ホーム > インタビュー&レポート > 「14年もやってきて、いまだにこんな気持ちになれるんだって」 吉田山田の続いていく物語に挟まれた『備忘録音』という新たな栞 吉田結威(g&vo)と山田義孝(vo)が 転機の充実作を語り尽くすインタビュー&動画コメント!
14年やってきてやっと分かったのは
山田は0から1を作るのが好きな人で、僕は1を10にする方が得意なんですよ
――今年2~3月には、アコースティック8公演+バンド3公演=計11公演にわたる『吉田山田ツアー2023』が行われて。順序としては、まず音源を聴いてもらってライブを見に行くというのが業界のフォーマット的なところだから、今回のようにがっつりツアーを回り終えてからアルバムをリリースするのは、なかなか珍しいことで。
山田「だからツアーでは誰も知らない新曲ばかりを(笑)、特に最後のバンド3公演なんかは、アルバムから全曲やりましたから。ただ、知らない曲を聴いてもらうのもいいなと思ったのは、みんなの反応が知っている曲で盛り上がるのとは違って、一節一節をかみ締めるように楽しんでくれて...それを肌で感じられたのは良かったなって」
――今回はあえて、その順番でやってみようという試みだったの?
吉田「みんなも感じていると思うけど、コロナ禍が終わって日常が戻ってきたとは言え、余波は全然あって。ツアーってそれこそ1年以上前からスケジュールを押さえなきゃいけないけど、去年の段階ではいろんなことがまだ読めなくて。でも、読めないからって何もしないでいるのは、ちょっと違うよねって。正直、『備忘録音』を今年の5月17日に出せるかどうかも、いつもよりはだいぶ後に決まったんですよ。当時は、"世の中の状況によって変わります"だらけだったから。ツアーの11公演の前半、アコースティック8公演は声出しもできなかったし、臨機応変にやれることをやった結果が今回の流れになった。作品を出してからツアーをやった方が絶対にいいとも思ってはいないんだけど、ここ2~3年は、この状況の中で何ができるか、どう楽しむかを考えないと、活動自体が存続できなかったから。いつもといろんなことが違うけど、それでもいいものにしようという気持ちでこうなった感じですね」
――なるほどね。最後のバンド3公演では声出しも解禁されて、改めて感じるところもあったと思いますけど。
山田「声出しのないライブもそれはそれでいいなと思っていたんですよ。盛り上がるのが苦手な人もいるだろうし、特に歌詞を聴いてもらえるチャンスでもあるなと思ったから、あんまりネガティブな思いもなかったんです。ただ、久しぶりに声出しライブをやってみて...みんなのエネルギーがすごくて、ライブ中に"湯あたり"みたいな状態になったんですよ(笑)。鳥肌もすごく立ったし、デビューしてからもなかなか超えられなかった、高校の文化祭でよっちゃん(=吉田)と初めてステージに立ったときに近い感動を覚えたというか...あの瞬間のことを思い出した。ちょっと大げさですけど"生まれ変わった"というか、あの感覚を14年目にしてまた味わえるんだという感動はありましたね」
吉田「ツアー後半3本のライブで、久しぶりに客席からステージにものすごいエネルギーが飛ばされてきたとき...山田が言う通り、その声援に酔ってしまうぐらい、それに流されずしっかりと立っていることが大変なぐらい、お客さんのパワーがすごかったんですよ。あとね、ライブの後に反省会をあんまりしなくなったんです。それは、その日できることを本当に一生懸命にやった自信と自覚があるから。多少ミスがあったり、"もうちょっとこうした方が良かったよね"という点があったとしても、それもお互いに分かっているから。次のライブでそこがまた更新されて、11公演積み重なって、ツアーファイナルの東京では、14年活動してきた中で一番いいライブができた。だからこそ、今までのことも無駄じゃなかったと思えたし、最高のツアーだったなと思いましたね」
――キャリアを重ねて、曲を書くことは楽しいけど、自分で歌うことに対するモチベーションがなくなって作家やプロデュース業に回る人もいる中で、吉田山田はまだまだ歌いたいし、ライブをしたときに今までで最高だと言える。
吉田「その気持ちが湧いてこなくなったら...という恐怖は、多分アーティスト全員が持っていて。14年やってきてやっと分かったのは、山田は0から1を作るのが好きな人で、僕は1を10にする方が得意なんですよ。だから、どっちか1人だとすぐガス欠になっちゃう。このスピード感、このクオリティで続けていくには2人じゃないとダメで、そこがしっかりすみ分けできたからお互いリスペクトもできる。時に不安に襲われてもきっと大丈夫だと思えるのは、この2人だから救われている部分もすごくあって。同年代の人たちが活動休止したり、音楽とは違う道に進んだり、本当にいろいろあったここ2〜3年の中で、自分たちも自ずとそういうことを考えてしまうんだけど、この『備忘録音』を作る作業と、そのツアーを回れて最高のライブができた自覚が、またちゃんと次の活力になったのは良かった」
