「間違いなく僕らの最高のアルバムになるのは分かってた」
セカイイチが最高傑作と自負するアルバム
その名も『セカイイチ』を携えいよいよツアーへ!
メンバー勢揃いのインタビューをお届け
駿台予備校のCM曲としてオンエアされ反響を呼んだ優しい名曲、『あたりまえの空』が話題のセカイイチ。今曲をはじめ、先行シングルの『あかり』、配信限定でリリースされた『ぷれぜんと』を収録した最新アルバム、その名も『セカイイチ』を2月25日に発売。打ち込みやシーケンスを多用した前作から一転、“まさにセカイイチそのもの”なロックンロールを鳴らす痛快なアルバムが誕生した。「一番のグルーヴ・アルバム」と最高傑作を自負するアルバムに付けられたタイトルが、その自信と充実感を物語る。間近に迫ったリリースツアー初日、4月12日(日)梅田Shangri-Laを前に、改めてバンドとして大きな一歩を踏み出した4人のインタビューをアウトプット!
――セカイイチにとって’08年はどんな年だったと?
岩﨑(vo&g)「まぁ収穫の1年、バンドとして明らかに前進した1年でしたね。ライブでのスキルアップとか、お客さんとの手の取り方とか、もちろんアルバムメイキングしかり、すべてがフラットになって転がっていくのが目に見えて分かる1年でしたね」
――他のみんなはどう?
中内(g)「ものすごくグルーヴが出来上がった年じゃないかなと。それはメンバーだけじゃなく、周りのスタッフという形でも。その集大成が去年の末に出来たこのアルバムで。『セカイイチ』というアルバムに、すべてが集約されてると思う」
吉澤(ds)「振り返ってみれば『あかり』(M-7)しか出してなかってんなぁって改めて思ってしまうぐらい、外への見え方はシングル1枚だったかもしれないけど、内部ではいろいろとうごめいていたなと。ライブもいっぱいやったけど、結果的には『セカイイチ』を出すための1年やったんかなぁって気はしますね」
泉(b)「いろんな試みが出来た1年やったなぁと。これほど大きくバンドとして1歩、確実に踏み出したと見える1年はちょっとなかった。この1歩が面白いものになりそうだなという期待が’09年にはありますね」
――みんな共通して確かな手応えと前進する感覚があって、そのすべてがこのアルバムに向かってるという感じで。前作『世界で一番嫌いなこと』は割とコンセプチュアルなアルバムだった思うけど。
岩﨑「まぁ前作はかなり問題作ですよ(笑)。で、今回はやっぱ勝負作ですよ(笑)」
――なるほど(笑)。あのまま突き進むんじゃなくて、あの作品を踏まえたうえでの今回の方向性だと思うけど、次のアルバムはこういうものにしよう、とかいうのはあった?
岩﨑「すごく…堂々と“ポップス”をやるんだと。それは自分たちでも分かってて。細かいことをやるのはもういいかなと。もっとドカンとした、胸を張って出来る曲を作ろうと」
――前のアルバムの反動というか、ある種のやり切った感があったというか。
岩﨑「ふり幅がかなり広がったし、ここから何やってももう、俺たちの音になるっていう確信もあったんですよね。だから、堂々とそれを手法として使うもよし、堂々とポップスをやるもよし。そういう意味では楽になりましたよね。今から思えばメンバーそれぞれのアイディアもすごく活きてる。そういうフランクな空気の中で作れたのがすごくよかった」
――レコーディングの作業的にもブレないというか、みんなが同じ方向目指していく感じで。
吉澤「一緒の方向を見てたことは今ままでもあったんだろうけど、その焦点の絞り具合がスゴいというか。今回はフォーカスがちゃんと定まってて、だからどうしていこうかっていうアイディアも出せたし、さらにそれを活かしていこうっていう現場の雰囲気も今までで一番よかったし。やってみてダメならいいかっていうこと含め、一番クリエイティブな空気やったと思いますね」
――前作からその兆しはあったけど、セカイイチに長年憑いてた憑き物が取れて、ホンマに解放されて進んでいく感じがするね(笑)。
岩﨑「そうやね~(笑)」
――大人の余裕すら感じるような。遊んでますね。
岩﨑「バカなことを一生懸命やりましたねぇ(笑)。でも、ブレないところはすごく“ポップ”だということだと思うんですよね。それがスゴく良かったなぁと思ってて。いろいろバラエティに富んでる分、バラけてしまうんじゃないか?という恐れも当初はあったんで。全然そんなことなく聴けるなぁと」
――“これはいいものが出来る!”っていう予感は作業中からあった?
