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「悔しさだったり、哀しさだったり、怒りみたいなものも
 全部捨てずに持ってきたからこそ、今人一倍喜べてる気がする」
痛みもロマンも携えて、SUPER BEAVERがついにメジャー再契約!
『ハイライト/ひとりで生きていたならば』全員インタビュー

 SUPER BEAVERというバンドに、“今までは”とか“前例”は、どうやら通用しないらしい。東京・代々木公園野外ステージでのフリーライブが行われるはずだった4月8日(※新型コロナウイルス禍のため中止)、メンバーの自宅より生配信された“SUPER BEAVER 15th Anniversary『都会のラクダSP~自宅のラクダ~』”にて発表された、メジャーレーベルとの再契約。6月10日にリリースされたシングル『ハイライト/ひとりで生きていたならば』は、新たな幕開けにふさわしい疾走感と高揚感にまみれたロックチューン『ハイライト』、中条あやみ主演映画『水上のフライト』の主題歌に抜擢された感動のバラード『ひとりで生きていたならば』に加え、10年前のメジャー在籍時、最後にリリースされた『SUPER BEAVER』(’10)に収録されていた名曲『まわる、まわる』新録バージョンの3曲で構成。メジャー再契約の発表時にYouTubeのチャットやSNSに流れたあの声が、結成15周年の特設サイトに寄せられたあの言葉が、4人が気の遠くなるような長い時間をかけて1人1人出会ってきたあの顔が今、ここまで這い上がってきた彼らの歩みを後押しする。再び勝負に挑む大舞台を前にSUPER BEAVERが語る、全員インタビュー。

 
 
大事なトピックを伝えるために
最初から最後まで妥協しなかった結果があれだった
 
 
――いや~現場至上主義の皆さんと、まさかこんな形(=オンライン取材)で(笑)。
 
渋谷(vo)「不本意ですよね、本当に!(笑) それに、おしなべて皆さん同じ状況というのを加味しつつも、満を持しての重大発表がこのタイミングかよって、正直思いましたね」
 


――俺もYouTubeでの生配信『都会のラクダSP〜自宅のラクダ〜』を見てたけど感動したね、やっぱり。ライブでは拍手や笑顔が見えるけど、YouTubeのチャットでは今までは見えなかったみんなの心の声が文字で伝わってくるのがすごくよかったなと。そういう意味では災い転じてじゃないけど、ドラマチックなメジャー再契約の発表になって。
 
渋谷「そもそもは代々木公園でフリーライブのときに、その場で実際に顔を合わせて発表して、都合上どうしても来られなかった人にも配信しようと動いてたんですけど、それがかなわなくなって。それなら無観客で配信ライブをしようとしたら、結果的にそれもできなくなり…(苦笑)。言ってしまえばあれもやれない、これもやれないが続いた末の苦肉の策だったんですけど、ちゃんと自分たちの声で想いを伝えたいなと思って。奥さん(=筆者)が言ってくれたみたいに、コメントが流れるのを追って見られる、その人たちの気持ちを言葉としてちゃんと受け取ることができたのは、自分たちにとっても初めての経験で、何だかケガの功名じゃないですけど(笑)。メジャーに行くことをそんなに深く説明もしないままポンと言ったとき、はたしてどうなるのか。否定的な意見もあったりするのかなと思ってたんですけど、自分たちの歩みであったり姿勢を捉えてくださった人が大半だったみたいで、ポジティブな反応が多かったのもすごく嬉しかったですね」
 
――本当に自分のことのように喜んでくれた人が多かったよね。
 
渋谷「オンステージするのは俺たちだけど、生き方とかパーソナルな部分も全部ひっくるめて見てくれてるというか…まぁ自分たちからそれが滲んじゃってるんだとは思うんですけど(笑)、いい関係が築けてきたんだなと改めて」
 
