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「吉田山田が生まれ変わる…その変化の象徴じゃないかな、『街』は」
デビュー10周年に向け時計の針が動き出した
新たなる吉田山田の決意と覚悟の出発点
『街』インタビュー&動画コメント

 本当に大事なものを1つしか持って逃げられないとき、あなたは何を選ぶのか? そんな自問自答が頭をよぎる吉田山田の久々のリリースとなった『街』は、そのワードから安易に連想される情景とはまた違った角度から、街という人間模様を描いてみせた新たなる吉田山田の出発点となるシングルだ。昨年は、キャリア初の全県ツアー『吉田山田47都道府県ツアー~二人また旅2016~』を経験し、その後は一転、ショーアップされた演出で魅せた『吉田山田7周年記念7ヶ月7会場マンスリー企画「Over The Rainbowツアー」』と、ライブに特化した1年を駆け抜けた彼らが今だからこそ語る、本音と気付きと裏エピソードの数々…。ミュージシャンとしての成長と大いなる決意に頼もしい言葉が飛び交った、吉田山田インタビュー。覚悟を決めた2人が、ある頂を目指して、ついに動き出した――!

 
 
ふわっとした“全国の皆さん”が、ちょっとずつくっきり形になって
ツアーがより温度のあるものになった
 
 
――昨年は過去最高に密度の濃いライブをした1年だったと思いますけど、まずはアルバム『47【ヨンナナ】』(‘16)以降の動きとして、初の全県ツアーをやってみてどうでした?
 
吉田「僕は瞬発的にいいときも悪いときもあったりというよりも、ちょっとずつ積み重ねていくのが好きなんですよね。あのツアーでは3日に1回は必ずライブをやっていたわけで、多いときは3日連続でワンマンライブって、もう本当に人生初で。何だかマンネリ化しそうでちょっと不安だったけど、前日に“もうちょっとこうしてみたいな”と思ったことを熱いうちにすぐ試せて、その反応を肌で感じられるのは、得るものがすごく多くて。もちろん試してダメだったこともあったし、その土地土地のお客さんの違いとか、何が美味しかったとかそういうこともあったけど、ミュージシャンとしてはただただ毎日ライブがやれてよかったなって。辛かったことはそんなに思い浮かばないぐらい」
 
山田「今まで“僕らを応援してくださる皆さん”という言葉を使ってきたんですけど、やっぱりどこかちょっとふわふわしてて。例えばファンクラブの人数だったり、YouTubeの再生回数だったりが、実体として感じられたというか。来れなかった人もたくさんいるかもしれないですけど、ふわっとした“全国の皆さん”が7年目にしてちょっとずつくっきり形になって、ツアーがより温度のあるものになったなと。あと、ライブ中にお客さんをよく観てましたね」
 
――ある意味、冷静っちゃ冷静やね。
 
山田「印象に残ってるのが、小っちゃい男の子とお母さんが最前列に並んで座ってて、『日々』を聴いてるときにお母さんが涙を流してたんですよ。そのとき、男の子が不安そうにお母さんの顔を見て、お母さんの手をぎゅっと握ったんです。普通はお母さんが子供が自分から離れないように手を握ったりするもんですけど、それを観たときに“本当に守られてるのはどっちなんだろう?”って思った。意識してるわけじゃないですけど、曲を作るときにもそういう風景が浮かんだり、そういう感情がいずれ出てくると思うので。同じ空気感の中にいられたのはすごく大きいですね」
 
――しかも東名阪ツアーぐらいの本数だったら、もしかしたら来れなかった人たちかもしれないし。
 
吉田「会場も大きいところばかりじゃなかったし、久々に“THEライブハウス”という感じの場所でやらせてもらって、お客さんの顔がすごく観えたのは大きいかもしれないですね。当たり前のようにCDが出て、ライブをやって、ツアーがあってっていう流れになってるけど、新しい音源を作ったから、生が一番いいから、聴きに来てくださいっていうのがやっぱり根本なんですよ。最長25日間ぐらい家に帰れなかったこともあったし、いやもう、“ふざけんな!”って思った瞬間もいっぱいありましたよ?(笑)  家にいないのに何で家賃を払ってるんだと(笑)。だけど、そんなことを全然上回る楽しさとか刺激があったんですよね」
 
