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「フラッドはバラバラであることで尊重し合って、楽しんでる4人」
メンバー全員が作詞作曲した新たなる挑戦『HEART』を引っ提げ
20年代の幕開けを飾る東名阪クアトロファイナルシリーズに突入!
a flood of circleインタビュー&動画コメント

 大の大人が4人集まって、ザラついた音を鳴らす。その行先に何の保証も約束もないバンドというロマンを追い続ける、四者四様の生き様をブチ込んだようなa flood of circleの最新作『HEART』は、メインのソングライターである佐々木亮介(vo&g)はもちろんのこと、アオキテツ(g)、HISAYO(b)、渡邊一丘(ds)までが作詞作曲に挑戦。デビューから10年を超えてなお貪欲に進化を求め、時に闇雲な進化を疑い、ロックンロールの刀を研ぎ続けるフラッドならではのエナジーに満ちた実験作となっている。普段なら雄弁な佐々木が作品についてのステイトメントを一手に担うところだが、今回はa flood of circle の頼れるベーシストであり、tokyo pinsalocksではコンポーザーとしても活躍するHISAYOも交え、制作過程の裏エピソードから『HEART』がもたらしたバンドマジックについてまで語ってもらった。10年代と20年代をまたいで開催中のツアー『a flood of circle “Lucky Lucky Tour 2019-2020”』も、1月11日(土)大阪・梅田クラブクアトロを皮切りに、いよいよ東名阪クアトロでのファイナルシリーズに突入。a flood of circleを構成する絆と個性が今、次のディケイドに向けて軽やかに幕を切る――!


俺はみんなのキャラが=フラッドなんだよなと思ってたから


――佐々木(vo&g)くんはこういう取材をもう何度も経験してるけど、姐さん(=HISAYO・b)の稼働は珍しいよね。

HISAYO「そうなんですよ。いつもこんな大変なことをやってたんだなぁと思って(笑)」

佐々木「俺の大変さを(笑)。もちろん普段から2人で話すこともありますけど、"姐さんはこう思ってるんだ、こういう言葉が出てくるんだ"っていうのは結構新鮮ですね」

――しかも今回はエリアによって動くメンバーが変わったりもして。

佐々木「そうそう。だから名古屋には(アオキ)テツ(g)と一緒に行ったり」

――そういう試みになったのも、今回の『HEART』('19)ならではですけど、佐々木くん自身も『CENTER OF THE EARTH』('19)、『The Key』('19)のツアーに関しては、ここ最近でもベストな状態で挑めたと自負できる手応えで、今作にはそのムードが如実に反映されていて。

佐々木
「今のご時世、先にツアーのスケジュールから決まってくるんで、たまにはリリースがないツアーもいいんじゃないかと最初は思ってたんだけど、どうせやるならテツが入ったことで固まってきた今のフラッドのよさとか、みんなのキャラが立ってきたのはライブをしながらも日々感じてたので、それが表現できたらいいなと。姐さんはtokyo pinsalocksでは曲を書いてるし、ナベちゃん(=渡邊一丘・ds)はフラッドでもちょくちょく書いてきたし、『CENTER OF THE EARTH』の初回限定盤のおまけではテツと一緒に"サテツ"っていうユニットをやってみたりしたのもあって、"みんな本当は曲が書ける人たちじゃん"って分かってたので、今ならできるかなと。特に姐さんには、"ブリッジの部分だけでも姐さんにメロディを書いてもらうのはどう?"って打ち上げのノリで言ってみても、それまではベロベロに呑んでたくせに、"それはアカン!"って(笑)」

――酒の勢いでぐちゃっとできるかなと思ったら、案外そこは(笑)。

佐々木
「でも、企画盤としてみんなで書こうって言えば、断りにくいだろうと思って(笑)。絶対に楽しくなると思ったし、フラッドのファンにより面白いものを聴かせられる気がして。『CENTER OF THE EARTH』の出来がよかったから、焦ってフルアルバムを作らなくてもいいやと思ってたんで、むしろもっとチャレンジングな、それもこれまでみたいに外国人のエンジニアを呼んだりライブを掘り下げて広げるんじゃなくて、自分たちにフォーカスするやり方が今ならできるんじゃないかなと思って」