柳沢(g)「いやもう本当にぶーやん(=渋谷)と奥さんが言ってくれてるとおりで、自分もやっぱりすごくグッときたし、気持ちがチャットで可視化されてたのは配信ならではだし。望んだ形ではなかったけど、代々木公園でフリーライブができないならせめて無観客の配信ライブを、無観客の配信ライブができないならせめて自宅からの配信ならいいんじゃないかって…とにかく必死に抗ってた感はあって(笑)。大事なトピックを伝えるために、最初から最後まで妥協しなかった結果があれだったと思うんですよね。だからこそ、お互いにああいう感情になれたのかなと。僕らだけじゃなくて見てくださってる方も含めて、画面上とは言えど滲み出てくるものを噛み締めてた感じはすごいあったなと思いましたね。インタビュー映像を流してる裏でメンバーだったりチームの人間と携帯でやりとりもしてたんですけど、そこですら結構グッとくるエモーショナルな瞬間はありましたし。狙ってたわけではないですけど、結果としてあの形じゃないと味わえなかった感動みたいなものはあったなと思いましたね」

――リーダー(=上杉・b)と藤原(ds)くんは体調不良で配信には参加できなかったけど、2人が最高の形で代弁して。
 
上杉「こんなふうに世の中がなるとも思わなかったし、いつだってやりたいことをみんなで決めてトライしてきて、今回の発表に至るまでもプロセスがあるわけじゃないですか。でも、結局ああいう形になったことに、ちょっと自分たちらしさを感じてしまったところもあるし(笑)。ライブもできなかったし、4人で発表もできなかったけど、伝えたいことはできる限りの手段を使って、ちゃんと発信できたのかなと。2人が発表したとき、自分もすごい感動したので。ちょっとリスナーに近い形で見てたから」
 
藤原「僕もやっぱりちょっと感動しちゃいましたよね。もちろん本当は参加したかったし残念ではあったんですけど、2人がいろいろとうまく話してくれたし、コメント欄から見てくれてる方の想いもダイレクトに伝わってきたから余計に感動したんだろうし。さっきぶーやんも言ってたけど、メジャーに戻ることに対してはいろんな意見があるとは思ってたんですけど、ほとんどの方が“おめでとう”とか“よかったね”みたいに、本当に仲間のことを思ってくれてるような表現が多かったし、そうみんなが思えたのも、やっぱり2人の言葉がすごく伝わったからなんだろうなと思って。このメンバーと一緒にやってきてよかったなって、妙な感動が(笑)」
 
――いい話(笑)。あと、こういう状況でも途切れずみんなとコミュニケーションが取れたのは今の時代ならではで。
 
渋谷「そこはすごく大事にしてきたし、そうやって足を使って自分たちで会いに行くのが好きだから年間100本ライブをやってきたところがあるので、会いに行けなくなっちゃう現状を“仕方ないね”で済ませるのは、それこそ不本意だなと。そういう状況の中でも常に姿を見せて、コミュニケーションを取れるツールは何だろうと考えたとき、少しでも楽しみにしてくれる人がいるのであれば、自宅からの配信を定期的に続けていきたいなと思えたんで。自分たちなり、この状況なりのスタンスの貫き方の1つではありますね。まぁ、お互いに“元気でやってる?”みたいな(笑)、限りなくそれに近いことだと思ってるんですよね」
 
 
メジャーに向かってそういう曲を制作するというよりは
そういう曲ができてくるような状態だからこそ
メジャーに行くという結論に至った
 
 
――今回のメジャー再契約の話自体は、結構前からあったみたいで。
 
渋谷「3年ぐらい前から声をかけていただいてましたけど、一度メジャーから落ちてるバンドだから、戻るならその場所や意味合い、やれることが増える確証、具体性みたいなもの…自分たちが全部に納得しないとなと思ってたので。どんな気持ちで自分たちとやりたいと言ってくれてるのか、その関係性作りには最低でもこれぐらいの時間は必要だったのかなと思ってますね」
 
――結果論なのか運命なのかは分からないけど、行き着いたのが古巣のレーベルっていうのがこれまた(笑)。
 
渋谷「正直、それについては超おもしれぇじゃんと思ってる部分はあります(笑)。“メジャーから落ちたバンドが武道館でできるなんて”みたいに言ってもらえた時期もあるんで、そういうふうに自分たちがたどってきた道を、よりロマンをはらんだものにしていくのも今では活動のスタンスの1つだと思ってるんで。“メジャーから落ちたら、そもそも音楽をやることすら難しいんだよ”って言われてたバンドが、ずっと音楽を続けてきた結果、もう1回メジャーに戻るっていうのは、1つの可能性を提示できたのかなって」
 