岩﨑「あったあった! だから『セカイイチ』って付けた。間違いなく僕らの最高のアルバムになるのは分かってた」
中内「もうひたすら雰囲気はよかったですね」
岩﨑「曲作りとかしてても、前までだったら“こうしたい”っていう意図を伝えきるのにすごい時間がかかってたんですよ。今回は全然そんなことなくて、“ああしたい”“こうしたい”って漠然と伝えても、それぞれが焦点を合わせてきてくれて、すごく作業がはかどるんですよ。=魔法がかかっていくんですよ。それがね、すごくやりやすかった」
――タイトルが『セカイイチ』っていうのは最高傑作だと自負することもあるだろうけど、聴いてみると、今まで3枚メジャーでアルバム出してきて…これが一番、“セカイイチ”だなと思った。最高傑作だから『セカイイチ』っていう由来もあるけど、“セカイイチそのもの”だから『セカイイチ』なんだって。
岩﨑「そうですね~」
吉澤・泉・中内「うんうん」
岩﨑「それ以外の名前が思いつかなかったですね」
――音でちゃんと“遊べてる”というか。今回は『甘い情熱』(M-8)のホーンにSOIL&“PIMP”SESSIONSも参加してたりするけど、この辺はどこから?
岩﨑「ライブを一緒にさせてもらったときに、メンバー全員が感動して。いつか一緒に制作できたらいいよねという話をしていて。『甘い情熱』って曲が出来たとき、真っ先にホーン入れたいと思って、お願いしてみました」
――SOILのイメージから、もっとアッパーな曲で参加してるのかと思ったら、メロウだったのもスゴくいい風に作用してるというか。『Oil Shock』(M-10)もスゴいね…これメタルやん!って(笑)。
岩﨑「アラブ・メタルです(笑)」
――タランティーノ映画にかかってそうなね(笑)。あと、今回『あたりまえの空』(M-3)には遂に大型タイアップが(笑)。この曲はヤバいな、この曲はスゴい。
岩﨑「きたきた~!」
吉澤・泉・中内「おー!」
岩﨑「嬉しい」
――セカイイチのアルバムを聴いてここまで泣きそうになったのは初めてかも。この1曲のパワーが、このアルバムに安心感を与えてくれるというか。これはどういうきっかけで出来た曲?
岩﨑「メンバーみんなの前で即興がてら作ったんかな? みんなが聴いてくれてる前で“ヒットしたら言って”ってどんどん即興で歌っていくっていう。それでモノすごくいっぱい…15~16曲出した後に、“あかん、もう疲れた”ってときに(笑)出てきたのがコレです(笑)」
――え? コレを、即興で作った??
岩﨑「即興で作ると、こういう風になるんですよ(笑)」
一同「わはははははは!(笑)」
――今、健ちゃん(泉)、何かを言いたげだったけど…(笑)。
泉「いやいや(笑)。いつもの曲作りのやり方と言ったらそうなんやけど、この時期MDに録音してた曲数を見たら、1日20~30曲なんですよ。それが毎日やから、もう100曲以上断片的なものはあって。その中で僕は自分が聴いて“良い”と思ったときは、何が何でも絶対にその曲を完成させたい欲求に駆られるんですよ。『あたりまえの空』のサビを初めて聴いたとき、風が吹いた感じがしたんですよね。これは真っ先に完成させたい、すごくいい曲だっていうのは、みんな感じてたと思うし」
中内「なんかド・ストレートにきたなと。思いっきりキャッチャーミットのド真ん中にバシッと投げ込むような」
――なんかセカイイチ史上最も売れそう…というか…(笑)。
泉「感じてることはみんな一緒です(笑)」
岩﨑「なんでこれシングルで出さんかったんや(笑)」
中内「わはははははは!(笑)」
吉澤「いろいろあるからね(笑)」
岩﨑「まぁこの1曲聴きたいがために、アルバムを買ってもらえれば(笑)」
――響ちゃん(吉澤)は初めて聴いたときどうだった?