HISAYO
「自分の中での線引きというか、tokyo pinsalocksにおける私のクリエイティブな部分と、a flood of circleにおける私のベーシスト像って結構別人格で。"フラッドではこういう私"って決めて出してきたので、そこにクリエイティブな部分を持ってくると自分が分からなくなりそうで難しいかなと思ってたんですけど、確かに企画盤ということなら、そっちの私らしさを出してもいいなと。一歩目としてはいい形で出せたんじゃないかな」

佐々木
「逆にナベちゃんとかテツは曲を書き続けてるタイプじゃないので、2人の方がよっぽど身構えてたというか。テツは大阪にいた頃から歌詞も書いてて、それ用のノートも持ってたんですけど、いざフラッド用に本当に作るとなったらドキドキしてきたみたいで、一緒に作りましょうみたいな話になって。だから『Lucky Lucky』(M-2)に関しては、レコード会社の一室を借りて、2人でギターを持って膝を付き合わせて書く、みたいな原始的な作り方をして。ナベちゃんは自分でデモを完璧に仕上げてきてくれました」

――そうやって曲が集まってきて、いざ聴いたときの佐々木くんの印象はどうだった?

佐々木
「めちゃめちゃテンションが上がりました。しかもみんな2~3曲ずつ送ってきてくれて、選ばなかった曲で作っても絶対に面白くなったと今でも思うぐらい、みんなの個性が全然別モノで。最初はそれをa flood of circleっぽくする作業だとみんなは思ってたっぽいんだけど、俺はみんなのキャラが=フラッドなんだよなと思ってたから、"うわ、どうやって料理しよう?"というよりは、"もうこのままいける!"と思ってましたね」


4人で曲を書くと決めてからはライバルモードに入ってた


――佐々木くんとテツの世界観にめちゃくちゃ通じるものがあるのは、やっぱり一緒に作ったのもあるのかな?

佐々木
「テツが書いた『Lucky Lucky』って、最初は『アンコールソング』っていうタイトルだったんですよ、アンコールでやりたいっていう理由で(笑)。そこから歌詞が思うように進まないって言うんで、"もうちょっと違うことを言ってみれば? 最近はバンドをやっててどんなこと考えてるの?"って聞いたら、"何かまぁラッキー、ラッキーって感じですかね"とか言ったから、"それだ!"って導いちゃった部分もあるんですけど(笑)。自分が先に書いてた『スーパーハッピーデイ』(M-1)があったから、ちょっと似ちゃってるなとは思ったんですけど、ラッキーという言葉は彼から本当に出てきたものだから、無理やりバラバラにしなくても揃っちゃったら揃っちゃったでまぁいいかと思って、ネガティブに捉えずに作詞した感じですね」

――佐々木くんの書いた『スーパーハッピーデイ』はソロの風味との融合具合というか、ラップパートが大サビとかじゃなくて2番のAメロで来た構成はすごく面白いなと。

佐々木「後の方で入れると取って付けた感が出過ぎるかなと思ったし、4人で曲を書くと決めてからはライバルモードに入ってたから、自分の曲のキャラをしっかり立てたいなというのもあったので、やっちゃおうかなと(笑)」

――フラッドとソロを共存させる必要はないのかもしれないけど、このニュアンスが佐々木くんの芸風みたいにも最近はちょっとなってきてるよね(笑)。

佐々木
「そう、芸風(笑)。そういう意味では、ソロっぽいトラップの曲とかも全部フラッドのデモとして作ってみんなに送ってるから、反応するメンバーがいたら、ソロでやってるような曲をフラッドに落とし込んでも全然いいと思ってるんで。ただ、今はギター、ベース、ドラムっていうバンドのフォーメーションでしっかり音が入ってるから、その中に自分が好きな3連のラップっぽいフロウとかをブチ込んでるっていう」

――『スーパーハッピーデイ』や『Lucky Lucky』みたいな、いい意味でのバカっぽさというか、突き抜けて能天気な感じが歌えてる世の中じゃないと、本当は気持ちよくないよなって逆に気付かされたというか。何だか物が言いにくい世の中になったよなって思うね。