山田「僕はでも、反省の方が多かったかなぁ…理想はもっともっと自然体でいたかった。何ならお客さんの前で、悩んでるカッコ悪い自分を出してもよかったのかなって。プロとしては失格なのかもしれないけど、アーティストとしてはそういう自分でいいんじゃないかって思う部分もあるので。そういう剥き出しの自分を断片的には出せたんですけど、やっぱりそれって“生き方”だと思うので、自分の足りないところが結構見えましたね。上手くできないのにどうしても上手くやろうとしちゃってる自分が、何かダッセェなって。これはもう長い目で見た理想ですね。多分すぐには無理だと思うんですけど」
 
――ホントに各々感じるところがあって。アーティストとしても、人としても、全県ツアーはやっぱりやるべき作業だった気がしますね。
 
吉田「芸術は“破壊と創造”って言うじゃないですか。僕にはそれがよく分からなかったから試行錯誤と実験を繰り返してたんですけど、やっぱり47回もライブをやってると、それすら飽きてくるんですよ(笑)。そうなったときに、“もうどうにでもなれ!”っていう開き直りみたいなものがすごく大事だってことに気付いて。山田は元々ちゃんとできない自分がそれをできる風にしてしまったことを反省してたけど、僕は逆で。どうしてもちゃんとしてしまうから、バカになれるのかみたいなところがテーマとしてはありましたね。そうしたときに、意外と山田がちゃんとしてくれるんですよ(笑)。これが2人組のシーソーのいいところなのかもしれないけど。すごく楽しかったし、表現の幅が広がった。“安パイじゃダメなんだ”って、あれだけライブをやると気付けたかな」
 
――弾き語りというミニマムで生々しいツアーの後は一転、完全にショーアップされた『吉田山田7周年記念7ヶ月7会場マンスリー企画「Over The Rainbowツアー」』がありましたけど、こちらはある意味“サーカス”に近いというか。作り込みが絶対に必要なライブでしたけど。同世代でこういう試みをやっているアーティストはいないのでは?
 
山田「そうですね。なかなか…あの、何でしょう(笑)」
 
吉田「ま、割に合わないんだよ!」
 
――アハハハハ!(笑)
 
山田「それ、今言おうか迷ったんだよ(笑)。そうなんですよ、割に合わないんですよ(笑)」
 
――かつての米米CLUBみたいに、CDで稼いだお金を全部ライブに投資する、みたいな(笑)。吉田山田がもっと大きくなってきたら、“シルク・ドゥ・ソレイユ”みたいに特設会場を建てて1ヵ月公演とかもやれそうだけど。
 
吉田「でもね、昔は演出もすごく大事だなって思ってたけど、47都道府県ツアーの影響なのか…もっと音楽を極めていけばそれだけで観せられるんですよね。舞台装置とかに引っ張られてるようじゃ全然ダメで、僕らはやっぱり音楽が核にある、なきゃいけないと思ってるから。ライブをたくさんやってきた中で、それができると思えたんですよ。去年はそういう音楽の可能性と自信をだいぶ養った気がしますね」
 
山田「『Over The Rainbowツアー』はちょっとスピンオフ的な感じがあったし、僕もそうなんですけど、そろそろお客さんも“THE吉田山田のライブが観たいな”って思ってきたんじゃないかな? いろんなことに挑戦することによって芯は骨太になってきたと思うんで、そろそろ普通のライブをしたいなって、逆に思いました!(笑)」
 
――片方のツアーだけじゃ、もしかしたら分からなかったかもしれない。いや~濃い1年でしたね、本当に。
 



愛しさと破壊衝動が一緒になった曲が書けたんじゃないかな
ちょっとだけこのヒリヒリしたものに共感してもらえたら
 
 
――そんなビシビシ刺激を受けまくった'16年を経て、吉田山田として久々の音源が完成しましたけど、まずは『街』(M-1)という楽曲に向かっていった過程を聞きたいなと。
 
山田「これは2年ぐらい前にデモとして挙げていた曲なんですけど、僕が小っちゃい頃から見てる夢の話なんです。空からデッカいものが降ってきて、みんなが恐れおののいて逃げていく。それは怪獣だったり形は変わっていくんですけど、今でも何年かに1回、夢で見ますね。去年、個展を開いたときに『街』っていう絵も描いたんですけど」
 
――完全に映画『シン・ゴジラ』(‘16)を観て盛り上がって書いたのかと(笑)。よっちゃんから見たこの曲の印象は?
 
