中田裕二、ビルボードライブ大阪に初登場!
自身のプレ・バースデーに行われた記念すべき一夜
サプライズに新曲もありの2ndステージを完全再現レポート
3月末には最新アルバム『BACK TO MELLOW』に伴うツアー全行程が終了。その余韻もまだ残るこの春、ビルボードライブ東京・大阪2会場にて開催された中田裕二の単独公演『yuji nakada presents “spring has come!”』。昨年7月には、カバーアルバム『SONG COMPOSITE』ツアーの“特別編”として東京のステージに立った彼だが、ビルボードライブ大阪には本邦初登場。この日は彼のプレ・バースデーということもあり、ビルボードというラグジュアリーな空間の雰囲気も相まって開場から独特の高揚感に包まれた、記念すべき大阪公演の2ndステージをレポート!
思い思いにドレスアップして食事と美酒を嗜む観客が、開演が近付くに連れ静かに高ぶっていく。そんな中、照明がゆっくりと落とされた闇をかいくぐり、本日の主役・中田裕二御一行がステージに。メンバーは、奥野真哉(key・SOUL FLOWER UNION)、平泉光司(g・COUCH/benzo)、小松シゲル(ds・NONA REEVES)、隅倉弘至(b・初恋の嵐)という昨年の『SONG COMPOSITE』リリース時のツアーバンド“ザ・ブルーネオンズ”に、朝倉真司(perc)を加えた豪華編成。
開口一番、「ようこそ、白い奴です(笑)」とホワイトベージュのスーツをまとって登場し披露したのは、最新アルバム『BACK TO MELLOW』から『誘惑』。常々インタビューでもサウンドにおけるパーカッションの効用を口にする彼の言葉を、視覚と共にリアルな音像に変える朝倉のリズムと、ビルボードでは何度も舞台を踏んでいる小松のタイトなビートの両ウイングが、中田裕二の音楽のボトムをしっかりと支える。
続く『リバースのカード』では、平泉の繊細さとワイルドネスを兼ね備えたギターに酔いしれ、コーラスもふんだんに盛り込んだ『Steady』では、奥野のエレピと平泉のギター、朝倉のウインドチャイムと、静かなるアーバンの波状攻撃で、どっぷりと中田裕二の理想郷を築き上げていく。当の中田本人も本日二度目のステージとあってか、極めてリラックスした様相でご挨拶。
「皆さんこんばんは、中田裕二です。ビルボードライブ大阪にようこそおいでくださいました~! 今日は題して“spring has come!”ということで、春が来たことをみんなで盛大でお祝いしましょうという会です(笑)。今日はビルボードで、お酒が飲めて、食事も出来て、そして僕の音楽も楽しめるという素敵な! 何と贅沢な!(笑) これは楽しまないともったいないですよ皆さん! 準備はいいですか!?」
なんてMCに呼応し、“イエーイ!”と会場からから巻き起こった歓声に、「ここで“イエーイ”と出てくるところがチーム昭和(笑)。今日はチーム昭和の皆さんで素敵な夜にしていきましょう!」と返すやりとりもグッドヴァイブで、「それでは久々の曲を」とシンセが縦横無尽にリードする『イニシアチブ』、アダルト&ソフィスティケイトな『UNDO』をハンドマイクで披露。中田裕二の歴代のオリジナルアルバムの中から、ビルボード仕様にチョイスされた新旧問わぬレパートリーで次々と魅せていく。
ここで中田と平泉がアコギを手に着席。「以前、東京のビルボードではやったことがあって、僕も楽しかったし、お客さんからも“またやってください”との声をたくさんいただきまして。そのときは『SONG COMPOSITE』というカバーアルバムのツアーの一環だったんですけど、今回は全曲オリジナルで、念願叶って、めでたく大阪にもやって参りました!」と、今日という日への想いを語る。
まだまだ続くMCコーナーでは、「僕も明日で34歳になりますので…」という中田に、奥野が「まだ34歳なんや。もうちょっといってんのかと思った。結構タメ口やんね?」と突っ込み(流石)、そのまま流れ込んだメンバー紹介でも、「リハのときに中田くんの喉の調子がちょっと悪かったんで、いよいよ歌っちゃおうかなと」と自身のバンドではボーカルを務める平泉が茶化せば(笑)、「2ndのこのリラックス感っていいですよね。それと1stの緊張感というか」と、幾度もビルボードのステージに立ってきた小松が語るものの…。
「小松さん、今日はすごく落ち着いたコメントですね」(中田)
「そうですね。実はお腹いっぱいなんですよ」(小松)
「そうでしょ! だって、さっきめっちゃ食べてたもん!!(笑)」(中田)
