ホーム > インタビュー&レポート > メジャー、インディー、レーベルの設立 音源流出、Twitterアイコン、そして自主イベント『生活』 怒涛の1年を駆け抜けたLOSTAGE・五味岳久(vo&b)が激白! 音楽と共に生きるすべての人に捧ぐリアル・インタビュー


メジャー、インディー、レーベルの設立
音源流出、Twitterアイコン、そして自主イベント『生活』
怒涛の1年を駆け抜けたLOSTAGE・五味岳久(vo&b)が激白!
音楽と共に生きるすべての人に捧ぐリアル・インタビュー (2/4)

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「つながりがあったからこそ自分たちでやろうと思ったし
  そういう背景とか今までやってきたこと
  自分らの背負ってるものがあるから出来る音源にしたかった」

 

――前作の『LOSTAGE』はAVOCADO RECORDSで出して。そこからもう1枚出す話もあったし、他のレーベルからも誘いがあったということやけど、今回はなぜそうしなかったのか。まずメジャーを経験して、また前作でインディーズに戻ったところで何か1つの方向性があったと思うし、そこから既存のレーベルではなく自分たちでやることになったいきさつにもまた理由があったと思うんやけど、その2点を聞いておきたいなと。
 

「まずメジャーでトイズ(ファクトリー)が終わったのは、実際に向こうが思ってるだけの数字に届かなかったから。まぁショット契約みたいな感じなんですけど、そこで1回終わりますとなって。また別のメジャーレーベルにアプローチするのかっていうところで、結局AVOCADO RECORDSもEMI(MUSIC JAPAN)傘下ですし、インディーって謳ってるけどそうでもない。現場の人も音楽的にも分かり合えるし、会社がどうこうと言うよりは、人のつながりみたいな感じですね。そんときはそんなにお金のこととかバンドの運営に関しても考えてなかったし、出してくれるところがあるんやったら、やってみたいって」
 

――しかも人としても信頼出来る人が言ってくれてると。
 

「メンバーも1人抜けて3人になったときやったんで、まぁガラッと環境変えて1から作っていこう、頑張っていこうみたいな感じやったし。だからあのときは“メジャーってこういう感じなんやな、だいたい分かったな”と。やっぱ数字で結果も出さなあかんし、出したら出したでやるプロモーションがどういうもんなのかとか。それに幾らかけてるとかは詳しく分からなかったですけど、何となく流れが分かって。なるほどなと思いながら、とりあえずAVOCADO RECORDSに行った感じですね」
 

――レーベルのスタッフを見て、“あの人会社の中でどういう動きしてるんやろ?”とかいつも思うって以前言ってたけど(笑)、逆にそういうことまで見てんねやな~って。
 

「見てますよ~。現場でちょくちょく人が入れ替わるじゃないですか? “あんときこんなに人おらんかったのに、今日はこの人増えたけど何でやろ?”とか(笑)。どこそこに取材に行くってなったらまた全然知らん人が来て、“今日はこの人に付いて行ってください”って言われて、“この人は普段何してんねやろ?”とか(笑)。やっぱそういうことを考えちゃうんですよね。あと、当時メジャーでやってるときって、ライブ終わってから関係者が並んで挨拶する…」
 

――ありますねぇ(笑)。
 

「紹介されたら出来るだけ名前を覚えて。後でディレクターとか近しい人に“あの人は何をする人ですか?”って結構細かく聞いたりしてました(笑)。そしたら“あの人はレーベルで印税とか法律のことをやってくれてます”とかね。僕らが普段接しないところで、そういう仕事をしてる人がいるんや。やっぱメジャーってすごいなって」
 

――なるほど。権利関係の処理をしてくれてるスタッフさんがライブに来てくれたんやね。
 

「ありがたいなと。でも、そんなにたくさん人が必要なんかなっていうのも漠然と感じながら(笑)、ちょっとずつ全体のお金とか流れとか、どうやって会社が動いてんのかとかも考えながらやってました」
 

