこまで大きく変えちゃいけないような気がしたんですよ。大人になった経験則も分かるし、若い子の“すきぴ”はそれだけじゃないんだよ、みたいなことも分かるけど(笑)、そういう状況になっちゃったら結構同じだと思うんですよね。その変わらない気持ちを大事にしようとは思ってましたね」
――逆に言うと、“そこそこ大人になった今でも、またこの気持ちになるのかよ”っていうのはあるもんね。
渋谷 「そこはピュアに表現して大丈夫な部分だと思ったし、割と“生きる”と直結してる部分なのかなと思って」
――ちなみに、すごく単純で興味本位の質問だけど、“恋と愛の違いは何ですか?”と聞かれたら?
柳沢 「個人的には、“これだ!”と言えちゃうものの方が恋に近いのかなと思いました。今みたいに頭を悩ませるときって、もう恋心だけじゃない何か=愛が含まれてくるのかなと。学生の頃を振り返ると、“とにかく顔がタイプ”とかテンポ良く言えたというか(笑)、何なら“あの芸能人に似てるから”とか、“あのとき優しくされちゃって”とか、どっちかと言うと入口のイメージが強くて、関係性の始まり=恋心みたいな。とは言え、これが答えという意味ではなくて、今話してるこういう感覚を歌にできたらなというのが、今回のスタート地点にはありましたね」
上杉 「まぁ思い起こせば、愛は家族からもらうのが最初だと思うんですよ。要は見返りがないもの。自分の捉え方だからみんなとは違うかもしれないけど、恋より愛の方が俺は責任があることかなと思ってる。言い方を変えれば、“重たい”(笑)。でも、責任があるからたどり着く境地もあるのかなって。恋の方がもうちょっとライトでサクッとしてる気がする。その良さもあるじゃないですか? ただドキドキしたいとか、ただかわいい/カッコいいとか。でも、自分がかわいい/カッコいいから家族が自分を愛してくれたわけじゃないし、入口は好きで一緒にいるようになっても、それだけじゃなくなってくるもんだと思うんですよね。でも正直、愛を語れるほど生きてないですから!(笑) 歳を取る中で、断片的に感じていくんじゃないかなと今は思ってますけどね」
――こうやってみんなで意見を言い合えるところが、ラヴソングの共通言語としての機能かもね。
柳沢 「渋谷さん、さっきからずっと天井を見上げてますけど?(笑)」
渋谷 「いや、めっちゃ考えてたんですよね。あの…好きな“おかず”をあげられたら=愛じゃないかなと思いますね」
柳沢 「アハハハハ!(笑)」
渋谷 「例えば○○定食って、要はメインとなるおかずが定食の名前にまでなるわけじゃないですか? 小っちゃい頃に父ちゃんと母ちゃんがそのおかずを俺にくれたとき、それが食べたくて頼んだはずなのに、何の抵抗もなく何でそんなことをしてくれるんだろうと思ってたんですよね。その上で家族ならまだしも、他人にそれができる感覚って分かんねぇなとずっと思ってたんですけど…今となっては確かに、“この人にならあげられるな”っていうことがあるんです。でも、そこまでの関係値を築けてないときは、俺のハンバーグだし俺のエビフライだし俺の生姜焼きなんで」
――アハハハハ!(笑) 最高だな。
渋谷 「一口だったらまぁあげても良いけど(笑)。でも、一周二周と回ったとき、例えば相手がそれを食べたいなら、“全部食いなよ”ってなれちゃう瞬間があって、少なからず自分の中でも何人か思い当たるなと思って。自分が持ってる何かを、もう何の抵抗もなく“欲しいならやるよ、お前が使ってくれるなら本望だよ”とか、“お前にならこれをあげるし、お返しは何も要らないから”って。そこの差なのかなって、今思いましたね」
――それを食べて自分が満たされる喜びより、その人が食べて喜んでる顔が見たいという。
渋谷 「それで“おいしいおいしい”とか言ってたら、“食べな食べな、俺には白メシとお新香があるし”みたいな(笑)」
――ちなみに俺はTwitter のプロフィールに、“マジでRTは愛。ファボは恋”って書いて固定してる(笑)。いいねはただ単に好きで、リツイートは自分が好きなものを他の人にも知ってほしい、より多くの人に届いてほしいというか。
柳沢 「確かに、自分の意思もそこから一緒に飛んでいきますもんね」
――それでは、藤原先生の恋と愛をお聞かせください(笑)。
藤原 「えぇ~この後に話すのイヤだなぁ(笑)。けどまぁ見返りを求めず、イヤなことができちゃったときとかは愛なのかなと思いますね。あとは例えば料理をして、おいしくきれいにできたお肉の方を相手によそっちゃうとか、ちょっと多めによそっちゃってる自分とか」
――何気なく聞いてみたけど、ビーバーの人柄の良さが出たよね。例えが基本、“ご飯”という(笑)。
(一同爆笑)
渋谷 「庶民派ですよね、やはりね(笑)」
