『もうガマンでけへんわっ!』直前特別企画-前編-
【永久保存版】忘れられない、最後の記憶――
結成10周年記念セルフカバーアルバム『and10(2003~2013)』
そして、泉健太郎(b)の脱退を語る。セカイイチ全員インタビュー
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その知らせを初めて聞いたとき、耳を疑った。’03年の結成より今年で10周年、‘05年のメジャーデビュー以来、グッドメロディ&生命力溢れるライブでオーディエンスを魅了してきたセカイイチの、アニバーサリーなセルフカバーアルバム『and10(2003~2013)』のリリースから間もなくして報じられた、泉健太郎(b)脱退のニュース…。岩﨑慧(vo&g)が音頭を取り、セカイイチをバックバンドにゲストボーカリストを招いて開催されるイベント『もうガマンできないよっ!』をヒントに、この10年間の歩みの中で出会ってきた10組の豪華アーティスト(右記)が集った、同作の完成直後に勃発したメンバー脱退というバンド最大の危機を、セカイイチはどう乗り越え、未来へと向かったのか? オリジナルメンバーでの地元大阪ラストワンマンの日に行われたメンバー全員参加の最後のインタビュー、そしてそのワンマンのレポートを、前後編にわたってアウトプットするこの永久保存版にして特別企画。まずは、『and10』について、脱退について、シメっぽさゼロで語ってくれたかけがえのないインタビューをご覧あれ。これが、10年の重さとあたたかさだ。セカイイチは、続いていく――。
今までいろんなことをやってきたセカイイチを
ここで1本の線で結べるんじゃないかなって
――まずは10周年イヤーにこういうアルバムを出すことになった経緯から聞きたいんやけど。
岩﨑(vo&g)「スゲェ正直に言っちゃうと、最初はオリジナルアルバムを作ろうと思ってたんですよ」
――別に10周年云々じゃなく。
岩﨑「じゃなく。でも、ここらで一発ベストアルバムを作って欲しいとレーベルに言われ、まぁそれもなるほどと。でも、単純に過去の曲を入れるだけやとちょっとオモシロくないから再録しましょうってことになり、ただ再録するだけでもパンチがないよねって。じゃあ俺がやってる『もうガマンできないよっ!』っていうイベントでいろんなゲストボーカリストとのつながりもあるので、この10年で知り合ってきた仲間、尊敬する人たちに祝ってもらおうと。そういう厚かましいお願いをして、こういう形に」
――そこに対してはメンバーはみんな同じテンションやった?
吉澤(ds)「僕は普通にベストを出しても良いかなって思ってたんですね。ライブで結構やってる『あかり』『あたりまえの空』『ぷれぜんと』とかが入ってるアルバム『セカイイチ』がもう手に入らないんで」
――マジで!?
岩﨑「もうね、ないんスよ」
――廃盤ってことか…時代やね。
吉澤「下手したらamazonみたいなサイトで定価より高く出てるぐらいなので。でも、ライブで音源が欲しいんですって物販に来てくれる人もいたりして、もったいないというか、せっかくやし聴いて欲しいなぁって。10周年ということもあるし、ただのベストでもいいから、代表曲の音源の救済をしたいなぁとは思ってましたね。でも、やっぱり普通にベストを出しても、従来そのバンドのことを知ってる人にしか広がらない。せっかく出すのであれば、これをきっかけにさらに多くの人に知ってもらえるような作品になればいいなぁと思ってたんで、このやり方に行き着いたときは、これは作り甲斐があるなぁって思いましたね」
――そういう意味で言ったら、この作品にはいろんな人が出入り出来るもんね。
岩﨑「ヘンな話ですけど、いろんなファン層が行き交うコミュニケーションツールになってもオモシロいし。尚かつそれに、セカイイチっていうフィルターを通させてもらってることがスゴく嬉しくて」
泉(b)「そういう流れでゲストボーカルを入れて再録する話が出て、僕は単純にオモシロいなって。セカイイチのオリジナル作品をライブをずーっとやってきた側面、それぞれのメンバーがサポートとかプロデュースで他の人の作品に顔を出したり、『もうガマンできないよっ!』では、ゲストボーカルを迎えてバックバンドに徹する。今までやってきた点と点がここで一気に線になって、今までいろんなことをやってきたセカイイチを、ここで1本の線で結べるんじゃないかなって」
岩﨑「企画の段階でもうオモシロそうな匂いがめっちゃしてた。改めて昔のテイクを聴いて、新しく録り直すにあたって今回は初恋の嵐の隅倉(弘至)さんも共同プロデューサーで入ってくれて。隅倉さんの機材も貸して頂いてね。サウンド面でも随分カッコ良くなったなって」
――自分たちの曲を改めて顧みる、掘り下げる機会にもなったと思うけど。
岩﨑「やっぱり10年もこういう曲をやってきたわけで、第三の目なんかもう持てないですよ(笑)。なのでそういう意味でも、隅くんが入ってくれたのはスゴく大きくて。“ここをちょっとシェイプしよう”とか結構サラッと言ってくれたりして、それが僕らにとってもスゴく新鮮で、すんなり入ってきたというか。尚かつ隅くんって関係としては実は深くて。11年前からの付き合いなんですよ」
――じゃあ別に昨今の初恋の嵐のプロジェクト云々じゃないんや。
岩﨑「違うんですよ。もちろんそれはきっかけの1つなんですけど、そもそも初恋のプロジェクトに僕が参加したのも、11年前に、当時3ピースやった頃のセカイイチと初恋の嵐が名古屋で対バンしたんですよ」
――そうなんや!
