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「ケツを拭く覚悟があるからこそ、納得度の高い状態で前に進める」
何でもない日々の幸せも、どうにもならないモヤモヤも――
音楽人生を注ぎ込んだ『鶴フェス』の先にあった最高の『普通』!
鶴インタビュー&動画コメント

 昨年は地元・埼玉県の鶴ヶ島にて初の主催フェス『鶴フェス2019』を開催(しかも入場無料!)。3人が音楽人生をかけて出会ってきた約11,000人が集ったその最高のステージで、リリースが発表された最新アルバム、その名も『普通』(!)は、何でもない日々の幸せも、日常につきまとう些細ないら立ちも、結成から17年という時間が醸造した確かな演奏力とソングライティング力で余すことなく形にした全13曲を収録。「自分たちのスタンダードが自然とできた」(秋野・vo&g)と自負するのも納得の、日本語詞のロックの1つの雛形とも言える問答無用のグッドミュージックに仕上がった。そして、鶴と言えばその真価を最も発揮する土俵がライブだが、新型コロナウイルス禍の影響によりインストアイベントやリリースツアーは軒並み中止/延期に…。だが、転んでもタダでは起きない3人は(笑)、たび重なるYouTubeでの配信や、ゲストアーティストを招いた年末恒例のスペシャルライブ『大忘年会2019』を音源化した2枚組ライブアルバム『DBNK2019』の緊急リリースなど、笑顔で再会できるその日のために、今でも途切れることなく音を届け続けている。歩みを止めない鶴のタフな現在地に迫る全員インタビュー。

 
 
最高でした。本当に続けてきてよかったです
 
 
――世はコロナコロナですけど、鶴はそれを逆手に取って活発に配信をやっていて。『New Album『普通』発売記念イベント@あなたのお家』の配信を見てたんですけど、例によって『テセウスの船』終わりで流れた口で(笑)。
 

 
笠井(ds)「お帰りなさい(笑)。『テセウスの船』からだよね、やっぱり。そらそうですよ」
 
秋野(vo&g)「“THE END〜!!”ね(笑)」
 
――転んでもただでは起きない、じゃないですけど、こういう試みができるのも今ならではで。
 
秋野「配信独特の面白さはやっぱりあるんですよね。それがたまたまこういうご時世と相まって、不思議なもんでちょっと感動を生み出せる環境にもなって。そういう意味では、音楽の本来の役割としては合ってるのかなって。ただ、これをずっとはできないけど(笑)」
 
笠井「普段ライブハウスに来れない小っちゃいお子さんがいるお母さんとか、子供たちとか、鶴を初めて見る入口としてもいいような気もするし、マイナスだけではなったのかなって」
 
神田(b)「それに加えてレコーディングとほぼ同じクオリティでやれるんで、そういう音をみんなに聴いてもらえるのは嬉しいですね。本当にライブと制作の中間という感じで、自分ら的にも発見が多かったですね」
 
――今作にたどり着くまでのストーリーとして『鶴フェス』の話は欠かせないと思いますけど、全国から1万人以上が訪れた絶景を実際に見てどう思ったのかを聞きたいなと。
 
秋野「あの日は1日中夢見心地というかふわふわしてたんで。何か…“とんでもない景色だぞ、これは”っていう(笑)。同時に、自分たちの音楽人生を丸ごと注ぎ込んだような力を使ったので、そう簡単にはこの景色をまた見れねぇなっていうのもありましたし。昔はふざけて“愛してやってください”みたいなことを言ってましたけど、全国をぐるぐる回って、それがだんだんマジになって、15周年を迎えて本当に目に見える形になったのが『鶴フェス』だったなと」
 
――鶴のファンは熱心なイメージがあるけど、本当に愛されてるんだなって分かりますね。
 
笠井「クラウドファンディングでもみんなにすごい協力してもらったし」
 
秋野「全国から来てくれたもんね」
 
神田「僕は当日は結構冷静で、フードとかお客さんがいるエリアを回ってみんなと喋ったり写真を撮ったり、あとは久しぶりに会う同級生がいたり、地方のライブハウスやラジオ局の方も来てくれて…今すごいことが行われてるぞと感じてはいたんですけど、自分たちのステージの直前にやったSCOOBIE DOとTHEイナズマ戦隊のライブがよ過ぎて泣いたんですよ。そこで、“本番は泣いちゃいけない”みたいにヘンな大人のストッパーがかかったみたいで、スンとしてたんですけど(笑)。後日、そのDVDを見直したときにようやく夢見心地な感覚に気付きましたね」
 
