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ドライなギターと美しきメロディが誘う異端のポップネス
plentyがたどり着いた異次元2ndアルバム『this』
静かに燃える闘志と音楽家としてのプロ意識を語る
江沼郁弥(vo&g)インタビュー&動画コメント

 昨年2月発表の1stフルアルバム『plenty』は初音源から約2年4ヵ月かけて完成した作品ということもあり、plenty節とも呼ぶべき彼らの全てが詰まった王道の内容となった。一転して今回の2ndアルバム『this』は、静かに燃えているとでも形容しようか…インタビュー中に江沼(vo&g)が何度も話すように、よりプロフェッショナルな職人気質で真剣にモノ作りをしたいという、彼の真摯で誠実な揺ぎない姿勢が反映された作品になっている。より自分と向かい合った作品を今回発表したことで、plentyの今後は開けていくだろう。バンドの歴史の中でも重要作と言える『this』の成り立ちに迫る。

plentyの2人からの動画コメント!

――初音源が出てから約2年4ヵ月かかって、昨年1stフルアルバム『plenty』が出ましたよね。今回はそこから約1年4ヵ月を経て、2ndフルアルバム『this』がリリースされました。改めて1stからのこの約1年4ヵ月を振り返ってもらえますか?
 
「ずっと曲作りをして、レコーディングをしていた気がしますね。1曲目の『プレイヤー』が出来たときに、“アルバムの方向性はこれだ!”と思ったんです。低くさっぱりした、ドライなテンションというか…静かに燃えている感じ。前作は“オレはこうやって進んでいくんだ”という、ドキュメンタリーっぽい感じもあったんです。4thEP『ACTOR / DRIP / ETERNAL』(‘12)からアレンジも全部自分でやっているんですけど、メンバーセッションから曲が出来る感じは、今はないですね。作曲の勉強もしているし、自分の中で可能性は広がっています」
 
――前作から、江沼くんとベースの新田くんだけの編成になったのも大きい?
 
「ドラマーが抜けた戸惑いはありましたね。でも、チャンスだとも思った。以前は弾き語りで曲を作って60%の出来、それをみんなに渡してから100%になっていたんですよ。でも、今は自分の部屋で作ったデモの時点で100%なんです。それを、みんなとブラッシュアップして100以上に出来る。ゴールはないので大変ですけど、とてもいいやり方だとは思います。より自分を晒していくというか…だから前よりも音楽を聴くようになりましたね」
 
――言葉も以前より強くなったと思います。
 
「そうですね、最初からつぶやいた言葉が、何となく出る言葉がスゴく強いんです。ノートに歌詞を書くんですけど、その時点で無視出来ない強い言葉なんですよね。それは何でかを考えてみたんですけど、前は“テーマ発信”だったんです。今は、今日出来たものに逆らわないし、逆らえない。『this』というアルバムタイトルも、身近過ぎて調べる言葉じゃなかったんですけど、本当の意味を知ったとき(=心理的に自分に属すると考える領域にあるもの、そのとき念頭にある考えを指すのに用いる)、“それだ!”とドカーンときて。みんなを振り回せるなって思ったんですよ」
 
――みんなを振り回すというのが印象的な言葉なんですけど、個人的に前作は本当にplentyのド真ん中の作品だったと思うんです。今回は、また違うものだなと。
 
「ファンの人だけを満足させるものを作るのは違うなって。西洋のお皿におにぎりを乗っける感覚というか…洋楽っぽい手触りで、さらっとしている感じ。これが受け入れられたら未来は明るいと思ったんです。今後どうなるかも分からないですけど、バンドに必要な曲ではなく、曲に必要なバンドになりたいなって。生まれてきた曲を、どう利用するかですよね。今回も前作を破壊したいとかではなく、弱くて分かりにくいんだけど光を発見して、その光に突き動かされて、気付いた結果ですね」
 
