「何年か後に“フラッドはあそこから始まったよね”って 言われるツアーになると思ってる」 最強の宣戦布告を手に、いよいよワンマンシリーズへ突入! 『a flood of circle』全員インタビュー&動画コメント
アルバムの冒頭、凄まじい熱量で幕を開ける『Blood & Bones』に刻まれた“Blood & Bones 焼け野原でついに 出会ったね俺たち”の1行に、全てが込められている。初代ギタリストが失踪して以来、フラッドを支えたサポートギタリストは12 人。数え切れない紆余曲折と痛みを越えてついに結び付いた、4人のa flood of circle。そんなアオキテツ(g)の正式加入、旧友UNISON SQUARE GARDENの田淵智也(b)のプロデュース、リアーナなどを手掛ける世界屈指のエンジニア、ザビエル・ステーブンソンが前作『NEW TRIBE』(‘17)に引き続き参加とトピックは数あれど、ひとたびこのアルバムを再生すれば、そんな予備知識がぶっ飛ぶぐらいの生命力に満ちた、ここにしかない音楽が鳴り響く。二度目のセルフタイトルを冠した傑作ロックンロールアルバムにして気高き宣戦布告『a flood of circle』を引っ提げた、『a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-』もいよいよワンマンシリーズに突入する最強の4人に聞いた、まばゆき現在地。そう、a flood of circleはここからまた始まる――。
必然でしたね。この1年半っていう時間は
――まずは久々に4人のa flood of circleを見れたぞというところで。でも、前科があるからな~このバンドは(笑)。
佐々木(vo&g)「この3年、サポートギタリストに(藤井)清也(The SALOVERS)がいて、爆弾ジョニーのキョウスケがいて...もちろん彼らはフラッドに情熱を持ってくれてたけど、自分の夢もちゃんとあるタイプのミュージシャンだったんで。例えば清也は、ソロで音源をリリースしたり絵を描いたり、モデル業もやってたりと自分のスタイルで生きてる。キョウスケはa flood of circleをやりながら"バンドっていいな"と改めて思ってくれたみたいで、爆弾ジョニーをもう1回やることになった。そういう意味では、俺らも背中を押すしかないというか。じゃあ自分たちのことを考えたとき、今度はもう"a flood of circleに全てを懸けられる人が欲しいね"っていうのは話してて。ゼロから出会えないかなというところで公募して、テツが応募してきたっていう流れで」
佐々木「確かに。オーディションでテツを選んだ理由は結構それかもしれないですね。テツは外側にいて余白を弾くんじゃなくて、a flood of circleの中にいる感じ。"フラッドのギターに絶対しっくりくるでしょ!"っていう感覚は当時からあったと思う。あと、a flood of circleはいわゆる普通のロックンロールじゃないこともやりたがるバンドじゃないですか? そういうところに一緒に手を伸ばそうぜっていうのは今回トライしたところだと思います」
――『再生』はもとより、フラッドの王道を力強くもメロウに鳴らした『Leo』(M-3)、ロックのヘヴィなビートに強烈なメッセージを乗せてまくし立てるような『One Way Blues』(M-4)『Where Is My Freedom』(M-8)もしかり、フラッドの戦い方で突破するんだっていう意志を今作からは改めて感じるし、とにかく生命力に溢れてるというか、本当に一枚岩になった感じが。
佐々木「弥吉さんとかいしわたり淳治さんには斜め上のアイデアが欲しくてオーダーしてる部分があったし、"バンドにこれが足りないんじゃない?"っていうのを客観的に見てポンッと投げてくれた。今まではそれが面白かったし、ついていくのが大変だったんですけど、田淵さんは本当に等身大のa flood of circleを知ってるというか、同じものを見てきたから無茶振りの種類がちょっと違って、できるかできないかギリギリのいい線で投げてくれてる感じがして。『ミッドナイト・クローラー』は元々はテンポがすごく遅くて余白だらけの曲だったんですけど、田淵さんが"自分がフラッドに入り込める曲はこれだ!"って選んでくれたんですよね。逆に『Where Is My Freedom』とかは、"ああいう感覚を意識して取り込めてる日本人はマジでいないと思うから、このままでいいよ"って全く手を着けようとしなくて。本当にお互いがイーブンな関係でプロデュースしてもらったのは初めてだったし、燃えますよね。イーブンだからこそ、この人の前で恥はかけない、下手なプレイはできないなって」
――今作のシンプルでエッジの立ったギターの存在感は本当にすごいし、『Leo』から『One Way Blues』の流れというか落差というか...こんなバンドやっぱり他にはいないなって。
佐々木「今年はケンドリック・ラマーがフジロック、チャンス・ザ・ラッパーがサマソニみたいに、ロックフェスでもラッパーが一番デカいステージに立つこの時代を無視する手はないでしょと思ってて。a flood of circleなりの進化というよりは...この世界にはいろんな音楽があるっていうことを、見て見ぬフリをするのはちょっと違うなと思ったので。ちゃんと宣戦布告できるアルバムにしたかったんで、そこをキャッチしてもらって嬉しいですね」
――そして、今作は『a flood of circle』というタイトルで。セルフタイトルって"これが俺たちです!"っていう作品に付けられるから、1stアルバムだったりベスト盤だったりすることが多いけど、聴き終わった後にこのタイトルにも頷ける、まさに代表作になったよね。テツの存在も大きかったと思うし、次のアルバムのときもいてほしいね(笑)。
(一同爆笑)
テツ「任せてください(笑)」
――ツアーの途中経過としてはどうですか?