佐々木
「まさに歌詞どおりになっちゃうけど、スーパーハッピーじゃなさ過ぎた'19年っていう気がしてて。毎日、ニュースを見てても思うけど、曲における3分間とか、ライブにおける2時間を、どれだけハッピーに俺たちが過ごして、みんなのことも思えるかに全てを懸けたい、みたいな、結構真面目なモードに入っちゃってて。考えれば考えるほど曲の能天気さが逆にブーストされていく反動みたいなものは、めっちゃあるかも。俺なりに'19年を反映させてる気持ちはやっぱりあるんですよね」

――『Lucky Lucky』の、"飛び出す日は 目覚めベリグー"とか"沈んだボート でも腹はグー"とかもヤバいよね(笑)。MVもだんだん重症になっていくのが面白いし。

佐々木「いつもMVを作るときは打ち合わせで"こんなイメージで"とかいう話をするんですけど、今回は(加藤)マニくんが"閃いた!"っていうアイデアで突っ走って(笑)。迷わず飛び出してよかったですね、マニくんらしさもあるし」

――今まででのMVで一番コミカルな感じもするし。テツのパッと場を和ませるキャラクターはいいスパイスだね。

佐々木
「もちろん台本みたいなものがあって演じてるんだけど、あいつのキャラがないと見えない何かがありますよね。あれを他の誰がやってもダメなんですよね」

HISAYO
「そうそう、テツにしかできない」

――何か憎めないというか。あいつ兄弟いるのかな? 何かすごい末っ子キャラっぽい。

佐々木
「いや、一人っ子なんですよ。きっちりかわいがられて育ってきてますから(笑)」


刺激を外部に求めるんじゃなくて、内部に求められたのは初めてだったんで


――姐さんが書いた『Lemonade Talk』(M-3)は、どういう思惑があってフラッドに持ち込んだんですか?

HISAYO
「ミドルテンポで心地よくノレる感じは聴くのもやるのも好きだけど、フラッドでそういう曲ってやってないなぁと思って。普段tokyo pinsalocksでやってるのもそういう曲が結構多いし、自分っぽさを出せるかなぁと思って。あとは、みんながロックな曲を作るだろうなと思ってたから、一聴して私が作った曲だと分かればいいなと思って。何か..."かわいらしさ"みたいなもの?(笑) それをフラッドでやるとどうなるんだろうって」

佐々木
「ナベちゃんとテツは自分の世界を突き進む天然な感じがあって、参照とかは特にないんですよね。でも、姐さんの曲には批評眼があって、いろんな音楽を聴いて何を反映させるかを考えてきたのを感じて。ヒントとしてプライマル・スクリームを何曲か聴いたりもしたし、ギターのアレンジを考えるときも、例えばストロークスとかのインディー感を意識しようとか、いろんなものを取り入れてアートすることは考えてましたね。曲の持つかわいらしさはもちろん姐さんのキャラだし、少女漫画が好きな人だぞっていうのも知ってるんだけど(笑)、その一方でtokyo pinsalocksでやってることもそうだけど、アートとして先鋭的な意識が姐さんにはあるイメージだったので、俺の声なりに姐さんがやりたいと思ってるチャーミングさが出せたらいいなと思ったし、姐さんの尖ったカッコよさみたいなものもちゃんと受け取って歌詞を書いたり、ギターを弾いたりしたいなとは思ってましたね」

――あと、『スーパーハッピーデイ』や『Lucky Lucky』とはまた異なる、ぬくもりみたいなものがあるというか。

佐々木
「それを感じてこの曲の歌詞が書けた部分もあって。姐さんも"ちょっとここはニュアンスがなぁ"とか言ってくれるから、試験のように"じゃあこれはいかがですか?"ってまた見せて(笑)。そうしていくことで、自分が1から10まで書くだけだったらできなかった、20とか30まで枠が広がって書けたような気がして楽しかったですね」

HISAYO
「そのやりとりはすごい楽しかったし、佐々木亮介というクリエイターと仕事してる、作品を作ってる感じがして、"あ、そうきたか。こう返そう。こう広げよう"とか、自分の中でもアイデアがパッと広がる瞬間があったから、ギリギリまで他の2人を入れなかったというか。ある程度こっちで作り上げてから、それを2人らしく演奏してほしいなと思って。だから今回は、それぞれの曲の作り上げ方がちょっとずつ違うんですよね」

――ちなみに、姐さんは歌詞を自分で書こうとは思わなかった?