岩﨑「そこからお付き合いがあって。僕らは当時まだ上京してなかったんですけど、上京してからスゴいよしなにしてくれてっていう古い付き合いなので、セカイイチの在り方を初っ端から知ってくれてる。そういう人もなかなかいないし、尚かつ今第一線でベーシストとしてもやってる力量、関係性、全部含めて今のセカイイチにピッタリだなと思ったのがはじまり」
――じゃあここもやっぱり、点と点がっていう話やね。
岩﨑「そうなんですよね」
全ての歌に愛を感じる
――隅倉さんの話もそうやし、『and10』に参加してくれてるアーティストも、やっぱり取って付けた感が一切ないもんね。セカイイチがやってきたことを、メンツでも表してる。
岩﨑「ぶっちゃけこのゲストの皆さんには、メンバーが直で電話してまずアポを取って(笑)。大人のパワーを一切使ってない」
――さっきセカイイチのフィルターを通してっていう話があったけど、他の人が歌うことによって、逆にセカイイチの曲自体が浮かび上がることも感じつつ、この人全部持っていくよな~っていうのもありつつ(笑)。
(一同笑)
岩﨑「山田(将司 from THE BACK HORN)くんとかはもう、歌力がスゴくて。“俺もう歌わなくていいんじゃない? イヤむしろ聴いていたい”って(笑)。参加してくれた1人1人バランスも違うし、そういうディレクションを自分でやるのも初めてなんで。オモシロかったですね」
吉澤「いろんなボーカリストが自分の中でちゃんと咀嚼して歌として表現してくれてると思うんですけど、それがその人のセカイイチっていうバンドなり、音楽なりの解釈に直結してる気がしました。全ての歌に愛を感じるし」
――俺もそれはスゴく思った。
吉澤「それはホントに聴いてて嬉しかったですね。さっき奥さん(=筆者)が言ってくれたみたいに、ホントに取って付けた感がないし、ちゃんと呼んだ理由がある人たちばかりなので。そういう意味でも幸せです、こういう作品を作ることが出来て」
中内(g)「あと、“この曲はあの人に歌ってもらったらいいやろうな”っていうのと、逆に人が先に浮かんでから“あの人にこの曲を歌って欲しい”っていうマッチングが、めっちゃウマいこといったなって。楽曲の色合いが変わるのは何となく想像してたけど、曲と歌い手さんの合点の仕方がスゴい。だから聴き応えが全曲にあるんでしょうね」
泉「今回って録るときにクリックを聴かずにやってる曲も多いんですよ。そのセカイイチのグルーヴの中で、ボーカリストも同じようにクリックを聴かずに挑んでくれて。難しいやろな、大丈夫かなとも思ったけど、やっぱり百戦錬磨のボーカリストばっかりやからそんなことを微塵も感じさせなかったし、それすら飛び越えた自分の表現、自分のスタイルがあって、しかもそこにセカイイチの音がある。ものスゴくハッピーなレコーディングでしたね」
――あまりにも違和感なくてビックリする曲とかあるもんね(笑)。
岩﨑「アナログ(フィッシュ)の(佐々木)健太郎とかね(笑)」
――そうそう!(笑) その『シルクハット』が1曲目やから、“このアルバム、この感じでずっと行くのか…?”って。
(一同笑)
岩﨑「みんな独特の準備の仕方というか、スタイルがやっぱあるんスよね。歌う前とかは特に。それはめちゃくちゃオモシロかったですね。それこそアナログの健ちゃんとかは、1人スタジオでブツブツ言いながら、ずっと壁に向かって走って」
――壁に向かって走る!?