――でもね、『愛しい人』の歌詞にも、“他人にはとてもじゃないけど 見せたくない本性も/互いに知ってなお 寄り添い合えたなら”とあるけど、上っ面だけじゃなくて自分の/相手のダメなところもひっくるめてなお、一緒にいたいと思えるような…恋しい人も良いけど、愛しい人がいる人生は、素敵なんじゃないかとも思うし。
柳沢 「今、みんなの話を聞いて改めて思ったんですけど、やっぱり“情”の部分ってすごく大事というか。情が生まれてくる=ちょっと変化していくサインな気もしますよね。“愛情”という言葉があるぐらいだし」
――確かに。愛情はあっても“恋情”はあまり聞いたことがないもんね。
柳沢 「“かわいそう”じゃなくて一緒に悲しくなるとか、自分のところまで感情が来ちゃう感じ。そこが恋心だけではなかなか味わい切れない部分なのかなって。だからこそ、いわゆるパートナーだけではなく、友人とか家族にもそういったものが発生し始めるのかもしれないし」
――前回の『アイラヴユー』のインタビュー でも、“愛を今、歌って様になるバンドが、ビーバーの他に誰がいるのか”と言ったけど、ビーバーから立て続けにこういう新曲が届くのは頼もしいし、ビーバーの役割のようにも感じる。
柳沢 「ラヴソングを書きたかったことにも通じるんですけど、もっともっとSUPER BEAVERの音楽を身近に感じてほしいし、“大人になったら分かるよ”じゃなくて、今リアルタイムで“もうどうしようもない!”みたいな人にも何かきっかけとか、考え方のシフトチェンジの仕方になったり…そういうところまで届いたら良いなと思ったので。もっともっとあなたに近付きたいみたいな気持ちは、今はすごく強いかもしれないですね」
10年前の曲ですら、ともすれば今とバチッとハマる曲がある
そこがSUPER BEAVERの強さというか、SUPER BEAVERのらしさ
――『ほっといて』(M-2)は前作における『パラドックス』(’21)の系譜も感じるような、ビーバーのワイルドな魅力を感じる曲で。これはベースリフで始まる曲を作りたいというアイデアから始まったと。
上杉 「ベースリフをくれと言われて幾つか送ったうちの一つからヤナギ(=柳沢)が膨らませて作った曲で、音像的にもベースが真ん中にいる感じにしようと。リフ以外のところもずーっとベースソロだと思って弾いてる感覚なので、聴いてて常にベースがカッコいいフレーズが散りばめられてる気がしますね」
――全編を通してベースがかなりいろんなことをやってるなと、うなりながら聴いてましたよ。
上杉 「はい、すごく大変でした!」
柳沢 「アハハ!(笑)」
――この曲は昨日今日ビーバーが歌い始めたことじゃなく、常々感じてることが言葉になってますね。
柳沢 「元々ビーバーの根っこにあるところというか、エネルギーとしては間違いなくそういう違和感だったりいら立ちみたいな部分も含めて書きましたね。リーダー(=上杉)にもらったベースリフがそもそもちょっとマイナー調だったんですけど、そこからいわゆるオケを作っていったらサウンドもちょっとエッジィなものになってきたので、呼ばれる言葉も自ずとニコニコした歌詞にはならなかったというか、であればと思って底にある感情を引っ張り上げてハメたという。そういう意味では、言葉のチョイスはすごく自然だった気がします」
――そこはちゃんとバンド内で作用し合ってるという。あと、歌詞にも通じる話だけど、今ってカッコ悪いことをしないという誇りより衝動が勝っちゃうというか、SNSとかを見てると短絡的な欲求を満たすことに流されがちな時代の空気を感じてしまったりもして。
渋谷 「自分に対するヘイトの立ち位置みたいなものは、常日頃考えてて。この曲で歌ってることもそうですけど、ただ嫌いとか何となく好きじゃないって、人間だからあり得ない感情ではないとは思うんですけど、“それをわざわざ人に伝える必要ある?”とは思いますよね。ただ、自分たちの筋として、それが自分が好きだったり大事にしてるものから派生する感情なら、別に言っても良いのかなとも思う。それはそこに生じる責任も全部背負うということだし、言葉に責任を持つってそういうことだと思ってるので。そこは区別してますね。だからこの曲は、嫌いなものを思い浮かべて歌ったというよりも、好きなものを思い浮かべて嫌いと歌ったイメージに近いですね」
――『ほっといて』も『はちきれそう』(M-3)も2年ぐらい前に書いた曲ということだけど、今回の3曲を’21年に聴いても違和感がないのは、ビーバーがブレずに筋を通してるから、いつ書いた曲でも今の曲として聴けるんだなと思うね。だからこそストックが活きてくる。