柳沢「もちろん、ここからの結果次第だとは思うんですけど、20代前半とかのバンドマンに、いい例として影響を与えることができたら本望だなと思いますね。“でも、ビーバーみたいなパターンもあるじゃん!”っていう選択肢が、バンドを1年でも長く続けようと思えるポジティブなきっかけになったら、すごく嬉しいことだなって」
 
――ビーバーによってまた新しい“前例”ができたわけだもんね。ただ、今回の『ハイライト』(M-1)自体は、そもそもメジャーに向けて書いたというよりは、もっと前から存在していたと。
 


渋谷「去年はリリースがなかったのが今までの活動とは違ったところだと思うんですけど、その間も曲はたくさんできていて。自分たちは、嬉しかったり、楽しかったり、“最高だぜ!”って思うプラスの感情も、悔しくて、虚しくて、っていうマイナスの感情も、1つも捨てずにここまで持ってきたし、そのときに覚えた感情をその場で終わらせないで、それを踏まえたからこそ今を楽しめるような状況に少しずつ変えてきたバンドだと思う。『ハイライト』はその歩みを体現できてる曲だと思うし、自分たちのスタンスとタイミングがこの曲に関してはドンピシャだったのかなと。過去のことも、現在のことも、そして未来に馳せる想いも言い表せた曲だと思うので」
 
――去年の『RUSH BALL 2019』のMCがすごく印象に残っていて。“あの日あのときあの失敗があったから今日につながれたのは、あなたがその感情をしっかり離さず持ってた結果だと思います。ムカつくなと思ったり、イライラしたり、怒ったり、そういう感情も、自分でしか守ることのできない大事な感情です。俺たちはそれを1つも捨てずにこの場所に来ました”って…。これって誰もが言える言葉ではないし、めちゃくちゃ『ハイライト』っぽいなと。
 
渋谷「そういうところもつながってるのは、バンドとしてちゃんとメッセージを投げられてる感じはしますよね。いざこうやってMCについて言われると、何だか恥ずかしいですけど(笑)」
 
――本当に一貫してるよね。あと、メジャーに復帰するこのタイミングで何を歌うのかは、やっぱり問われると思うから。ライトな歌を世に出してきたバンドじゃないだけにね。
 
柳沢「根幹の部分はやっぱりずっと変わってなくて、MCと楽曲の連動性もそうですし、こうやって奥さんに毎年のようにインタビューしていただいて、振り返ると同じようなことを言ってるかもしれないし(笑)。でも、それを留まってるとは全く思わないので。この数年はバンドが進んでる実感がものすごくあって、だけど言ってることが変わらないのは、実はめちゃくちゃ健全なことなんじゃないかっていうのはあります。だからこそ、特段メジャーということを考えて作った楽曲じゃなくとも、そのモチベーションとかテンションは同じというか。1つの波に乗ってる感じがあるなって、今の話を聞いてても思いましたね」
 
上杉「曲が生まれてくる経緯が今のバンドを全部表しているというか、メジャーに向かってそういう曲を制作するというよりは、そういう曲ができてくるような状態だからこそ、メジャーに行くという結論に至ったという方がスマートな気がして。そうやってどんどんバンドそのものが曲に投影されていく。だから、この曲は…ていうかいつだってそうなんですけど、新曲は分かりやすく今の自分たちを表してると思うし、同じようなことを昔から信じて歌ってるかもしれないけど、その意味と確信は強くなってる気はしますね」
 
藤原「狙ってなかったけど、このタイミングで出る曲としてはぴったりですよね。ちゃんと自分たちと向き合って、その瞬間瞬間を一生懸命にやってきたからこういう曲が生まれたんだろうし。自分で言うのもアレですけど、『ハイライト』をリリースできること自体が、自信みたいなものにはなりますよね」
 
