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ホーム > インタビュー&レポート > 「何かすごく大きな変化が自分の中で生まれつつある」 業も使命もプライドも、ソロ5周年に自らをブレイクスルーする 『THE OPERATION/IT'S SO EASY』と最新モードを語る! 中田裕二撮り下ろしインタビュー&動画コメント


「何かすごく大きな変化が自分の中で生まれつつある」
業も使命もプライドも、ソロ5周年に自らをブレイクスルーする
『THE OPERATION/IT'S SO EASY』と最新モードを語る!
中田裕二撮り下ろしインタビュー&動画コメント

 中田裕二のサウンド・プロダクト、ここに極まれり。そう謳ってもやぶさかではない強力なニューシングル『THE OPERATION/IT'S SO EASY』は、気鋭のクリエイター集団origami PRODUCTIONSのShingo Suzukiと関口シンゴをプロデュース/アレンジに迎え、『BACK TO MELLOW』(‘14)『LIBERTY』(‘15)とここ一連の2枚のアルバムをかけ、彼が加速度を増して追い求めてきた音楽的造詣、混迷の時代に“何を”歌うのか、“誰が”歌うのかという音楽家としての使命、椿屋四重奏時代より研磨してきたソングライティングの妙、そして、彼の歌声にしか持ち得ない色と艶が、ソロキャリア5周年にして1つの到達点を見た1枚だ。表題曲に加え、オリジナル・ラブの『接吻』(‘93)、南佳孝の『モンロー・ウォーク』(‘79)、椿屋四重奏の『不時着』(‘08)と、三曲三様のアコースティックカバーを収録。自らの業にも似た運命を背負って、幼き頃から影響されてきた音楽の原体験をたどる旅を終えたさまよえる音楽家は、何処へ向かうのか――? くしくも5年前に発表された1stアルバム『école de romantisme』(‘11)のインタビューの導入部は、こう締め括られている。“歌を羅針盤に新たなロマンを追い求めたミュージック・ボヘミアンが、行き着く先は光か、闇か――”。次のフェイズへと向かう中田裕二の心の旅路を照らす、撮り下ろしインタビュー。

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また新しい角度、視点を発見できた
じゃあそれを知った上で、自分はどうしたいのか
 
 
――まずはこの夏、新たなチャンネルとして『中田裕二のジャジー・エクスペリエンス』というジャズメンをバックメンバーに迎えたライブにチャレンジしてみてどうでした?
 
「すごく新鮮でした。何から何まで初めて尽くしで、1stツアー以来久々ですね、この感覚は。お客さんにも評判がよくて、自分の音楽とジャズのサウンドが結構合うみたいですね。カバーアルバム『SONG COMPOSITE』(‘14)の参加メンバーが中心なんですけど、レコーディング時にはほとんどお会いしたことがない人ばかりで会ってみたいのもあったし、ホーンを入れたライブがやりたかったんですよね」
 
――ライブを観ていても、中田くんが本当に“いちシンガー”というか、いい意味で“孤立”じゃないけど(笑)、バックに頼れない感じが逆にいいなと。
 
「まぁそうだよね(笑)。俺のライブなんだけど俺がゲストシンガーみたいな(笑)」
 
――問答無用で実力を問われる場というか。5年やってきて、まだまだ初のチャレンジがあるのはいいですね。
 
「そうですね、これからもいっぱいありそうです。自分の音楽の幅を広げていこうと思ったときって、やっぱりこういう新たな出会いをしないとそれも実現しないし、自ずと自分の範囲を広げていかないといけない。マルチな音楽家になりたいんですよ、最終的に」
 
――こんなにモードが変わり続ける音楽家もいないもんね(笑)。自分の中のホットな部分が、ムーブメントが変わっていくというか。もちろん一本筋は通っているけど。
 
「でもね、今回割とがっつりジャズをやったとき、何か…“ロックがやりたいな”って、ちょっと思っちゃった(笑)」
 
――マジで!?(笑) まさかのムーブメント再来(笑)。
 
「何かね、ずーっと大人っぽい志向で5年間やってきたじゃないですか。だから最近、オールディーズとか古いロックを聴いたときに、すごくよく聴こえて。ルーツをたどっていけば自然な流れだと思うんですけど、ちょっと新しい気持ちでロックに向き合えるかもしれないなっていう感覚が芽生えつつある。ビートルズとかも結構聴いてるもん」
 