岩﨑「アスリートみたいに、何かその場でずっとアップしてるみたいな(笑)。髭の須藤(寿)とかは、“オッケー、やるぞオメェら”みたいに、ホントに矢沢永吉さんみたいなノリでやったり(笑)。(宮田)和弥さん(JUN SKY WLKER(S))とかは、スタジオに来て、握手して、“じゃ歌おうか”って言って、3回歌って終わりましたからね」
――ウッチーが遅れてスタジオに来たら録り終わってたっていうやつね(笑)。
中内「そう、完全に(笑)」
岩﨑「15分で終わりましたもん」
中内「スゴいなぁ…」
――それこそ和弥さんとかは、もう楽曲乗っ取り型ですよね、完全に。
泉「アハハハハ!(笑)」
岩﨑「聴いててもう、“この曲ジュンスカかな?”って(笑)」
(一同笑)
――冒頭からセカイイチの楽曲とボーカリストの持ち味とのいい中和感が続いたところで、和哉さんの『ニューカマー』(M-6)にきて強烈過ぎる存在感(笑)。
岩﨑「でも実は、Chageさん(CHAGE and ASKA)からそれは始まってるんですよ」
――いや~Chageさんもスゴかったね(笑)。
岩﨑「Chageさんの歌が送られてきてそれを初めて聴いたとき、うわ~こりゃ“ハンパねぇな!”って(笑)。メンバー4人で、“もう何て歌が来たんでしょ! スーゴいなぁ!!”って盛り上がって」
――いや俺もそれは思ったね。スゴいね。
岩﨑「いやもうホントに、ただ圧倒されました」
吉澤「素晴らしいよね」
岩﨑「ほんで速攻“Chageさんホンマにありがとうございます!”ってメールして。じゃあそれに対して、“いやいや、今55の俺の歳なりの歌を、ただ全力で入れました。本当にいい曲をありがとう!”って返って来て…ぶっちゃけChageさんに抱かれてもいいと思った(笑)」
(一同爆笑)
吉澤「これ奥さんやから多分載せると思うで(笑)」
――そら載せるでしょ~今んとこほぼ載せやで(笑)。
(一同爆笑)
泉「要注意人物(笑)」
岩﨑「全然良いです。想定内です。今まで想定の中でずっと喋ってました(笑)」
(一同笑)
――いや~Chageさんもスゴいよね、やっぱり。
泉「Chageさんも和弥さんも歌があまりに入ってきて、“あれ? コレ俺演奏してたっけ?”って感覚に陥るくらい」
岩﨑「なるなる(笑)」
泉「いや~素晴らしいボーカリストでしたね」
この10年間、音楽を通して仲間になれたことは
自分たちが誇れる出会いでしたね
――今回参加してくれたボーカリストは新人からベテランまでおるけど、長くやってる人、ここまで歌い続けられてる人は、やっぱりその理由を感じさせられるよね。他人の歌を歌うことで、かえって明確に分かるというか。
岩﨑「増子(直純 from怒髪天)兄さんとかはまさに。“慧くん、俺はミュージシャンじゃない。でもバンドマンではある”ですから。あの人がやってきた怒髪天のドラマチックな流れって、すでに感動的じゃないですか。30年やってきて、来年には初の武道館が控えてる。ある意味、バンドマンの想いみたいなものも全部乗せていってるんですよね。そんな人が『バンドマン』(M-10)を歌ってくれるってことは、僕らのようなバンド、要するに他のバンドの人たちからしても、“コレはヤバい!”ってまずなるんですよ。今回のアルバムって、まず増子さんの人選から始まったんですよ。もう絶対に『バンドマン』は増子兄さんに歌って欲しい、増子兄さんじゃないとって。それ以外思い付かなかった。増子兄さんの『バンドマン』が聴きたかった」
――やっぱりこの歌が発表された当時、それこそホントにバンドマンからの支持がスゴかったもんね。それもセカイイチがある意味背中を見せる世代にもなってきて、そこまで続けたからこそ響くというか、説得力があった曲やと思う。今って何を歌うかも問われるけど、誰が歌うかの時代でもあると思うから。それこそ増子さんが歌うだけで、伝わるモノがスゴくある。人を問われるというかね。
岩﨑「まさに。でもやっぱりそうやと思うんですよ。歌を歌うとか音を奏でるなんて、もうその人間性を出してナンボの世界やし、長くやるんやったらそれが武器やし。若手の人もベテランの人も、今回はみんなそれがめちゃくちゃ出てるから。そういう人たちとこの10年間、音楽を通して仲間になれたことは、自分たちが誇れる出会いでしたね」
――そう考えたら、10周年にちゃんと心に残るモノが出来たよね。
岩﨑「そうですね。俺が今心配してるのは、次のオリジナルアルバムをどうしたらええねんっていう」
――自分それやる言うてたやん、最初に(笑)。
岩﨑「アハハハハ!(笑)」
(2013年6月 6日更新)
Check
Release
豪華ボーカリストとコラボで魅せる
