ホーム > インタビュー&レポート > 「上方落語若手噺家グランプリ2015 決勝戦」 決勝進出者インタビューシリーズ第一弾! 創作落語で<予選第一夜>2位通過の桂三幸が登場!
--まずは決勝進出されての今のお気持ちを。
よう行けたなって感じですね。(予選の)組み合わせでは、明らかに下馬評ではバツつかないですもん。4番手、5番手くらいの人気やと思いますよ。で、最初に出番を引いたとき1番やったんで「もう終わったんとちゃうか」って(笑)。全員が思ったと思います。まあ、それを何とか逆手に取れるように。ああいう状況は慣れてるんですよ。わちゃわちゃした後に出るのは慣れているので、逆によかったですね。2番よりはよかったです、1番で。流れを掴んだのでラッキーでした。
--オープニングのくじ引きの時点では「終わったな」という心境だったんですね。
6番目ぐらいを引くと思ってたんですよ。くじ運あるから。だから何の準備もしてなくて、「やばいぞ、これ」って。音響の準備とかいろいろせなあかんかったので。1回幕を閉めてもらって、何とか間に合って。本当、よかった。
--予選のネタを「その川の向こう側」にした理由は何ですか?
ネタを出すときに思いつきで言っただけです。何の計算もなくて、「これやります」って。
--特に戦略もなくですか?
ないですね。順番も当日じゃないとわからへんし。全くなかったですね。
--このネタに対して自信はあったんですか?
完成して4ヶ月くらいですけど、自分の中ではピークも過ぎてると。最初はやってて楽しかったんですけど、もうちょっと何とかせなあかんと。それで、予選の1週間前に(天満天神)繁昌亭の昼席で2回、試しにやってみました。なので、当日、ちゃんとできるかなっていう不安はありましたね。で、自分では順番も後の方やからもう1回復習しとこって思ってたんですけど、1番目を引いてしまったのでノートも見れず。「もうあかんぞ、これ」って。
--三幸さんの中では、後の方っていうことになっていましたから。
その自信があったんでね。でもそれも逆によかったかもしれません。
--開き直れた感じですか?
そうですね。準備したとおりにできることは絶対ないですから。もう、出たとこ勝負なので。(桂)雀太君(同日の予選に出場。1位通過)なんかは、かなりプレッシャー感じてましたからね、裏で。自分でも言うてたんですけど、そういうタイプですから。でも僕は全然。1番でしたから終わってからも気楽でしたね。
--繁昌亭の昼席で2回、口演されたとのことですが、そのときもネタの長さは?
15分で同じでした。こんな助かることないですよね。
--では、ばっちり感覚も掴んで。
ただ、(昼席と予選会とでは)環境が違うので。とりあえず、ちゃんと(落語として)システムができているかどうかを確認するだけです。お昼は年配のお客様が多いので、わかりやすく、ちゃんとやらな。先輩方もいっぱいいますから、迷惑かけんように、ちゃんとやることだけですね。
--ネタは元々15分程度のものだったんですか?
大体そうですね。10分か15分くらいですね。
--「上方落語若手噺家グランプリ」のために手を加えたり?
そういうところもありますね。このグランプリがなかったら(あのネタは)やっていないかもしれません、しばらく。もう飽きたし。しばらく放っておいたかもしれませんね。
--完成した4ヶ月前より、ちょっと違ったものになったんですか?
システム的に。自分の好きな笑いじゃなくて、落語のシステムとしてちゃんとできていないとあかんなって。まあ、勉強になりました。こういう機会がないとちゃんとやらないですからね。普段は好きなことだけやってますから。こういう機会はやっぱりいいですね。これも師匠のおかげですね。
--この<予選第一夜>は1位が雀太さんで、2位が三幸さんでした。雀太さんの落語は、ご覧になっていかがでしたか?
1番やと思いましたね。最近では力あるって言われてましたし。中入り後という一番ウケるところで出たので、これはもう無理ですね。僕がその前後で出てもどうやったかって感じです、あの出来やと。すばらしかったですね。
--三幸さんのブログを拝見したら雀太さんと1位2位フィニッシュを夢見てがんばっていたと。雀太さんとはその後、お話されましたか?
後日、動楽亭で一緒やったんですよ。そのとき二人でお茶しに行って。似てるなという感じでしたね、考え方とか、成長するスピードとか。やっぱり10何年、やらな分からんこと多いんで。ラッキーでしたね、「若手噺家グランプリ」が今年からで。去年からやったら僕は勝てなかったです。去年だったら無理です。
--去年と今年に大きな差があるんですか?
