ホーム > インタビュー&レポート > 「また夢のような2日間になればいいな」 入場無料で送る、史上最大級の鶴の恩返し再び! 5年ぶり2度目の『鶴フェス2024』への熱い思いと最後のお願い!? 秋野温(vo&g)インタビュー&動画コメント
『鶴フェス』みたいなデカい夢を見出すと
未来側にも過去側にも、遠くまで見渡すような感覚になるんです
――昨年は、初の日比谷野外大音楽堂公演『結成20周年記念 鶴の野恩返し 〜みんなにワイワイお祝いしてもらう会〜』を成功をさせて。アニーバーサリーイヤーとしてもキャリア的にも、一つの大きな山だったと思いますが。
「まず日比谷野音は抽選の倍率がすごく高いのに、うちのマネージャーが試しに行ったら当たっちゃった(笑)。だから、全国のイベンターからも"どうやって当てたんですか?"と連絡が来まくったという。ただ、そもそもできるとは全く思ってなかった場所だから憧れという感じも正直なく。全然想像もしてなかったけど、ちょうど結成20周年だったし"じゃあ...やる?"という感じで始まって。でも、やっぱり野音のパワーというか、僕らよりもお客さんの方が強く響いてくれたみたいで、"初めて野音に行きます"とか"連れて行ってくれてありがとうございます"とか、僕らよりもみんなの方が喜んでくれたのが印象的でしたね」
――そう考えたら不思議ななりわいですよね、自分たちは好きな音楽をやっているだけなのに。
「自分たちは好き放題やってるのに、周りの方が感動してくれて、持ち上げてくれて、鶴の歴史とかストーリーを感じ取ってくれて...。たまたま20周年のタイミングで日比谷野音が押さえられたのも、鶴がこれまでにいろんなことをやってきたご褒美じゃないですけど、そういう巡り合わせを感じずにはいられないですね。自主レーベルを始めてからは、いかに徳を積むかを考えてきたというか、何事も未来の自分たちにつながってると思って、その場では利益にならないようなことも、根気よくコツコツ続けてきた結果かなと思いました」
――そして、今年は5年ぶり2回目の『鶴フェス2024』が開催されます。そのお祭りに向けてまき餌のように(笑)、6月、7月、8月、9月の各26日に2曲ずつ配信リリースされて。
「『鶴フェス2024』に向けて次の鶴の軸になりそうな曲を2~3月に書いてみたはいいけど、もう一押しほしいなと思いながら、でも2曲ずつ出すってもう言っちゃったから始めようとこの期間に突入しました(笑)。逆に自分たちの思った以上の反応をもらえていて、中でも最初に出した一曲の『ロケット』の反応がいいなと」
――個人的にも一番好きな曲です。これから夢を追いかける人を奮い立たせ、逆に自分も奮い立つような曲で、いかにもデモで適当に歌ったような"ダンドゥディダン"というフレーズを生かしたのも新鮮で耳に残ります。
「"ここにスキャットみたいなフレーズがあったらいいな"という思いつきで歌ったんですけど、他の言葉をはめようとは思わなかったですね。"ダンドゥディダン"が一番キャッチーだなと思って。あと、『鶴フェス』みたいなデカい夢を見出すと、未来側にも過去側にも、遠くまで見渡すような感覚になるんです。そうすると、今よりもっと内気で言いたいことも言えず、でも、音楽をやりたい気持ちだけはあった若い頃を思い出して...。そんな自分でもこれだけバンドが続いて、まだまだ楽しいことに向かってやっていけるなと思う。そこが歌に乗ったなって」
――曲を書くときに今でもその時代に瞬時に戻れるのは、やはり一つの才能ですね。
「40を超えてちょっと経ちますけど、"俺、人付き合いが下手だったんだな..."って、今だから分かる当時の自分の不器用さを思い出すことが多いんですよね。昔から"何を考えてるか分からない"と言われるタイプで、自分の内側をあまり他人に見せないのは何となく分かってたんですけど、それによってこじれてしまうものがあるんだなというしわ寄せが今来てます(笑)。サウンド的には、最近はまたシンプルなスリーピースバンドに立ち返ろうとしてますね」
――それは他の曲からも感じられますね。特別なことをしなくても、3人でドーンと音を出せば説得力がある、真骨頂のグッドミュージックという感じで。『ラブ』もまさにそう思いました。これはいろんな人に愛を受けてきたことを改めて感じて書いた曲だと。