――『ハイライト』は嬉しいことに聴いててちゃんと鳥肌が立つし、めちゃくちゃ高ぶるというか。俺が今、中高生だったら、聴きながら“うぉー!”って叫んで家の壁を殴りまくってるね(笑)。
 
(一同爆笑)
 
藤原「めちゃめちゃパンク(笑)」
 
――人を動かすパワーとか情熱みたいなもの…それが歌詞にもある、圧倒的な感動であり感情なのかもしれないし。あと、さっきの話じゃないけど、“歓びだけじゃない 悔しさ 哀しさも 怒りも 虚しさも”というフレーズには、ビーバーらしさをすごく感じる。悔しさ、哀しさ、虚しさは、『ひとりで生きていたならば』(M-2)の歌詞にもあって。
 
柳沢「メジャー再契約という出来事に関して思い浮かぶ人が多過ぎて、ライブを観に来てくださる方々はもちろんだし、スタッフ、メンバー、それこそ奥さんと一緒に大阪の高架下で呑みながら(=福島2nd LINEの打ち上げ)、“どうやったらビーバーってもっとよくなるんだろう?”みたいな話をさせてもらったこととか…そういう一瞬一瞬に気持ちがあって、自分たちが歩いていく未来に、どこかでずっと期待し続けてきたバンドだと思うんですよ。さっきのぶーやんのMCの話じゃないですけど、悔しさだったり、哀しさだったり、怒りみたいなものも全部捨てずに持ってきたからこそ、今人一倍喜べてる気がするし(笑)。そういうことはやっぱり、ちゃんと歌にしていきたいなって」
 
――悔しさ、哀しさ、怒り、虚しさ…それは時に前進する推進力にもなる。そうしてこそ人生だろうとも思うし。
 
柳沢「ただ、その中で少しだけ変わってきてるのは、いまだにめちゃめちゃ悔しいことはあるわけですけど…どこかにぶつけたい苛立ちが全てを覆い尽くすエネルギーになる感じとは違って。自分1人というよりは、周りに人がいてこそ生まれる悔しさが増えてきてる気がしますね」
 
――それはいい意味で、ちゃんと背負うものが大きくなってきてるんだろうね。
 
 
“やっぱりSUPER BEAVERのスタンスってこうだよな”
っていうところがものすごく曲に入った
 
 
――両A面の『ひとりで生きていたならば』は初の映画主題歌ということで、こちらも本当に素晴らしい曲で。さっきメジャー再契約の発表をファンが自分のことのように喜んでくれた話をしたけど、ビーバーのステップアップにこっちも嬉しくなるのは、普遍的なことを歌ってるからこそ他人事じゃなく自分事に感じるのもあるだろうなと。ビーバーが愛される理由みたいなものを、この曲を聴いたときにはすごく感じましたね。
 


柳沢「ありがとうございます! 実はこの曲以外にも何曲か作ってたんですけど、最初はそれがハマらなかったんですよね。そのときに浮かんだのが、ビーバーを好きだと言ってくれてる人だったり、チームの人間だったり、メンバーだったり、こういった状況をいち早く知ってる関係者の方だったり…ここからまた新たなステージに立とうというビーバーに期待してくれてたり、喜んでくれる人たちの顔で。勝手に背負ってる気持ちがあったからこそ、ハマらなかったことがちょっと悔しかったんですよね。だからこそ、そこから改めて曲を作ったとき、“やっぱりSUPER BEAVERのスタンスってこうだよな”っていうところがものすごく曲に入ったというか。今のSUPER BEAVERがギュッと詰め込まれた感じで、そういった気持ちと作品がリンクする部分もあったと思うので」
 
――“こだわること やめてしまえば/過去が嘘に変わる”というフレーズが特にグッときて。こだわること=個性でもあると思うから、こう言ってもらえると勇気になるなと。社会でうまく立ち回れなくて、不器用だけど懸命に生きてる人が、ズルをしない自分でい続けられる最後の砦みたいな。
 