――すごい。それで言ったらやっぱり興味があったんかな。
 

「元々僕は90年代のアメリカのインディーズ音楽とかが好きやったんですよ。自分たちでレーベルとかもやっててね。日本にもPIZZA OF DEATHとかメジャーじゃないけど頑張ってるレーベルがあって、そういうやり方ってカッコいいなぁって思ってたし。なんか漠然と、いつか自分でやりたいなっていうのは思ってたんです」
 

――メジャーを経験し、AVOCADO RECORDSは人のつながりもあってやってみましたと。でも、さっきも言ったようにそこからもう1枚出すか、別のレーベルから出すかという選択肢もある中で、結局自分たちでやる道を選んだのはいったい?
 

「やっぱぶっちゃけお金のこともありますね。結局CD1枚出してみて、もちろん契約内容も分かってて契約してるけど、何で2000円のアルバム1枚売って、俺らのとこに入ってくるのが2%なんやっていうことからやっぱ分からへん。これで俺、音楽を生活の糧にするのは無理やなと思ったんです。そうしたいのにね。メンバーも4人から3人になって…たった3人しかいないのに誰も飯食えてない。作ってる俺ら3人がバイトしてんのに、周りにいるスタッフはそれで飯が食えてる。コレどういう仕組みなんやと。まぁ分かってて契約してるから別にいいんすけど、この仕組みの中でやっていくのは難しいと」
 

――まぁそれがどこのレーベルにいこうとも、同じようなところやからね。
 

「そうそう、今までもそうやったし。そうやって出来上がってる仕組みを中から変えていくのは無理やなと。対会社に僕らが“このパーセンテージを変えてくれ”とかやってる時間もないし、法律のこととかも分からない。じゃあもうそこじゃない別のところで、新しい仕組みを自分らで作ってやるしかないなっていうことなんです。やっぱたった3人が食えてないっていうのが1番悔しかった。でも、周りにはそれで食ってる奴がうようよいるわけじゃないですか。多分今ある仕組みっていうのが、10年とか20年前に出来たものがそのまんま引き継がれているだけで、今のパーセンテージとか割合じゃないと思うんですよね。でもそれでやってる」
 

――ミリオン売ってた時代なら、2%でもどんだけ入るねんってなるけどね。
 

「そうなんすよ。だから僕らこのやり方で次10万枚売れるかって言うたら売れないんで。そこで10万枚売ろうとするために頑張んのとかはもう嫌やなと。今の枚数で、それをちょっとずつでも増やせたらいい。自分らのやり方で、ちゃんと納得いく額のお金をもらって、それを生活の糧の一部に…まぁそれだけで食えたら1番いいんですけど、そのやり方でバンドを回していけたほうが健全やと思ったんですよ」
 

――今までは割と外側の話というか、レーベルの人間としての意見でもあったけど、じゃあ次はアーティストとして、前作の『LOSTAGE』を受けて、今度はどういった作品を作ろうというのはあったんかな?
 

「まず今回は自分らで全部やってみようってところなので、いきなりフルアルバムを作ってあかんかったらちょっとヤバいなと。お金はかかるし、借金しか残らない(笑)。その時点では出せるかどうか、流通されるかどうかも分からんかったから、まぁミニアルバムぐらいのコンパクトさで、試しに出してみたらどうなるかやってみようってことで、ミニアルバムになったんですけど」
 

――まずは形態が決まりましたと。
 

「そうです。でもやっぱ1回メジャーとかでもやって、数字も5000枚くらいは動く感じで認知されてるんで、流通会社から“次はどうするんですか?”みたいな話がくるんです。ちょっと今探してますみたいな感じで匂わせつつ(笑)、前回CDを置いてもらってたお店にちゃんと卸した方がみんなにも届くなと思って、流通会社に話を聞きに渋谷にも行って。こうやったらどれぐらいお金かかりますとか、いろいろ説明してもらったかな」
 