笠井「1日中どのアーティストがやってるときも、一貫して幸せな空気が流れてるんですよね。辺りもちょっと暗くなってきて、最終的に俺らがステージに上がった景色があまりにも、自分の想像を超え過ぎてて…。お客さんの端の方は見えないぐらい、どこまでも人がいるみたいな感じで、幸せだなぁ〜と思いながらずっとライブしてたんですけど、後々DVDを見てみたら俺、ずっとニヤニヤしてて(笑)」
 
神田「ニヤニヤだけならまだいいけどさ、マイクに“ヤッベェ~すげぇ楽しい!”とか声が入っちゃってるんで(笑)」
 
秋野「セッティングの時点から会場全体の期待感がとんでもなくて、みんながステージの前にどんどん集まってくる光景は本当にたまんなかったですね~」
 
――いや~バンドを続けてきて、こんなご褒美があるとはね。
 
笠井「最高でした。本当に続けてきてよかったです」
 
――でも、鶴ってバンドを辞めようと思ったことあったんでしたっけ?
 
秋野神田「いや、ないですね〜」
 
笠井「今はないなぁ〜」
 
――アハハ!(笑)
 
笠井「喧嘩もしなかったし」
 
――脱退とかの話もないし。
 
神田「バンドの危機もないし」
 
秋野「何も乗り越えてないみたい(笑)」
 
――『鶴フェス』はこれからも毎年やっていくんですか?
 
秋野「すごいパワーを使うのが分かったんで、毎年はちょっと考えてはないですね。他にもバンドとしてやりたいことがあるので、これからは2〜3年に一度ぐらいのペースがいいのかなって、今は思ってます」
 
 
後ろ向きでネガティブな気持ちって原動力にもなる
 
 
――その『鶴フェス』のステージ上でリリースが発表された今作には、どれぐらい前から取りかかってたんですか?
 
秋野「全県ツアーの3周目をやってた去年の頭ぐらいから曲を書き始めて、『鶴フェス』が終わってからプリプロとかにも入り始めて、今年に入ってから一気に仕上げました。ただ、歌詞に関しては『鶴フェス』に向かう約1年間~その後ぐらいまで、結構幅広い時期の言葉ですね」
 
――アルバムのタイトルでありコンセプトが『普通』というのは?
 
秋野「(全県ツアーや『ALL TIME CLASSICS』=持ち曲全曲からセットリストを選ぶライブではなく)“普通のアルバムツアーをやりたいね”っていうところから、本当にたまたま。今までも何となく全員の温度感が同じところで言葉になりました、みたいなことが多いので、それが今回は『普通』だったのかなって」
 
――前回の『バタフライ』(M-11)のインタビューで、「ちょっとひねくれてるところが鶴にはあるので、“王道過ぎて避けたい”とか、“何か普通になっちゃいそう”とかいうのも、1回止めようと」とは言ってたんで、その頃からこのアルバムのムードは始まってたのかもしれないですね。
 
神田「ホントだ! 会話の中でもさ、“普通でいいじゃん、奇をてらうようなことはしないでおこうよ”って」
 
秋野「王道のよさというか、“いいものはいい”というね」
 
――ただね、鶴って毎年、取材はしてるし、ライブは常にやってるな~と思ってましたけど結構長い間アルバムを出してなかったんだなって。前作『僕ナリ』が出たのが’17年の10月なんですよ。
 
秋野「ワオ! そんな前!? まぁでも『バタフライ』はシングルだけど(ライブ音源を含めて)60分あるから」
 
――シングルとしては重た過ぎるから。
 
(一同爆笑)
 
笠井「胃もたれしちゃうやつね(笑)。そうだわ、出してなかったんだ」
 
――だからこそ2年前に出したシングル『歩く this way』(M-2)も入ってくる。改めて、“いくつになってもゴールがないのは生きている証拠だ”っていうパンチラインが、アルバムのド頭からさらっと入ってくるのはすごいなと。
 
