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時代を追いかけるのではなく、その先に行くために――
続いていくa flood of circleの歪で美しいドキュメンタリー
『CENTER OF THE EARTH』インタビュー&動画コメント
「死ぬまでやるのがロックバンドだと思ってるんで」 時代を追いかけるのではなく、その先に行くために―― 続いていくa flood of circleの歪で美しいドキュメンタリー 『CENTER OF THE EARTH』インタビュー&動画コメント
再生するや否や、耳をつんざくギターリフからバンドの歴史を裏切ることなく超えていく、これぞa flood of circleなロックンロールアルバム『CENTER OF THE EARTH』。アオキテツ(g)の正式加入後初のアルバムとなった今作は、海外のトレンドにアンテナを張りつつ、幅広い音楽的嗜好を感じさせてきた近年の佐々木亮介(vo&g)のソロワークスとは異なり、徹底的にバンドで、圧倒的にロックンロール。13年という歳月をかけて今、運命の4人が共に音を奏でる歓びと、ロックバンドの生のグルーヴを爆発させる躍動感×疾走感というa flood of circleの勝利の法則を刻み付け、ここが世界の真ん中だと言わんばかりに雄叫びを上げる、フラッドの新たな座標軸となっている。そんな新作に至るバンドの成長過程から、非常に興味深い曲作りの“ボケ×ツッコミ”論まで、ラッパーからYouTuberまでを引き合いに出しながら多岐にわたる話を聞かせてくれた、佐々木亮介インタビュー。時代を追いかけるのではなく、その先に行くために。自分なりのやり方で己の道を切り拓く、全ての同志たちにこのインタビューを捧ぐ――。
「そうなんですよね。本当は曲を書いて詞を書くなんて、恥ずかしい行為だと思うんですよ。基本的には教室の隅でポエムを書いてるのと全く一緒だと思う(笑)。それを発表する勇気を持つには、やっぱり天然ぐらいのボケで曲を書かないとダメだなって最近は思いましたね。そういう意味では、"俺が書く曲をa flood of circleとしてどう捉えるか"という批評を、メンバーがしてくれてる感じがして。"a flood of circleに必要かどうか"は彼らが判断してくれる。だから、ボケやすいのかもしれないです。ツッコんでくれるし、選んでくれるから」
「アハハ!(笑) でも、今はそれが自然なんじゃないかとも思ってて。ラッパーもすごい幅のある曲をみんなやってるし、バンドっぽい音だとしたら、例えば、川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女。、ジェニーハイ/他・vo,g)くんとかはすごい顔の違う音楽をいくつもやってて。米津玄師くんとかを聴いてても、バンドっぽい曲もあればピアノだけのものもあって、そういう気分はよく分かるなって。それは今のラッパーとかYouTuberの感覚とも近いような気がして、やりたいことはバンバンあるし機材も揃ってるから、1年に1枚とか言ってないで、YouTuberは毎日更新する。ラッパーも年に5作ぐらいミックステープを出すヤツが普通にいるし、そのペースが今は自然で、あんまり"俺はこうだ!"って思い込まない方が健康的かなって。人間っていろんな顔があるじゃないですか。高校生だってTwitterとかInstagramのアカウントをいくつも持ってるヤツがいるし、それが普通の感覚になり始めてるんじゃないかな? キャラがバラバラ過ぎていろんな価値観を認めない世界になったらまずいですけど、俺にとって音楽はアカウントじゃなくて表現だから。それをポップなものとして伝えたいし、いろんな顔があることを前向きに認め合うことができれば、うちのバンドみたいに出身地や性別や年齢がバラバラでも、1つの理想を持てるんで。だから、あくまで"バンドありき"って言ってるのはあるんですけど」
「後者かもしれないですね。最近思い出したんですけど、中・高生時代に軽音部とかに入って、だいたいギターから始めるじゃないですか。そうしたら、どうすればロックバンドっぽいかが、だんだん分かってくる。ただ、もう一方で当時、自分がリアルタイムで聴いてたKICK THE CAN CREWとかRIP SLYME、あと、リンプ・ビズキットとかも出てきたけど、"この感じ、超好きだけど、どうやっていいか分かんない"って、やるものとしては切り離して考えてきちゃった気がして。a flood of circleが始まってからは、よりバンドの世界にどっぷり浸かっていったんですけど、『花』('15)を作ったぐらいのときに、バンドの新曲を書いても新鮮に感じないところまで1回いっちゃったんですよね。で、曲ができなくなる。そのジレンマを超えてカニエ・ウェストとかを聴いたときに、"何でもアリでいいんじゃないか?"と思って、iPhoneとかGarageBandとか、そっちの世界の音にタッチしやすい環境が時代的にもだんだん整ってきて、"あ、できるかも!"みたいなワクワク感が爆発して。そこでさらに、ビートルズとかが好きだった気持ちを思い出して、"確かにもっと昔から何でもありだったじゃん!"って」