吉田「実は、去年の暮れぐらいから制作チームがガラリと変わって。もう6年ぐらい一緒にやってきたチームから、新体制になった1作目なんですよ。やっぱり最初は不安だったし、新しいディレクターさんが“この曲いいよね”って言ったときは、ちょっと意外で。でも、すごく明確なプランがあって、僕らが本当に見えてなかった角度からその人は吉田山田を見ていて。それこそ10年前の曲から聴いてくれて、吉田山田の基礎知識もそこまでないままある種直感的に、フラットな感覚でこの曲が引っ掛かったのは、間違いなく新しい風が吹き始めてるなって。僕の中ではそういうきっかけの曲でもあるんですよね。あと、今回は音源にアコギを入れてなくて、エレキだけなのも初めてで」
 
――確かに、シングルにこういうアッパーでソリッドな曲を持ってきたのは結構意外で。あと、街ってポップスのテーマになり得るモチーフですけど、この切り取り方はなかなかないなと。“街 街 街を怪獣が/飲み込んで壊される日がきたら”って、最初の2行からもう違う。
 
山田「夢の中で大事な人もどんどんいなくなっていくし、本当に怖いんですよ。だから毎回、目を覚ました瞬間に“あぁ〜夢でよかった!”って安心する。でも、こんな内容ですけど自分にとっては“希望の歌”だと思ってて。今までは大事なものを分かりやすく歌ってきたんですけど、それぞれの大事なものをこの曲によって探してもらえたらいいなって。例えば、逃げ惑う中で家族のことを考えたり、会社は大丈夫かな?って思う人もいるだろうし。ちょっとだけこのヒリヒリしたものに共感してもらえたら、それぞれの答えを見付けられるような曲になればいいなって」
 
――この曲で描かれている世界は今の不穏な世の中にもリンクするし、これからどうなっちゃうんだろう日本はっていう怖さもある。本当に大事なものを1つしか持って逃げられないとき、あなたは何を選ぶのか? 逆に自分の中で大事なものがハッキリするかもしれないですね。
 
山田「この曲ができてから、自分の中で街の見方が変わったんですよ。ビルとか建物が無機質で息苦しいなと思ってたんですけど、たまに街中で取り壊し中の家の中がちょっと見えることがあるじゃないですか。壊される前はきっとそれぞれの家庭があって、物語があって、って考えたとき…こんな箱の中でも人はあたたかい家庭を作っていけるんだ、愛情とか人を想う力はすごいなって、考え方が変わりましたね」
 
――取り壊されている部屋の中には、もしかしたら身長を刻んだ柱の傷があるかもしれないし。図らずしもこのタイミングで47都道府県を廻れていたのも、それぞれの街の風景を思い浮かべるのにはよかったよね。
 
山田「そうですね。何かシャッター商店街とかそういうところに足が向かっちゃうんですよね。昔はそれを見て寂しいなとか怖いなと思ったんですけど、今では1軒1軒に愛おしさを感じるのは、多分この曲ができたからですね」
 
――あと、ポップスにおける街=東京みたいなイメージもあるけど、そういう感覚はなかった?
 
吉田「僕が最初に聴いたときは、新宿辺りのオフィス街、都庁の方の風景で、“逃げる人戦う人 迷う人突き進む人”っていうAメロから、“あ〜ダルいな。朝から毎日こんな満員電車に揺られて、これでいいのかな?”みたいに思ってる入社3ヵ月ぐらいの新入社員が思い浮かんで。僕もたまに思うんですよ。絶対に遅刻しちゃいけない日に遅刻して、もう隕石とか降ってくりゃいいのになとか(笑)」
 
――こらこら(笑)。まさに“時々いっそ世界中が/壊されてしまえばいいと思うけど”の一節だね。
 
吉田「でも結局、隕石は落ちてこないし、程よく怒られて、ちょっと失った信用を時間を掛けて取り戻していって、その中で生活を育んでいくわけじゃないですか。そういうところを表現できたらいいなって」
 
