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「“考える”のではなく“感じる”」音楽
言葉に頼らない表現と無意識を伝える
孤高のplenty新体制初のフルアルバム
『いのちのかたち』全員インタビュー&動画コメント

 ‘14年は中村一太というドラマーが3年ぶりに正式加入したメモリアルな年でもあり、その体制でミニアルバム『空から降る一億の星』を発表。plentyがバンドとして進化を遂げたきっかけとなった作品から感じた初期衝動は美しかったが、昨年発表された3rdフルアルバム『いのちのかたち』では、メンバー3人がより固まり、広い視点から音楽を作り上げられていたように思う。ワンマンライブを1本に絞り、制作期間に費やした’15年。変わって’16年は、1月14日よりワンマンツアーで全国14ヵ所を1ヵ月で廻る。3人になったことで、ライブから得るものもダイレクトになってきているという。今回のインタビューではアルバム制作を振り返りながら、バンドがどう成長しているかを聞かせてもらった。そして、何よりもツアーを経てまた大きく成長するであろう、彼らの’16年が楽しみでならない。

 
 
’15年は制作の年にしようと
 
 
――中村(ds)くんが加入されて、オリジナルフルアルバムとしては初となる『いのちのかたち』は、どのような形で進められましたか?
 
江沼(vo&g)「(‘14年12月の)ツアーファイナルが終わって、ステージから汗を拭きながら楽屋に戻ったときに、すでにアルバム制作の話をしていたように思う。曲はあったし、’15年は制作の年にしようと。結果シングル2枚とアルバム1枚を出した感じですね」
 
――バンドとしても固まってきた時期なのかと。
 
新田(b)「ツアーに出て、みんなのグルーヴが出来たかなと」
 
中村(ds)「初めて3人で作ったミニアルバム(=『空から降る一億の星』)は、初めてのバンドとしての塊だったような気がしますね。初期衝動ですよね。でも今回は、それより腰を据えて考えられるようになりました。まぁツアー中も江沼は新曲のアレンジを考えたりしてましたし」
 
――その新体制初のツアー自体を振り返ってみて、いかがですか?
 
江沼「いい感じで出来てたんですけど、大阪で崩れたんです(笑)。それはいまだに悔いがありますね。で、東京で持ち直した感じです。“オリャアー!”で突っ走る粗削りな感じでした。なのでツアー中は“うわ~”と悩みながらも、曲作りはライフワークとして自然とやってましたね。いい意味でメンバーとケンカも出来てましたし、グツグツとなっている状態でアルバムをすぐに出したかった。冷めさせたくなかったので」
 
――“ケンカ”っていうのがまたいいですね(笑)。
 
江沼「ファンの人に“ケンカしないでください”と言われたこともありますよ(笑)。まぁディスカッションですよ! 本当に徐々にですがよくなってきてます。役割も見えるようになってきて、アレンジもメンバーに投げられるようになりましたから。アルバムには入ってないですけど、(中村)一太の曲もありましたしね。今回はまとまってますよ」
 



もっと言葉から、言語から、はみ出したところを伝えたかった
 
 
――2ndフルアルバム『this』(‘13)は中村くんの加入前の作品ですが、新田くんはいたものの、江沼くん1人で構築したところがあると当時語っていたのが印象的で。今回は3人で作ったバンドアルバムな感じがすごくします。
 
江沼「『this』は、建築物で言うなら基礎から全て自分で作る感じでしたね。今回は歌詞もそうですが、自然に感じたままを出せてます。ただ朝日に照らされ生んだというか、作った云々というより、そういうナチュラルさの方が大きいです。特に今回のテーマは“愛”という曖昧なもので、グワーッと作り上げたところで伝わらないですから。なので、感じたままにという風になりました。元々、音楽って計り知れない感じ…沸き立つ感じだと思うんです。だから今、やっと音楽をやってる気がする。音楽をやり始めた最初って、宇宙とつながったような気になるんですけど、今回はまさしくそうで。だから、テーマの“愛”を掘り下げても恋愛にならず、命とか宇宙にたどり着いた感じでしたね。“考える”のではなく“感じる”、言い方は単純だけど楽しまなきゃと思ってます。今さらかよ!という感じでもあるんですけど(笑)、形式や様式に惑わされなくなりました。もっと本質をというか…そういうものを歌詞として書きたくなったんです。言葉の雑さ、小ささに捉われてると、まとまったサイズで収まってしまうので…。もっと言葉から、言語から、はみ出したところを伝えたかった。自分が祝福されているのを感じたいというか」
 