「その辺は自分でもちょっと気にしたバランスだったかも。a flood of circleって、良くも悪くも超民主主義なんですよ。やっぱり聞いちゃうんですよね、みんなの声を。"着いてこい!"だけじゃ前に進めないけど、みんなの意見を聞き過ぎたら聞き過ぎたで、"着いてこいって言ってくれよ"みたいになるんで(笑)、そこもバランスなんですけど。みんなが気持ちよくプレイできるもの=生のバンドのグルーヴだと思ったし、それを全開にした上で、例えばコーラスがチャンス・ザ・ラッパーっぽかったり、ラップっぽいフロウだったり、今の自分のモードとバンドの音のハマるポイントを探してミックスしていくっていう」
――ロックンロールなんだけど、言葉の乗せ方がラップっぽいっていう。『Backstreet Runners』(M-4)とかは特にね。そう考えると、今までやってきたことをトレースしてるのとは次元が違う、改めてa flood of circleの武器というか、刀を研ぎ直すじゃないけど。
「"その先"っていうのはすごく意識しましたし、それで自分に決着を付けた感じですね。a flood of circleも成長過程だから、今すぐ"俺たちはこうです!"っていう答えを出す必要もないと思ったし、俺とテツのギターも混ぜ合わせてる時期というか、どのフレーズがOKかを一緒に考える過程にいるし、このアルバムでは本当にドキュメンタリーを見てもらってる感じですね。次のアルバムでは何か1つ答えを出したいなとも思うけど、今はその成長過程を楽しんでるし、成長過程じゃなきゃできない曲があると思ったんで、それをバッチリ切り取ることに尽力した感じですかね」
――長期スパンで物事を見てるからこその今作というか。
「テツが入ってきたってことは...メンバーが死ぬまでやるのがロックバンドだと思ってるんで一応、結婚みたいな感じで(笑)。前まではやっぱりサポートだったから、"このアルバムで何か1つの答えを出さなきゃ!"って焦ってたところもなくはないけど、今はその辺はちょっと能天気になれてる感じなので。ナベちゃん(=渡邊・ds)のドラムを見てても、眉間にしわを寄せてクリックに合わせて叩くよりも、レコーディング前に何となく叩いてるときの方がめちゃくちゃ音がいい。彼はやっぱり野獣的なところがあると思うので(笑)、それが活きるようにしたかったのはデカいですね。昔から、"a flood of circleは=ナベちゃんだ"って言ってきたんですけど、最近は"ナベちゃんとテツだ"になってきましたね。フラッドにはあの2人の爆発力がないと意味がないと思うんで。ただ、彼らは真面目だから、クリックとかで録り始めちゃうと"レコーディングってこういうもんだよな"と思っちゃうんで、その枠を改めて取っ払えたら強いなぁっていう今の気分ですね」
「そう! だから、『ハイテンションソング』っていう素直さとかビースト感は、やっぱりナベちゃんじゃないと思い付かない(笑)。ワンマンツアーのタイトルの『a flood of circle Tour CENTER OF THE EARTH〜アーユーハイテンション?〜』はテツが付けたんですけど、これもヤバいなと思って(笑)」
「『十五少年漂流記』(1888)とかも書いてるジュール・ヴェルヌの本(原題『地底旅行』(1864))からで、昔から好きな言葉ではあったんですよね。この間、THE PINBALLSの古川(貴之・vo)さんからも"俺もこれ使いたかった〜!" みたいに言われましたけど(笑)、歌詞を書いていくときに...まぁずっと言ってることですけど、ロックンロールバンドがメインストリームにいない時代にバンドを始めてるし、ウエノコウジ(ex.THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、The HIATUS、Radio Caroline/他・b)さんとかと、"今、ロックンロールとか言って生きていける世界じゃないよな"とか話すんですけど、それを分かった上で次に行きましょうよっていうのもあるから、『CENTER OF THE EARTH』は宣言ですよね。俺たちがやってることもそうだし、スポーツでも何でも、今、自分が王者じゃない人も、自分のやり方が間違ってないと信じていればそこにたどり着ける道はあると思うんで。自分のやってることが『CENTER OF THE EARTH』だって言い切れるヤツは、まだ逆転の可能性がある。そこに懸けたいし、そういう野望を持ってるまだ見ぬ仲間がいるような気がしてるんで、そういう人たちに語りかけてる言葉でもあります」