――おもしろいな~。ジャズ畑の人から受けた刺激でジャズに目覚めるのではなく、そこから受けた波動で自分のルーツが目覚めるっていう。
 
「すっごい再確認しました(笑)。多分、俺はガチでジャズがやりたいわけでもなく、かといって今のラウドなロックがやりたいわけでもなくて。やっぱり自分の音楽性はもう、1つのジャンルに囚われることはないんだろうなって。でも、どれもちゃんとできるようになりたいし、ちょっと欲張りなんですけどね。ただ、必ず何かに振り切ると逆に振り切りたくなる(笑)。何かヘンな流れが来るんですよね(笑)」
 
――そのために『中田裕二のジャジー・エクスペリエンス』をやったわけではないけれど。
 
「そうそう。でも、超ハイクオリティなプレイの音楽をリスナーとして聴くことはあったけど、それを間近で見て、肌で体感できたのはよかった。今まではやっぱり“ちょっと敷居が高いのかな?”とか、アカデミックなイメージもあったし。でも、全然そんなことはなくて、ロック畑とジャズ畑では使ってる筋肉とか考え方も違うけど、1つの音楽であって、そこはつながっている。また新しい角度、視点を発見できたなぁって。じゃあそれを知った上で、自分はどうしたいのかっていうところに、今は入っていると思うんですよね」
 
――この流れは『BACK TO MELLOW』『LIBERTY』と自分なりのAORだったりを描いてきたことも関係あるよね。
 
「ブラコン(=ブラック・コンテンポラリー)とかAORってジャズとの結びつきが結構深いので、実際にジャズのプレイヤーと一緒にやることで自分もその核心に迫れるというか。ただ、小さい頃から影響されてきた原体験の大人音楽への旅は、このツアーで1回終わるかなぁっていう気がしてます。何かすごく大きな変化が自分の中で生まれつつあるのは感じてる。多分このまま同じ感じでAORっぽいことは、もうやらないんじゃないかな」

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この爽やかさは、俺にはない(笑)
 
 
――散々“次はプロデューサーとかアレンジャーに投げちゃおうかな”なんて言いながら、結局自分、もしくは知り合いがやる、みたいなところからようやく(笑)、『THE OPERATION/IT'S SO EASY』では、プロデュース/アレンジを気鋭のクリエイター集団origami PRODUCTIONSのShingo Suzukiと関口シンゴが担って。そもそもの接点は?
 
「これはタイミングよくorigami PRODUCTIONSのスタッフさんから話が来たんですよ」
 
スタッフ「『朝焼けの彼方に』(‘15)のMVをYouTubeで観て、ライブに来てくれたんですよ。そこからレコード会社の方に連絡があって」
 
「それでいろいろと聴かせてもらって、オシャレだなぁ~と思って(笑)。ただ、『THE OPERATION』(M-1)はデモのアレンジも、もう結構できちゃってたんですよ。でも、何か変化が欲しいのもあったし、セルフプロデュースへのこだわりも前ほどはないから(笑)、いい機会だし試しにやってみますか、みたいな。(担当する)曲も先方に決めてもらって、俺はギターとシンセをちょっと弾いたぐらいかな。すごく軽やかに、風通しがよくなったなと思いましたね。この爽やかさは、俺にはない(笑)。ただ、サウンドがスッキリした感じだったんでなるべくそういうふうに歌わなきゃって思ってたんだけど、歌はやっぱりねっとりしちゃうんだよ~(笑)」
 



――(笑)。『THE OPERATION』は作曲の時点でも何か手応えがあった?
 
「あったあった。このデモができたときは、ちょっと自分の中でも新しい感じが、“ウキウキ感”があるというかね。ワクワク感、ウキウキ感って、子供っぽくなったりもしちゃうから結構難しいんですよね。それが俺ぐらいの年代の悩みどころではあります。歌詞もあんまりバカっぽくもできないし、ちょっと大人っぽさも残しつつ、何かが始まる高揚感も欲しい。これはいいバランスで作れたなぁと」
 
――中田くんが常々提唱している男女の絵があって、ネオヴィンテージ・ソウルetcを自分なりに消化したサウンドがあって。中田裕二がいよいよ本格的にシーンに訴えかけていきますよという宣言にも取れるような。
 