山田「僕は東京生まれで、他のビル群を見たことがないんですよ。夜に窓を開けると、遠くに新宿の西の方のビルがあって、赤いライトがいっぱい点滅してて。それを覗きながら、ちょっと怖いなっていつも思ってましたね。『風の谷のナウシカ』(‘84)の“王蟲(オーム)”の群れじゃないですけど」
 
――さっきなぜ『シン・ゴジラ』をイメージしたかというと、それぞれの思惑があって人間同士が言い争っていても、怪獣が現れて全部ぶっ壊したら、そんなの関係なくなっちゃう。だったら、いがみ合うよりもっと大事なものがあるんじゃないか? みたいな。
 
山田「そうですよね。怪獣っていう表現はしてますけど、人が作ったものはいつかなくなるし、壊れていくし、古びていく。そのときには勝ち負けにもう価値はないっていう、この感覚が届けばなぁと。今は吉田山田としてまた違うワクワクする方向へ、ちゃんとこういう荷物を持って旅立ててるのがいいなぁと思ってるんです。これがまだデビューしたてとかだったら全然出来上がってないだろうし。全部を踏まえた上での愛しさと破壊衝動が一緒になった曲が書けたんじゃないかな」
 



やっぱり2人でマジで頑張らなきゃダメなんだって
 
 
――『RAIN』(M-2)はある種、吉田山田のイメージを踏襲する鉄板の曲で。あと、曲としては結婚式にもいいなと。
 
山田「あぁ~確かに! これは最初は恋愛の歌詞だったんですけど、47都道府県を廻っていく中で、これからも2人で旅を続けられたらいいなって…“2人で”っていうところがミソですね。1人だったら続けられるというか」
 
――自分の行きたいときに、行きたい場所に、とは違うもんね。これはソロでもバンドでもなく、デュオである吉田山田ならではの視野で。
 
山田「改めて2人で何かを成し遂げるのって難しいなって。山あり谷あり、いろんなことがあるけど、辞めちゃう人はその谷のときにポンッと抜けちゃうし。でも、続けていればまた山になるし」
 
吉田「去年の暮れぐらいから僕の中から湧いてきてる想いとして、やっぱり2人でマジで頑張らなきゃダメなんだって。2人で膝を突き合わせて話すのは結構しんどいし、重たくなるし、そういう時間を持つのに勇気がいるんですよ。だけど、他人任せにせずに2人でいろんなことを考えないと、ちゃんと根が張っていかない。だから、去年の仕事納めをした12月28日に、2~3年ぶりぐらいに2人でデニーズにメシを食いに行って(笑)。’17年は、もっと言えば’18〜’19年は、チームじゃなくて、2人が、吉田山田が頑張らないといけない。そこがポイントだなって。何か変わりつつある片鱗を感じた制作だったな、『RAIN』は」
 
――やっぱり、’16年は初めてのことも、顧みることも多かったというか。あのとき2人で話したことが後から効いてくるような、ターニングポイントな感じがしますね。
 
吉田「この『RAIN』の“あるだけの幸せ数えよう”っていう歌詞が一番気に入ってて。昔だったら“たくさんの幸せ数えよう”とか、“目に見えない幸せ数えよう”とかになったと思うけど、自分たちのあるだけの幸せを大事にする。それって消極的なようですごく積極的で、これを歌って板に付くミュージシャンになったんだなって」
 
――そして、通常盤には『たしか』(M-3)が収録されますが、本当によっちゃんらしい曲で、これも雨の歌ですね。
 
スタッフ「『キミに会いたいな』(‘15)のカップリングの『好きだよ』もそうでしたよね」
 
吉田&山田「あー!」
 
山田「よっちゃん雨好き説」
 
吉田「雨が降ってると、家でゴロゴロしててもいい感じがするじゃないですか(笑)」
 
――分かるわ~家にこもる日に雨が降ってると、家にいることの充実度がなぜかめっちゃ上がる(笑)。
 
山田「分かる分かる!」
 
吉田「家にいる正当性が出るじゃん?(笑) そのときにいろんなことを思ったり。確かに雨が好きだなぁ…」
 
――物語の時間軸とともに、歌詞の一節が“手を繋がないで歩いた”から“手を離さないで歩いた”に変わることで景色が見違えたり、“笑ってた”と“笑ってた?”の使い分けとかには、ソングライティング力をすごく感じる。僅かなニュアンスで全然意味が変わってくるという 。
 