柳沢「嬉しいですね。ビーバーはやっぱりこだわってきたと思うし、それ故に歩みは少し遅かったかもしれないですけど、それがあっての今日だと思うので」
 
上杉「やっぱりこの時期にこれを歌うということは、『ハイライト』に通じる部分がすごくあると思ってて。図らずしもこの曲もぶっ刺さる楽曲になったというか、ある種の意思表明じゃないけど、自分たちが見てきた景色とか感じてきたことが言葉になって、それが曲になり…今回は今までの道のりがとっても詰まってる気がしますね」
 
――さっき『ハイライト』を例えて、思春期に興奮して壁を殴るって言ったけど、こっちは枕に顔を埋めて大声で“うぉ〜!”って叫ぶイメージかな(笑)。
 
上杉「アハハハハ!(笑)」
 
渋谷「心が心配!(笑)」
 
――『ハイライト』は疾走感からくるフィジカルな高揚感もあると思うけど、こっちは本当に内から湧き上がるような、突き上げられるような気持ちというか。
 
藤原「今そう言ってもらえたみたいに、内側にグッとくるエネルギーがすごくある曲だし、でも、『ハイライト』みたいなある種の分かりやすさじゃなくて…言葉にしづらかったり、どう表現していいか分からない気持ちも込めやすい曲だし。これ…めっちゃいい曲ですよね?(笑) デモを聴いたときから“うわぁ〜いい曲だな”って思ってました」
 
――本当に新たな代表曲と言えると思う。そして、もう1曲は『まわる、まわる』(M-3)の再録で、1月の東京・国立代々木競技場第一体育館のライブで聴いたときも、めちゃくちゃ感動的だったな。
 
渋谷「よかった、嬉しい。この曲の大きな位置付けは変わってないと思うし、再録する経緯もそれに近いものだと思うんですけど、今の自分たちは当時歌った“数年先の僕”になれていて。そのときはどんなふうになって何を考えてるかは具体的に思い描けなかったけど、その数年後にいざなってみると、ここまでの道のりの中で思い浮かぶ顔であったり気持ちだったりを、1つずつ大事にしてきた感覚がすごくあるので、過去と現在っていうものはめちゃくちゃリンクするんだなって。この感覚は当時は感じることができなかったし、思い浮かぶ顔も本当に数人だったのが、今では数十人、数百人、応援してくださる方のことを考えると、もう数万単位になってくる。そうなると、あの頃の気持ちにもう1つ想いを乗っけることができる。向かう角度は何も変わってないのに厚みはしっかりと増してる実感を、再録では強く思い描けたので。10年前、メジャーで最後に出した盤に入ってた曲を、メジャー再契約した一発目に出すのはすごくドラマチックだし、俺らにしかできないことだなと思いましたね」
 
――あと、時間が曲を育てるというのも。
 
柳沢「こんなに10年の月日を具現化してくれる曲はないというか、’10年リリースってことはガチで10年前じゃないですか。でも、レコーディングの風景とかもちゃんと覚えてるわけですよ。しかも、そのときスタジオにいた、メジャー最後の1枚を作った担当が、時を経て今また同じチームにいるんです。そういうことを考えると、『まわる、まわる』が入る意味合いはとてつもないものがあるなと」
 
――あのときビーバーが終わってたら、この曲がまたこうやって多くの人に聴かれる機会はなかったかもしれない。改めて勝負する土俵に引っ張り上げられてよかったよね。だってこんな名曲を、10年前にはもう書いてたんだから。
 
 
SUPER BEAVERの音楽をより多くの人に聴いてもらいたい
この楽しさを共有したいという目的は何も変わらない
 
 
――レコーディング自体は、もはやスムーズでしょ?
 
渋谷「(メジャーを落ちてからは)そもそも一番最初に軍資金の問題があったから(笑)、いかに早く録り終わるかを考えてきた結果、どんどん短くなってきてる感じはしますね」
 
藤原「確かにぶーやんはめちゃめちゃ早い。どんどん早くなってる」
 
渋谷「歌録りの早さは絶対に人に負けたくない」
 
藤原「そうなの?(笑) 競ってたの? 誰かと」
 
柳沢「世のボーカリストが聞いたら結構ゾッとすると思いますよ。だって一応、何テイクか録って選んで、っていう作業も込み込みで1時間で終わりますからね」
 
――マジで!? はやっ!(笑)
 