「『THE OPERATION』=“作戦”だもんね(笑)。だから、ドラムの音がちょっと古めかしかったり、細かいニュアンスでいろいろ加えているんだけど、若い人も聴けるものになったかな?(笑) 何か独特なバランスに着地したなぁと。関口さんの音作りもそうだし、90年代っぽさもあるけど、非常に捉えづらい感じがオリジナリティかな、と」

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音楽的な幅は広いんだけど
一貫してその人独特のムードが包み込んでる。それが究極の理想
 
 
――ただ、毎度ネオ渋谷系だのAORだの、ムーブメントが来たら自分から離れていく。固定のアーティストイメージがつかなかった中田くんが、これから1つのそれを持つきっかけになる曲が『THE OPERATION』なのかなとも思ったんやけど、そうなったらそうなったでまた離れそうな懸念(笑)。
 
「そうそうそう(笑)」
 
――やっぱり“ここらでバチッと中田裕二像を1回作り上げるぞ”ではないんや。
 
「そうねぇ(笑)。何かまぁ怖いんだよね、イメージが固まるのが」
 
――中田くんはそこに対する恐怖感がめちゃめちゃあるよね(笑)。
 
「この逃げ腰具合(笑)。やっぱりね、常に変化していきたいと思ってるから。1回イメージが固まっちゃうと、それを崩すのって相当キツいんですよ」
 
――それは椿屋(四重奏)でそう感じたんかな?
 
「感じた感じた。“艶ロック”。自分で言い出したのに(笑)」
 
(一同爆笑)
 
「でもまぁ、色気とか艶みたいなものは、他の誰にもできない曲のキャラクターだから武器だよなぁとは思ってますけどね。もはや自分でも意識してないからね。若い頃は色っぽく、艶っぽくとか思ってたんですけど、今は別にそんな覚えがないのに、“この曲はすごい色気ですね”って言われたり。そんなにエロく作ってないんですけど(笑)」
 
――おもしろい。ある意味、そういうアーティストイメージはすでにあると。
 
「めっちゃついてる(笑)」
 
――でもまぁ、音楽的にはホント掴みどころがない人ですね(笑)。
 
「アハハハハ!(笑)」
 
――どんな方向性で作っても、ちゃんと作品になっちゃう。
 
「そこそこのクオリティで出してくる(笑)。俺はムード音楽が好きなんですけど、フランシス・レイとかミシェル・ルグランとか、ああいうフットワークの軽さと、ミシェル・ルグランとかは特にですけど、一貫してどの曲にも何か哀愁があるんですよね。音楽的な幅は広いんだけど、一貫してその人独特のムードが包み込んでる。それが究極の理想ですね。田島(貴男)さんとかも総合音楽家というか、そういう意識が強い方だと思うんでリスペクトしてるんですけど、桑田佳祐さんとかも、あれだけ洋楽的なのに歌謡曲に対する造詣もめっちゃ深いじゃないですか。自分はそういうことがやりたいんだろうなと、最近は思ってきて」
 
――今言ったことはすごく的を射てる感じがしますね。音楽的な幅は広いけど、一貫して流れる色気があるのは、まさに中田くん特有のムードかもしれない。

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地元がああいう目に遭って、自分の存在が本当に揺らいだんですよね
 
 
――もう1つの表題曲である『IT’S SO EASY』(M-2)は、またアプローチが全然違って。いや、この歌詞はすごいですね。“何故かって聞かないで/やることすべてに説明は要らないよ/襟首捕まえて/白黒つけようと迫るんだ この世は”の最初の4行で、もう最高だなと思いましたね。素晴らしいと。
 



「でしょ!? 歌詞はやっぱりすごく苦労しましたね。この言葉が出てくるまで」
 
――中田くんのウェットな部分…作詞として1つの到達点の出来だなと思いました。エモ過ぎないけど、ちゃんと今の時代に響く伝え方というか。
 
「そう! この歌詞は本当に、“書けたなぁ”っていう感覚がありましたね。この4行がなかなか出てこなかったんで、本当に苦労した。以前に『ひかりのまち』(‘11)も出してるし」
 
――『ひかりのまち』も、’11年の東日本大震災直後の心の動きが書かせた、ただの詞ではない+αが絶対にあると思うんだけど、『IT’S SO EASY』も言わば、この春故郷の熊本を襲った地震があって。
 
