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the band apartと□□□が徹底的に遊んだ『前へ』
バンアパの歴代の名曲をアコースティックで再録した『1』
真逆で異色の盟友が2枚の最新作を語る!
三浦康嗣×川崎亘一インタビュー&動画コメント

 ライブユニットへの参加やソロ作のプロデュースなどを通して、近年に一気に親交を深め続けているthe band apartと□□□。属するシーンや音楽的なアプローチなどは異なるものの、いとうせいこう(□□□・vo)以外の全員が同世代ということもあってつながりを強めてきた両者だが、10月12日には□□□ feat. the band apart名義での6曲入りのミニアルバム『前へ』と、アコースティック編成で過去の代表曲を再録音したthe band apart(naked)名義での『1』が同時リリースされた。特に前者は、バンアパのメンバー4人全員を1曲ごとにリードボーカルとしてフィーチャーし、メロウな歌ものから硬質なヒップホップまでも飛び出す異色の仕上がり。そんな2枚の新作リリースを経て現在2マンでの全国ツアーを行っている□□□の三浦康嗣(vo&key&prog)とバンアパの川崎亘一(g)に、お互いの作品や両者の関係性などについて語ってもらった。

 
 
何かイケ好かねぇ野郎だなというのはずっと思ってました(笑)
 
 
――近年に一気に交流が深まっているthe band apartと□□□ですが、そもそもお互いの音楽性などのことはどう思っていたんですか?
 
三浦「僕は(バンドの)存在を知らなかったんですよ。でも、メンバーの村田シゲ(b&g&vo)が面識があったみたいで、それがきっかけですね」
 
川崎「僕は彼(=三浦)がとあるケーブルテレビの番組でインタビューを受けているのを観て、何かイケ好かねぇ野郎だなというのはずっと思ってました(笑)。僕はインテリの人があまり得意じゃなくて、彼が“ココにはこういう意味があって…”みたいな話をしているのを聞きながら、“こいつとは絶対に仲良くなれねぇんだろうな”と思ってたんですけど(笑)、それから何年も経って村田シゲからサポートで一緒にやってもらいたいという話があって、いざ彼に会ってみたらインテリとはむしろ真逆なヤツで。そこから打ち解けましたね」
 
三浦「その飲みの場の勢いから、今回につながったというか。実際に経緯を話せば、最初にバンアパの木暮(ds)と川崎と、ラッパーの環ROY、蓮沼執太が□□□に加わった6人編成で一緒に富山でライブをやって、そこで仲良くなってリハや打ち上げでもキャッキャしてたんですね。そこで“やる時はやるし、やらない時はやらない”みたいなことを言っていたのが、『板橋のジョン・メイヤー feat. 荒井岳史』(M-1)のサビの歌詞にもなっているんですけど(笑)。で、そのリハーサルをバンアパのスタジオでしていたときに、ちょうどソロ制作中の荒井(vo&g)くんがいて、アレンジャーを探しているということだったので、僕が今までに他人に提供した曲とかをまとめた盤を渡したんです。そこから彼のソロにも関わるようになって、彼の最新のアルバム『プリテンダー』(‘16)では僕が丸ごとプロデュースと楽曲提供もやることになりましたね。原(b)くんは元々□□□を好きで聴いてくれていたみたいですけど」
 
――で、その交流の延長線上に生まれたのが今回の□□□ feat. the band apartでのミニアルバム『前へ』なんですが、前述の 1曲目のからソロよリもさらに吹っ切れたコミカルな曲調で意表を突かれました。
 
三浦「荒井ソロでもコミカルな感じはなかったですからね。荒井くんはソロでは吹っ切れたいモードで、“ダサいことをやりたい”と言っているので(笑)、今回も俺なりにダサいアレンジをしてみたんですけど。とは言っても、曲自体は真面目な恋愛モノで、歌詞はクレイジー・キャッツみたいなコミカルな感じなんですけど、コミカルな歌ってもはや今の時代に歌としてあまり認知されていないというか。チャートに入るような“ちゃんとした音楽”とは見なされてなくて、切ない歌とか切迫感のある歌しか“歌”と見なされないようになっていると思うんですよね。昔はもっとコミカルなヒット曲もあって、恋愛の歌もあったんですけど。ヒップホップとかレゲエはコミカルな側面もあるし、ロックでもそういう曲はあるんでしょうけど、“笑っていいですよ”っていう合図があって、聴いてる方がツッコめたりする音楽ってあまりないですよね。なので、この曲では(伴奏の)トランペットが曲の途中で外した音を出して、ズッコケみたいなサインを出したりしていて」
 