HISAYO
「全く思わなかったです(笑)。私は人生で歌詞を書いたことなくて、一生書かないとかそういうこだわりはないんですけど、書きたいと思ったときがそのときなんだろうなって。でも、文章を書くのは好きなんですよ。だから、"この歌詞に対してどう思った?"とか聞かれたら考えが湧くというか。tokyo pinsalocksのときは、Naoko(vo)が書いた歌詞に2人で向き合って、私自身も納得がいくように、実際に書いてはないけど同じように理解できるように曲を作ってるのを佐々木も分かってくれてたから、歌詞についてもいろいろ聞いてきてくれたんだろうし」

――なるほど。この曲の作詞は佐々木くんだけど、ガッツリ世界観を共有してるってことね。

佐々木
「それこそ批評ですよね。それをどう思うかということを、クリエイティブにレベル上げていく作業で。例えば、姐さんが今後フラッドでまた曲を書くことになったとき、どこかラインが違うなと思ったら"こういう言葉は?"って聞いて、それが姐さんから出てきたら、それはもう作詞なんで。もしかしたらこの感じで続けていったら、いきなり全部は書けなくても、いずれは変わってくるかもなと思いましたね」

――ライブだけでは分からないお互いの関係性とかバックボーンが見えてきて面白いね。4人の振り分け的にも、ナベちゃんとテツが実行犯、佐々木くんと姐さんが知能犯みたいな(笑)。

佐々木
「アハハ!(笑) 確かにそれはあるかもしれない」

――佐々木くんと姐さんはソロだったり他のバンドをやってる音と、フラッドがイコールじゃないから両面を持ってるタイプだけど、ナベちゃんとテツは人と音楽が一致してる印象だし。一緒に音を出してても、ルーツとか領域が違うのはバンドならでは、フラッドならではだね。

佐々木
「プロになってから出会った4人でもないし、かと言って地元が一緒の幼馴染でもない。一時期はその辺を不安視されたかもしれないけど、フラッドはバラバラであることで尊重し合ってる、それを楽しんでる4人なんで。みんなが違うことを楽しめるって、すごい理想的な世界じゃないのかなと思って。それは本当にフラッドのいいところだし、もしかしたらすごい武器なのかもって、『HEART』を作りながらすごく思いましたね」

――みんなが違うことを楽しめるのは、今の世の中で一番求められてることのように感じるもんね。

佐々木
「相手がどう思ってるかを100は分からなくても、一生懸命想像することがすごく大事だなと思うから。何かジョン・レノンの『イマジン』('71)みたいになってきちゃったけど(笑)。でも、"想像してごらん"って究極のメッセージだと思うんですよね。その気持ちでモノを作ったり、バンド活動していくこと自体をみんなに見せるって、すげぇいいことなんじゃないかと思ってますね。それも自信なかったらできなかった気がして。"今の俺らっていいじゃん!"って、ジョン・レノンを超えていくっていう(笑)」

――確かにバンド自体がグラグラしてたら、チャレンジしようとはなかなか思えないもんね。

佐々木
「そう。刺激を外部に求めるんじゃなくて、内部に求められたのは初めてだったんで。それをみんな受け止めてくれたし、"やってみよう"ってなるのはすごくいいメンバーだなと思います」


今は掘れば掘るほど面白い人たちがすぐ近くにいるんで(笑)


――最後の『Stray Dogsのテーマ』(M-5)はクレジット的には全員参加ですけど、ジャムって作るみたいな感じ?