吉田「この曲も結構前からあったんですけど、実は8割歌詞を変えたんですよ。一応、元の歌詞で録ってて、いつかアルバムかカップリングに使えるかなみたいな感じだったんですけど、マネージャーに“1年前くらいにレコーディングした曲、ミックスし直すけど歌を録り直す?”って聞かれて。“うん、歌詞も変えたい”って言ったら、“やっぱりそうだよね~!”って言われて(笑)。そこには、ずっと僕らのことを近くで見ていて、“だってお前ら、1年前と違うもんね”っていう意味が含まれてると思ったんですよ。もちろん制作費も時間もかかるんだけど、“今の歌詞を書きたいよね”って言ってもらえたことが…僕はすごく嬉しかった。変わったのが目に見えて分かるんだっていう自信にもなったし。テーマは全然変わってないんですけど、今歌いたい歌はこっちだなって」
 
山田「僕はもう頭の“あの日もたしか雨が降っていた”の1行に尽きるなと。この1行でそれぞれが思い浮かぶ景色があったり、さっき話した“家にいたいよね”とか“物思いにふけるよね”っていう共感があって。後はそれぞれが考えてくれるところであればいいなと」
 
――確かにこの1行をポーンと投げられたとき、一気に想像が広がるもんね。そう言われて思い出す光景は、きっと100人いたら100人違う。
 
吉田「“たしか”っていう言葉を使いたかったんですよね。今までは、歌を歌うときには物事をハッキリさせなきゃいけないと思っちゃってて。でも、逆にそこにスポットライトを当てて、曖昧でいいこと、曖昧な方がいいことを歌にしてみたかったんですよね」
 
――しかもそれって、日本語ならでは、日本語だからこそできる表現で。曖昧なんだけど逆に広がるというか。1年ぶりの音源となると、やっぱり想いも変化もぎっしり入りますね。
 
 
『日々』と『街』は切り口が違うだけで大事な核の部分はつながってる
 
 
――リリースするにあたって、自分たちの変化も含めて、吉田山田の次の作品として何か感じるものはありました?
 
吉田「すごく不思議な感覚なんですけど、この作品には自信があるし、確かに自分たちの今の全てなんだけど…。吉田山田として、2人で、とにかくいろんなことを考えて、いろんなことを決めて、この人生を他人任せじゃなくやっていかなきゃいけない。その決意は今までで一番強いものなんですよ。今は優先順位の一番上にそれがあるので、全てのことがそこへの過程にしか思えなくて。でも、ずっと過程なのかもしれないですよね。と言うのも、2年後のデビュー10周年に向けて、初めて2人である目標を立てたんですよ。そんなことを2人で話したのも初めてだし、それにはそれ相応の、かなり汗臭い努力が必要で。明確な目標を立てるっていうことは、結構残酷なことなんで」
 
――目標を立てた以上、“できなかった”ということも起こり得るからね。
 
吉田「“お前の今の行動って、2年後にちゃんとつながってるか?”って、常に自問自答が始まるわけですよ。だから今の行動の全てはそこに向かっている」
 
山田「今話したことは2人の共通項としてあるんですけど、単純に僕の作る曲がどんどん短くなっていくなとは思ってて(笑)。自分の中でまだ分析はできてないんですけど、何でしょうね? 次は2分とかになるのかなぁ?」
 
――パンクやん(笑)。それだけ簡潔に物事を伝えられるようになったり、思考がシンプルになっていってるのかも。
 
山田「ただ、曲が短くなっていくっていうことは、ちゃんと刺さる言葉がないと成立しないんですよ。最近の自分の作る曲を見てても、いつもなら2番を入れてるのに何か入れたくない、これだけで完結させたい、みたいな。自分の中では『街』もそうなんですけど、ちょっとだけ優しくない。リスナーに“こうだよね”っていう言葉をポンと置いていかないで、“あとは自分で探してみて”って。今はそういう方向に自分の気持ちが向いてるんだろうなって。ツアーで昔の曲を歌ってても思ったんですけど、“この曲は10年後でも胸を張って歌えるか?”って、頭の中で勝手にふるいにかけてるんですよ。それはさっき言った10周年を踏まえてでもあるし、そういうモードに入ってるなぁって」
 