山田「例年通りなら、アルバムを出してツアーを回って、そこで受けた刺激をまた曲にするルーティーンだったんですけど、ライブが一気になくなったことで、もうずっと自分を掘り下げて掘り下げて...だからこそ今までになかった深さまで行けたというか。曲のタイトルにもすごく現れているんですけど、『人間』(M-3)とか『裸』(M-8)とか『音楽』(M-11)とか、余計なものをそぎ落とした核の部分がちゃんと形にできた。きれいごとじゃなくて、"一生懸命に生きているだけでいいじゃん! それでもう十分だよ"って思ったんですよね。僕はあんまりネガティブな言葉を吐き出さないように過剰に意識して生きてきたんですけど(笑)、今回は作品の中で"イヤだ"と結構言っていたり、日常でも"何か疲れたな"とか...今までは表に出さなかったようなことも吐き出しているのは、それも大事だと思うようになったからだなと。いい人間であろうという姿勢がまたちょっと違う形になったのか、自分の思っていることを受け入れてもらえると安心したからなのか...そこは自分でも分からないんですけど」
――"生きているだけでいい"と思えたら、"人間なんだから愚痴だってたまには出るだろう"と、自分も他人も許せるだろうね。よっちゃん的には、そういう一面も音楽に落とし込めるようになった山ちゃん(=山田)を待っていたと。
吉田「僕は人を観察するのが好きで、山田を見ていると360°いろんな山田がいるんだけど、今までは同じところにばかり焦点が当たっていた感覚で。それもうそじゃないけど、まだ見せていない部分がたくさんあって。『備忘録音』では、これまでは照らされていなかった部分が見えたことがすごく新鮮に思えたし、引き込まれたので。今回はいい曲がたくさんできたと思いますね」
『備忘録音』は"栞"というか、これで本が完結したというよりも
吉田山田というストーリーで言うとまだ途中なんです
――前作『愛された記憶』('21)は、5組のアーティストとのコラボという命題があったから、オリジナルアルバムとは言えオムニバス感の強い作品になった。故に『備忘録音』こそが、今後の方向性を示す作品になるのかなと。
吉田「『愛された記憶』を作っている段階から、次はできるだけ同じエンジニア、アレンジャーで、吉田と山田のエキスを濃く出したいなと思いながら、制作を進めていました。もっと言うと、絶対に広がる自信のある曲もすでにあって、あえて温存しているんですよ。今までは毎回、あるものを全部出し切っていたけど、"いや、次はもっとすごいんで"というこの感覚は初めてで。だから『備忘録音』は"栞"というか、これで本が完結したというよりも、吉田山田というストーリーで言うとまだ途中なんです。あと、今回はできた曲を並べて聴いたとき、"生きる"という言葉がたくさん使われていて。アホな2人なりに生きるということを必死に考えていたんだなと(笑)」
山田「日々生きている中で目指すもの、目標ができればできるほど、生きているだけでいいという感覚とはどんどん離れていくと思うんです。この時期だから、こういう状況だったからこそ、純粋にそう思えたんだろうなって」
――そして、長年お世話になったメジャーレーベルからの独立もこのタイミングで重なって。でも、ここ近年のリリース同様、『備忘録音』にもスーパーデラックス盤があったから、(独立したことに)最初は全く気付かなかったわ。
山田「これは喜んでくれる人たちがいるから今回もやろうという感じでしたね」
吉田「でも、全部が"あ、今だったんだな"って思います。ちょっとタイミングが違えば、"これからどうしたらいいんだろう?"と迷っていたかもしれないけど、メジャーを離れるときも皆さんが優しく助けてくれたからこそ、僕らも羽ばたけた気がする。あとは2人の気持ちの在り方ですよね。レーベルや事務所があるから音楽をやっているわけじゃなくて、吉田と山田がいるから音楽をやっている。10周年を超えてから、その基本的なところにしっかり立ち返ることはできていたので。もちろん、単純に顔を合わせる回数が減る寂しさはあるけど、同志はもうたくさんいる状態だから。そして今、自分たちが試されているのも、すごくいいことだと思っているので」