――すごく広い視点で感じているのも伝わりましたし歌えてる、そしてバンドで演奏出来ている…そこに対して喜んでいることが伝わってきますね。
 
江沼「音楽は目に見えるわけじゃないですし、スポーツみたいに得点もなく、好きか嫌いしかないと思うんです。だからこそ、自分たちと音楽がつながってる感じが出せなかったら、意味がないというか」
 
新田「軸はしっかりしてるし、歌詞も広い視点から見える。あと、3人でスタジオに入って音を合わせることが多くなってきてるのも、いいことかなと考えてます」
 
中村「2人は常にこんな感じで、おもしろくやれてます(笑)。どんどん3人の関係も親密になってきてますし、俺にもいろいろ託してくれるようになりました。だから、楽しいし、嬉しいです」
 
江沼前回もそうだったんですけど、一太はボーカル録りも観に来るんです。俺より早く入ってますから(笑)」
 
新田「僕も一太に影響されて行ってみたら、まだ誰も来てなかったり(笑)」
 
中村「(笑)。“今回はこんな感じの歌い方か”とか、いろいろ分かるんですよ。自分の耳も感覚がよくなりますから」
 



歌詞に平仮名が多いのは、目から入る情報をなるべく削ぎ落としたかったんで
 
 
――楽曲の候補はたくさんあったのですか?
 
江沼「結構ありましたね。ツアーが終わった時点で10曲あって。まぁでも、今回は4曲しか入ってませんが。“作ろう”ではなく、ふわーっと湧き出てきた感じでしたね」
 
――『心には風が吹き 新しい朝をみたんだ』(M-1)が本当に好きで、ここから始まる感じがすごく強くて…。
 
江沼「アルバムは『心には~』で絶対に始めたかったし、こういう曲って今までなかったんですよ。多幸感があるし、シンプルなんだけどスクラッチとかいろいろな音も入っていて新鮮でしたね。自分も心を開いて作ったんです。だから、歌詞にも平仮名が多い。と言うのは、目から入る情報をなるべく削ぎ落としたかったんです。日本人って情報から入りたがるらしく、そういう美しさは大事にしたいけど、今回は感じて欲しかったので。目を使わせるではなく、耳で聴いて、それをイメージしてもらいたくて。だから、極論を言うと歌詞カードを付けたくなかったくらいで。小ざかしいこを抜きにして、耳でガッと掴みたいというか。言葉としての“いのち”だけでなく、音としての“いのち”があることも伝えたかったんです」
 
――多幸感で言うと、『子どものように』(M-3)も包み込まれる感じがすごかったです…。
 
江沼「歌詞も単純で、今までと比べると珍しいです。悟りを開いたというと大袈裟ですが、去年病気をしたことで、 “生まれたときから死ぬのが分かってる”のがどういうことなのか、改めて分かったというか。どうせ死ぬなら楽しい方がいいし、命を燃やし尽くさないと意味がないと思いましたね。そういう意味では、病気にも感謝しています」
 
――『Laundry』(M-9)についてもお伺いしたいのですが、“東京銀河”という歌詞にも何かゾクッときますし、弾き語りというのもアルバムのアクセントになっているのかなと。
 
江沼「弾き語りを入れるつもりはなかったんですが、気に入っちゃって。何でもないものが美しいというか、前回のミニアルバムとは違う深みが出ましたよね。あの初期衝動もよかったんですが、あくまで初期衝動は初期衝動でしかないし、いつまでも若々しくはやってられないですから。今回はデモの段階で、やり過ぎたバンド感からは離れていましたね。テーマもデカかったので、あたたかみが出た感じはします」
 
中村「模索はたくさんしましたけど、その分、発見のあるアルバムですね」
 
江沼「シンプルだけど深いし、淡々としている曲でも、ヘンなドラムを叩いたりしてますから。慎重に作業はしましたけど、本当に楽しかったですよ」
 
新田「どう曲を深くしていくかを自然に考えてましたね。ベースラインを提案したりもしましたし、世界観をガッツリ作れたと思います」
 
江沼「ブラッシュアップ作業だよね」
 
中村「江沼の頭の中にあるものをよくしていったり、そこに自分を近付けていく…そんな意識でしたね」
 
江沼「安心感がありましたよ。一太とはこういう作業が出来るんだと思えましたから」
 
新田「以前は“こう考えているんだけど、何で分かんないの!”と言われている感じだったけど、今は間に一太がいることで、そのフィルターを通しても考えられるので、分かりやすいですね」
 
江沼「翻訳機ですね(笑)。以前は1人で全てをしょい込んでましたから。ストレスも溜まってたし、それを曲で晴らしていく感じでしたね。だから、前は念というか…そんな感じでしたね」
 



音楽家として恥ずかしい仕事をしてはいけない
 
 
――ニューヨークでの作業も刺激になりましたか?
 