神田「コピーライター的なすごさがありますよね」

秋野「自分でもちょっと“おぉ〜!”ってところはあるんですよ(笑)。この曲は全県ツアーの3周目に出る前にできて、ちょうど地元・埼玉の鶴ヶ島の応援大使になって、“『鶴フェス』に向けていよいよ…!”っていう曲で」
 
――こうなると、『歩く this way』が『鶴フェス』のオープニングテーマで、『バタフライ』がエンディングテーマみたいな感じがしますね。アルバムの2トップじゃないですけど、鶴は今、本当に脂が乗ってるなと思いました。
 
秋野「17年目にして」
 
笠井「遅めに脂が乗って。中年の脂ですよね(笑)」
 
(一同笑)
 
――腐りかけのやつがうまい、みたいな(笑)。今作のリード曲である『ペインキラー』(M-4)も男っぽくて、派手なことはしてないのにイントロからグッとくる曲で。
 


笠井「これもシンプルよね」
 
神田「うん。楽器を始めて1ヵ月ぐらいの人たちでも頑張ったら弾ける感じの」
 
――『ペインキラー』も含めて、このアルバムって日本語詞のロックの1つの雛形みたいな感じがしましたよ。
 
秋野「嬉しいですね。新しいことはそんなにやってないんですけど、自分たちのスタンダードが自然とできたかなって。『ペインキラー』の元ネタ自体は結構前にあって、鶴のイメージってやっぱりポジティブに背中を押すものが多かったんですけど、僕の中にはネガティブな部分もあって生きてるので。後ろ向きでネガティブな気持ちって原動力にもなるし、そういう考えもあるんだよって表に出すことで救われる人もいる気がするし。『ペインキラー』=鎮痛剤、痛み止めなのに、“痛いんだって感じるようにさせて”って歌うこのチグハグ感(笑)」
 
――ある意味、現代社会を描いてるような。みんないろいろ麻痺っちゃってるというか。
 
秋野「本当に不感症というか、日頃から自分なりに感じるところはありますよね。自分もそういうところがあったりはするんですけど、本来はそういう痛みを感じて何ぼなんで。それこそ『歩く this way』じゃないですけど、“生きている証拠だ”っていうところでもつながりますし」
 
――痛いってことは=生きている。
 
秋野「また鶴なりの新しいパンチラインが出たかなと」
 
――『普通』=いい話だけじゃおかしいですもんね。生きてたらいいことも悪いこともあるので。この曲とか『歩く this way』もそうですけど、ちょっと歌い方を崩す感じは曲を書いていた時期のブームだったんですかね?
 
秋野「『歩く this way』とかの時期は磯貝サイモンくんと一緒に制作してたので、言葉の乗せ方とか歌の持っていき方をちょうど勉強してる時期でもあって。サイモン流を自分なりに取り込もうとしてたのもあったと思いますね」
 
 
最高の『普通』だよ
 
 
――そして! ここからは『36.1℃』(M-5)『Stay With You』(M-6)と、日々のささやかな幸せを描いていて、どん(=笠井)作詞作曲の楽曲がその役割を大きく担っています。
 
笠井「もう“THE 普通”ですよね(笑)。だから、『普通』っていうタイトルが後々付くことになって振り返ってみたら、俺が書く曲って全部日常なんだなと思って、逆に気付くことがありましたね」
 
――何でもない日々をきちんと描ける人って、案外いないかもしれない。忘れがちな心の機微をちゃんと曲にして。
 
笠井「本当に何でもないんだよね。だから“何を書いたの?”って聞かれても、答えられないことが多くて」
 
秋野「漫画で言うと『アフロ田中シリーズ』みたいな(笑)」
 
笠井「『サザエさん』みたいな(笑)」
 
神田「キャッチーな出来事がないのに感動的って、なかなかの技術だと思うけどね。事件が起きないんだもん」
 
笠井「本当だね。ドラマだったら成立しない。“姉さん、事件がないです”って(笑)」
 
秋野「最高の『普通』だよ」
 
――『きっとそう』(M-9)の、“おはよう おかえり ただいま いただきます”っていう歌詞も、確かにこの4つは大事だなと。=これが言える環境だってことですからね。
 