「1日の終わりみたいなテンションだもんね(笑)」(隅倉)
「心にゆとりがあるからかな?(笑)」(小松)
という小松の食いしん坊エピソードに場内大爆笑。そして、最も付き合いの長い隅倉とは中田が10代の頃の血気盛んなエピソードも交えながら、「いろんな音楽を教えてくれたりする、僕のお母さん的な(笑)」とご紹介。この日限定のオリジナルカクテル“夜桜お七”についてMCで触れなくていいのかと言及するナイスフォローも、やはり“お母さん”と頼られる由縁か(笑)。続いては、「今日はビルボードということで、さらにゴージャスに華を添えてくれます」と、今回初参戦の朝倉を。普段この時間には寝てしまい、ライブの日も打ち上げの二次会で目が冴えてくるという朝倉も、実は1stと2ndの間にお腹いっぱいになっちゃった組(笑)。その話に誘発され「俺も1回、ライブ中に寝たことある。気持ち良過ぎて間奏のギターで」と中田の椿屋四重奏時代の意外なエピソードも飛び出し、最後にバンマスの奥野を改めて紹介するや、奥野がいきなり一輪の花を客席の少年(と思いきや25歳の青年!)に渡したシーンも(笑)、大いに盛り上がった。
たっぷり12分間のMCを挟んだ後のアコースティックコーナーでは(笑)、極上のメロディにフロアも思わず肩を揺らした『つかずはなれず』といい、奥野がアコーディオンにスイッチしノスタルジーなフレーバーを演出した『セレナーデ』といい、ビルボードとのマッチングの良さがにじみ出る。続く『愛の摂理』などはその最たる例で、この先もこのビルボードライブのステージに中田裕二がラインナップされることが容易に想像出来る、ドラマティックな風景を見せてくれる。ここで、桜と桃のリキュールを使った“夜桜お七”の感想を客席からリサーチ及びちょいと拝借する中田も中田だが、それを飲む際にジャストタイミングで効果音をつける奥野は本当に侮れません(笑)。
後半戦は、中田も愛器のセミホロウのテレキャスターにスイッチし、リズミックな『モーション』、祝祭のビートに心躍る『話をしないか』と、会場をドライブさせるアップテンポなナンバーで畳み掛ける! 「ビルボードにぴったりのトレンディな1曲を聴いてください!」と披露した『LOVERS SECRET』ではクラップも巻き起こり、観客と握手を交わしながらステージを左右に動き回り、会場を軽やかに扇動していく。
「大阪ビルボード楽しんでますか~!? 美味しいお酒を飲みましたか!? 料理を食べましたか!? でも、まだちょっとまだ物足りないでしょ? 私が機長の中田裕二です。今から皆さんを素敵な夜間飛行に、安全かつ快適で、最高のフライトに連れていきたいと思います! 準備はいいですか!?」
最後のトドメはダンサブルなキラーチューン『MIDNIGHT FLYER』! ビルボードに舞う何本もの手が、この日のラスト・フライトを華麗に彩っていく。
とは言え、まだまだ欲しい客席からの鳴り止まない拍手に応えて、再び登場したブルーネオンズ御一行。「初めて大阪のビルボードでやらせてもらえましたが、“spring has come!”皆さんいかがだったでしょうか!? いろんなシチュエーションに相応しい曲を書けるように、表現出来るようになってきて、またやれたらいいなと思っているので、皆さん引き続き応援よろしくお願いします!」との発言には大きな拍手も巻き起こる。そして、「アンコールは新曲をやろうかなと。時代的には90年代初頭っぽい…」と中田が語る最中、突如ステージにケーキが運ばれるサプライズが…!! 「僕の好きなタルトだ」と顔がほころぶ主役に、満場の“ハッピー・バースデー”コールが贈られる。
ひとしきり盛り上がった後は、エキゾチックなシンセも印象的な新曲を。『BACK TO MELLOW』の先にある世界を先行上映したような楽曲は、洋邦の様々な音楽を貪欲に摂取しながら邁進していく中田裕二のこれからの景色をしっかりと提示。そして、ラストも新曲のスリリングなビートで新境地を見せ付け、ビルボードライブ大阪での初舞台にして、プレ・バースデーライブの記念すべき一夜を締め括る。
中田裕二がここまで育ってきたライブハウスと、これから目指すホール。まさにその架け橋と言える時期にフィットしたビルボードライブに己の音楽の未来を刻んだ彼は、最後の最後まで拍手に送られながらステージを後にした。
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by Kenju Uyama
(2015年5月21日更新)
Check