江沼「そうですね。エンジニアのグレッグ・カルビと一緒に仕事が出来ているのは大きいですね。あと、電圧が違うので、音も違いますから。音楽の捉え方も勉強になりますし、感謝と感動がありました」
 
中村「単純にすげーと本当に思いました。海外レコーディングも減ってきている中で、20代で経験出来たのはありがたいし、音楽家として恥ずかしい仕事をしてはいけないと思いました」
 
江沼「今後、海外にレコーディング作業で行けない時代が来るかもですから、本当にありがたいと思ってます」
 
――’16年にどんな新曲が聴けるのかも気になります。
 
江沼「もう作業は始めてて、デモも作ってます。ライブも’15年はワンマン1本と制作に集中してたので、’16年はライブを定期的にやりたいですね。ライブから得るものも増えてきてますので、どんどんやっていきたいです!」
 
 
Text by 鈴木敦史
 




(2016年1月29日更新)


Check

Movie Comment

謎のフォーメーションで贈る(笑)
雰囲気伝わるplentyの動画コメント!

Release

ポップでアヴァンギャルドな
バンドの充実期を刻んだ3rdアルバム

Album
『いのちのかたち』
発売中 2700円
headphone music label
XQFQ-1214

<収録曲>
01. 心には風が吹き 新しい朝をみたんだ
02. シャララ
03. 子どものように
04. 体温
05. above
06. ドーナツの真ん中
07. よい朝を、いとしいひと
08. 口をむすんで
09. Laundry
10. 夜の雨
11. さよならより、優しいことば
12. 愛のかたち

Profile

プレンティ…写真左より、中村一太(ds)、’88年11月20日生まれ。江沼郁弥(vo&g)、’88年9月24日生まれ。新田紀彰(b)、’88年4月8日生まれ。’04年茨城にて結成。’08年末、『COUNTDOWN JAPAN 08/09』に一般公募枠で出演。’09年、1stミニアルバム『拝啓。皆さま』を、翌’10年には2ndミニアルバム『理想的なボクの世界』を発表。’11年は2枚のEP『人との距離のはかりかた/最近どうなの?/人間そっくり』『待ち合わせの途中/終わりない何処かへ/空が笑ってる』をリリース後、ドラマーが脱退。さらには楽曲からインスパイアされた映像作品をパックしたSound Film Track『あいという』と、ストイックに作品を発表し続けた。’12年には集大成とも言える1stフルアルバム『plenty』に加え、3rd EP『傾いた空/能天気日和/ひとつ、さよなら』4th EP『ACTOR / DRIP / ETERNAL』を立て続けにリリース。’13年には2ndフルアルバム『this』、コンセプトアルバム『r e ( construction )』を発表し、次なるplentyを感じさせた。’14年1月に5thEP『これから/先生のススメ/good bye』を発表。8月には、中村がドラマーとして正式加入。11月にミニアルバム『空から降る一億の星』をリリース、新体制初のワンマンツアー(全国14ヵ所)を開催。’15年4月にはアナログシングル『体温』、7月には両A面シングル『よい朝を、いとしいひと/さよならより、優しいことば』、そして10月7日に現編成初となる3rdフルアルバム『いのちのかたち』を発表。’16年は1月14日よりリリースツアーをスタートさせている。

plenty オフィシャルサイト
http://www.plenty-web.net/

Live

台湾をも含むリリースツアー
大阪公演が間もなく開催へ!

 
『plenty ワンマンツアー
“いのちのかたち”』

【東京公演】
▼1月14日(木)吉祥寺 WARP
【新潟公演】
▼1月16日(土)NIIGATA LOTS
【宮城公演】
▼1月17日(日)仙台 darwin
【福島公演】
▼1月22日(金)club SONIC iwaki
【北海道公演】
▼1月24日(日)ペニーレーン24

【福岡公演】
▼1月30日(土)DRUM LOGOS

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード279-112
▼1月31日(日)17:00
なんばHatch
1Fスタンディング3800円
2F指定席3800円
GREENS■06(6882)1224
※6歳未満は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【長崎公演】
▼2月2日(火)DRUM Be-7
【熊本公演】
▼2月4日(木)熊本B.9 V1
【広島公演】
▼2月7日(日)広島クラブクアトロ
【石川公演】
▼2月10日(水)金沢AZ
【名古屋公演】
▼2月11日(木・祝)
エレクトリック・レディ・ランド
【東京公演】
▼2月13日(土)EX THEATER ROPPONGI
【台湾追加公演】
▼2月20日(土)高雄駁二 LIVE WAREHOUSE
 

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