「何か…難しくてね。チャリティソングばっかりにするわけにはいかないし。かと言って、やっぱり地元への想いを歌わないわけにはいかないし」
 
――中田くんは、“歌わないわけにはいかない”と言うけれど、別にそこと音楽とを切り離して活動する人もいると思うんですよ。でも、中田くんのそういうところが信頼できるところだとも思うし、日本人らしいとも思う。音楽的な高みを極めようと試みながら、そこに込める“歌わなきゃいけない”という志があるのが。
 
「熊本で地震があったときに、チャリティライブやボランティアもちょっとだけさせてもらって、実際に現地の人たちの声とか表情を肌で感じたとき、どういう言葉で、どういう歌を歌えばいいのかなって悩んだんですけど…。『ひかりのまち』のときとは、何かまた違ったんですよね。自分の生まれ故郷というのは何とも不思議なもので、普段はあまり意識することはなかったんですけど、地元がああいう目に遭って、自分の存在が本当に揺らいだんですよね。それぐらいのインパクトがあった。自分の家族と向き合うのにもちょっと似てるんだけど、素直になれない気持ちもあったり、言葉として“熊本が大好きだ~! 頑張れ~!”みたいなことを歌えるかと言ったら歌えない。そういうところがすごく難しかったんだけど、この頭の歌詞ができたとき…この温度感と、この距離感というか…もちろん熊本以外の人、自分の音楽を好きで聴いてくれる人のためにも歌うから、今の世の中でいろいろと難しいことに直面している全ての人たちのことをいろいろと考えていく中で、大きい1つのテーマが、この頭の4行が出てきたんですよね。多分、こういうことでみんな悩んでるんじゃないかなって。気にしなくてもいいことを、めっちゃ気にしなきゃいけなくなっちゃった時代というか」
 
――ね。白か黒か、右か左か。わびさびとか曖昧の美学がある国だったのに、ニュートラル=意見がない、みたいにも捉えられがちだしね。“やることすべてに説明は要らないよ”ですよね。ホントそうだと思う。
 
「そうなんですよ。自分が肌で感じたことが全てで、それは後から余計な意見で崩さなくてもいいんですよね。自分自身を信じることが、本当に難しい時代というか」
 
――だからこそ、後半の“君らしくいるだけ”という1行が、別に目新しいことを言っているわけじゃないのに、グッと入ってくる。

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自分で気付かないと、気付けない
 
 
――『THE OPERATION』は中田くんの音楽的なモードとポップセンスが1つの今後を示唆するような極みを見せたけど、『IT’S SO EASY』は言葉の部分で中田くんが持っている“業”みたいなものも含めて、メモリーとか感情的な部分だけではなくてちゃんと音楽になった1曲ですよね。
 
「嬉しいですね。『IT’S SO EASY』は本当に削ぎ落として、敢えてギターじゃなくてピアノで作りましたから。ただ、どっちの曲もすごくシンプルには作りました。俺=とにかくコードが多い人、みたいなイメージがあるかもしれないですけど(笑)、やっぱりどんどん削ぎ落としていって、それでも素晴らしいと言われる曲を作っていかないと。でもそうなったのは…ジャズって本当にコード展開が凄まじいから、それはもうそっちの人に任せようって(笑)。ちょっとそういう次元に入ってきたなぁ」
 
――そういった意味でも、もう1人のプロデューサー/アレンジャーのShingo Suzukiさんとの『IT’S SO EASY』の制作はどうでしたか?
 
「『IT’S SO EASY』を普通のバラードにはしたくはなかったんで、デモでもシンセベースを使ったり、ちょっと変わったアレンジにしていて。ただ、ピアノと歌がスタンダードな感じだから、逆にそれをどう遊ぶかみたいなところで、Shingo Suzukiさんにはビートを作ってもらって。やっぱりすごくヒップホップ感覚がある人だから、打ち込みは独特のビート感でよかったなぁ。すごく遊べたシングルでしたね」
 
――そして、カップリングではカバーで、それこそ田島貴男さん作の、日本のAOR究極とも言える『接吻』(M-3)が入ってますけど(笑)、こちらは奥野真哉さん(key・SOUL FLOWER UNION)、朝倉真司さん(perc)とのアコースティックトリオtrio saloonの編成で。南佳孝さんの名曲『モンロー・ウォーク』(M-4)と椿屋四重奏時代の『不時着』((M-5)は、『中田裕二の謡うロマン街道』ツアーさながらの弾き語りで。
 