――イメージとホントに相反するというか、山ちゃんがコンポーザー的な思考で極みを目指してて、よっちゃんが吉田山田の精神性を担っていく感じが面白いね。今年は山ちゃんのブログでも、“今年は激しく動きます。皆さんついてきてください!”とか“今年1年凄い年にします。沢山やるべき事があるのです”とか予告してますけど。
 
山田「この間、台湾に行ったときに、たまたま『羊毛とおはなの日』という、はな(vo)さんの命日にいろんなアーティストがライブをするイベントを目にする機会があって。そのときに市川(g)さんが、“いつ何が起こるか分からないから、自分の好きなアーティストを本気で応援してください”って言ってたんですけど、すごく納得できて。こんな言い方をすると他力本願だと思われるかもしれないですけど、それぐらい“しがみついて来てほしい”というか、この勢いをただ見てほしいわけじゃなくて、一緒に命を燃やしてほしい気持ちはありますね。これは自分に突きつけているとも言えるんですけど」
 
――ある意味、しがみついてくれたらそれがやる理由にもやり甲斐にもなるしね。そして、“すごい年にします”と言って、そうせざるを得なくする。
 
山田「たった3日間なんですけど、台湾で感じたことがあって。僕は普通の観光地じゃない路地裏とかが好きで、ちょっと危ないんですけど看板の出てないバーに飛び込んで全身タトゥーの人ばっかりとか(笑)、そういうちょっとヒリヒリするところに行くんですよ。でも、2日も経つとその欲求は満たされて、3日目には“自分は何で今ここにいるんだ?”って…急にすごく怖くなって。自分の感性を信じていろんなところに行くんですけど、ある程度のところを超えたら多分それだけじゃダメで、そこにいる理由だったり、そこを楽しむ努力がないと、僕は怖くなるんだなって。3日目の夜とかは、何かもう気持ち的に目も耳も口も閉じながら歩いてる感覚で。そんなとき、自分にとって友達とか仲間とか家族とかが、自分の目であり耳であり口だったんだなって気付いて。そこで、自分が大事なものとか、やらなきゃいけないことを再確認して。衝動と感性だけでは、最後まで行けないのかもなって思った」
 
――それは今まで話してきたことに通じますね。10周年を目指していく上で変わらなきゃいけないこと、やるべきことが、吉田山田としても個人としてもある。もっとハッピーに、“今年は勢いよく突き進むんで!”みたいな話になると思ったら、結構ずっしりくるね(笑)。
 
(一同笑)
 
吉田「でもね、山田の台湾もそうだけど、もうアホみたいにがむしゃらにここまでやってきて、よく考えるとインプットがなかったなって(笑)。そこはスタッフさんも僕らの性格をよく分かってくれてて、今年はそのバランスが取れててすごくありがたいなと。僕は去年より全てのことが楽なんですよ。それは思考がシンプルになっていって、シンプルだからこそやるべきことが分かってる。吉田山田が生まれ変わる…その変化の象徴じゃないかな、今回のシングルって。今年はその変化のタイミングが矢継ぎ早に来ると思うから。序章ですよね、『街』は」
 
山田「『日々』(‘13)がいろんな人に評価されて、今まで僕らのことを応援してきてくれた人たちは、『街』を聴いたときに今までにないものを感じると思うんですけど、僕の中では『日々』とは切り口が違うだけでベクトルは同じなんですよ。大事な核の部分はほぼ一緒と言っても過言ではないぐらいつながってる。『日々』をリリースしてから、“もっと他にいい曲もあるんだぞ”とか、“もっと違う見せ方をしたいな”とか、ヘンな悪あがきをしてたんですけど、この曲は表現の仕方が違うだけでしっかり根本がつながってるから、ちょっとホッとしたというか。だからこそ、この曲は背伸びをしないで作れたなと思ってるんで」
 
――その“大事な核の部分”って言葉にできるものなのかな?
 