柳沢「俺がデモを作るときは、上手に歌えなくて3時間とかかかってますからね(笑)。ぶーやんはズバ抜けて早い」
 
渋谷「録ってセレクトするまでを1時間以内に終わらせるのがポリシー(笑)。要はそれで体現できないことを、ライブでやっちゃダメな気がするんですよ。実際に生で聴いたときに“えっ!? 違くない?”ってなっちゃうことが自分の経験としても結構あるんで、そうは絶対になりたくないなって。どれだけ短い時間で、可能なら一発で決められるかは、ずっと考えてやってきてますね」
 
上杉「最近は夕方までにベーシック(=ドラム、ベース、リズムギターetc)を録って、ご飯の前に渋谷が終わらせる。で、みんなで“おいしいね!”ってご飯を食べて、ヤナギ(=柳沢)がギターを重ねて終わり、みたいな(笑)」
 
――曲のイメージがちゃんと共有できてるから、もはや現場で作り込むとかじゃないんだろうね。
 
渋谷「楽器録りに関しては3人を信用しちゃってる部分があるんで、そこに脳みそを使わなくていい分、やっぱり歌一発、その1時間に懸ける感覚が強いから。それまでにどれだけ英気を養って、“よし、出番!”みたいな感じでいけるのか。その準備もちゃんとさせてもらえてるので、だから早いのはあると思いますね」
 
――そう考えたら、あれよあれよとメジャーデビューした11年前とは違って、しっかり勝負できる身体を作って、リングに上がる感じがするね。それこそメジャー再契約の発表をしたときも、渋谷くんが“正々堂々と普通にやって、あなたと一緒に勝ちたい”と言ってて。
 
渋谷「何かね、もう自分たちだけのトライではないので。あなたにワクワクしてもらったり、ドキドキしてもらったり…要は期待させたんだから、それをちゃんと回収するのがバンドマンの義務だと思ってるし、気持ちいい責任を感じてるんですよね。ちゃんとレベルを上げて、装備を整えて、いろんなことを思い描きながら挑んでる感じですね」
 
――ただ、今のコロナ禍の状況って、From ライブハウスのバンドからしたら家なき子みたいなもんやんか?(笑) そう考えたらビーバーも活動歴は長いけど、音楽シーンもいろいろ変わったよね。
 
渋谷「いやもうめっちゃ思う! シーンの移り変わりに関しては本当にずっと考えてきたので、特にここ最近は目まぐるしいですよね。結構いろんなことが無作為になってきたと実感してるんで、ある意味、自分たちにとってはチャンスと捉えていいんじゃないのかなって。適当なことをやってたら、マジで生き残れなくなるから。そこで、俺たちが“ヤバい! どうしよう!?”じゃなくて、“望むところだよ!”って思えたのは、バンドとしての強みだと思うんで」
 
――タフネスなビーバーだからこそ、普通の状況よりむしろ勝率が上がるっていう(笑)。
 
渋谷「今までは開かなくていいような引き出しもたくさんありましたからね(笑)」
 
――でも、ビーバーなら何とかなるかもなって話していて感じられたし、改めて今後が楽しみになったなぁ。それでは最後に、今後に向けてそれぞれに言葉をもらって終わりたいなと!
 
藤原「メジャーに戻ることになったけど、それが多くを占めてるわけではなくて。変わらずいい曲を書いて、いいライブをすることをずっと目指したいし、その先にもっと楽しい瞬間、ワクワクする瞬間がある確信を持てたからこういう選択をしたんで。僕は参加できなかった配信でしたけど、あんなふうに祝福のコメントをいただけたからには、そういう瞬間をきちんと形にしていきたいなと思ってます!」
 
上杉「満を持しての再メジャーのタイミングでまさかこういう事態になるとは思わなかったけど、だからこそみんなでミーティングする時間ができたり、足が止まったことで再確認できることがあったり。そういう意味でも、忘れられないデビューになったと思ってます。現場に戻ったときに変わらないビーバーであると同時に、自分のこともチームのことも客観視できたからこそ生まれた曲だったり、ライブもやっていけるように、虎視眈々と狙っていけたら」
 