――収録曲に触れていくと、冒頭の『Monster』(M-1)から斬新で。メインのバンドサウンドがあってオーケストラが並走するのではなく、本当にオーケストラと吉田山田のみという思い切ったアレンジで、インパクト大です。
吉田「"今の吉田山田にできること、力を最大限に生かせることは何だろう?"と客観的に曲を聴いたとき、改めて山田の歌は色が強いなと思ったんですよ。それはとてもいいことだけど、同時にその歌詞だったりメロディ、アレンジの雰囲気に合う/合わないがすごくあるということなんです。僕は『日々』('13)をたくさんの人に聴いてもらえた理由を、今でも分析し続けているんですよ。おじいさんとおばあさんの物語自体も素晴らしいけど、"おじいさんは〜♪"って山田があの声で歌い始めるところに、何よりパンチがある。歌の特性と歌詞、メロディとアレンジが"バチッ!"と合ったときに、人は名曲だと思うんだなと。最初は、オーケストラと山田の歌がどれだけ合うかは分からなかったけど、"これは多分いいものになるな"と思って。今回のアレンジはちょっとチャレンジでしたね」
――他のアーティストでもここまで大胆なオーケストラアレンジは聴いたことがないし、打ち込みではなく生弦というのも贅沢で、メジャーと比べても全く遜色のないクオリティで。歌詞においても、"そうさ君とは 違う地獄を生きているの"の一節はすごいなと思いました。
吉田「原曲は山田で、歌詞もほとんど出来上がっていたんだけど、その一節の辺りだけ僕が書いたんですよ。それはさっき言ったように、山田が生み出してくれた0から1に、僕がアクセントとして付け加えた。昔なら僕の伝え方が下手だったりして、作者の山田としたら"ほぼ完成しているものをわざわざ変える必要があるの?"みたいに、ちょっとカチンときたかもしれない。14年やってきた今だからこそ、すんなり"いいじゃん!"ってお互いに言い合える関係になれたし、本当に気持ちよく物作りができているなって」
――そこがただのポップスで終わらせない一行だなと思った。"そうさ君とは 違う世界を生きているの"とかなら、いくらでも聴いたことのあるフレーズだけど、お互いに生きている場所が"地獄"というのはセンセーショナルだし、『Monster』感が増しますね。
山田「今回のアルバムは特に2人の共作が多いので、ほぼ出来上がっている曲だとしても、よっちゃんに"もうワンスパイス、いい提案があったら"とお願いして。それを自分から言えるようになったのは、この14年の信頼関係というか、頼れるようになったのはいいことだなと思いますね」
――『人間』の最後の投げっぱなし感というか、光を見出さずに特に物事が解決しないのも、吉田山田の詞世界としては新しいしリアルで。それと、アルバム後半の暗い曲...。
吉田「『夜な夜な』(M-9)?(笑)」
――正解(笑)。『夜な夜な』とかも、最後にどこか希望を見せようとかじゃなくて。『人間』もしかり、何も解決しないのが人生でもあるし、そこを切り取っても今の吉田山田なら歌える深さと説得力があるなと。そういう意味では、『東京』(M-4)という曲は世に名曲も多いし、日本のポップスにおける大きなお題の一つだけど、それをこんなにフラットに描いた、日常のラブソングにした人はいないかも。だいたいもっとドラマチックになりがちだから。
吉田「これは歌詞にある通り仕事帰りに寄ったドラッグストアで、僕の前にレジに並んでいたカップルを見てできた曲なんですよ。もし"『東京』という曲を作ろう!"と意気込んで話が始まっていたらすごく大変だったと思うけど、その2人が持っていた東京という街に馴染み切れていない違和感が、僕にこの曲を作らせてくれた。だから自然と、このタイトルを付けられたんだと思います」
――『東京』の"Ah 絡まないし引っ張られない Bluetoothのイヤフォン/どれくらい離れたら 繋がらなくなるのかな"のラインは山ちゃんのアイデアで。『Monster』とは逆のパターンで作用し合っていますね。この発想ってある種、子どもというか、この感覚がいつまでもなくならないのが山ちゃんのスペシャルだと思う。すれてないという。
山田「僕がもっと楽器を弾けたら違う作り方をしていたかもしれないですけど、小っちゃい頃から鼻歌を歌いながら歩いている子どもだったんで、良くも悪くもこのスタイルが染みついちゃって。だからこそ、メロディに乗っかってくる言葉が結構ある。僕が普段から頑張っていることは、いいと思ったそれを形に残すことなんです。"今、面白い言葉が出た!"っていう曲作りができているから、僕自身も楽しいんだろうなって」
僕も毎回、"どうやってこの曲を作ったんだっけ?