笠井「本当だ、逆に気付きました。大袈裟なことじゃなくて、そういうところに愛情ってあるのかなって」
 
秋野「元々大きく捉えるバンドでしたけど、『鶴フェス』を経てバンド自体がもっと大きな愛になったのかなと」
 
――ああいう大きな祭りをやって、鶴というバンドの説得力がより高まった気もします。ちゃんと人を巻き込まないと、頑張らないと成立しないことをやったのはデカいのかなと。
 
神田「そうですね。過去を振り返ってみても、今の状況は鶴としてもいい感じで」
 
秋野「ケツを拭く覚悟があるからこそ、自分たちも納得度の高い状態で前に進めるので。だからこそね、ケツを拭かないための努力は惜しまないという!(笑)」
 
神田「何なんですかね? ウォシュレットですかね(笑)」
 
笠井「キレのいいやつを(笑)」
 
――トイレットペーパーの枚数が少なめでいけるやつを(笑)。
 
神田「今は大事ですからね、トイレットペーパー」
 
(一同爆笑)
 
秋野「ケツを拭かないためには努力が要るし、そのやり方が=自分たちらしさになるのかなって」
 
――ただ、鶴のやり方は三者三様ですけど、神田曲はやっぱりアクでしかないっていう(笑)。
 
神田「ですね〜(笑)」
 
笠井「気を使ってほしいですよね(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) “今回のアルバムは『普通』だって言ってんだろ!”って(笑)。
 
神田「だって僕、家で鍋を作るときも、アクは取らないですもん(笑)」
 
(一同笑)
 
――神田家シリーズ第1弾が『Funky Father』('16)で、その第2弾となるのが今回の『Waiting Mother』で。この2曲を聴いたら、こんな濃い親がいる神田家ってどんな雰囲気なのかと(笑)。
 
神田「実際はめっちゃ普通の家なんですけどね。サラリーマンの」
 
笠井「普通ではない(笑)」
 
神田「本当? かもしれないけど、一応、第3弾も考えてるんで。次はお姉ちゃんが2人いるんで、Sisterです(笑)」
 
笠井「そのうちペットでも書くと思う(笑)」
 
神田「ペットは犬猫いますね(笑)。今回は“せっかくだから神田くんも曲を作りなよ”みたいになって、『Funky Father』がすでにあったんで次はお母さんの歌となったとき(笑)、車に乗ってたら“Waiting Mother!×4”のところがちょっとソウルフルな感じで浮かんだんですよ。そこから日々スタジオに行くときとかライブの帰りとか、車に乗ってるときに思いついた言葉とかメロディを“Hey Siri”で録音して(笑)、それを1つにしました。でも、アカペラで歌ってるはずなのに、どれを聴いてもキーがE♭だったんですよね。ただ、それだと棹モノ的に面倒臭いんで、半音上げてEにしようと。くしくも『Funky Father』と同じキーですけど(笑)。あと、基本的にお母さんは好きなので」
 
――どんな告白だ(笑)。
 
神田「マザコンというか、お母さんってやっぱりすごいじゃないですか?(笑) 地球が滅亡しそうになったら、シェルターにかくまった方がいいのは世のお母さんですよ」
 
――確かに“死ぬ前に何が食べたい?”って聞かれたら、やっぱりおかんの作った料理が食べたいと思いますもんね。
 
秋野「そう言われると、確かに俺は家のカレーかな」
 
神田「俺は宅配ピザ」
 
(一同爆笑)
 
――そこは違うんだ(笑)。これだけお母さんお母さんって言ってるのに。
 
神田「あと、せっかくなら鶴であんまりやらない曲調とかアレンジの方が面白いなと思ったんで、ハードロックは好きですし、“こんなのどう? ここまでのサウンドは鶴じゃやらなくない?”っていう感じで作り切った感じですね」
 
 
ライブバンドの道を選んで生きてきた
 
 
――『ペインキラー』もシビれるなと思いましたけど、『アナログなセッション』(M-12)もすごくいいなと。
 
秋野「僕らはずっと、直接会いに行って歌ってワイワイすれば一番伝わりやすいよねと信じて、ライブバンドの道を選んで生きてきたので。だから、これからもそれを僕らなりに大事にしていきたいなという意味で、たまたま思い付いた言葉が『アナログなセッション』だったんですよ。そういうタイトルだからなるべく人力で、中盤でディレイっぽく“チャーンチャーン♪”って音質が変わるところも、エフェクターを使わず全員自力でやってます(笑)」
 