柳沢「ヘンな重荷を背負おうと思ってるわけじゃないですけど、やっぱり…次はないと思ってるんですよね。数年先にまた捉え方は変わるかもしれないですけど、僕らがもう1回メジャーと再契約するってことは、そういうことだとずっと思ってたので。そのデカめの覚悟みたいなものはずっと燃やし続けながらやっていきたいと思いますし、そういう意味では、こういう状況があろうとなかろうと、SUPER BEAVERの音楽をより多くの人に聴いてもらいたい、この楽しさを共有したいという目的は何も変わらないのかなと。ただ、その目的を達成するための1つの手段=ライブが今はできないだけであって。やっぱりライブの代わりなんて絶対にないし、ライブはライブでしかないから。だとしても、今やれることはずっと考えていきたいし、少しずつ状況が戻っていくならば、いざライブをやれたときの“はい、これが本丸です!”みたいな楽しさはものすごいだろうし(笑)」
 
渋谷「メジャーに行く=新たなレールに乗っかる感じはしてなくて、地続きだし、地に足を着けていた分、歩く道は変わらないと思ってるんで。自分たちは前例のないことを実現できたところもあると思うので、“メジャーはこうあるべき”みたいな概念を壊せたら面白いなと思ってるし、メジャーに行ったからこそ広がる可能性を楽しみたいですね」
 
――そのための準備は万端な感じがするね。またビーバーの夢の途中経過を聞かせてもらうのを楽しみにしてます!
 
全員「ありがとうございました~!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2020年6月10日更新)


Check

Movie

今回は動画もリモートで!
SUPER BEAVERからの動画コメント

Release

再びメジャーシーンへと打って出る
最強の3曲を収録したニューシングル!

Single
『ハイライト/ひとりで生きていたならば』
【初回限定生産盤ライブCD付】
発売中 1727円(税別)
Sony Music Records
SRCL-11496~7

<収録曲>
01. ハイライト
02. ひとりで生きていたならば
03. まわる、まわる

<ライブCD収録曲>
01. 東京流星群
(17.04.30 日比谷野外大音楽堂)
02. シアワセ
(18.04.30 日本武道館)
03. 正攻法
(19.12.30 COUNTDOWN JAPAN 19/20 EARTH STAGE)
04. 予感
05. 秘密
(20.01.12 国立代々木競技場 第一体育館)

【通常盤】
発売中 1182円(税別)
Sony Music Records
SRCL-11498

<収録曲>
同上

Profile

スーパー・ビーバー…写真左より、上杉研太(b)、藤原“32才”広明(ds)、渋谷龍太(vo)、柳沢亮太(g)。’05年、高校の先輩・後輩である渋谷&上杉・柳沢に、柳沢の幼馴染みである藤原を加え東京にて結成。’09年、シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。’11年には所属レーベル・事務所を離れ、’12年に自主レーベルのI×L×P×RECORDSを設立。’14年2月には、eggmanのロックレーベル[NOiD]よりフルアルバム『361°』を、9月にはシングル『らしさ/わたくしごと』をリリース。アニメ『ばらかもん』のオープニングテーマに『らしさ』が起用され、YouTubeの再生回数は1642万回を超える(‘20年6月現在)。’18年4月には初の日本武道館公演を開催、即日ソールドアウトし大成功を収める。6月にはフルアルバム『歓声前夜』を、11月にはカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『僕らは奇跡でできている』主題歌となったシングル『予感』をリリース。’20年1月には代々木競技場第一体育館にて過去最大キャパのアリーナワンマンライブを開催、即日ソールドアウトさせる。4月1日をもって結成15周年を迎え、6月10日にはメジャー再契約後、初のシングル『ハイライト/ひとりで生きていたならば』をリリースした。

SUPER BEAVER オフィシャルサイト
http://super-beaver.com/

Live

初の大阪城ホール公演を含む
過去最大規模のツアーが待機!