「『接吻』はtrio saloonのあのライブの感じをパッケージしたいなと一発録りで。本当にいい曲ですから。もう非の打ち所のない完璧な曲ですね。『モンロー・ウォーク』はTVでも2回歌っているし、自分でも大好きな定番曲なんで、これは入れとかないとなぁって。2曲とも『SONG COMPOSITE』には入ってないですからね。『モンロー・ウォーク』なんて、ホント37年前の曲とは思えない曲ですね。やっぱり昔の曲の方が完成度が高いんですよ。無理なくずっと歌えるし、シンプルだし、深いよねぇ。バランスがしっかり取れてますよね、名曲っていうものは」
 
――いい曲は骨格がシンプルになっていくんでしょうね。だからこそ、中田くんもキャリアを重ねてそういう次元に入ってきてるのは、まさになんでしょうね。
 
「普通はテンションコードとか、コードとコードの合間にちょっとヘンな音を入れることによってジャズ感を出したりするんだけど、その辺も必要最低限に抑えてますね。今まではもう、むやみやたらと入れてたから(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) でも、中田くんはどれだけ周りが言ってもやらないもんね、自分が思わないと。
 
「そうですね(笑)。自分で気付かないと、気付けない(笑)」

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椿屋時代に書いた曲の中でもトップ3に入る、“自分が好きな曲”
 
 
――『不時着』に関しては、なぜこの曲を?
 
「他にも候補はあったんですけど、椿屋時代に書いた曲の中でもトップ3に入る、“自分が好きな曲”っていう」
 
――椿屋時代の曲を今歌うのってどんな気持ちなのかなって、ふと思ったんやけど。
 
「あぁ~結構“無”ですよ。また全然違った感じで、言葉なりメロディが客観的に自分に向かってきますね。でもね、やっぱりいい曲だなぁって思ったね、歌ってて(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) いやでも、俺もそう思いましたよ。
 
「今の35歳という年齢で歌うと、より言葉が真実味を持ってくるなぁって。やっぱり人生がテーマの歌だから」
 
――おもしろいね。音楽を一度世に放ったら、自分の年齢とともに味わいが変わっていく。
 
「この前、THE YELLOW MONKEYのライブを観たときも思った。当時はそんなに好きじゃなかった曲が、ものすごく胸に響いてきたり。今のTHE YELLOW MONKEYが歌った方が説得力がある。そこが歌のおもしろさですよね」
 
――俺も観に行ってたけど、“この歌い回し誰かに似てるなぁ”と思ったら、あなただったわ(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) めっちゃ影響受けてますからね。でも、『不時着』はすごく長くて、昔から歌っててしんどかった記憶があるんですよ。いつもライブで最後にヘロヘロになってたなって。ていうか、椿屋は曲が長過ぎた(笑)。濃い上に長いからすごく疲れるんですよ。“どこかはしょろうかな?”とか思うもん(笑)」
 
――アハハ!(笑) 8年前っていうことは、中田くんが27歳のときの曲。
 
「めっちゃ若いな(笑)。いやぁ~でもその歳でこんな重苦しい曲を書けるヤツ、今でもいないと思います」

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まぁ間違いなく『LIBERTY』とは全く違う作品になりますけど(笑)
 
 
――『LIBERTY』(‘15)のインタビュー時の段階で、新曲もバンバン書いてますとは言っていたけど、次のアルバムについてはそれなりに進行してるってこと?
 
「曲はめっちゃある。でも、それを使うかどうかは分からない(笑)」
 
――冒頭に語ったモードの変化の予感からすると、そうなってくるよね。
 
「そうですね。また溜まっていく一方かもしれないし、それを消化するだけでも5枚は作れますから(笑)。でも、今年は結構ライブ中心な動きなので、ちょっと1回こもりたいなぁ…レコーディングしたいですね」
 
――しかも今は自分の変化を感じてるもんね。
 
「そうでなんですよね。あと、いろいろ勉強もしてるんですよ。あんまり言うと恥ずかしいから言わないですけど、自分をさらに成長させたいなと。そういうところも今後活きてくるといいなぁ。まぁ間違いなく『LIBERTY』とは全く違う作品になりますけど(笑)、自分自身でもまだちょっと漠然としてますね」
 
――何か今までで一番、中田くん自身が自分を把握していない感じがして、おもしろい。
 
「あぁ~。多分、次に行きたがっているんだと思う。この5年間で作ってきたものをまた壊したいと思ってるから、そのおもしろい作品を作るために、1人で考えたりこもったりする時間が欲しい」
 