佐々木
「これは先に3人が作り始めてくれてて、途中で俺がスタジオに入って聴かせてもらったら、他のアイデアをぽろぽろ思い付いちゃって。でも、本当にもう時間がなかったんで、姐さんにも"それ以上言わんとって、これは3人で作り切るから信じて"みたいに言われて(笑)。外で別の作業をして待ってたらスタジオの扉がガチャッて開いて、精神の時の部屋から帰ってきたベジータのようにちょっとボロボロになりながら、"できた...!"ってみんなが出てきました(笑)。それに素直に歌詞を付けた感じですね」

HISAYO
「最初はテツがリフを持ってきて、そこから続きを作っていったんですけど、サビで"WOWWOW~♪"って歌ってるじゃないですか。ああいうのって、実際に口に出して言ってみないと頭の中だけじゃ分からないんで」

佐々木
「この声の感じとか、ピッチの高さとか」

HISAYO
「っていうのを、テツとナベちゃんが佐々木になり切って...(笑)」

(一同爆笑)

HISAYO「佐々木どころかマネージャーも、入ってこようとしたら"今はまだ聴かん方がいい! 3人だけにして"って言って締め出して(笑)。歌いながら作っていく作業だからいっぱい失敗もするし、ヘンな歌い方にもなるし。それはもう...恥ずかしいし見せられない(笑)」

――何だか『Stray Dogsのテーマ』=鶴の恩返しみたい(笑)。

(一同笑)

HISAYO
「タイミング的にも佐々木が『ARABAKI ROCK FEST.19』に1人残って私たちは先に帰ったときだったんで、"佐々木も頑張ってライブしてるしうちらもやろう! 佐々木の手を借りなくてもできるでしょ!!"みたいな」

佐々木
「俺と姐さん2人で喋ってるときの今みたいなグルーヴがあったり、あとはそれぞれの組み合わせがあって、俺がいないときの3人のグルーヴがちゃんともあるのも嬉しかったりして」

HISAYO
「テツもギターが自分しかいないから、結構自信満々にアイデアを出してくるというか。"いや、それは"って言ってくる人がいないから(笑)、責任を持ってやってる感じもありましたね」

――『HEART』は思った以上にバンドにもたらすものがあって、作ってよかったですね。

佐々木
「俺も今、"あ、そうなんだ"って思いました。このインタビューで初めて知った(笑)。今回のプロモーションはホントそういうことばっかりなんで楽しい」

HISAYO
「だって、この話はテツが横にいたらしないもんね」

佐々木
「自分とバンドに距離を置いて考えるというよりも、その要素自体がバンドだと思えてくると、可能性と組み合わせが無限に増えるから。2:2で書いてもいいかもしれないし、もちろんいい曲を作らないと意味はないんだけど、その"いい"が生まれるきっかけが増えるのはすごくいいことだなと。それに気付けたのはありますね」

――姐さんは『HEART』ができたときにどう思いました?

HISAYO
「こういう機会を与えてもらってよかったなって思います。リスナーとしても1人ずつに注目して聴くことは今まではあまりなかったかもしれないし、私のキャラを知ることもなかっただろうし(笑)」

佐々木
「ソロ活動が増えていくことによって、フラッドのファンの人が不安になる面もなくはなかったと思うんですけど、まぁフラッドもこれだけのことがやれてるし大丈夫っていうところで、俺自身も安心してます(笑)。他にもたくさん曲を作ってるし、周りの目を気にして作品を出すか出さないかは決めてないんだけど、まぁみんな分かってくれてるでしょみたいな感じで、余計な心配をしないようになってきたというか。今はがむしゃらに一生懸命やるというよりは、自分たちの状況を変えるために、楽しめることからやっていこうみたいな感じですね。今は掘れば掘るほど面白い人たちがすぐ近くにいるんで(笑)」


今の私たちが演奏することでお客さんもきっと安心するだろうし
"これがフラッドなんだ"って再確認してもらえたら嬉しいなって


――ボーナストラックは、デビュー10周年企画で1stアルバム『BUFFALO SOUL』('09)と2ndアルバム『PARADOX PARADE』('09)の再現ライブを新宿LOFTでやったときの音源ですが、当日を振り返ってどうでした?