佐々木「めちゃくちゃいいツアーになってます。いずれは『A FLOOD OF CIRCUS』っていうフェスごと全バンドで巡業したいんで、まだ夢の途中っていう感じではあるんですけど、30を過ぎて、バンドを10年以上やってきて、前より夢を見てること自体がすごくいいなって思う。今は一歩一歩進んでいくのが本当に楽しみなんで、新しい出会いもいちいち嬉しいというか」
佐々木「ザブとは政治の話とかも普通にしてたんですけど、今って世の中がどんどん不自由になってる気がして。例えば、ザブにとっては携帯の指紋認証でも何か情報を抜き取られてるんじゃないかと感じちゃうとか、Twitterで『ドラゴンボール』について書いたら即その広告が出てきたり(笑)。便利だけど息苦しさを感じることが多いよねって話してるときに、まさに『Where Is My Freedom』のレコーディングをしてたので(笑)。今回は世界的に見てもスタンダードな、今歌うべき、訴えるべきことが書けてる気がするんですよ。ちょっとでも不自由だなとか、世知辛いなとか、何かネガティブな感情を抱えて生きてる人には絶対にフィットすると思うし、それをポジティブに転換するパワーがあるアルバムだと思うんで、今聴くしかないでしょって言いたいし。ライブに関しては、テツが入って初めてのツアーだし、何年か後に"フラッドはあそこから始まったよね"って言われるツアーになると思ってるんですよね。だから、今観ておかないと後悔すると思うし、今観ておくと後で自慢できますよっていう気でやってます!(笑)」
渡邊「今回のアルバムは、みんながそれぞれの持ち場で自分の能力を最大限に発揮できたと思っていて。ザブも田淵さんもそうだし、ディレクター、マネージャー...スタジオにいる全員が、足し算じゃなくて掛け算ぐらいの感覚でできた。だから、みんなの意志、チームで作ったアルバムだと思っていて。そういう意味でも、a flood of circleの新章の幕開けにふさわしい1枚というか、こんなにも濃い作品ができて、俺はちょっと感動したというか。あと、奥さん(=筆者)が言ってくれたみたいに、好きなアルバムのツアーには行きたいもんですから。俺もこのアルバムが好きなんで、最後までいいツアーになると思います!」
Album 『a flood of circle』 発売中 3000円(税別) Imperial Records TECI-1577
<収録曲> 01. Blood & Bones 02. ミッドナイト・クローラー 03. Leo 04. One Way Blues 05. Summer Soda 06. 再生 07. Lightning 08. Where Is My Freedom 09. Rising 10. Wink Song
Profile
ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より、HISAYO(b)、アオキテツ(g)、佐々木亮介(vo&g)、渡邊一丘(ds)。’06年結成。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収しそれをAFOC流のロックンロールとして昇華させたサウンドと、佐々木の強烈な歌声、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。’07年、初音源となるミニアルバム『a flood of circle』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘07』にも出演。’09年には1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たすものの、メンバーの失踪や脱退を経験し、’10年にはHISAYOが加入。’12年にはレーベルを移籍。以降も精力的にライブとリリースを重ね、結成10周年を迎えた’16年にはベストアルバム『THE BLUE -AFOC 2006-2015-』をリリース、初のイギリス公演を行ったほか、主催イベント『A FLOOD OF CIRCUS 2016』を実施。’17年1月にはアルバム『NEW TRIBE』を、同年8月にはブルースの聖地メンフィス・ロイヤルスタジオでレコーディングした佐々木亮介の初ソロアルバム『LEO』をリリース。’18年2月にはサポートギタリストのアオキテツが正式加入し、2度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』をリリースした。
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Column1
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「フラッドと言えば“ソリッドなロックンロールバンド”というのが世の大半のイメージかもしれませんが、その地下水脈には極めて魅力的なフロントマンであり、生粋のミュージックラバーである佐々木くんの音楽的なアンテナが立っていて。ワールドスタンダードなサウンドを目指しつつ決してオリジナリティを失わないバランス感覚、今歌うべき、訴えるべきメッセージを刻み付けるようなリリックと、セルフタイトルも納得の極みを見せる最新作『a flood of circle』。『I’M FREE』('13)の’18年度版とも言える『Where Is My Freedom』しかり、彼らのボーダレスでハイブリッドなセンスと笑っちゃうぐらいの情熱を、ホントみんなと早く共有したい=フラッドのライブを観た後あーだこーだ呑みながら話したい!(笑) 本当に素晴らしいアルバムができました。あと、アオキテツは関西出身のギタリストですが、今どき珍しいハングリーさで東京に乗り込み、見事にその椅子を勝ち取った姿は、何だか頼もしくもあります。西の魔窟・味穂にて新体制のライブを観る前にテツと佐々木くんに偶然遭遇してから(笑)約2年。こんなドラマが待っていたなら、フラッドはまだまだ面白くなりそうです!」