「この年齢になると親への感謝がちょっとずつ出てくるというか、『ロケット』と『ラブ』は自分で歌詞を読み返していても、まるでお母さんが死んじゃったような気持ちになるんですよ、まだ生きてますけど(笑)」
――今回はタイトルも分かりやすくて、'20年代の曲とは思えない直球過ぎる言葉のチョイス(笑)。『トゥナイト』なんかは音も言葉も鶴な曲ですけど、『サイコロ』はバンドでせめぎ合って遊んだ感がある曲ですね。
「『トゥナイト』はライブで目の前の人に伝えるべきメッセージというか、いつもやっていることですけど、『サイコロ』はリハーサルでアレンジしてるときに、何かもうごちゃごちゃするのはやめて全部一発録りで、ドラムのブースにギターもベースもアンプを置いて音かぶり上等、重ねのギターもなしでいこうと」
――それがこの生々しさにつながってると。この曲はドラムが大暴れで、これぞバンドサウンドなカッコよさです。
「終盤のドラムソロなんか、何回聴いても拍が取れないですから(笑)。元々は3人で向き合って入り込むのがカッコいいと思ってるタイプなので、普段はお客さんに向けて"わーっ!"と盛り上げてる鶴がそれをやるギャップがまたいいのかなと思って。他にも、『ワルノリズム』はアフロ時代のノリというか、これからの鶴のパーティーソングに成長してくれたらいいなと思う曲で、『ホログラム』はどんくん(=笠井"どん"快樹・ds)作詞作曲の渾身のバラードです」
――『シャルウィーダンス』も笠井さん作の疾走感溢れるミドルチューンで、『ライトナウ』は鶴の王道と言える一曲です。今回の8曲は『鶴フェス』のパイロットソングになる曲=鶴の代表曲になり得る曲でもありますが、お気に入りの曲はあったりしますか?
「お気に入りは『ロケット』ですかね。鶴では今までにやったことがないリズムパターンで、どこか懐かしさがある曲なので、自分でもよくできたなと思います。ただ、ライブで演奏するのがめっちゃムズいみたいです。ドラムが特に。いつもどんくんがビビりながら叩いてますから(笑)」
みんなライブの猛者たちばかりなんで
――4カ月連続配信も全ては『鶴フェス2024』のためにということで、コロナ禍があって間隔が空いたのもあるとは思いますが、今年『鶴フェス』を5年ぶりにやろうと思い立ったのには何か理由はあったんですか?
「この5年の間に、47都道府県ツアーの4周目をやったんですよ。最初は全国どこのライブハウスに行ってもまだちょっと閉鎖的な雰囲気で、箱の方もすごく周りに気を使ってるんだなと思ったし、僕らが地方まで行ってライブをしても、お客さんの職種によっては来れない人がいたり...そうやって世のライブ業界がまた少しずつ開けていく時期に回ってたんで、ツアーの後半には"マスクはしてるけど盛り上がってんじゃん!"みたいな空気を感じて、これならそろそろ『鶴フェス』もできるんじゃないかと思って。あと、『鶴フェス』は地元の鶴ヶ島市役所とも協力してやってることなので、そこの足並みがそろうタイミングで最速が今年だったんですよね」
――今年はスケールアップして2日間のボリュームになりました。
「鶴ヶ島市の方たちもモチベーションが高いままずっと待っててくれていたので、"久々に『鶴フェス』をやります、しかも2日間!"と伝えて、驚いてほしかったし、喜んでほしかったというサービス精神の現れです」
――いずれメンバー3人のうち誰かが市長になったら、めっちゃ面白いですね(笑)。
「ネタとしては最高ですね(笑)。"市長ってバンドやってんだ!"って」
――2日間のメンツも発表されていますが、出演者とのなれ初めやエピソードがあれば聞きたいなと。鶴は両日出ますけど、初日は鶴(DBNK BAND)名義で。
「普段はスリーピースですけど、"大忘年会バンド"という鍵盤とホーンとストリングスが入った大所帯編成でやります! まず初回にも出てもらったSCOOBIE DOは、俺らが自主レーベルを始めるにあたっての憧れのバンドで追いかけるべき大事な存在ですし、SCOOBIE DOが出られないなら『鶴フェス』の日程をずらしますというぐらい尊敬してるので(笑)、今回も真っ先にオファーをかけようと。あとは今回初めて対バンという形になるのがアルカラとLACCO TOWERなんですよ。世代も近いし、お互い名前もライブハウスでよく見るけど、実は直接絡んだことがなくて。ニアミス、ニアミスで対バンも一回もないし、これを機にお近づきになりたいなと。鶴に新しい風を吹かせるためにも、今後のバンド人生を長く豊かにするためにも」