この10年の歴代の名曲の数々
Album
『and10(2003~2013)』
発売中 3150円
tearbridge records
NFCV-27339
<収録曲>
01. シルクハット
and 佐々木健太郎(アナログフィッシュ)
02. あかり
and 田中和将(GRAPEVINE)
03. Step On
and 恒吉豊(Over The Dogs)
04. RAIN/THAT/SOMETHING
and オカモトショウ(OKAMOTO'S)
05. 虹
and 山田将司(THE BACK HORN)
06. ニューカマー
and 宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))
07. kids are alright
and Chage(CHAGE and ASKA)
08. ぷれぜんと
and 小南泰葉
09. ふりだしの歌
and 須藤寿(髭)
10. バンドマン
and 増子直純(怒髪天)
11. 真ん中の歌 ※新曲
Profile
セカイイチ…写真左より、泉健太郎(b)(※'13年3月をもって脱退)、吉澤響(ds)、岩﨑慧(vo&g)、中内正之(g)。‘01年-、ソロ活動をしていた岩﨑が吉澤を誘い大阪にて結成。アコギボーカルとドラムという形態でのライブを経て、前ベースが加入。’02年、ベースの脱退にあたり当時ベーシストだった中内に声をかけるも、「ギターでなら入ってもいい」と返答。にも関わらず、初練習の日に初ライブを敢行し即日加入。’03年、サポートを務めていた泉を、岩﨑が美しい月の下で口説き落とし現体制に。ミニアルバム『今日あの橋の向こうまで』をリリース、初のワンマンライブを十三FANDANGOにて開催。’04年、1stシングル『ふりだしの歌』をリリースし、上京。’05年、2ndシングル『石コロブ』にてメジャーデビュー。以降、『淡い赤ときれいな青と』(‘05)『art in the EartH』(‘06)『世界で一番嫌いなこと』(‘07)『セカイイチ』(‘09)『folklore』(‘11)『The Band』(‘12)の6枚のアルバム、ミニアルバム『Another Second Hand』('11)、『虹』(‘05)『in the ART』(‘06)『RAIN/THAT/SOMETHING』(‘07)『あかり』(‘08) 『Step On』(‘10)の5枚のシングルと、配信シングル『ぷれぜんと』(‘08)、DVD『Top Of The Clips』('09)をリリース。ライブも精力的に行っており、自身のツアーやワンマンライブに加え、アナログフィッシュ、髭、LUNKHEAD、おとぎ話らとのスプリットツアーや、自主企画ライブ『光風動春』、岩﨑慧が音頭を取りセカイイチがバックバンドを務めるイベント『もうガマンできないよっ!』等を開催。さらには、岩﨑はソロ、吉澤は小南泰葉etcのライブサポート、中内はf4-highのvo&gを務めるなど、その活動は多岐にわたる。’13年2月6日には、結成10周年記念セルフカバーアルバム『and10(2003~2013)』をリリース、3月をもって泉が脱退。現在は3人にサポート加え活動中である。
セカイイチ オフィシャルサイト
http://www.sekaiichi.jp/
Live
『and10』、そしてBIGCAT再び!
J(S)W宮田らを迎えたもうガマ大阪編
『もうガマンでけへんわっ!』
チケット発売中 Pコード200-941
▼6月8日(土)18:00
心斎橋BIGCAT
オールスタンディング3500円
[共演]宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))/山森大輔(SKA SKA CLUB / ROCK'A'TRENCH)/岩﨑愛/恒吉豊(OverTheDogs)/隅倉弘至(b)/山本健太(key)
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
チケットの購入はコチラ!
Special!!
【永久保存版-後編-】はコチラ!
泉健太郎(b)ラストスタンド!
結成10周年記念セルフカバー
アルバム『and10(2003~2013)』
地元大阪レコ発ワンマンを
感動のプレイバックレポート
Column
新境地と王道入り乱れる
セカイイチの2年ぶりのアルバム
『folklore』の核に迫る!
'11年のメンバー全員インタビュー
「間違いなく僕らの最高のアルバム
になるのは分かってた」
最高傑作と自負するアルバム
『セカイイチ』('09)インタビュー