HISAYO
「あの...大変でした(笑)。私とテツは当時はメンバーじゃないから、弾いてないアルバムなんで」

佐々木
「だから再現じゃないもんね(笑)」

HISAYO
「普段ライブで全くやってない曲もあったし、『CENTER OF THE EARTH』のツアーからのいい流れもあるのに、急にこのライブだけクオリティが落ちたり、借りてきた猫みたいにはなりたくなかったから。ただ、何回かやって慣れていくんじゃなくて、1回でいいところまで持っていかなきゃいけないから、めっちゃ練習しました。ずっと演奏してきたかのようにプレイしたいと思ってたし、チケットも即完して思い入れの強いお客さんが来るだろうから、その期待にも応えたかったので。今の私たちが演奏することでお客さんもきっと安心するだろうし、"これがフラッドなんだ"って再確認してもらえたら嬉しいなって。この日に向けての想いはかなり強かったです」

――逆に佐々木くんはどう? これだけ過去の曲を集中してやることもあまりないと思うけど。

佐々木
「全っ然覚えてなかったです(笑)。『BUFFALO SOUL』を出した年にギタリストの失踪があって、そのドタバタの中で『PARADOX PARADE』を出してるので、その頃はツアーの本数も今ほど多く打てなかったから、俺もナベちゃんも懐かしさというよりはセルフコピーするぐらいの感じだったんで、むしろフレッシュだったし(笑)。あと、懐かしさという点でよかったなと思ったのは、当時の担当ディレクターがあの頃のTシャツを着て観に来てくれて」

――うわぁ〜エモい!

佐々木
「当時からアルバムの曲順も、"ライブでこのままやってもきっといいライブになるよね"って相談しながら作ってたんで、10年前に話してたことを初めてやって、それを観て"間違ってなかったね"って言ってくれて...。本当にお世話になったなってしみじみ思ったのもあるし、いいアルバムだったんじゃないかなって改めて思えたというか」

――めっちゃいい話。俺の大好きな『博士の異常な愛情』(M-11)も入ってるし(笑)。

佐々木
「嬉しい。この曲に思い入れはめっちゃある。姐さんが入って最初のライブの1曲目がこれだったんですよ」

HISAYO
「そのときのライブも、LOFTでやったからね」

――いろんなものが詰まってますね、『HEART』には。

佐々木
「今回のアーティスト写真も、デビュー10周年のときにRUDE GALLERYと一緒に作った革ジャンをみんなで着てるし。最初は俺、10周年をあんまり打ち出したくないなと思ったんですよ。でも、いざやってみたら、10周年だからこそみんな楽しんでくれてたから、よかったなって」

――ちなみに『HEART』というタイトルは、心臓には4つの部屋があるところから来てると。

佐々木
「ってテツが言ってました(笑)。"何かタイトルを考えてみてよ"ってテツにさらっと振ってみたら、"そんなエモいタイトル付けるんだ"、みたいな」


20年代のバンド像みたいなものを模索したいと思ってる


――そして、1月11日(土)大阪・梅田クラブクアトロを皮切りに、年をまたいだリリースツアーも東名阪クアトロでのファイナルシリーズに突入すると。ここにきてライブも磨かれてきた感覚があるんじゃない?

佐々木
「気持ち的なところも結構デカいと思ってて、今はエフェクターも1つも使ってないし、どんどんシンプルになってきてますね。それこそレコーディングでもクリックを聴かないみたいな方向に今はなってて。自分がロックバンドだからできることとか、シンプルなカッコよさにフォーカスしてる感じがあって、ライブもあんまり余計なことを考えずにできるようになってきてる。もちろんバンドのグルーヴがよくなってるのもあるけど、心の負担が減ってきて、自分が前よりよくなってる。だから呑んでても調子がいいし(笑)。ってな感じで、ライブをやるのが楽しいな、みたいに思います。ずっとライブをやってきて、いい意味で当たり前のものになってきてるから、そういうタフさみたいなものが身に付き始めてるような気がしますね。進化してきてるかなって」

HISAYO「"a flood of circleのライブはこういうものだ"っていうイメージがみんなの中で統一されてきたのはあって。例えば、前はセットリストも"あれもやりたい、これもやりたい"で意識がいろんなところにいっちゃってたから、もうちょっとシンプルに一面だけを"ズバッ!"と観せるのもいいよねって。ツアーをやりながら仕上げていくというよりは、初日から仕上がってるようになってきたから。これからもっと研ぎ澄まされるだろうし」