 
『SUPER BEAVER 15th Anniversary
 続・都会のラクダ TOUR 2020
~ラクダの前進、イッポーニーホー~』

【香川公演】
Thank you, Sold Out!!
▼9月5日(土)・6日(日)高松festhalle
【福岡公演】
Thank you, Sold Out!!
▼9月10日(木)・11日(金)Zepp Fukuoka
【新潟公演】
Thank you, Sold Out!!
▼9月18日(金)・19日(土)NIIGATA LOTS
【広島公演】
Thank you, Sold Out!!
▼9月26日(土)・27日(日)BLUE LIVE 広島
【宮城公演】
▼10月10日(土)・11日(日)
ゼビオアリーナ仙台

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
▼11月2日(月)19:00
大阪城ホール
指定席6900円
立見6900円
GREENS■06(6882)1224
※3歳以上は有料。未就学児童は保護者同伴に限り入場可能。客席を含む会場内の映像、写真が公開される場合がありますので予めご了承の上、ご購入ください。営利目的の購入申し込み・転売行為禁止。転売チケットで入場不可。

チケット情報はこちら

 
【愛知公演】
▼12月6日(日)日本ガイシホール
【神奈川公演】
▼12月8日(火)・9日(水)横浜アリーナ
 

Column1

「目指すべきところの入口に
 立った感がすごいありました」
ライブハウスから
お茶の間に届けこの『予感』!
『僕らは奇跡でできている』主題歌
から飛躍の2018年を語る('18)

Column2

「その瞬間瞬間、必死に、
がむしゃらにやってきた中で、
1つずつ現実に変えてきた」
たぐり寄せた運命の日本武道館、
これぞSUPER BEAVERの極みたる
『歓声前夜』を語る('18)

Column3

「自分が実感したことじゃないと
 何の説得力も持たないんですよ」
当たり前のことを肯定する今
SUPER BEAVERが鳴らすべき音楽
'17年を総括する『真ん中のこと』
インタビュー('17)

Column4

「大阪でファイナルをやってみたい
 なってずっと思ってた」
SUPER BEAVERが再び迎える
『美しい日』。『全部』を背負って
転がり続ける決意を語る!('17)

Column5

「出会った人たちと永く、深く、
 より大きな歓びを一緒に共有する
 それを歌にするのが
 SUPER BEAVERなんだなって」
変化する今を肯定するきっかけを
続いていく未来のための生き方を
『27』インタビュー('16)

Column6

「戦うタイミングが遂に来た」
SUPER BEAVERの10年を
懸けた挑戦。3ヵ月連続シングル
『ことば』『うるさい』『青い春』
初のZeppワンマン前夜に贈る
全員インタビュー!('16)

Column7

SUPER BEAVER is not DEAD!
過去も10年も超え徹底的に
“あなたという1人”を連れて行く
決意表明たる『愛する』ツアー
クライマックスに語る('15)

その他インタビューはコチラ!

『361°』('14)
特設ページはコチラ!
『世界が目を覚ますのなら』('13)
特設ページはコチラから!
『未来の始めかた』('12)
特設ページはコチラから!

 

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんの
オススメコメントはコチラ!

「新型コロナウイルス禍のため、人生初のオンライン取材がビーバーだったことに運命感じたな(笑)。いつかこんな日が来るとは思ってましたが、別にビーバーがメジャーに行ったからって自分の人生が何か変わるわけではないのに、何でこんなに嬉しくて誇らしいんだろう? きっとそんな人が全国にたくさんいるんじゃないでしょうか。光栄なことに結成15周年の特設サイトにコメントも寄稿させてもらいましたが、世の中がズルい大人ばっかりに映る今、ともすれば笑われる綺麗事とか理想論が、SNSでもマーケティングでもなく、ビーバーの音楽一本で目の前で実現していく光景はやっぱり痛快というか、希望しかないです。今回のシングルの3曲も、聴けば聴くほど完璧で。特に『ひとりで生きていたならば』には勇気づけられたな…自分もこだわりだけでここまで来たようなものなので。失うものがないヤツは強いとか言うけど、ビーバーと話してると、やっぱり失うものがあるヤツの方が、自分1人の人生じゃなくなってる人の方が強いんじゃないかって思う。俺がくたばるか、ビーバーがくたばるか。最後の最後までこれからも追いかけていきたいですね。その時間が1秒でも長くなることを祈ってます」