成長する速度が二次曲線っていうのがわかってるから。次のステップアップするタイミングをいつ迎えるか。だから来年ももう違うやろうし、再来年も違うやろうし、楽しみですね。
--とても客観的にご自身を見ていらっしゃるように思いますが。
客観的に見てたらこんなことになってなかったんですけどね(笑)。もうちょっと分析力があったらね…(笑)。お笑いは好きで、言うたら笑い飯みたいにはちゃめちゃやりたいなって思ってたけど、自分はそういうタイプじゃないんですよね。まじめなんですよね…。だから(創作落語の)登場人物もまじめなんですよ。つまりボケてないんですよ。ボケてない。でも、一生懸命がんばっている姿を見てもらう。
--そういうことが分かったのが…。
ここ半年くらいですね。雀太とも話しましたけど、「同じくらいやな」とかって。二人で「もっと先輩見てたらよかったなぁ」って。全然見てなかったです。ボーっとして、楽しんでただけやったんで。最近、「ちゃんと見ることあったんやな」って。どういう感じのシステムで落語をやってんのかなとか、見るべきところはたくさんあったんです。
--この半年は、成長のスピードが増しているのではないですか?
そうですね。半年前までは適当でしたからね(笑)。入門して12年半ぐらい。ここで気づいてよかったんじゃないですか。あと、僕は今でもインディーズライブとかで、お客様の前で3分くらいのネタをやったりしているんですが、そういう成果がちょっとずつ、出ているのではないかと。今年やっと『R-1ぐらんぷり』の3回戦にも行けましたし、ちょっとずつ上がっているなっていうのは感じていましたね。でも、また下がったりもすると思うので、そこをどう乗り切るかじゃないですかね。
--ひとまず、決勝進出という一つの結果を出されました。
よう出たなって感じですね。(「上方落語若手噺家グランプリ」予選は)審査員も落語の先輩なので、ちゃんと見てくれている。一番わかりやすい審査、一番わかりやすい大会だと思いますね。先輩が出場者の力をちゃんとわかって、受け止めてくれて、点数つけてくれているので。謎がない、つまり。疑問の心が全然ない。そうやろうなと(結果を)受け止めてます。ただまあ、これからはまず、ずば抜けることが一番でしょうね。何かで一番を獲っとかんと。個性でもいいし。今のところ何もないんじゃないですかね、断トツで1位というのは。まあ、ずば抜けてはないですよね。
--では、落語をする際に心がけていることはありますか?
何もないです。出たとこ勝負です。段取り通りに行くわけないですから、考えないです。いかに100%に近づけるか。お客さんに一番楽しんでもらえることと、自分を出すことのバランスをいかに取るか。
--出たとこ勝負とのことですが、お稽古は?
一番してない自信はありますけど、ちょっとはしてます。ちょっとやった時期もあったんですよ。1時間歩いて稽古したりとか。でも稽古の仕方もわかってないのにやったところでね。(稽古を)やれやれと言われるのはわかるんですけど、やったつもりになるし、結局、(わからないままやっても)違うデータが集まりますから。集める能力もないし。でも、師匠が言うには「稽古や」と。「60歳超えて分かったけど」って10年前に言ってました。鶴瓶師匠と話してたんですよ。「鶴瓶くん、やっぱり稽古やな、落語は。俺も若いころ全然せえへんかったけど、やっぱり稽古や」って言っていたので、そこの段階に早く行きたいなと思います。
--「稽古をする」という段階?
稽古の意義があんまりわかってないのにやっても、50回も100回も一緒やっていうことなんですけど。でも、(わかると)1回1回が大きく違うみたいなので。
--意義が分からないものに対して、時間をかけるとか、そういうことがあんまり好きじゃない?
面倒くさいことが嫌いなだけなんですよ、結局。稽古はあまりにも大変なんです。でも、こういう機会があるとやりますから、ちょっとは。つまり本気で走ってないんです。車がちゃんと走れるかどうかだけ見ておいて、サーキットでいきなり全力で走るみたいな。いつもそうなので、大した問題ではないんですけど、2、3回実践練習しとかんとって。
--ちなみに創作はお好きですか?
そうですね、嫌いじゃないです。月に1本くらいは。
--作られているんですか。
訳のわからないものが多いですよ。ずっと音が流れてるとかね(笑)。
--いわゆる古典落語にあるようなものとは違う?
