ホーム > インタビュー&レポート > メジャー、インディー、レーベルの設立 音源流出、Twitterアイコン、そして自主イベント『生活』 怒涛の1年を駆け抜けたLOSTAGE・五味岳久(vo&b)が激白! 音楽と共に生きるすべての人に捧ぐリアル・インタビュー
「もう完全にポッキリ心が折れた」
――まず今回、率直に『CONTEXT』をリリースをして実感することもあると思うんで、まぁいろいろあったけど…それに関して今はどうですか? 自分たちのレーベルを立ち上げて初の音源を出してみて。
「まぁぶっちゃけ僕が最初思ってたのは、まぁモノとして完成してみんなが手に取れる状態…店頭に並んだら、めっちゃ感動するやろなと思ってたんです。でもその前に1回音源が流出した事件とかも挟みつつ、なんかこう…モノとして出来上がってみんなのところに届いたことへの達成感が、今までに比べたらちょい薄いというか」
――それは意外やね。普通、自分たちのレーベルを立ち上げて、自分たちでレコーディングもしてっていう流れでいくと、今まで一番感動が…っていう。
「そうなんですよ! 僕もそうなると思ってたんですよ(笑)。自分で作ったし、パッケージもデザインもやったし」
――レーベルの人間としての動きも自分でやって、ようやく出ましたと。
「だから完成品が家に届いたときも、テンションめっちゃ上がるやろうなと思ってたんです。けど、その流出があって、そこで1回改めて考えたこともあったから、自分の中でも今まで何かがと変わったというか。音源の出し方とか、みんなにどうやって伝えるかとか、どういうメディアで露出するのが一番効果があるとか伝わっていきやすいのか…リリース出来たのはもちろん嬉しいし、形として、CDとして届いていってるのは嬉しいんですけどやっぱり…今までと違うなっていうのが、一番実感としてあります。なんか時代が変わったというか…まぁ今までも薄々感じてたんですけど、それが現実問題として、考えなあかん問題として自分のところにドンと来たなっていうのを、リリースして逆に実感しましたね」
――それは具体的に言うとどういうこと?
「音楽を聴く行為自体も、ダウンロードだけでしか聴かない人とかもどんどん増えてきて…なんか今は時代の境目みたいなところにいて、これからは自分らで作った曲をみんなに聴いてもらうために、まず最初に考えるのがCDじゃなくなっていくかもみたいな。これからどうしようかすごく考えましたね。ちょっと怖かったというか、不安半分、これからのことを考える面白味半分。達成感もまぁあったんですけどね。別にネガティブな意味じゃなくて、実感としてはそれが一番大きかったですね」
――今はホンマに音楽業界に突き付けられてるよね。映画とかのメディアですら、ビデオからDVDになってブルーレイになってと進化していく中で、CDっていう昔からあるものをずっと変わらず同じ形態でただ出し続けてる音楽業界っていうのもあるし。そういうパッケージの形態ひとつとっても何も変わってへんし。でも、やっぱり嫌なことって人間考えたくないからさ。“パッケージの良さが”とかって言うけど。
「そうなんですよ(笑)」
――ホントに人にとって価値のあるものになってるのかとか。目の前にもう、“これ今どうするんですか?”って突き付けられてるような気分というかね。
「そうそう。リアルに考えんと生き残れへんような環境になってきたなって。まぁ自主になったからもちろん考なあかんくなったんですけど、レコード会社に任せてたら別にそこまで考えてなかったと思う。まぁアナログのレコードは、やっぱりジャケットとかパッケージの良さもあるみたいな人ももちろん自分の周りにもいるし、自分もそう思いたいところなんですけど、それだけを言い続けるのは違うというか。時代の流れに取り残されていくだけのような気がしたっていう」
――今までの話を聞いていてもそうなんやけど、LOSTAGEって元来そんなに器用なバンドではないと思うし、“俺たちは音で、ライブで勝負です”みたいなイメージが今までずっとあったけど、案外そうじゃないよね。
「最初はね、そうやったんですよ。ホンマに初期というか、インディーズでUK PROJECTからミニアルバムを出した頃とかは、まぁライブがカッコよかったら全部上手くいくかなと思ってたんです。人も集まるようになるやろうし、CDも売れるはずやと。でもそうじゃないっていうのが、まぁ10年やってきて…自分らがやってるライブとか作ってる音楽に対する自信は揺ぎ無いんですけど、それだけやっててもやっぱり届かんところには届かんし、分からん人には分からんから。やっぱり自分から入口をいっぱい作っていかないと、みんなが入って来れないですよね。そのためにやることがまだまだあるなっていうのは、この1年ぐらいで、さらに自分がやってみて、余計に考えました。今までは人に任せてたから」
――うんうん。それこそ『CONTEXT』をリリースして単純に“やったー!”となるかと思いきやならない現実があってね。それは前作『LOSTAGE』を出してからのこの1年の間でも違いがある?