またこんな曲が作れるのかな?"って不安になるんですよ(笑)
――他にも、『YADANA』(M-2)はトレンドのこじゃれたR&Bを吉田山田がやるのも新鮮だったし、『こんな夏はいやだ』(M-5)は王道爽やかサマーチューンなのに、このタイトルを付ける意地の悪さ...(笑)。
吉田「アハハハハ!(笑)」
――こんなに混じりっ気なしに夏全肯定の曲を書いておいて、超シニカルなタイトル(笑)。
山田「よっちゃんは夏が大嫌いな男ですから!(笑) 書きながら帳尻合わせじゃないけど、どうしてもそのスパイスを入れたかったんでしょうね」
吉田「やっぱりどこかで憧れがあるんですよ。夏が好きで、素直にはしゃいで楽しめる人がうらやましいのもあって、この曲を作っていったので。でも...これが『サンシャインガール』とかいうタイトルだったら、僕がリスナーなら聴かないなと思って。『こんな夏はいやだ』にすることで、『夜な夜な』みたいに暗い曲を作る僕と同じような人でも(笑)、"たまにはこういう曲も聴きたくなるよね"という気持ちになるかなって。ただ、今作の会議で唯一、みんなにタイトルを反対されましたけど(笑)」
山田「最初はもっとストレートに、『夏が嫌い』とかも候補だったんですよ。でも、『こんな夏はいやだ』にすることで、これがまたいいスパイスとして面白さも増したんで」
――しかもこの曲はよっちゃんがかなり歌詞に苦労して、締切を飛ばしそうになったぐらいだったと。
吉田「もう本っ当に辛かった。失敗を何度も繰り返して今があるから、ここ最近は朝まで歌詞が書けなくて粘るなんてことはなかったんですよ。それなのに久々にできなくて...だからうれしかったな〜この歌詞が書けたときは。『日曜日』(M-6)とかはさらっと書けたのに」
――あと、先行配信された『焼き魚』(M-7)を聴くと、改めてこんなことを歌う人はいないなと思った。サビが、"宇宙の果てでも焼き魚 焼いてくれませんか?"なんて。
山田「最近はどんな曲が浮かんでも、携帯のボイスメモに録ってとりあえずデモにするんですけど、そうなったのはTikTokの影響なんですよね。TikTokに上がっている曲って展開が目まぐるしいんですよ。『もやし』('18)がTikTokでちょっと話題になったことで、TikTokで音楽を聴く機会が増えて、これまでの自分の引き出しにはなかったメロディや歌詞が出てくるようになったんです。デモを歌っている中で、"これは自分では歌えないな。でも、ボカロとかのパターンはあるかも。それか楽曲提供かな"とか思っていたら、よっちゃんが"この曲でいこうよ"って。僕は"こういう曲を作ろう"と一から積み上げていくのが苦手なので、心が揺さぶられる環境に自分を持っていくことを心掛けていて。いろんな人と会うこともそうだし、何かに感化された瞬間にパッとメロディや言葉が出てくる。それをずっと続けていく中で、新たにTikTokだったりサブスクからの刺激が出てきた感じですね」
――ちなみに、最後のサビの"焼き魚"の一声は現場マネージャーさんが担当したと。レコーディングはどうでした?