――幾ら足したら宣伝代行プランも付きますよ、みたいなね。
 

「ホンマに講習受けに行くみたいな感じで(笑)。1コずつやりながら、次どうしたらいいかを人に聞いたりしながらやってた感じですね。だから1回勉強のために出そうみたいなアルバムだったんで、音楽的なテーマとかは全然なかったです(笑)」
 

――アハハハハ!(笑) まずはそっちを知らないとと。
 

「そうそう。僕が勉強するために1枚何か出さないと。そのために作った感じです(笑)」
 

――結局またレーベルの話になっとるがなって思っててんけど(笑)、やっぱりその比重も意味合いも大きいんやね。
 

「そうですね。だからまず、変なテーマですけど、“どうやって出すか”(笑)。音楽的なテーマは毎回聞かれるんですけど、あんまりないんですよね。好きな音楽もあんまり変わってないし。ただ、メンバーが変わったりはしてたんで、そのときそのとき各々の趣味嗜好が反映されるのは当たり前なんですけど。結局僕らのやりたい音楽は、最初に出したときから全然変わってない。それはもう5枚とか出してきたら気付くじゃないですか。そこで音楽的に新しいことをやる選択も別になかったし、好きな音楽も分かり切ってるから、それを続けたいだけっていう感じでしたね」
 

――言うなれば、前作以降に生まれた曲の中で、どれを入れるかぐらいな。
 

「今の僕らがやれることでね。最初は5曲入りの予定やったんですけど、いざレコーディングというときに震災が起きて…。そこで初めて、どうせ出すんやったら今のどんよりした世の中がちょっと元気になるような曲も入れたいと思って、レコーディングの1週間ぐらい前に『NEVERLAND』(M-6)を作ったんですよ。普段から結構マジメに音楽には向き合ってるし、1曲1曲に対してストイックにやってるんですけど、それは別に当たり前のことで。アルバムを作るためにやることではなくて…ってここで初めてちょっと音楽的な話が(笑)」
 

――普通のインタビューっぽい内容がようやく(笑)。やっぱり震災以降は、取材しててもみんながそのことについて考えてるというか、絶対音楽にも出てくるよね。音楽の力も感じるし、無力さも感じる今、じゃあ自分たちはどうする?っていう。
 

「そうですね。まぁ音楽で出来ることなんか人に聴いてもらうことぐらいで…結局具体的な救いにはお金とか物資を送る方がいいし。チャリティーもやったりはしたけど、結局何も出来ひんのを改めてそこで思い知らされたようなところもあったんで…。でも、その中でもちょっとでも、人のために何かしたいと思って初めて曲を作ったんで。震災以降っていうのは大きかったですね」
 

――でも本当にこのアルバム、6曲目に『NEVERLAND』が入ってるのとないのとでは全然意味が変わる。
 

「そうですね」
 

――5曲目の『言う』で終わってたら、ある種実験的でもあるし攻撃的でもある濃い作品やけど、何て言うか…やっぱり『NEVERLAND』が加わることで深みが全然増してくるというか。LOSTAGEの今の状況にすごくマッチする感じもするし。
 

「だから入れられて良かったなと思いますね。まぁタイミングですよね、全部。ロックってそのときの時代背景とか事件とかが、パッて反映されやすい音楽やと思うんですよ。クラシックやジャズとかそういう音楽と比べるとね。だからそれでいいんかなって。そのときやから出来た音楽があって然るべきかなと思ったんで、自然とこの曲は入れようという感じにはなりましたね」
 

――ある種のコンセプトを立ててそこに向かって曲を書くというよりは、その期間のLOSTAGEの曲を入れるという点で言えば、まさにそういうことやもんね。
 

「そうです。嘘っぽいコンセプトとかを作るのがもう嫌なんです。“今回のテーマは…”とか、普段考えてないことが急に出てくるわけないじゃないですか(笑)。まぁあったらあったでいいし、ないもんを嘘つく必要もないなと」
 