――笑いながら楽しんでいい曲ですよ、と。
 
三浦「でも、この1曲目が一番作り込んではいるし、コミカルな曲の方が作るのは難しいんですよ。内輪ノリになり過ぎると笑えなくなっちゃうし、歌詞も適当に聴けるけど何となく流れが出来ているとか、フックがあるとか、作家としての技術という点でも、手前ミソですが上手くできたと思います」
 
 
“俺はそもそも呑み会に来たくなかった”とか言いながらダルそうに来て
一番最後まで呑んでる人っていますよね? そういうタイプですよ(笑)
 
 
――この作品では、ボーカルの荒井さんだけではなくバンアパのメンバー4人それぞれが曲ごとにシンガー/ラッパーとしてフィーチャーされていますが、最も驚いたのはやはり、ほぼ川崎さんの弾き語りとなっている『スニーカー feat. 川崎亘一』(M-3)ですね。
 
川崎「やりたくなかったんですけどね(笑)。まぁでも、歌わないわけにもいかなくなってしまい、無理矢理」
 
三浦「と、被害者ヅラしていますけど、“俺はそもそも呑み会に来たくなかった”とか言いながらダルそうに来て、一番最後まで呑んでる人っていますよね? そういうタイプですよ(笑)」
 
――ドラムの木暮さんがラップする『前へ feat. Lil E a.k.a. 木暮栄一』(M-2)も意外でしたが、こちらはラッパーとしてのスキルの高さや最新の尖ったヒップホップに通じるような斬新なビートなどにも驚かされました。
 
三浦「木暮くんは現行のヒップホップとかもちゃんと聴いていて、バンアパと□□□を合わせた7人の中でも一番ミュージック・ラバーですよね。DJも結構やっているし」
 
――原さんがボーカルを取る『神話具現 feat. 原昌和』(M-4)も、歌詞にも“らしさ”をにじませたメロディアスな仕上がりにんっていますし、四者四様のキャラクターが極端かつ巧みに引き出された感じです。
 


三浦「どの曲もその人を想定して書き下ろしたものなので。一応、2つのグループのコラボという表記にはなっていますけど、実質はバンドとバンドというよりも、俺が作家としていろんな人に曲を書いたりプロデュースしたりするときと同じように作っていった感じですよね」
 
川崎「□□□がもっと“バンド”として確立した形があれば、お互いの曲を2曲ずつくらい持ち寄ってのスプリットみたいになったと思うんですけど。今回は三浦のプロデューサーとしての面白味がうまく溶け込んで、こういう形になったのかなと思います」
 
 
AORやフュージョン、ソウルみたいな音楽をロックマインドで
実際のそういう曲たちよりもBPMを15くらい上げて、間を意識する
ブラックミュージックっぽくない感覚で演奏するのがthe band apart
 
 
――対して、同時発売となったthe band apart(naked)名義での『1』ですが、こちらは最近に増えていたアコースティック編成でのライブをレコーディング作品として具体化させた内容となっています。
 


川崎「同じ曲でもアコースティックでやると随分と印象が違うなというのもありましたし、昔のフュージョンバンドがアルバムを丸ごとアコースティック版でやることが多くておもしろいと思っていたので、結構それを真似て録ってみたという感じですね。アレンジを全く変えた曲もありますけど」
 
――曲によってはファンキーなブラジリアン・フュージョンのようになっている曲もあって、聴き慣れた代表曲もまた違った印象で楽しめました。
 
川崎「アコースティックならではのよさみたいなものがバンドの中でもブームになっていて、今回はそういうものが入れられたんじゃないかと思います」
 
――三浦さんはこちらのアルバムを聴いていかがでしたか? the band apartはロックバンドでありながら洒脱なAORやフュージョン的な要素も複合的に内包していて、そっちの側面が浮き彫りになった作品かなと思うのですが。
 
三浦「そうですね。複合的というか、AORやフュージョン、ソウルみたいな音楽をロックマインドで、実際のそういう曲たちよりもBPMを15くらい上げて、間を意識するブラックミュージックっぽくない感覚で演奏するのがthe band apartというバンドなんだろうなと思っていて。すごく簡単にまとめればですけど。で、20秒と同じ演奏をしないくらいにキメとか展開を細かく入れ込んでくるので、グルーヴミュージックと真逆なんですよね。曲展開とかに凝らないと死んじゃうんじゃないかなこの人たち、というくらいに(笑)。僕はロックバンドのことはあまり知らないですけど、こういう立ち位置のバンドは他にいないんじゃないかなと思います」
 
――なるほど。的確にthe band apartの音楽的な特徴を突いていると思います。
 
三浦「とは言っても、川崎は元メタラーらしいし、メンバーによって方向性はそれぞれだと思うんですけど、メンバー4人全員が曲を作ってきても、各々にバンアパ像があってそれがあまりズレていない気がします。だから、20年近く続いているんだろうなと思うし、そこは基本的にほとんど俺が作っている□□□とも真逆ですね」
 
 
ボリューム的には4バンドと同じくらいの大宴会みたいな感じ(笑)
 
 
――そんな対照的でありながら親交を深める両バンドの、2マンでの全国ツアーがすでにスタートしておりまして、最終日ともなる大阪公演は10月30日(日)梅田AKASOにて行われます。
 
三浦「超長丁場で、毎回トータルで3時間半くらいになっていますね」
 
――長いっすね!
 