現場マネージャー「いやもう、意識朦朧としていました(笑)」
――アハハハハ!(笑)
山田「いやいや、堂々としていましたよ(笑)」
吉田「チーフマネージャーも、"よくあんなに楽しそうにできるな"と言っていました(笑)」
――冒頭の"咀嚼音を嫌われて 箸の持ち方正されて"のくだりは、よっちゃんから散々注意されてきたことが歌詞に落とし込まれていたり(笑)、何が曲になるか分からないもんですね。こんなにファニーな曲なのに、こんなにライブで盛り上がりそうなロックチューンになっているのも謎だし。
山田「意識せず鼻歌で出てくるんで僕も毎回、"どうやってこの曲を作ったんだっけ? またこんな曲が作れるのかな?"って不安になるんですよ(笑)」
ここに入っている曲もそうだし
次の作品になるだろう新しい曲に自分たち自身も感動しているんですよ
――人生において少なからず音楽が、吉田山田の歌が大事な人にとっては、アルバムの最後を飾る『音楽』を歌われたら、むちゃくちゃ安心するんじゃないかと。生きようと思える、糧になる曲。これはアレンジでも化けた曲で。
吉田「最初はもう少し柔らかいバラード寄りのアレンジで、サビにもっとストリングスとかオルガンが入ったパターンもあったんだけど、編曲のはたっぷ(=幡宮航太)に"これはもっと古めのロックみたいなアレンジが合うと思うんですよね"と相談して。初めてギターを弾いてくれた松本コーキくんも最高でした。『音楽』は今回のアルバムの中でも一番ライブでやりたかったし、音源を届けたかった曲かも」
山田「(コロナ禍は)ライブをやっても声を上げられないし、触れられない。でも、距離ができてしまったからこそ、音楽がつなぎ留めてくれるものがある。音楽で抱きしめたいと思ったんですよね。いち人間としても、いちアーティストとしても生きることを考えた中で、"音楽って何なんだろう?"という問いに対する答えを一つ出せたかなって」
――ボーナストラックの『最後の歌』(M-12)も大きな愛を感じる一曲で、この曲には、"残念だけど世の中そんなもんなんだよ"という一行の後に、"僕がわかってりゃそれでいいだろう"という愛がある。14年の歩みの中で応援歌から自分のことを歌うようになった吉田山田だけど、『最後の歌』なんかは今でもちゃんと応援歌だなと思った。
山田「この曲の特に後半の部分は、去年ツアーをやりながら作って...ライブだと、曲で言い足りない部分をついMCで補っちゃうんですけど、そこまで曲に入れたいなって。だから、ほとんどがMCの延長というか、ライブに来てくれた目の前にいる人に、伝え残さないように曲になったんです。でも、またきっとしゃべっちゃうんだろうな(笑)」
――SNSからにじみ出るこういったインタビューやラジオ出演、インストアライブの雰囲気からも、今はとにかく健やかに音楽活動ができているのが伝わってきますね。
吉田「アルバム3部作『変身』('17)『欲望』('18)『証命』('19)を作っていた頃は辛かったからなぁ...今思えば、それが活動のスパイスになったから良かったけど、この先そういうことがまたあるかもしれない。人間は寂しさや苦しさからは絶対に逃げられないから。でも今は、そういう自分を励ましてしっかり歌にすることが、すごく大事な時期だと思っていて。"いつか届いたらいいな"と思う独り言を言っている感じかな。みんなに聴いてほしい気持ちは当然あるんだけど、ポンと出てきたその独り言がカッコ悪かろうがダサかろうが、そこには真実が詰まっているから。それがいつか届いて、"自分もそんなことを思っていました"と共鳴してもらえたら、すごくうれしいし」
――それは長い音楽人生であることが前提の気持ちで、このアルバムで売れなきゃ、結果が出なかったら終わり、じゃない。吉田山田は続く。そういうスタンスで音楽と向き合えているのはいいですね。
山田「『備忘録音』はうそのない気持ちを形にできた一枚だと思うんですけど、それが自己ベストだと胸を張って思えること、自己ベストだと思うライブを近々にできたことは、本当に奇跡みたいなものだと思うんですよ。"14年もやってきて、いまだにこんな気持ちになれるんだ"って。よっちゃんとじゃないとここまで来られなかったし、何ならスタートもしていなかった。今は新たなスイッチが押された気分なんですよね。次のフェーズにもう手が掛かっている。ここに入っている曲もそうだし、次の作品になるだろう新しい曲に自分たち自身も感動しているんですよ。だから、来年のデビュー15周年も楽しみだなって」
――大人になっていろんな環境が変化していく中でもまだこのノリでいられるのって、2人がずっと一緒にいることで生まれた絆なのか、元々あった縁なのか。ほとんどはみんな続かなくなっちゃうというかさ。
吉田「"2人で仲良く続けていく秘訣は?"と聞かれたときにつくづく思うけど、例えば、別れてしまう2人もいるし、おじいちゃんおばあちゃんになっても添い遂げる2人もいる。人間が一緒にいるためのコツとその大変さは、別に変わらないんですよ。で、曲が子どものようなもので、かすがいにもなってくれるし」
――うまいね。じゃあ、これから先も別れないように(笑)。
(一同爆笑)
――たださ、山ちゃんは一途だけど一目惚れしかしない性格だからこそ、この先もし、思いがけず他の人を好きになっちゃったらどうするんだろう? ってちょっと思ったけど。
山田「それは僕も思いますよ(笑)」
――アハハハハ!(笑)
吉田「僕はどっしり、"それでもいつか絶対に帰ってくるから大丈夫!"って待ってます(笑)」
Text by 奥"ボウイ"昌史
(2023年6月21日更新)
Album
『備忘録音』
【ボーナストラック盤】
発売中 3300円
NICHION,INC.