山田「『日々』もそうですけど、ただのいい話じゃないんですよ。ちょっとヒリッとした愛情の核の部分。そこに人の儚さだったり、胸がギューッとなる大事なものがある。最近よく思うんですけど、“ずっとそばにいるよ”とか、“一生笑っていようね”じゃないんですよね。ずっと一緒にいられないからこそ、大事なものがちゃんと分かるんだって」
 
――だからこそ、そんな中でもずっと一緒にいようと思えたことの尊さだったり、いられたときの喜びもあるしね。
 
山田「“ありがとう”っていう言葉を入れなかったのはそこなんですよね。だから僕の中ではベクトルが『日々』と一緒なんです。この曲を聴いて新しいなと思ってほしいけど、ちゃんとつながってるので。『日々』をいいと思ってくれた人には、きっと届くような気がします」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2017年6月30日更新)


Check

Movie Comment

過去最高傑作じゃないでしょうか(笑)
吉田山田からの動画コメント!

Release

スタイリッシュな表題曲で魅せる
1年2ヵ月ぶりの新曲をリリース!

Single
『街』
【初回限定盤】
発売中 1852円(税別)
ポニーキャニオン
PCCA-04498

<収録曲>
01. 街
02. RAIN
03. 街(Instrumental)
04. RAIN(Instrumental)

<DVD収録内容>
撮り下ろしロケ企画映像

【通常盤】
発売中 1204円(税別)
ポニーキャニオン
PCCA-04499

<収録曲>
01. 街
02. RAIN
03. たしか
04. 街(Instrumental)
05. RAIN(Instrumental)
06. たしか(Instrumental)

Profile

よしだ・やまだ…吉田結威(vo&g、写真左)、山田義孝(vo、同右)からなる男性2人組ポップユニット。’01年の高校3年生の夏、文化祭に向け前身となるアカペラグループ・ワンツーポパイを結成。高校卒業と同時に自然消滅。’03年、音楽への想いを再燃させた山田が声を掛け吉田が同意、2人の本名がそのまま使われたユニット・吉田山田が誕生。ニューヨークに1ヵ月間の武者修行を経て帰国後、本格的な音楽活動をスタートさせる。’09年10月にはシングル『ガムシャランナー』でメジャーデビュー。’13年12月にリリースされた9thシングル『日々』が、『NHKみんなのうた』で同月より放送が開始されるや“泣ける歌”と話題になり、5度の再放送を経てロングセールスを記録。一躍その名を拡げ、YouTubeの再生回数は1,100万回に到達。’16年3月には4thアルバム『47【ヨンナナ】』をリリース、同作を引っ提げた初の全国47都道府県ツアー、初の日比谷野外大音楽堂でのライブも成功を収め、その勢いのままデビュー7周年を記念した『Over The Rainbowツアー』へ突入。ライブペインティングや紗幕に映像を投影した演出など、毎公演異なる演出を行った。5月24日には12thシングル『街』をリリース。8月26日(土)には3年連続の開催となる野外ライブ『吉田山田祭り2017』を開催。

吉田山田 オフィシャルサイト
http://yoshidayamada.com/

Live

夏の野外イベントや恒例の祭を経て
弾き語り&バンドで全国ツアーへ!

Pick Up!!

【大阪公演】

『夏びらきMUSIC FESTIVAL 2017』
チケット発売中 Pコード328-252
▼7月1日(土)11:00
服部緑地野外音楽堂
全自由4500円
[出演]SOIL& “PIMP” SESSIONS/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND/Nulbarich/七尾旅人/吉田山田/Nabowa/BASI&THE BASIC BAND/iri [DJ]SOUL ONE/Masatoshi Nakagawa
[司会]竹内琢也
夢番地■06(6341)3525
※雨天決行・荒天中止。12歳以下は無料(小学生以下は保護者同伴に限る)。再入場禁止。【オフィシャルサイト】 http://www.natsu-biraki.com

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【東京公演】
『吉田山田祭り2017』
Thank you, Sold Out!!
▼8月26日(土)上野恩賜公園
不忍池水上音楽堂


『吉田山田ツアー2017』

<Acoustic Set>
【神奈川公演】
▼9月17日(日)横浜ベイホール
【北海道公演】
▼9月23日(土・祝)ペニーレーン24
【鳥取公演】
▼9月30日(土)米子laughs
【島根公演】
▼10月1日(日)松江canova
【静岡公演】
▼10月5日(木)Live House 浜松 窓枠

Pick Up!!