――常に変化し続けてきた人ではあるけど、今までのそれとは違う“何か”が、今回は確かにある感じがしますね。
 
「そうですね。何かだいたい5年周期で来ますね。5年前はバンドが解散して、本当にゼロからで、震災もあって…そこから始まって5年、またゼロではないんだけど、ちょっと違う世界に渡ってみたいなぁ、パスポート取らなきゃ、みたいな(笑)。気持ち的にはそれぐらい…って言って、またベタベタなのが来るかもしれないですけど(笑)」
 
――そうだよなぁ。だって“ロックがまた来る”っていう時点でもうビックリだよ(笑)。まさかの展開。
 
「何かね、今の感覚でロックな曲を作ると、結構おもしろいかもしれない。俺はやっぱりロック上がりの人間だって、今改めて痛感してるので」
 
――『THE OPERATION/IT'S SO EASY』もすごくいい作品になったし、変化の過程としてはいい“点”になったと思うので、今後どういう“線”を描くのか、引き続き期待してます!
 
「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 河上良(bit Direction lab.)
撮影協力:BAR NELLIE

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(2016年9月24日更新)


Check

Movie Comment

新作と今後の展望をいち早くお知らせ
中田裕二からの動画コメント!

Release

音で、言葉で、極みを見せた新曲と
名曲カバーを収めた2ndシングル!

Single
『THE OPERATION/IT'S SO EASY』
発売中 1500円(税別)
Imperial Records
TEBI-43398

<収録曲>
01. THE OPERATION
02. IT'S SO EASY
03. 接吻
04. モンロー・ウォーク
05. 不時着

椿屋のラストツアー以来となる因縁の
中野サンプラザ公演をシューティング

DVD
『TOUR 16 LIBERTY ただ一夜の太陽』
発売中 4000円(税別)
Imperial Records
TECI-512

<収録曲>
01. WOMAN
02. リボルバー
03. KILL YOUR SMILE
04. en nui
05. SO SO GOOD
06. 誘惑
07. とまどい
08. 春雷
09. MUSK
10. 朝焼けの彼方に
11. ヴィーナス
12. ROUNDABOUT
13. NIGHTLIFE
14. UNDO
15. LOVERS SECRET
16. 月の恋人たち
17. STONEFLOWER
18. ひかりのまち
19. ただひとつの太陽
20. 夜をこえろ
21. MIDNIGHT FLYER

Profile

なかだ・ゆうじ…’81年生まれ、熊本県出身。‘00年、仙台にて椿屋四重奏を結成。フロントマン及びソングライターとしてキャリアをスタート、’07年のメジャーデビューを経て、『紫陽花』『恋わずらい』『いばらのみち』に代表される、ロックバンドの枠に捉われないスケール感と個性溢れる楽曲で人気を集めるも、’11 年に突然の解散。3.11東日本大震災の被災地/被災者に向け作られた『ひかりのまち』を震災直後に配信(収益は全て義援金として寄付)したのを機にソロへ。同年11月に1stアルバム『école de romantisme』をリリース以降は、『MY LITTLE IMPERIAL』(‘12)『アンビヴァレンスの功罪』(‘13)『BACK TO MELLOW』(‘14)『LIBERTY』(‘15)と、年1作のペースでアルバムを発表。さらに、’14年6月には、カバー曲をレパートリーの中心に歌に特化したアコースティック・ライブプロジェクト『SONG COMPOSITE』を音源化したカバーアルバム『SONG COMPOSITE』をリリース。期間/テーマを限定しない弾き語りライブツアー『中田裕二の謡うロマン街道』(’14~)や、アコースティックトリオ“中田裕二 trio saloon”としてのライブ(‘15~)など、精力的に活動を展開している。確かな歌唱力に裏打ちされた艶のある歌声と、幼少時に強く影響を受けた70~80年代の歌謡曲/ニューミュージックのエッセンスを色濃く反映したメロディを核に、あらゆるジャンルを貪欲に吸収した一筋縄ではいかないサウンドメイクと、様々な情景描写や人生の機微をテーマとした詞作によるソングライティングへの評価は高く、熱心な信奉者が多数。今年8月24日には、2ndシングル『THE OPERATION/IT'S SO EASY』、ライブDVD『TOUR 16 LIBERTY ただ一夜の太陽』を同時発売した。

中田裕二 オフィシャルサイト
http://yujinakada.com/

Live

弾き語りでフリー&アットホームに
妙技魅せるロマン街道続行中!