吉澤「やっぱりスゴいパワーはあったし。歌詞がない時点でも、イメージが湧くんですよね。言葉にはなってないけど、慧の内部ではうごめいているであろう、何かを伝えたい欲求とか、曲のイメージはすごく伝わってくるので」
――今回は『ぷれぜんと』でもそうなんだけど、バラードのパワーがスゴいと思って。圧倒的な生命力というか。だから他の曲で遊んでも大丈夫というか。セカイイチが売れるとしたらって言ったら言い方ヘンだけど…(笑)。
岩﨑「ははは!(爆笑)」
――もしかしたらバラードなのかも?って思わせるくらい感動的な曲たちというか。実際、アルバムが出来上がったときはどう思った?
岩﨑「とにかくスゲェのが出来たなと。ポップスやけどすごいカウンターカルチャーなアルバムでもあるし。そういう力をすごく感じましたね」
泉「なんか自分らの作品やけど、自分らのものじゃないみたいなデカさを感じたというか。それだけパワーがあるし、大人の感じと自分らが今まで持っていた感じ、表現したいことが合致したというか」
吉澤「作ってるときはあんまり全体が見えてなかったんですよ。割と1曲1曲必死やったし(笑)。でも全体通して聴いてみたら、“セカイイチってこんなバンドやんなぁ”って思いましたね。これまでやってきたことなり、今からしたいと思ってることが全部入ったなと」
中内「ぶっちゃけ……めっちゃいいと思ったんですよ!(笑) 自分が大好きでリスペクトして持ってるアルバムがあるじゃないですか? そのアルバムと勝負できるんじゃないかと。今まで一番聴いてると思いますね…ギター弾いてるのは僕なんですけど(笑)、ホントにいちリスナーとして客観的に音が入ってくることがあって。録ったときの感情を越えてCDになってる。ちょっと気を抜くと他人が弾いてると思ってしまうぐらい、ものすごい作品になったなと思いましたね」
泉「そんな感覚になるのは初めて」
――ラストの『素晴らしい世界』(M-13)は最後に出来た曲?
岩﨑「そう。アルバムを作ってて、何か足りないなぁと思ってたんですよ。みんなに話してはなかったんやけど。そしたら電車に乗ってるときにメロディがパコーンと出てきて。ホントに出来たときから最後の曲になるって決まってた感じがしましたね」
――歌い方にもグッとくるね。
岩﨑「ライブみたいですよね。録るのに10回くらいかかったけど(笑)」
中内「わはははははは!(笑)」
岩﨑「すげぇ疲れた(笑)」
――セカイイチがどういうバンドなのか?っていうのが、ようやく定まったようなアルバムですね。
岩﨑「僕らはすごい雑食やと思うんですけど、簡単に言っちゃうと音楽が好きなんですよ。だから音楽が好きな人なら、たぶん好きになってもらえるアルバムだと思います。ホント今はゴキゲンにやってます」
――そうそう! そう思った。
岩﨑「作ってる側がそういう気持ちでないと、やっぱ良くないと思うし。こんなご時勢…とかいう気はないですけど(笑)、ゴキゲンなナンバーを聴いてもらいたいし、このアルバムを聴いてワッハッハと笑って欲しいしね」
――なんか…負の要素がないというかね。いい意味で。
岩﨑「まったくないですね」
――それがパワーを感じさせてくれてる原因かなって。逆に今のご時勢だからこそ、音楽聴いてるときにゴキゲンになりたいというか、改めてこれが音楽が持ってる機能というか。いろんな意味を求めがちだけど、こういうことでいいんじゃないかって、シンプルに思わせてくれるというか。
岩﨑「だから、そういう思いを胸にライブにもし来てくれたら、絶対踊らせてあげる自信があるし。みんなで一緒に楽しくなれたらいいなと思いますね」
――アルバムの曲をライブでやったらどうなるのかも楽しみですね。ツアー初日は4月12日(日)・梅田Shangri-La。地元・大阪からスタートです。
岩﨑「間違いないと思いますよ。今は風が吹いてます(笑)。来なきゃソンですよ」
吉澤「1つの作品をいろんなやり方で表現できるのがセカイイチの武器だと思うので、それを楽しみにしていて欲しいし、何よりライブっていうのは僕らだけじゃ出来ないですから。みんなで作っていくものなので、是非ライブに来て欲しいですね」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2009年4月10日更新)
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