神田「手です(笑)。だから、一番最後のレコードが遅くなっていくみたいな終わり方も」
 
秋野「音量が落ちていくのと同時にだんだん遅くして…」
 
――まさかの手段としてのアナログ(笑)。
 
秋野「“そういうところがバンドの面白さだよね”っていうポイントが詰まってますね、この曲には」
 
――本当に3人の関係性が絶妙というか、大人になってもよくこの感じでいられますね。
 
笠井「ちょっと離れる時期とかがあったら変わったのかもしれないですけど、中学のときから密閉状態なんで(笑)」
 
――だから青春時代から時間が止まったままというか。
 
笠井「止まってますね。中では発酵してるんですけど(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――アルバムの最後は『結局そういうことでした』(M-13)で、これもペインキラー方面というか、内容としてはシリアスな部分も感じます。“多様性って響きにさ 逃げ出してしまいそう”とかは、SNSでよく見るモヤモヤ感というか。
 
秋野「まぁ見なきゃいいだけの話なんですけど、やっぱり目にしてしまうし、多様性っていう言葉は本当に難しいなと思うんですよね。認め合うべきなのは確かなんですけど、逆に全てを認めることってできるのかな? そんなの実現不可能じゃない? と思っちゃう自分もいるんですよね。それに対するモヤモヤをぶつけるというか」
 
――でも、それを自分たちの手で触れてちゃんと確かめる。それこそ人力で、というのが鶴の一貫したところだなと思いますね。あと、音的にはめちゃくちゃ遊んでますよね。
 
神田「そうなんですよ。今回も松本ジュンくんが鍵盤で参加してくれてるんですけど、この曲は4人でせーので録ったんです。サウンドチェックみたいな感じでワンコーラスぐらいやったら、多分、全員が“あ! これはいいぞ、キテるぞ”ってなって(笑)。そもそもサウンドチェックだったので、尺とかもたいして決まってなかったんですけど」
 
秋野「鍵盤なんて譜面に書き起こして初めてな感じで一緒にやって」
 
神田「演奏してたらヒリつき感がたまらなくて、最後までやり切って終わった瞬間に、“もうできた!”って(笑)。だから1回しかやらなかったですね。ウワモノも重ねもなしで、本当に4人の音だけ。それが最後の曲でできたので、1つこのアルバムが締まった感じがしましたね」
 
――鶴の演奏力と歴史と関係性をすごく感じますね。
 
神田「確かにそうですね。演奏中、全員の音を聴いてたじゃない? “ここでこうきたか! あれ? 何かちょっとテンション上がってるぞこいつ”、みたいなことを楽しみつつ」
 
笠井「途中で“そのままいっちゃえ!”って言ってたもんね(笑)」
 
神田「すごいよかったです。レコーディングマジックみたいな感じでしたね」
 
秋野「うん。なかなかない経験だったね、これは」
 
――ところで、このジャケットはどこなんですか?(笑)
 
秋野「鶴ヶ島の駅前の駐輪場です。まぁ『普通』っていうタイトルだから、日常のスナップっぽいのでいこうよと。デザイナーさんはここ何年かずっと一緒にやってくれてる人なんで鶴の空気感も分かってくれてるし、最新のアー写もその人にやってもらいました。花びらを散らしたいっていうので、本当にすごい苦労したんですけど(笑)」
 
笠井「鶴ヶ島市役所の屋上で何枚も撮ってね(笑)」
 
神田「狙いとしては、ジャケットとアー写で二面性を出したいっていう」
 
――むしろ、普通は駐輪場でジャケットを撮ってきたら怒られますからね。“他にもっと場所あるやろ!”って(笑)。
 
 
今の状況も含めて鶴なりに面白おかしくやれたら
 
 
――そして、近年は全県ツアーに気を取られ、『ソウルのゆくえ』('16)と『僕ナリ』のリリースツアーをやってなかったことに気付き、結局、『普通』も含めてアルバム3枚分の楽曲を披露する、またもイレギュラーのツアーになっちゃいましたと(笑)。ただね…。
 