川崎「お互いのライブをメインに、今回の2つが合わさったものとアコースティックセットでもやるので、ボリューム的には4バンドと同じくらいの大宴会みたいな感じになっていますね(笑)」
 
三浦「適度に途中退席して、お酒とかを呑みながら楽しんでもらえれば(笑)」
 
 
Text by 吉本秀純



ライター吉本秀純さんからのオススメ!

「インタビュー記事では収まり切れませんでしたが、『前へ』ではバンアパの代表曲にして名曲『Eric.W』の演奏をバックにいとうせいこう氏の熱い長尺ラップが炸裂する『お前次第ってことさ feat. the band apart』(M-5)、ラストに収められた□□□らしいポップさが際立つとともに作品のアウトロ的な小品『あいまい』(M-6)も素晴らしい出来。『1』の方もバンアパの音楽が内包してきたいい意味で“オシャレ”な側面が際立ちながらも、凡庸で退屈な“ボサノバアレンジのヒット曲集”みたいなモノとは一線を画する仕上がりになっています。今後の両グループの関係のさらなる深まりも楽しみです」

(2016年10月25日更新)


Check

Movie Comment

ノリ抜群の逆プロモーション!?(笑)
□□□三浦&バンアパ川崎のコメント!

Release

□□□がバンアパを見事に調理した
新たな魅力引き出すコラボ盤!

Mini Album
『前へ』
発売中 1481円(税込)
asian gothic label
asg-035

<収録曲>
01. 板橋のジョン・メイヤー feat. 荒井岳史
02. 前へ feat. Lil E a.k.a. 木暮栄一
03. スニーカー feat. 川崎亘一
04. 神話具現 feat. 原昌和
05. お前次第ってことさ
feat. the band apart
06. あいまい

バンアパの歴代の名曲をリアレンジ!
初のアコースティックアルバム

Album
『1』
発売中 2407円(税込)
asian gothic label
asg-034

<収録曲>
01. higher 2
02. Eric. W (Acoustic)
03. light in the city 2
04. クレメンタイン 2
05. ARENNYAで待ってる (Acoustic)
06. Moonlight Stepper 2
06. Stanley 2
07. the same old song 2
08. coral reef (Acoustic)
09. 夜の向こうへ (Acoustic)
10. Capone (Acoustic)

Profile

クチロロ…’98年に三浦康嗣を中心に結成されたポップユニット。’04年に発表した初のアルバム『□□□』が高い評価を集め、’07年には坂本龍一が主宰するcommmonsからメジャーデビュー。’08年には様々な現場でサポートを務めるベースの村田シゲ、’09年には作家にしてラッパーのいとうせいこうが正式メンバーとして加入し、現在のトリオでのラインナップとなっている。

□□□ オフィシャルサイト
http://www.kuchiroro.com/


バンド・アパート…’98年結成。ロックだけにとどまらず、へヴィメタル、フュージョン、ソウル、ジャズなどの要素も独自の形で消化したサウンドで人気を集め、これまでにシングル9枚、アルバム7枚、ミニアルバム1枚などをリリース。近年には荒井岳史(vo&g)がソロ名義で2枚のアルバムも発表し、最新作の『プリテンダー』では□□□の三浦が全面的にプロデュースを担当している。

the band apart オフィシャルサイト
http://asiangothic.org/

Live

それぞれの曲もコラボ曲もの3時間半!
濃厚ツアーファイナル大阪が間もなく

 
『the band apart × □□□
 Smooth Like Antelopes TOUR』

【広島公演】
▼9月22日(木)セカンド・クラッチ
【福岡公演】
▼9月25日(日)Fukuoka BEAT STATION
【宮城公演】
▼10月7日(金)仙台CLUB JUNK BOX
【北海道公演】
▼10月9日(日)BESSIE HALL
【東京公演】
▼10月15日(土)STUDIO COAST
【愛知公演】
▼10月20日(木)名古屋クラブクアトロ
【石川公演】
▼10月22日(土)金沢vanvanV4

【香川公演】
▼10月28日(金)DIME

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード305-253
▼10月30日(日)17:30
umeda AKASO
オールスタンディング3800円
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
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自らへカウンターパンチを繰り返し
突き進むバンアパの最新モード
『謎のオープンワールド』を語る!
the band apartインタビュー