「そうですね。やっぱ一番大きかったのは、音源が流出したっていう。そこで僕の心はポッキリ折れた。ホンマに必死こいてね、1年ぐらいかけて曲作って、お金とかも自分で用意して、借金もして、レコーディングして、マスタリングして、パッケージもデザインして、お金の計算もして。そうやって必死でやってる最中に勝手にポロって出て、しかもモラルの低い奴がTwitterとかで“聴きました”とか言ってくるわけじゃないですか。まだ俺の思ってる完成までいってないと。パッケージを俺はまだ見てないと。そんなんでもう完全にポッキリ心が折れた。俺、何のためにCD作ってるのかってなるじゃないですか? そこが一番デカかった」
――今はTwitterで情報がすぐに拡散するし、自分もレーベルの人間としても作品に携わってるから、そういうことに余計に敏感なんやろうね。“俺はアーティストやからモノ作ったあとは周りの人が宣伝して売ってください!”じゃ済まないから。
「そうですね。今までは録音したら発売まではただ待ってるだけの状態やったんで、そこにアンテナは張ってなかったから。でも、あれはやっぱちょっと…今は思い出したくないなぁ(苦笑)。CDが売れる売れへんっていうのはどっちでもよかったんですよ。買ってくれる人は買ってくれるやろうと思ってたんで。ただ、自分の思ってた展開となんか違うっていう(苦笑)」
――まぁ一言で言えばショックな出来事やけど、起こりうることではあるよね、絶対に。
「実際にネットにバーンって出てもうて…まぁどこの国かもよく分からんような海外のサイトなんですよ。その削除要請って原盤権を持ってる人がやらないとダメらしくて、自主でそれも自分で持ってるから、英語で作った警告文を友達に見てもらって、そこに送っての繰り返し。で、そのサイトを実際に見てみるじゃないですか。ほんならもう無法地帯で、有名どころから全然知らんようなアーティストまで、バンバン上がってるわけですよ。ピッてクリックしたら誰でもタダで聴ける。その収集付かへん無法地帯を覗いたらもう…今は自分の音源を消すために頑張れるけど、この先の業界全体のことを考えたら、あまりにも希望がないと。でも、そういう風になってしまった状況を憂うのはあんまり生産的じゃないし、それを越えて、どうやって音楽をやり続けるのか。そのためにはお金を生まないといけないし、みんなに聴いてもらうためにはどうしたらいいんかなって、そのときにすごく悩んだというか。まだ答えは出てないですけど」
――なるほどね…ちなみにそれって削除要請したところで、実際に削除されるん?
「されるんすよ」
――されるんや!
「意外にね、されるんすよ(笑)。その海外のサイトって、無料でバンバン出すのは、プロモーションの一環として手伝ってあげてるみたいな意識が結構あって。だから本人が“消してくれ”って言ったら、ちゃんと“消しました”みたいな謝罪メールもあったりして。だから悪気はあんまないみたいなんですけど、逆に手が付けられないというか」
――まぁ海外からしたら国を動かす産業のひとつになるぐらいデカいマーケットやから、日本に比べて音楽の根付き方が全然違うのもあるかもしらんね。6000万枚とか売れたりするもんね。もうどういうこと?っていう(笑)。
「絶対数が違いますもんね、音楽を聴いてる人の。だから向こうの感覚で言うと宣伝の一環というか。海外のバンドとか見てたら、ライブ音源だけじゃなくて、新しいアルバムが出たらそこから無料でガンガン配信したりしてて。これどういう仕組みになってんねやろ?とか思うけど、まぁそれでも買うっていう人がやっぱり…」
――めっちゃおるってことやね。
「その感覚の違いみたいなのはすごい実感しました」
――流出してショックということもあるけど、それをきっかけに結構考えさせられることも多いというか。結局、その流出問題が具体的に自分のCDを売るための障害になってるっていうことは…。
「まだ出たばっかりなんでアレですけど、結局、初動が今までで一番いいんですよ」
――マジで!?