柳沢 「さっきの恋愛感情の話もそうですけど、生きてたら何度でも思ってしまうような普遍的なことを、その都度、歌にしてるバンドなのかなって、最近は改めて思うので。メジャー再契約後の1枚目のシングルぐらいから、“まさにドンピシャのタイミングの曲じゃないですか!”みたいなことを言っていただけるんですけど、“いや、そういうつもりでもなかったんですけど…”みたいなことも増えてきたので(笑)。10年前の曲ですら、ともすれば今とバチッとハマる曲があると思いますし、そこがSUPER BEAVERの強さというか、SUPER BEAVERのらしさなのかなって」
――あと俺、どっちかと言うと『愛しい人』より『はちきれそう』の方が好きというか、 鳥肌ポイントも多いし、 これはリード級の曲だと思ってて。相変わらず形のないものばかりを歌うビーバーの真骨頂だと思いましたよ(笑)。
(一同爆笑)
――これは渋谷くん的にも推しの一曲だったと。
渋谷 「そうなんですよ、めっちゃ好きで。良い曲だし、これはどうにか出したいなって」
藤原 「そう言われるとこっちも気合いが入るというか、“じゃあ良いオケを作ってやるぞ!”みたいな。だから、この曲はすごくやりがいがあったかもしれないです」
――“働いて 育んで 戦って 守ってる”の1行で全人類をすくい上げちゃうこの感じ、ビーバーらしいなぁって(笑)。
柳沢 「アハハ!(笑) 本当に好きで大事にしてる曲だからこそ、今までに何度も出すタイミングをうかがってた部分もありますし、今回じゃない可能性もあったんですけど、今ぶーやん(=渋谷)が説明してくれたような、すごくピュアな気持ちというか、いち作品にどれだけ想いをブチ込めるかという点でも、今ここで出す意味を感じたので。奥さん(=筆者)が言ってくれたように、形のないものの代表曲みたいな。説明しづらい気持ちがそのまま歌になって、だからこそ感じる心のうごめきみたいなものはあるなと、自分たちでも思いますね」
――これだけ“何か”とか“誰か”とか曖昧な対象を歌いながら、“憶えている”とか“思い出してる”という確かな行為が伴ってるのが、いかにも人間っぽいし、みんなが自分に置き換えられるだろうね。
柳沢 「自分も実際にこういう何とも言えない気持ちになるんですけど、そもそも何を思い出してこうなってるのか? 匂いとか音とか、“何か”がギュッとなる感じって人それぞれだし、ビーバーの曲の中でも本当にトップ3に入るぐらい答えがない。だからこそ、それぞれの“何か”に当てはめてもらえる曲なのかなって」
――あと、“記憶とは/誰にも等しい財産なんだ”も何げないけど素晴らしいラインで。俺はこの曲を聴いて、良い表現なのかは分からないけど、葬式向けの曲だと思いました(笑)。
上杉 「人生の最後に流して(笑)、走馬灯のように」
渋谷 「いやでも、すげぇ分かるなぁ~」
――人生の最後まで持っていけるものって、やっぱり記憶かなと思うので。そういう本当に大事なものというか、金とか地位とか名誉とかいろいろあるけど、どれも最後に目を閉じるときには自分の中に残らないから。あとはやっぱりね、メンバー自身が“この曲が好きなんです”みたいなエネルギーって、ビジネスライクじゃなくて良いよね。
柳沢 「フルアルバムであったり、もっといろいろ曲が選べる状況なら、メンバーからそういう言葉は出やすかったかもしれないですけど、“じゃあC/Wの存在価値とは何ぞや?”みたいなときに、そういうピュアなきっかけがあるからこそ作品として迷いなく送り出せるところはあるので、それはすごく良い瞬間だったなと思いました。『はちきれそう』を入れる選択肢が頭の中に全然なかったのに、一気にこの3曲であることの意味を持ったというか、今SUPER BEAVERが表現したいもの、届けたいものが純粋に作品になった感じはしますね」
――『アイラヴユー』というすごいアルバムを作った後に、まだこんな3曲が控えてるところに、このバンドの今のポテンシャルを感じると、リーダーも言ってたもんね。
上杉 「いや、まさにだと思いますね。作って途切れるわけでもなく、次から次へとまだ出てくるということは、何か届けたいものがずーっと自分たちの中にあるわけだから。それは一番喜ばしいことではなかろうかと思いますね」
今がバンドとして一番幸せな状態にある
――現在開催中のホールツアー『SUPER BEAVER 『アイラヴユー』 Release Tour 2021 〜圧巻のラクダ、愛のマシンガン〜』のファイナル、6月24日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA公演はオフィシャルYouTubeチャンネルで無料生配信されるし、この日の最後に何か告知があるのかなとか、いろいろ勘繰っちゃうよね? だって、7月9日(金)公開の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌『名前を呼ぶよ』のタイアップの話も、もう発表されてるしなぁ(笑)。