秋野「まさかこういう形で喰らうことになるとは…」
 
――何なら鶴は、“ライブさえやれたら何とかなる”ところもあるのに、それがなかなかできない。
 
笠井「CDが売れない時代だとずーっと言われてきて、じゃあライブが生命線かと思ったらそれがなかなかできなくなっちゃって、もうどうなってんの〜って(笑)」
 
秋野「ただ、ヘンな気負いみたいなものが今はあんまりないんですよ。その先にもまだ楽しいことをやろうよっていう気持ちがあるので。ライブの制限っていうのは本当にデカいけど(笑)」
 
神田「音楽好きの溜まったこのフラストレーションが“バーン!”とハジけて…」
 
笠井「“ずっとライブに行きたかった~!”ってみんながまた顔を見せてくれたらね」
 
秋野「あと、この間15周年だと思ったら、気付けば僕たちもこの春で結成17年なので、いよいよ20周年が見えてきちゃうんですよね。そこに向けてちょっとずつ考えたいし、来年は全員40歳になる年なので、そういう節目の前に例えば、全曲ライブをやってみるとか。40代になったら多分体力が落ちるからさ、30代の間に1回やっておいた方がいいのかなって(笑)。だから今の状況も含めて、これからも鶴なりに面白おかしくやっていけたらなと思ってます!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2020年5月18日更新)


Check

Movie

お礼と告知と大阪の味仙について(笑)
鶴からの動画コメント!

Release

脂乗りまくりの言葉と音と演奏!
2年半ぶりの強力オリジナルアルバム

Album
『普通』
発売中 3300円
Soul Mate Record
POCS-1846

<収録曲>
01. イントロ〜FUTSU〜
02. 歩く this way
03. 冬の魔物
04. ペインキラー
05. 36.1℃
06. Stay With You
07. マジカルロックミュージック
08. Waiting Mother
09. きっとそう
10. What's Up Myself
11. バタフライ
12. アナログなセッション
13. 結局そういうことでした

ゲストアーティストを招いた年末恒例
『大忘年会2019』を音源化し緊急発売

Live Album New!
『DBNK2019』
5月29日(金)発売(予定)
2626円
Soul Mate Record

【鶴 ONLINE SHOP 特別特典】
5月22日(金)までに予約購入をしていただいたソウルメイトさまには、送料無料&メンバーが愛を込めて開封し、心を込めてサインを入れて発送させていただきます!
※問答無用で開封させていただきます。ご了承ください。

⇒購入はコチラから!

<DISC1収録曲>
【埼玉公演】2019年12月21日
『大忘年会 2019
–ちょっと贅沢なクリスマスパーティー–』
01. Funky Magic
02. マジカルロックミュージック
03. Heart Of Love
04. Funky Father
05. 幸せのかけら
06. あしたのおてんき
07. 踊れないtoフィーバー
08. バタフライ
09. 夜道
10. ソウルメイト今夜
11. 夜に太陽

<DISC2収録曲>
【大阪公演】2019年12月30日
『大忘年会 2019
–ソウルメイト今年もお疲れ様–』
01. スピーカー
02. カミナリベイベー
03. 糸
04. ゆきまち
05. 夢のつづきを
06. 冬の魔物
07. Live&Soul
08. バタフライ
09. ソウルメイト今夜
10. てるてる坊主
11. 歩く this way
12. バカな夢を見ようぜ

【ちょっと贅沢なゲストアーティスト】
松本ジュン(key)
Shinnosuke(tb・二人目のジャイアン)
Tomoya(sax・二人目のジャイアン)
Charan(tp)
谷崎航大(vl・THEラブ人間)
谷崎舞(vl)

Profile

つる…写真左より、笠井“どん”快樹(ds=ドラム)、秋野温(vo&g=うたギター)、神田雄一朗(b=ウキウキベース)。埼玉県鶴ヶ島市の中学校の同級生3人組で、’03年に結成。バンド名の由来は鶴ヶ島の頭文字から。アフロヘアーと70’sファッションを代名詞にお客さんを巻き込んで展開するライブパフォーマンスが話題となり、’08年にシングル『恋のゴング』でメジャーデビュー。’11年には菊地英昭(THE YELLOW MONKEY/brainchild’s)をゲストに迎えたミニアルバム『秘密』をリリース。’12年に映画『アフロ田中』主題歌『夜を越えて』をリリースし、8年間トレードマークだったアフロを卒業。’13年には結成10周年を迎え、自主レーベルSoul Mate Recordを立ち上げる。‘15年には、47都道府県2周全100公演のロングツアー『47改め94都道府県TOUR「Live&Soul」〜もう、寂しい想いはさせたくない〜』を行う。’18年春には、結成15周年記念ライブを東京・マイナビBLITZ赤坂、大阪・心斎橋BIGCATにて開催。同年9月には、これまでの活動と郷土愛が認められ、“市上初”となる“鶴ヶ島ふるさと応援大使”に任命される。同月より3周目の47都道府県ツアー『ALL TIME CLASSICS~47都道府県大会~』を行う。10月6日には、埼玉・鶴ヶ島市運動公園にて初の主催フェス『鶴フェス2019』を開催。11,000人の来場者を記録し、大成功に収める。’20年3月4日には、最新アルバム『普通』をリリースした。