「その流出事件がきっかけで応援しようと思ったくれた人とかもいるし、あのときTwitterに書いた文章がいろんな人にリツイートされて、どんなバンドなんやろって興味持たれるきっかけにもなったんで。あの事件があったこと自体は、結果的にこの作品に関して言えばいい方向に動いて良かったなっていうのはあるんですけど…そういうのは今回だけなんで。まぁ長い目で見たら別にそれは…」
――喜んでもいられへんもんね。いずれ向き合わなあかんことではあるから。
「ただ、あれでみんなが考えるきっかけになったんは、すごい良かったなと思います」
――さっきの話に通じるけど、今まではLOSTAGEがムーブメントの中心にいるイメージがあんまりなくて。音を極め、ライブを極め、我が道を行くバンドでカッコいいバンドはたくさんいるけど、その人たちがシーンを引っ張ってるかと言ったらそうじゃないし、その必要もないのかもしれない。そのまっすぐな美しさもあるし、LOSTAGEもそういうバンドだろうなって印象やったから。
「そういきたかったんですよ、最初は(笑)」
――やっぱそうなんや(笑)。
「そうなんすよ(笑)。自分のやりたい音楽だけやって、みんなに認めてもらうのって一番ええよなって。だからメジャーから話が来たときも、俺らは好きな音楽だけやれるんやったら、売ることは任せますって感じでずっとやってたんすけど…それやったらどうにもならない状況になってたというか。まぁ音楽でメシも食えたこともなかったし、じゃあこれからどうしよう?って考えたとき、さっき言った入口…例えばTwitterで僕が曲を作るときに考えてることをみんなにいっしょに考えてもらう、例えば友達の似顔絵を描いてその人に興味を持ってもらうとか。好きな音楽だけやるんじゃなくて、何か聴くきっかけを、興味持ってもらうアクションを僕が起こさないとあかん。好きな音楽をやるために、それもやろっていこうって思うようになっていった感じですね。だからやらんでいいんやったら音楽だけやりたいっす(笑)、ホンマは」
――今のTwitterでの状況とかもそうやけど、LOSTAGEが当初シーンに出てきた頃からは想像付かなかった立ち位置というか。
「僕がこうなったのも環境のせいって…まぁ環境のせいにするのもアレですけど(笑)。多分10年前とかだったらこういうやり方をしてなかったと思うし、そこまでの自覚もなかったと思う。周りがそうさせたのもあるし、僕もそうせなあかんなと思ったのもあるし。まぁ元々は閉鎖的な性格なんであんまりそういうタイプじゃないんだけど(笑)」
――そうやろうなぁ。でもこの3人の中で言ったらもう、それは俺がやらなあかんなと(笑)。
「そうなんすよね(笑)」
(9月26日更新)
Mini Album
『CONTEXT』
発売中 1680円
THROAT RECORDS
DDCZ-1763
<収録曲>
1.HELL
2.12
3.楽園
4.私
5.言う
6.NEVERLAND
Illustration Book
『五味アイコンBOOK
#oshare in DICTIONARY』
発売中 1260円
並製(160×120mm) 352P
Pヴァイン・ブックス
ISBN: 978-4-86020-436-5
ロストエイジ…写真左より岩城智和(ds)、五味拓人(g)、五味岳久(vo&b)。’01年、地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。当初のツインギターの4人編成から幾度かのメンバーチェンジを経て、’10年より3人編成にて活動。90年代洋邦のあらゆるロック的音楽から影響を受け、地方発信/地域密着をモットーに、地元・奈良を拠点に独自の活動を展開し、Twitterでは兄・五味岳久の描くアイコンの似顔絵が話題となり、現在では展覧会の開催や書籍の発表にまで発展。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。’11年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立。最新作は8月3日にリリースされたミニアルバム『CONTEXT』。
LOSTAGE オフィシャルサイト
http://www.lostage.co/
『LOSTAGE presents [生活 2011]』
チケット発売中 Pコード147-769
▼10月1日(土) 14:30
STUDIO PARTITA
オールスタンディング4000円
[出]LOSTAGE/クリプトシティ/Z/環ROY
/toe/MINOR LEAGUE/the band apart
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可。
小学生以上は有料。プレゼント付。