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渋谷 「うれしい情報がたくさんあるので、自分たちでも整理しながら、受け取ってくれる人が混乱しないようにちゃんと伝えていかないと、ですね(笑)」
――これだけ立て続けにみんなにお知らせできることがあって、しかもそれを面と向かって伝えられるツアーができてるのも、とっても喜ばしいことですね。
上杉 「今は忙しい日々をワクワクしながら送れてるので。うまく動けなかった’20年にチームで、メンバー間で思ったことをちょっとずつ、自分たちなりに活動で提示できてると思ってるし、国が決めたルールを全て守った上で、今バンドとしてやれることは全部やれてるんではなかろうかと。もちろん下半期とかそれ以上先のことも計画してますけど、それを実現していくためによりいっそう頑張っていきたい。そういう意味でも、今がバンドとして一番幸せな状態にあるのではないのかなと思ってますね」
――ビーバーの今年の動きを見てたら、普通にリリースをしてライブもしてるし、こうやってオンラインで話も聞ける。でも、みんながそう思えるようにビーバーのチームが立ち回ってくれてるからこそだもんね。
渋谷 「慣れたくはないですけど、いろんなことが頓挫するこの状況を受け入れなきゃいけないのかなと、腹をくくり出してきたところもあって。なので、自分たちが楽しいと思うこと、何よりも楽しんでもらえることをコンスタントに用意して、どういう形であっても発信し続けようと思ってるので」
――“楽しい”は全ての原動力だし、楽しいことは続くし、続けたいと思うから、大事にしたいね。
渋谷 「まぁ正直、やれてないことに対するフラストレーションもすごくあるし、“どうなんだ!?”っていう気持ちもやっぱりずっと持ってるから。それはきっとみんな同じだと思うし、それとのうまい付き合い方というか、それをうまく逆手に取ってやろうとは思ってますね」
――ビーバーは別にどの時代でもやることをやってたと思うけど、窮地になってからの強さが他とは違うよね。そういう真価が如実にあらわになった時代だと思う。神様はそういうところも見てるのかな?
渋谷 「ねぇ~そうだと良いですね。でも、ここで“そうだと良いですね”って言えるって、すごいことですよね?」
――本当だよ。真価を問われることを恐れなくて良いんだから。
柳沢 「さっきも、発表することが立て続けにあって、それを喜んでくださってる話になりましたけど、そういうことがやりたくてここ(=メジャー)にまた来たので。ドラマや映画のお話を僕らに持ってきてくださることはやっぱり普通じゃないなと思いますし、僕らが楽しいことをやるためには、チームの内側にベクトルを向けたときもお互いの責任を果たし続けなきゃいけない。だからこそ、“良い曲を書かなきゃ! 書きたい!”と思うわけで。引き続き良い意味でピリピリと、これまで通りしっかりやっていきたいし、だからこそ、その矢印が外に向いたとき、楽しいなと思えることが提示していけると思うので。これからも楽しんでもらえる発表であったり、発表したことで自分たちもテンションが上がるようなことを続けていくために、楽しいだけじゃない日々も頑張っていきたいと思ってます」
――いや~それでこそ真のメジャー、プロですね。
柳沢 「いやいや(照笑)。まぁでもこういうドキドキ、ピリピリも自分たちで選択しましたし、その選択を後押ししてくれた想いが1年たって消えたわけでもないですし、むしろどんどん増えていく一方なので。そういうところは自分たちの喜ばしい強みとして、もっともっと良い曲を作って、良いライブをしていきたいなという気持ちですね」
――それでは最後に、藤原先生からのありがたいお言葉をもらって終わりたいと思います!
藤原 「こういう世の中になっちゃったから、今は音楽だったりエンタテインメントは後回しみたいな感じになってますけど…だけどやっぱり、自分たちが好きなのはバンドであって音楽で。好きなものがあることで自分の心がすごく元気になったり、人生が豊かになるし、同時に、ビーバーが好きだから元気になれたり、心が豊かに暮らせる原動力になってる人がいることも、これだけバンドをやってるとさすがにもう分かってるので。だからこそルールの範囲内で、安心と安全を守りながら自分たちの好きな音楽を、ずーっと変わらずやり続けたいと思ってます!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 青木カズロー(撮影会場:北陸電力会館 本多の森ホール)