――同じぐらいの世代でバンドが続いてるからには、それぞれの秘訣やルールにヒントがありそうですもんね。
「あわよくば、アルカラとかラッコがやってるイベントに呼んでもらえるよう仲良くなりたい気持ちもあります」
――ここまでハッキリ願望を告げると気持ちいいですね(笑)。
「DJ ダイノジは耳が早くて、僕らがインディーズながら『COUNTDOWN JAPAN 06/07』に出させてもらったぐらいからチェックしてくれてたんですよ。それで'08年のデビューイベントのとき、鶴ヶ島の市役所まで来てくれた仲なんです。"鶴ヶ島で何かイベントやらないの?"とずっと言われてたんで、前回は予定が合わなかったんですけど、今回はきっちり出てくれることになりました。あとはやっぱり、スターダスト・レビューと馬場俊英さんですよね。どちらも埼玉の大先輩で、馬場さんは1回目にも声をかけたんですけど予定が合わず、2回目が決まった時点ですぐオファーして。馬場さんが出てくれるだけで『鶴フェス』は締まると思ってたんですけど、そこにスターダスト・レビューの制作サイドから、うちのマネージャーにまさかの逆オファーの連絡が入って!」
――マジで!? そんなもん出すに決まってんじゃん!(笑) 鶴に興味を持ってくれていたんですね。うれしいなぁ。
「埼玉への思いが強くある方々で、『風に吹かれて 2009』という大阪のイベントで一応共演というかお会いしてから、同郷だと知ってずっと気にかけてくれていたみたいで。スタレビ出演決定の発表をしたときは、さすがにSNSがざわつきましたね。出店してくれるお店の方からもLINEが来て、"出演者見ました、当日は店をやってる場合じゃないですね"と言われました(笑)」
――そうね、スタレビを見なきゃいけないから(笑)。
「GAKU-MCさんは完全に、どんくんのサッカー仲間です(笑)。a flood of circleは活動歴が近いんですけど、ちょこちょこイベントが一緒であいさつするぐらいで対バンする機会がないから、これを機にということで」
――周りから見て勝手に接点があると思っていたバンドも、意外とライブはやってないもんですね。
「やっぱり歴が長くなってくると畑がどんどん固定されてくるので、混ざることが少なくなっちゃうんですよね」
――渡會(将士)くんはかつて秋野さん、現在は神田(雄一朗・b)さんが参加しているbrainchild'sつながりですかね。
「それもありますし、彼がFoZZtone時代から、同じ年のミュージシャンとして貴重な存在でしたね」
――他にもTHEイナズマ戦隊、FUNKIST、リアクション ザ ブッタetc...シーンをサバイブしてきたさまざまなアーティストが集まると。今年もやりがいのあるフェスですね。こんな強者たちが出た後、最後にそれを超えるライブをしなきゃいけないんですから。
「いや~やりづらい! みんなライブの猛者たちばかりなんで」
――前回の『鶴フェス2019』を終えた感想は、「あの日は一日中夢見心地というかふわふわしてた」、ただ、「すごいパワーを使うのが分かったんで、毎年はちょっと考えてはないですね」と言ってましたけど(笑)、『鶴フェス2024』はどんな2日間になるでしょうね。
「また夢のような2日間になればいいなと思うんですけど、当日までのプレッシャーが...しかも入場無料で、ふたを開けるまでどれぐらい人が来るのか分からないから、もう出たとこ勝負なんですよ。ちなみに前回は朝イチは雨だったんですけどお昼ぐらいには晴れてとても幸せな空気だったんで、今回もまた全国から大集合していただいて、鶴ヶ島の人たちも喜んでくれて、俺たちがまた一歩市長に近づけば(笑)。気軽に遊びに来てもらいたいですね」
――せっかくの入場無料ですからね。
「あと、クラウドファンディングと協賛はいつでもお待ちしてます。我こそは資産に余裕があるよという方は(笑)、ぜひともご協力いただけたら!」
Text by 奥"ボウイ"昌史
ライター奥"ボウイ"昌史さんからのオススメ!