 
『中田裕二の謡うロマン街道』

Pick Up!!

【兵庫振替公演】

Thank you, Sold Out!!
▼10月14日(金)20:00
旧グッゲンハイム邸
全席自由4000円
夢番地■06(6341)3525
※8/4(木)の振替公演。3歳未満は入場不可。3歳以上は有料。

 
【三重公演】
Thank you, Sold Out!!
▼10月15日(土)松阪M'AXA

【長野公演】
チケット発売中 Pコード303-138
▼10月29日(土)17:00
上田映劇
全席自由4000円
FOB新潟■025(229)5000
※3歳以上有料。3歳未満は入場不可。

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チケット情報はこちら

 
 
『中田裕二のジャジー・エクスペリエンス』

【福岡振替公演】
Thank you, Sold Out!!
▼11月14日(月)イムズホール

Interview & Report History

中田裕二の逆襲たる『LIBERTY』解剖計画
時代を超えて生まれる歌
世代を超えて生きる歌
初ホールツアー開幕に捧ぐ
撮り下ろしインタビュー【後編】('16年)
特設ページはコチラ!


中田裕二の逆襲たる『LIBERTY』解剖計画
消えない情熱とシーンへの苛立ちすらも
自由への序章にした『STONEFLOWER』
撮り下ろしインタビュー【前編】('16年)
特設ページはコチラ!


中田裕二、ビルボードライブ大阪に初登場!
自身のプレ・バースデーに行われた
記念すべき一夜、サプライズに新曲もありの
2ndステージを完全再現レポート('15年)
特設ページはコチラ!


「椿屋四重奏で出来なかったことが
 ようやく出来ました」
孤高のソングライティングで
AOR/歌謡曲をアップデートする中田裕二の
輝ける第二幕『BACK TO MELLOW』!
撮り下ろしインタビュー('15年)
特設ページはコチラ!


歌手・中田裕二から
素晴らしき名曲たちに愛と敬意を込めて
解放と挑戦の絶品カバー盤
『SONG COMPOSITE』
撮り下ろしインタビュー('14年)
特設ページはコチラ!


YesもNoも、時代も歌謡もロックもロマンも
背負い込んで。中田裕二の会心の
3rdアルバム『アンビヴァレンスの功罪』
撮り下ろしインタビュー('13年)
特設ページはコチラ!


中田裕二がシーンに築いた絶対領土
『MY LITTLE IMPERIAL』!
やりたい放題の2ndアルバムを異端児にして
偉才が語る撮り下ろしインタビュー('12年)
特設ページはコチラ!


椿屋四重奏解散、3.11、そして
初のソロアルバム『école de romantisme』
を語る撮り下ろしインタビュー!('12年)
特設ページはコチラ!
 

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「はいはいはいはい、やってきましたぴあ関西版WEBのキラーコンテンツ、中田裕二ですよ~(笑)。毎回撮り下ろしでお届けするインタビューですが、作品を重ねるごとに撮影場所が必要なので、結構大変なのです。今回も僕が夜の惜しみないパトロールで見付け出した抜群のシチュエーションで(笑)、たっぷり語ってくれました。いや~それにしても冒頭から“ロック回帰”予告が飛び出したもんだからビックリ。椿屋四重奏の解散以降、ある意味、意図的に遠ざけていた、でも離れられずにいたその領域に、再び着手するのか!? それはそれでめっちゃ楽しみなんですが、何せ『THE OPERATION/IT'S SO EASY』の出来がすこぶるイイだけに、個人的にシングルのリードとしては『MIDNIGHT FLYER』以来の手応えを感じていただけに、ちょっと複雑な気持ちでもあります(笑)。こっちの路線で行くんちゃうんかい! (椿屋時代からのファンは)時間をかけてみんな自分を慣らしてきたのに! みたいな(笑)。というわけで、中田裕二というさまよえる音楽家の新たなアウトプットに大いなる期待と信頼を寄せて、次回のために夜のパトロールを続けようと思います(笑)。
PS. 取材を終えてすぐ、“奥さんと話してると時間が経つのがめっちゃ早い!”と言ってくれたのは、何だか嬉しかったな~。これからも精進します!」