――アレンジを自分でやるというスタイルは、今後も続く感じでしょうか。
 
「長い目で見たらドラムも入れたいというのもありますし、今回は俯瞰でドライに描いたものなんですね。まぁ、もうしばらくはこういうスタイルが続くとは思います。責任感も出てきますから。セッションだけで作り上げると、自分だけの曲じゃないと思うこともある。でも今のスタイルだと、全く言い訳が出来ない。本来、モノを作る人はこうあるべきですから。“激シブ”とか言われますね、今回のアルバムは。相方自体も、この感じについてくるのがギリギリですよ(笑)。とにかく曲を鍛えたいし、世間に晒していきたい。自己満足をしたければ、家で趣味でやればいいだけ。真剣に向き合わないと、世間にバレますから。僕はデモのベースも弾けないといけないし、逃げられないので緊張感は生まれますよ。こうやって、誰かがリーダーシップも取らないといけないですし。“世直し感”と言うと、あれですが…世の中が軽薄になっていると思うんです。ちゃんとトライ&エラーをしていない。失敗していくのも、自分を知る作業だと思うので。今の人は、そういうことをしなくなっていますよね。ジャケ買いも、意味があるじゃないですか。ネットって、ある意味兵器だとも思うんです。簡単で便利なのはいいけど、あまりにも度を過ぎると寂しいし、感動がなくなる。親切過ぎてもいけないというか」
 
――今の話を聞いてても思うんですけど、より職人気質が出てきていると思うんですよ。
 
「そうですね。ちょうどテレビで天ぷら職人のドキュメンタリーがやっていて、サービスとおもてなしの違いについて話されていたんです。サービスは、受けている人間がされていると分かっちゃうものなんですよ。でも、おもてなしはお客さんの動きを見ながら、自然に感じて、自然にしていくこと。それこそ、お茶を右手で取るか左手で取るか、そこから感じてやっていくことだったり」
 
――さりげないことなんだけど、確実に必要なことだったりするもんね、そういうことって。
 
「本当の感動があるいいものが残っていって欲しいんです。今、作り手の愛が滲み出ていない楽曲が多過ぎて…。パソコンで作業時間を短縮出来るのはいいですけど、想いまで軽薄にしたくない。軽々しく歌いたくないんです。激シブの職人に憧れているんでしょうね(笑)。文字と文字の間に人柄が見えてくるようになりたいんです。中途半端なことをしないで、生きてきた全部をつぎこもうと、覚悟は決めていますから」
 
 
Text by 鈴木淳史



(2013年7月 1日更新)


Check

Release

40分間の異世界へとトリップ!
1年4ヵ月ぶりの2ndアルバム

Album
『this』
発売中 2500円
headphone music label
XQFQ-1209
※高品質CD“Blu-spec CD2”仕様

<収録曲>
01. プレイヤー
02. 或る話
03. 劣勢
04. fly&fall
05. 境界線
06. somewhere
07. まだみぬ君
08. 手のなるほうへ
09. よろこびの吟
10. いつかのあした

Profile

プレンティ…写真左より、江沼郁弥(vo&g)、新田紀彰(b)。’04年茨城にて結成。’08年末、『COUNTDOWN JAPAN 08/09』に一般公募枠で出演を果たし、’09年10月には1stミニアルバム『拝啓。皆さま』を、翌’10年4月には早くも2ndミニアルバム『理想的なボクの世界』をリリース。’11年に入り、1月に『人との距離のはかりかた/最近どうなの?/人間そっくり』、5月に『待ち合わせの途中/終わりない何処かへ/空が笑ってる』と立て続けにEPをリリースするものの、7月にはドラマーが脱退。12月には楽曲からインスパイアされた映像作品もパッケージされた新しい試みであるSound Film Track『あいという』を発売。ストイックに作品を発表し続けた’11年を経て、’12年2月には今までの集大成とも言える1stフルアルバム『plenty』を満を持してリリース。8月と11月には立て続けに3rdEP『傾いた空 / 能天気日和 / ひとつ、さよなら』、4thEP『ACTOR / DRIP / ETERNAL』を発表。今年5月29日には待望の2ndフルアルバム『this』をリリース、現在は同作に伴う『梅雨ワンマンツアー』を、サポートミュージシャンに中畑大樹(ds)、ヒラマミキオ(g)を迎えて4人編成で敢行中。

plenty オフィシャルサイト
http://www.plenty-web.net/


Live

中畑大樹(ds)&ヒラマミキオ(g)
を迎えたツアー大阪公演!

Pick Up!!

『plenty 2013年
 梅雨 ワンマンツアー』

【大阪公演】
チケット発売中 Pコード194-792
▼7月6日(土)18:00
オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)
全席指定3800円
キョードーインフォメーション■06(7732)8888
※6歳未満は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
チケット発売中 Pコード194-972
▼7月13日(土)18:00/14日(日)17:00
渋谷公会堂
全席指定3800円
ディスクガレージ■050(5533)0888
※6歳未満は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

Column

覚悟は音楽を変える
バンドとして、人間としての
変遷のドキュメンタリー
進化×深化×真価の一枚
前作『plenty』インタビュー