そうなってしまうんですよね。時期ですかね。
--それはご自身のブームとか、そういうものですか?
ブームになるんかな?『R-1ぐらんぷり』で勝ちたいっていうのも、もちろんありますし。師匠からも「必ず決勝に来い」と言われているんです。その目標は大きいですね。『R-1』で優勝するっていうのは、必ず。
--『R-1ぐらんぷり』となると、戦う相手がまた全然違ってきますよね。
そうなんですよ。今回のネタも1回選の2日前に出来ましたから。3日前に考えて、2日前に出来て。『新婚さんいらっしゃい!』の前説やらせてもらったときに師匠に見てもらって。前日にも師匠から電話があって「どんな具合や」と。で、何とか1回戦が通って。2回戦は落ちたと思ったんです、僕は。そんなウケなかったんで。そしたら運よく通って。3回戦はネタ時間が2分から3分になるので、その1分をどうしようかなって5日間ぐらいしかない中で考えて、まあ、何とかええ形になって。3回戦はルミネ the よしもとであったんですが、めちゃウケて。でも結局は落ちたんです。それも、ずば抜けてなかったし、予選以外ではお客さんの前で1回もやっていなかったというのも大きかったかなって。気持ちええぐらいウケたんですけど、それぐらいでは通らないですね。
--戦う場所が『R-1ぐらんぷり』もあるというのは?
師匠に出ろと言われて出たっていうのもあるんですけど、僕、10年くらい『R-1』に出てるんですよ。6年ぐらいは1回戦で負けて。全然勝てなくて。その後3年、やっと2回戦に行けるようになって。今年やっと3回戦に行けて。いつまでこの大会が続くのかという不安もありますが、普段は3分のネタとかやってないですからね。去年1年間もずっとやってないです。それで、3分のネタを急にやって、3回戦まで行けて。ちょっと風も吹いてきたなっていう感じはしますけど…。
--その風が今年は結構いい感じで…。
まだ足らんな…。
--度胸があるようにお見受けしましたが、緊張もしない方ですか。
ちょっとは緊張するんですけどね、言うたって。昔は緊張してました。落語研究会のときは緊張してました。高座が半年に1回ですから「ここでスベったら半年間、おもんないやつになる」っていうプレッシャーがあったんです。それで、あるとき、出番の前に貧血で寝てたんですよ。そしたら先輩が「お前余裕やないか」って。「違うんですよ、貧血なんですよ」って。高座でひと笑い取れたら気持ちがさっと下りるんですけど、でもあの緊張感も大事なんですよね。今日ウケるかな~!って気持ちで出たらスベります、やっぱり。ちょっとした緊張感は必要ですね。なかったら、それは努力してない証拠ですもんね。努力して、「こういうふうに言えるかな。あの部分を変えてみようかな」とか思いながら出ると緊張感がちょっとはあるんですよ。「ま、えっか、こないだやったし」っていう姿勢だとスベります、それは。
--では最後に決勝に向けての意気込みを。
関係ないことなんですけど、母校の松山東高校が春の甲子園に出て。1回戦の応援に行ってものすごく感動しました、本当に。うちはそんなに強い方じゃなかったから。OBが集まってね。1回戦勝って校歌を歌ったときは泣きましたね。みんな泣いてました。ええ感動でした。ああいう感動を与えられるように…。…これではシメにならへんな…。そうやって、いただいた感動を今度は違う形でも僕が皆様に与えられるよう。いつかはそれぐらいになりたいなって。そのスタートとしての「上方落語若手噺家グランプリ」で。あとはもう、自分らしく頑張る。自分らしさを見せられたらいいですね。
(2015年6月 8日更新)
▼6月23日(火) 18:30
天満天神繁昌亭
当日-2500円
※前売り券完売につき、補助席を若干販売予定。
[出演]
桂三幸
笑福亭べ瓶
桂雀太
桂吉の丞
桂二乗
桂三四郎
笑福亭生寿
桂咲之輔
露の雅
★各出演者の名前をクリックすると個別インタビューページにリンクします。
※未就学児童は入場不可。公演当日、25歳以下の方は証明書提示で500円返金。
[問]天満天神繁昌亭
[TEL]06-6352-4874
天満天神繁昌亭
http://www.hanjotei.jp/
桂三幸 公式ブログ
http://sankou.laff.jp/
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