――音源を出したらインタビューとかを受けるわけやん。それぞれ毎年違う1年を生きてるから聞くことは絶対あるし、言うことは変わるけど、作品の中身については作り方もいっしょやし、気持ちもいっしょとなったら、それこそ今回の『NEVERLAND』みたいに何か出来事がない限りは、毎回温度は同じっちゃ同じやね。
 

「そうですね。僕らもずっと同じことをやってるつもりだし、やっぱり嘘っぽくなりたくないから。次も何か大きな出来事が起きればそれが反映されたアルバムになると思うし、何もなければ今まで通り曲を作って出していくだけやし。まぁ“記録”でしかないんで。バンドとしてのやってきたことのね。それでいいと思ってやってるんですけどね」
 

――それで言うと、レコーディングが完パケる前に震災が起きたのもタイミングやもんね。それまでに録り終えてたら生まれなかった曲やし、逆にまだ制作に入ってなかったら、全体にそのムードが反映された作品にもなってたかもしれない。やっぱり、このタイミングだからこそ、このバランスのアルバムになったという。今回の『CONTEXT』というタイトルはどこから?
 

「“文脈”とかそういう意味らしいんですけど、まぁ今回自分らで初めて全部作って、その一連の流れとか人のつながりとかは、Twitterとかを見てる人は分かると思いますけど、そういうつながりがあったからこそ自分たちでやろうと思ったし、そういう背景とか今までやってきたこと、自分らの背負ってるものがあるから出来る音源にしたかったんですよ。だから音楽的なテーマはないけど、なんかこう、つながりみたいなものを感じられるタイトルにしたかったんですよね」
 

――なるほど。
 

「自分らでやるって言えるのは、逆に周りに人がいるから。助けてくれる人や応援してくれる人がいるから、自分らでやりますっていう気持ちになれたし」
 

――そこに踏み切れるだけのつながりを感じられてるからというね。
 

「そうです。だからそこは忘れないように持っときたいなって思ったんですよね」



(9月26日更新)


Check

Release

地元・奈良のライブハウスで一発録音
鬼気迫る自主レーベル第一弾作品

Mini Album
『CONTEXT』
発売中 1680円
THROAT RECORDS
DDCZ-1763

<収録曲>
1.HELL
2.12
3.楽園
4.私
5.言う
6.NEVERLAND

Book

五味岳久(vo&b)が独特のタッチで描く
世界初のTwitterアイコンイラスト集

Illustration Book
『五味アイコンBOOK
 #oshare in DICTIONARY』
発売中 1260円
並製(160×120mm) 352P
Pヴァイン・ブックス
ISBN: 978-4-86020-436-5

Profile

ロストエイジ…写真左より岩城智和(ds)、五味拓人(g)、五味岳久(vo&b)。’01年、地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。当初のツインギターの4人編成から幾度かのメンバーチェンジを経て、’10年より3人編成にて活動。90年代洋邦のあらゆるロック的音楽から影響を受け、地方発信/地域密着をモットーに、地元・奈良を拠点に独自の活動を展開し、Twitterでは兄・五味岳久の描くアイコンの似顔絵が話題となり、現在では展覧会の開催や書籍の発表にまで発展。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。’11年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立。最新作は8月3日にリリースされたミニアルバム『CONTEXT』。

LOSTAGE オフィシャルサイト
http://www.lostage.co/


Live

大阪・名村造船所跡地を舞台に
自主イベント『生活』を今年も開催!

『LOSTAGE presents [生活 2011]』
チケット発売中 Pコード147-769
▼10月1日(土) 14:30
STUDIO PARTITA
オールスタンディング4000円
[出]LOSTAGE/クリプトシティ/Z/環ROY
/toe/MINOR LEAGUE/the band apart
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可。
小学生以上は有料。プレゼント付。

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