「前回のインタビューは4年前のコロナ禍に入ってすぐ、初の『鶴フェス2019』を終え、アルバム『普通』('20)を出したタイミングで。当時のツアースケジュールは公演中止or延期ばかりでしたが、そんな苦難の時期を乗り越え、10月5日(土)・6日(日)、ついに『鶴フェス2024』が5年ぶりに開催されます。そこに向けて4カ月連続で配信された全8曲は、ここまで歩んできたからこそ書ける、いや、ここまで歩んできたのにまだ書けるのが素晴らしい高純度な楽曲たち。中でも、今でも夢を追いかける『ロケット』の軽やかさと温かさには、何かと重く考えがちな現代における鶴の音楽の効用を特に感じました。だから鶴が好きなんだよな。オフィシャルYouTubeでは各出演者を迎えた和気あいあいのコメント動画もアップされているので、そちらとこのインタビューを『鶴フェス2024』のガイドブック的にチェックしてもらえれば、もうバッチリ!」
(2024年9月30日更新)
Digital Single
『トゥナイト / ロケット』
発売中
Soul Mate Record
<収録曲>
01. トゥナイト
02. ロケット
Digital Single
『ラブ / サイコロ』
発売中
Soul Mate Record
<収録曲>
01. ラブ
02. サイコロ
Digital Single
『ホログラム / ワルノリズム』
発売中
Soul Mate Record
<収録曲>
01. ホログラム
02. ワルノリズム
Digital Single New!
『ライトナウ / シャルウィーダンス』
発売中
Soul Mate Record
<収録曲>
01. ライトナウ
02. シャルウィーダンス
つる…写真左より、神田雄一朗(b=ウキウキベース)、秋野温(vo&g=うたギター)、笠井“どん”快樹(ds=ドラム)。埼玉県鶴ヶ島市の中学校の同級生3人組で、’03年に結成。バンド名の由来は鶴ヶ島の頭文字から。アフロヘアーを代名詞に観客を巻き込むライブパフォーマンスが話題となり、’08年にシングル『恋のゴング』でメジャーデビュー。’11年には菊地英昭(THE YELLOW MONKEY/brainchild’s)をゲストに迎えたミニアルバム『秘密』をリリース。’12年に映画『アフロ田中』主題歌『夜を越えて』をリリースし、8年間トレードマークだったアフロを卒業。’13年には結成10周年を迎え、自主レーベルSoul Mate Recordを設立。‘15年には、47都道府県を2周する全100公演のロングツアー『47改め94都道府県TOUR「Live&Soul」〜もう、寂しい想いはさせたくない〜』を開催。’18年には結成15周年を迎え、これまでの活動と郷土愛が認められ、鶴ヶ島市初となる“鶴ヶ島ふるさと応援大使”に任命される。同年9月より、3周目の47都道府県ツアー『ALL TIME CLASSICS~47都道府県大会~』を行う。’19年10月には、埼玉・鶴ヶ島市運動公園で初の主催フェス『鶴フェス2019』を開催し、11000人の来場者を記録。’20年には、新型コロナウイルスの影響を受けた全国のライブハウス応援クラウドファンディングを実施し、’22年に4周目の47都道府県ツアー『4』を開催。’23年には結成20周年を迎え、東京・日比谷野外大音楽堂で記念ライブを開催。’24年10月5日(土)・6日(日)には、5年ぶりとなる『鶴フェス2024』を2DAYSで開催予定。
鶴 オフィシャルサイト
https://afrock.jp/
『鶴フェス2024』
▼10月5日(土)・6日(日)10:00
鶴ヶ島運動公園
入場無料
[5日(土)出演]鶴(DBNK BAND)/
アルカラ/GAKU-MC/
スターダスト・レビュー/
馬場俊英/LACCO TOWER/
リアクション ザ ブッタ/
市川セカイ/大門大とバーバラ亜紀/
竹森マサユキ(カラーボトル)/
ドン・タカハシ/
ナカノアツシ(GRAND COLOR STONE)
[6日(日)出演]鶴/a flood of circle/
THEイナズマ戦隊/SCOOBIE DO/
DJ ダイノジ/FUNKIST/渡會将士/
アマイオクスリ/D.W ニコルズ/
花男/みっちー(シンガロンパレード)
鶴フェス実行委員会/Soul Mate Record
■https://tsurufes.com/contact/
※雨天決行、荒天中止。
【京都公演】 New!
『鶴フェス2024 -楽しかった会- 京都編』
一般発売10月5日(土)
Pコード282-632
▼11月4日(月・休)16:00
磔磔
全自由4500円
清水音泉■06(6357)3666
(info@shimizuonsen.com)
※小学生以上は有料。未就学児童は入場不可。出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。