【兵庫/京都公演】

一般発売7月22日(土)
Pコード561-112
▼10月7日(土)17:00
神戸VARIT.
▼10月8日(日)17:00
KYOTO MUSE
全自由5000円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※小学生以上は有料、未就学児童は無料。

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チケット情報はこちら

 
【長野公演】
▼10月9日(月・祝)松本Sound Hall a.C
【香川公演】
▼10月14日(土)高松festhalle
【岡山公演】
▼10月15日(日)CRAZYMAMA KINGDOM
【岐阜公演】
▼10月21日(土)EVENT HALL club-G
【石川公演】
▼10月22日(日)金沢EIGHT HALL
【埼玉公演】
▼10月25日(水)HEAVEN'S ROCK
さいたま新都心 VJ-3
【福島公演】
▼10月28日(土)Hip Shot Japan
【新潟公演】
▼10月29日(日)NIIGATA LOTS

<Band Set>
【広島公演】
▼11月11日(土)広島クラブクアトロ
【福岡公演】
▼11月12日(日)ももちパレス 大ホール
【東京公演】
▼12月8日(金)東京国際フォーラム ホールC
【愛知公演】
▼12月9日(土)日本特殊陶業市民会館
ビレッジホール
【宮城公演】
▼12月17日(日)仙台Rensa

Pick Up!!

【大阪公演】

一般発売7月22日(土)
Pコード561-112
▼12月24日(日)17:00
森ノ宮ピロティホール
全席指定5500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※小学生以上は有料、未就学児童は無料。
但し、お席が必要な場合は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Column1

「“吉田山田にとってライブとは?”
という質問に対して明確な答えを
1つ持てるようなツアーにしたい」
2つの個を刻む『47【ヨンナナ】』
携え初の全県ツアーへ!
吉田山田が変化と挑戦の季節を語る

Column2

「『日々』を経て出来てくる曲が
 今の吉田山田が歌うべきことを
 歌えてる確信があった」
ヒット中の『キミに会いたいな』に
過去最大のツアー…歩みを止めない
吉田山田の今に迫るインタビュー

Column3

『NHKみんなのうた』で泣ける歌
と話題の名曲『日々』が世代を越え
感動を呼んでいるのはこの2人!
2年ぶり渾身の3rdアルバム
『吉田山田』についてガチで語った
インタビュー&動画コメント

Column4

もがき続ける吉田山田が
“告白”のドキドキ感を描いた
『ごめん、やっぱ好きなんだ。』
インタビュー&動画コメント

Column5

劇的な変化と覚醒
恋愛観までぶっちゃける!(笑)
2ndアルバム『ココロノート』
インタビュー&動画コメント

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「いつもは吉田山田の2人が大阪にキャンペーンに来てくれて、根掘り葉掘り話を聞き出すのですが、今回は何と僕の方から東京に出向き、インタビューさせてもらいました。いつもは東京で散々いろんな人にインタビューされた後に大阪で取材するので、事前にいろんな情報を頭に叩き込んでから挑むのですが(ていうかそのタイミングで露出するインタビューを全部読む)、今回はトップバッターなので僕もまっさらの状態。2人もまっさらの状態。なのでもう5~6年は取材してる彼らですが、何だか新鮮にピュアに楽しめましたね。何より、トップバッターに選んでもらえて、本当に光栄でした。原稿ではあえて伏せていますが、僕は彼らのある目標について具体的に聞きました。これが叶ったとき、このインタビューのことを思い出すだろうなぁ…。この原稿を読んでくれた皆さんと、一緒に喜びたい。2人のことを改めて好きになり、改めて期待したインタビューになりました。最後に山ちゃんが言った、“ずっと一緒にいられないからこそ、大事なものがちゃんと分かるんだって”っていう言葉、グッときたな、うん。
PS. 実は上記の傑作動画コメントだけ後から大阪で撮ったのですが、この後みんなで出向いた中華料理屋で山ちゃんから聞いた話もマジ鉄板でした(笑)。さっきの名言とホンマ真逆の内容(笑)。最高。真摯な部分も、くだけた部分も。彼らのよさ、みんなに知ってもらいたいな」