鶴 オフィシャルサイト
http://afrock.jp/

Live

『普通』に加え『ソウルのゆくえ』
『僕ナリ』からも選曲する濃厚ツアー

 
『普通じゃないアルバムツアー 2020』

【愛知公演】 →公演中止/延期
▼5月16日(土)エレクトリック・レディ・ランド
【福岡公演】 →公演中止/延期
▼5月23日(土)DRUM Be-1
【広島公演】 →公演中止/延期
▼5月24日(日)広島Cave-Be

Pick Up!!

【大阪公演】 →公演中止/延期

チケット発売中 Pコード167-915
▼5月31日(日)16:30
umeda TRAD
オールスタンディング3800円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料。
 未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら

 
【福島公演】 →公演中止/延期
▼6月6日(土)福島OUT LINE
【宮城公演】 →公演中止/延期
▼6月7日(日)仙台MACANA
【香川公演】 →公演中止/延期
▼6月13日(土)DIME
【岡山公演】 →公演中止/延期
▼6月14日(日)CRAZYMAMA KINGDOM
【北海道公演】 →公演中止/延期
▼6月20日(土)SOUND CRUE
【新潟公演】 →公演中止/延期
▼6月27日(土)GOLDEN PIGS BLACK STAGE
【東京公演】 →公演中止/延期
▼6月28日(日)ヒューリックホール東京

Column1

「『バタフライ』って
 今の自分たちそのもの」
“遠回りしたって 近づいているんだ”
キャリアを飾る名曲誕生。そして
初の主催フェス『鶴フェス2019』
が開催へ! 鶴インタビュー('19)

Column2

“何度だって立ち上がる
この旅は終わることはない”
鶴が結成15周年を祝う大感謝祭
『好きなバンドが出来ました』
大阪編を前に大いに語る!
『僕ナリ』インタビュー('18)

Column3

「花を咲かせるために転がってる
時間が長い方が人生楽しくない?」
前代未聞の日本2周、47改め
94都道府県ツアーもファイナルへ
旅の思い出と『ソウルのゆくえ』
を鶴が大いに語る!('16)

Column4

「俺らは粘るよ」
ルーツと経験と3ピースの真髄を
詰め込んだ自主レーベル第2弾
アルバム『Love&Soul』
鶴がバンドの第2章と消えない
情熱を語るインタビュー('14)

Column5

脱アフロからの決意表明
棘のライブバンド道を走り始めた
鶴が梅田クラブクアトロ2DAYSを
前に語るインタビュー('12)

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはコチラ!

「インタビューって準備にめちゃ手間がかかるし、どれだけ打ち解けた関係でも何だかんだ緊張感がないわけではないし、要は大変なんですよ(笑)。でも、鶴とは本当に気楽に…いや、リラックスしてやれるというか(笑)、とっても安心感がある。それは、ちょっとやそっとのトラブルで潰れるわけがないというバンド自体の度量=ブランド力と一緒で、“鶴なら何とかなる”ってなぜか思えちゃうんですよね。今回の取材も相変わらずそうで、先の見えないコロナ禍の今にしたって、根拠もなく思わせてくれるんです。“鶴なら何とかなる”って。あと、超大手事務所に守られてるけど年に1回のリリースとツアーしかできない人生と、自分たちでいつリリースするのか、ライブをやるのか、どれだけやるのかetcを決めて、保障はないけど自由に動ける人生だったら、案外、後者の鶴みたいなバンドの方が幸せなんじゃないかと思ったりもして。だからこそ、今回のアルバムのタイトルでありテーマが『普通』だったことに、すごく頷けたんですよね」