「フラッドにはもう10回以上インタビューしてきましたが、今回の話は刺激的だったな~。佐々木くん、全然『関ジャム』とかでコメンテーターできるわ(笑)。曲作りの"ボケ×ツッコミ"論も最高で、リリースインタビューの範疇を超えた面白い話になりました。奥が深いぜ佐々木亮介! そして、ここ最近の佐々木くんのソロワークスからすると、ある意味、意外な出来だった今回の『CENTER OF THE EARTH』。個人的にはもっとソロと近い風味が出るのかと思いきや、むしろよりフラッドな、ロックバンド然とした作品になってビックリ。そこには何よりバンドマンとして生きる歓びや、メンバーという猛獣をコントロールする司令塔としての役割や(笑)、バンドを運営するマネージメント的な観念や、佐々木くん本来の人としての優しさや、いろんなものを感じつつ。巡り巡って"やっぱりバンドが好き"となった終盤の話も、何だかグッときたな。これからも同志であるフラッドと、このインタビューを読んでくれた同志であるあなたと、その先を見るまでは辞められないな。ちなみに、フラッドは何気に今年でデビュー10周年なので、何かしらその手の展開も今後はあるのかなと。年表とか当時のアー写とかMVを見ながら、酒呑んでトークライブとかしたら面白そうやな~(笑)」
Album 『CENTER OF THE EARTH』 発売中 3800円(税別) 【初回限定盤特典CD付】 Imperial Records TECI-1621 【通常盤】 発売中 3000円(税別) Imperial Records TECI-1622
<収録曲> 01. Flood 02. Vampire Kila 03. 光の歌 04. Backstreet Runners 05. Youth 06. ベイビーそれじゃまた 07. 美しい悪夢 08. ハイテンションソング 09. Drive All Night 10. スノードームの夜 11. 夏の砂漠 12. Center Of The Earth
<特典CD収録曲> サテツ(佐々木亮介&アオキテツ) 01. Champagne Free Flow 02. LALILA(あるいは気を失うまで) 03. Golden Dead Cigar
TVアニメ『群青のマグメル』に 書き下ろしたシングルを発売へ!
Single 『The Key』 New! 4月24日(水)発売 1300円(税別) Imperial Records TECI-678
<収録曲> 01. The Key 02. Backstreet Runners Ⅱ 03. 群青日和(東京事変cover) 04. The Key -群青のマグメルver.-
Profile
ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より、HISAYO(b)、佐々木亮介(vo&g)、アオキテツ(g)、渡邊一丘(ds)。’06年結成。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収しそれをAFOC流のロックンロールとして昇華させたサウンドと、佐々木の強烈な歌声、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。’07年、初音源となるミニアルバム『a flood of circle』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘07』にも出演。’09年には1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たすものの、メンバーの失踪や脱退を経験し、’10年にはHISAYOが加入。以降も精力的にライブとリリースを重ね、結成10周年を迎えた’16年にはベストアルバム『THE BLUE -AFOC 2006-2015-』をリリース、初の海外公演を行ったほか、主催イベント『A FLOOD OF CIRCUS』をスタート。’18年2月にはサポートギタリストのアオキテツが正式加入し、2度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』をリリース。結成12年目にしてオリコンウイークリーチャート最高位を記録する。同年11月には、UNISON SQUARE GARDEN田淵智也(b)プロデュースのトリプルAサイドシングル『13分間の悪夢』を、’19年3月6日には、最新アルバム『CENTER OF THE EARTH』をリリース。4月24日(水)には、TVアニメ『群青のマグメル』エンディングテーマとして書き下ろしたシングル『The Key』をリリース予定。