YYCL-0002
<収録曲>
01. Monster
02. YADANA
03. 人間
04. 東京
05. こんな夏はいやだ
06. 日曜日
07. 焼き魚
08. 裸
09. 夜な夜な
10. もしもの話
11. 音楽
※ボーナストラック盤のみ
12. 最後の歌
よしだ・やまだ…写真左より、吉田結威(g&vo)、山田義孝(vo)。’09年10月にシングル『ガムシャランナー』でメジャーデビュー。’13年12月にリリースした9thシングル『日々』が、『NHKみんなのうた』で同月より放送が開始されるや“泣ける歌”と話題になり、5度の再放送を経てロングセールスを記録。YouTubeの再生回数は現在1800万回を突破している。毎年精力的にライブも行っており、’16年、’19年には47都道府県ツアーを敢行。’22年にはTikTokで『もやし』(’18)が注目され、’23年2~3月にかけて11ヵ所を回る全国ツアー『吉田山田ツアー2023』を開催。5月17日には自主レーベルより9thアルバム『備忘録音』をリリースした。
吉田山田 オフィシャルサイト
https://yoshidayamada.com/
【東京公演】
『城 南海×吉田山田
duoでduoアシビ ~海の日~』
チケット発売中 Pコード243-438
▼7月17日(月・祝)14:00/17:00
duo MUSIC EXCHANGE
自由席5500円
[出演]城 南海/吉田山田
duo MUSIC EXCHANGE■03(5459)8716
※4歳以下は保護者膝上に限り無料。席が必要な場合はチケット必要。公演に関する注意事項はオフィシャルWEBをご覧ください。
【東京公演】
『吉田山田盆踊り2023〜渋谷編〜』
チケット発売中
※チケットは、インターネットでのみ販売。
店頭での受付はなし。
▼8月20日(日)16:00
Spotify O-EAST
全席指定8000円 2F指定席8000円
DISK GARAGE:(https://info.diskgarage.com/)
※小学生以上はチケット必要。未就学児童は無料。席が必要な場合はチケット必要。
『吉田山田』('14)
特設ページはコチラ!
『ごめん、やっぱ好きなんだ。』('13)
特設ページはコチラから!
『ココロノート』('12)
特設ページはコチラから!
「自らの内面を掘り下げたアルバム3部作『変身』『欲望』『証命』を何とか作り終え、デビュー10周年。その後も、ベスト盤『吉田山田大百科』(’20)や前作『愛された記憶』をリリースしてきたここ数年は、吉田山田に初めてインタビューした2ndアルバム『ココロノート』(’12)の頃のような元気と無防備なはっちゃけ感は当然なく(笑)、毎度生みの苦しみを伴っているのが話していても伝わってきました。それがキャリアを重ねることだと言ってしまえばそうかもしれません。ただ、『備忘録音』のキャンペーンで関西に訪れた彼らからは、久々にあの頃に近い雰囲気というか、転んでもただでは起きないタフさと、この2人なら何とかなるという絶大な安心感、包容力を感じたんですよね。アルバムでも、音楽的には結構大胆なチャレンジもしつつ、歌詞では今までの人生経験が如実に生きている。要は今が最高だし、今後の方がむしろブレイクのチャンスがあるかも!? だからこそ、今まで応援してきた方はもちろん、今から吉田山田に出会っても全然遅くないんです。彼らはこれからもずっと歌い続けるはずなので。この物語に合流してください!」