――こんなにいい話ばかり聞いてたら、何かそろそろ事件が起きてほしくなるね。

(一同爆笑)

――昔はリリースするたびに事件があったのに、もうないやん最近(笑)。

佐々木
「確かに毎年、絶対に何か起きてたから、ぴあ関西版WEBではいかに大変だったかをずっと語り続けてきたから(笑)。だからって事件が起きてほしいとは思ってないけど(笑)、丸くぬるくなっていくのは違うなとは思ってるから、メンバーが仲良くてもいいけど、みんなで超えなきゃいけない高い壁とか、もっと真剣に向き合ってもいいかもしれないなとは思う。じゃあ、やっぱり事件は起こってもいいか!(笑)」

――アハハ!(笑) フラッドが前に進むための事件ならね。

スタッフ
「ブレイクという事件でも」

佐々木
「売れちゃいましたねって(笑)」

――いいね! それもアリだよね。じゃあ最後に、年明け早々に再開するリリースツアーのファイナルシリーズに向けて、それぞれに聞いて終わろうかなと!

HISAYO
「このツアーで感じる新たなことが自分の中に芽生えるのが楽しみだし、また新曲ができて、『HEART』の続きをやっていくのも楽しみにしてほしいし。あとはもう健康に気を付けてやれれば(笑)、それで満足です私は」

佐々木
「20年代が始まる意識が俺は結構あって。やっぱりバンドのカッコよさは普遍的なものだし、よく言えば時代が関係ないものになってると思うけど、悪く言えば時代にハマってないとも思ってて。でも、俺はミーハーだから、時代にハマってる音楽も大好きなので(笑)。そういう意味では、20年代のバンド像みたいなものを模索したいと思ってるので。今、自分がソロでやってるトライとバンドが次の10年で混ざってくるかは俺も分からないけど、メンバーの面白さにフォーカスするっていう1つ目のチャレンジが『HEART』ではできてるし、このモードで次に作るアルバムがどんなものなのか自分でもワクワクしてるので、ペースはゆるめず突き進んで行こうかなと思ってます!」

――フラッドの'20年がどうなるか楽しみだね。いい事件が起きますように(笑)。


Text by 奥"ボウイ"昌史






(2020年1月 9日更新)


Check

Movie

佐々木(vo&g)とHISAYO(b)の
グルーヴ高まる動画コメント!

Release

メンバー各自が作詞作曲した楽曲+
1st&2ndアルバム再現ライブ音源!

 
Mini Album
『HEART』
発売中 2500円(税別)
Imperial Records
TECI-1656

<収録曲>
01. スーパーハッピーデイ
02. Lucky Lucky
03. Lemonade Talk
04. 新しい宇宙
05. Stray Dogsのテーマ

-Live Bonus track-
06. シーガル
07. Buffalo Dance
08. エレクトリック ストーン
09. 僕を問う
10. ラバーソウル
11. 博士の異常な愛情
12. Paradox
13. アンドロメダ
14. 噂の火
15. 水の泡

Profile

ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より渡邊一丘(ds)、佐々木亮介(vo&g)、アオキテツ(g)、HISAYO(b)。’06年結成。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、多種多様な音楽的要素を吸収しながらAFOC流のロックンロールに昇華させたサウンドとメロディ、佐々木の強烈な歌声が話題となる。’07年、初音源となるミニアルバム『a flood of circle』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘07』に出演。’09年には1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たすものの、メンバーの失踪や脱退を経験し、’10年にはHISAYOが加入。以降も精力的にライブとリリースを重ね、結成10周年を迎えた’16年にはベストアルバム『THE BLUE -AFOC 2006-2015-』をリリース、初の海外公演を行ったほか、主催イベント『A FLOOD OF CIRCUS』をスタート。’18年2月にはサポートギタリストのアオキテツが正式加入し、2度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』をリリース。結成12年目にしてオリコンウイークリーチャート最高位を記録する。その後も、同年11月にはUNISON SQUARE GARDEN田淵智也(b)プロデュースのトリプルAサイドシングル『13分間の悪夢』、’19年3月には最新アルバム『CENTER OF THE EARTH』、同年4月にはTVアニメ『群青のマグメル』エンディングテーマとして書き下ろしたシングル『The Key』をリリース。11月6日にはメンバー全員が作詞作曲に挑戦したミニアルバム『HEART』をリリースした。

a flood of circle オフィシャルサイト
http://www.afloodofcircle.com/

Live

ファイナルシリーズは東名阪クアトロ
'20年一発目のライブは大阪から!

 
『a flood of circle
“Lucky Lucky Tour 2019-2020”』

【千葉公演】
▼11月14日(木)千葉LOOK
【北海道公演】
▼11月29日(金)BESSIE HALL
【宮城公演】
▼12月1日(日)仙台MACANA
【広島公演】
▼12月6日(金)広島Cave-Be
【福岡公演】
▼12月7日(土)LIVE HOUSE CB

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード159-971
▼1月11日(土)18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3900円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら


【愛知公演】
チケット発売中 Pコード159-900
▼1月13日(月・祝)18:00
名古屋クラブクアトロ
オールスタンディング3900円
ジェイルハウス■052(936)6041

チケット情報はこちら


【東京公演】
チケット発売中 Pコード159-737
▼1月17日(金)19:00
Thank you, Sold Out!!
▼1月19日(日)18:00
渋谷CLUB QUATTRO
オールスタンディング3900円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら

 

Column1

「死ぬまでやるのがロックバンド
 だと思ってるんで」
時代を追いかけるのではなく
その先に行くために――
続いていくa flood of circleの
歪で美しいドキュメンタリー
『CENTER OF THE EARTH』
インタビュー('19)

Column2

「フラッドはあそこから始まった
って言われるツアーになると思う」
最強の宣戦布告を手に
いよいよワンマンシリーズ突入!
『a flood of circle』
全員インタビュー('18)

Column3

「俺たちにとっては、もうここで
辞めても悔いがない10年じゃなくて
悔しい悔しいの10年なんですよ」
a flood of circleのロックンロール
サバイバルな10年を刻んだ初ベスト
『THE BLUE』インタビュー('16)

Column4

暴れるのは誰にでも出来る
踊るのはセンスがないと出来んから
a flood of circleと女王蜂が
神戸で激突! 『Kansai college
chart LIVE!』レポート('16)

Column5

大きな愛とプライドを込めた
これぞa flood of circleな決意表明
“生き残る”より“勝ち残る”未来を
見据えて吼える『花』を語る('15)

Column6

他にもあります歴代インタビュー!

 
『ベストライド』('15)
特設ページはコチラ!
『GOLDEN TIME』('15)
特設ページはコチラ!
afoc VS THE NOVEMBERS
京都磔磔レポート('14)

特設ページはコチラ!
『I'M FREE』('13)
特設ページはコチラ!
『FUCK FOREVER』('13)
特設ページはコチラ!
『LOVE IS LIKE A
 ROCK'N'ROLL』('12)

特設ページはコチラ!

 

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはこちら!

「ロック界随一のワーカホリック男と言ってもいい佐々木亮介ですが(笑)、’19年はフラッドとしてもフルアルバム『CENTER OF THE EARTH』にシングル『The Key』、ソロとしてもデジタルシングル3曲を経ての2ndアルバム『RAINBOW PIZZA』を出しておいての、今回のミニアルバム『HEART』ですから(言うてたら’20年も2月にTHE KEBABSとして1stアルバムを出すそうです(笑))。もちろんツアーやイベント出演もありまくりで、もはやどのタイミングでどれを作ってんねんという驚異もありますが(笑)、どの作品にも今と志と音楽愛を感じるのは、やっぱり信頼できる。そんな彼だからここ1年は今まで以上に各所でいろいろとプロモーションもしてきたでしょうが、今回はHISAYO姐さんも参加と珍しいパターン。インタビュー中にも言ってましたが、バンドってその場に誰がいるかで発言の流れが変わっていくので、それも面白くて。姐さんがいてくれたことが、『HEART』の理解を深めるのに大いに貢献していたなと。そして、僕が観る’20年初の、20年代の最初のライブはフラッドのワンマン。こりゃ景気のいい1年/10年になりそうです!」