ホーム > インタビュー&レポート > メジャー、インディー、レーベルの設立 音源流出、Twitterアイコン、そして自主イベント『生活』 怒涛の1年を駆け抜けたLOSTAGE・五味岳久(vo&b)が激白! 音楽と共に生きるすべての人に捧ぐリアル・インタビュー
――今回はホームグラウンドである奈良のライブハウス・NEVERLANDでレコーディングしたのも、やっぱり経費的なところに基づいてるっていうのはまぁさておき(笑)、今までにライブハウスでレコーディングした経験は?
「なかったです。今までは毎回ちゃんとしたレコーディングスタジオで録ってたんで」
――リズムから録って、ダビングしていくという通常の。
「そうですね。それが当たり前だと思ってたから。まぁ…経費的な問題ももちろんあったんですけど、何となくいけるやろなって漠然と思ってたんですよ。地元やしどうにでもなるやろと。で、いざやってみたら意外にいい音で録れて。逆に今まで大金払ってでっかいレコーディングスタジオでやってたのはいったい何やってんみたいな感じにはなりましたけど(笑)。それぐらいのクオリティのものは録れたと思ってます」
――めっちゃ地元のライブハウスで録れるがなみたいな(笑)。でも、追い詰められたことで可能性が広がった感じがするね。そういうことがなければレコーディングとはそういうもんやと思って、安い東京のスタジオを押さえてたかもしれないしね。
「もちろんわざわざ東京に行って気持ちを切り替えて、レコーディングに没頭するのもそれはそれでいいと思うんですけど、やり方はいろいろあるんやなって。やってみて改めて思いましたね」
――やっぱり音がすごく生々しいよね。コレほとんど一発録りで、ダビングはあんましてないよね?
「ほとんど一発録りですね。歌とサブのギターをちょっと重ねてるぐらいで。基本今までも一発録りやったんですけど、ブースは分かれてたりして。でも今回はもろライブハウスなんで音の回り込みとかもあるし、後で修正きかないんで、その分生々しい」
――それも10年やってきたバンドの演奏力とかチームワークがあるからやれるというか。これが5年前やったらそう簡単には出来なかったやろうし。
「そうですね。5年前やったらNEVERLANDでライブレコーディングしてんのに、スタジオのブースで録った音と同じクオリティを求めてたかもしれない。今やったらこの空間でどういうやり方したらどういう音になるかが分かってて3人ともそこに向かっていくから、スムーズというか話は早いですよね」
――どうやったらあの感じで録れるんやろじゃなくて、ここで録れる音のベスト、ここで録る強みみたいなね。レコーディングはすごくリラックスしてやれたらしいね。
「そうですね~家も近いですし。ちょっと帰るみたいな」
――どれぐらいで行けるん? チャリとかで行くん?(笑)
「チャリでも行けます(笑)。弟[拓人(g)]はチャリで草履とかで来てたし(笑)。僕も機材を家に忘れても車で5分ぐらいで取りに帰れる距離なんで。家の間接照明とかを持って行って、それをベースアンプの上に置いてね。ちょっとリラックスしながら(笑)」
――関係あらへん(笑)。まぁメンタル的要素ね。
「あと、普通のスタジオやったらコーヒーメーカーとかあるじゃないですか? ああいうのもないから自分の家から豆とか持って行って(笑)、自分で作って沸かしたり」
――いいねいいね。
「だからDIYの感じがすごいですよ。エンジニアは前の『LOSTAGE』をいっしょに作った奴で歳も近いんですけど、東京から来てもらって現場にはメンバー3人とそのエンジニアだけ。今までやったらディレクターとかもいて、そこにやっぱり気使うじゃないですか(笑)。今はそういうのもないから、ちょっと酒飲みながらやってみようかとか。そんなん今までは金出してもらってやってたんで言えないんで(笑)。そういうのもありつつ、すごい楽な感じでした。でも逆にダラダラいってまう可能性もあったんで、気持ち僕だけピリッとして。この曲はこれ以上やっても良くならへんとかは早い段階でジャッジしないと、やっぱリミットはあるし、いくら安いって言ってもそこはお金がかかってますから。今まではそこまで考えてなかったわけで」
――結局レコーディングは何日ぐらいかけて録ったん?
「オケ録りは3日かな。だいたい1日1~2曲。で、歌だけそのエンジニアと僕と2人で東京に行って、ミックスもしながら録りました」
――冒頭でリリースしたときの実感はさほどないと言ってたけど、アルバムが完成したときの達成感は今までと違うものがあったんじゃない?
「マスタリングに出して帰ってきたときはやっぱね、嬉しかったですよ。自分でもめっちゃ聴いてたし、達成感もすごいあったんですけど、基本的なレーベル業というか、事務的なことも全部僕がやってたんで、自分の感じた達成感とメンバーの感じたそれとにズレがあって。そこはやっぱね、ちょっと寂しかったというか。今までは3人がいて、レコード会社の人がいて、出来たときに3人が同じような感覚を共有出来たんですけど、今はちょっと温度差を感じるんですよね」
――五味くんは自分が動いてきたレーベル業としての流れも含めた達成感で“やっと出来たー!”ってなるけど、2人はもしかしたら“ちょっとなんかリラックスして作れたな~”みたいな(笑)。
「僕がめっちゃテンション高い感じで出来上がってきたジャケの色校正とか持ってスタジオに行って、“ジャケット出来たぞ!”って言っても、“あぁ、ええやん”みたいな感じで(笑)。まぁ元々クールな人なんでね。だから“おぉ、そうか…”みたいな感じでそこで僕も1回クールダウンしてしまうというか(笑)。なんか温度差がね、あったんですよね。それは分かってたんですけど、やっぱもうちょっとそこも共有していきたいなっていうのは次の作品のテーマでもあります。まぁしゃあないんですけどね。僕が“仕事辞めてレーベル業やります”って言ってやってるんで。信頼関係あってのことなんで」
――これは踏み込んだ質問かもしれんけど、レーベルを担当する者としてのギャラは出るの?
「出ます。もちろん今までやってなかった仕事をやってるんでそれはもらいつつ、やっぱ2人にも今までの印税のパーセンテージじゃない、今まで以上のお金をちゃんと渡して納得してもらおうと思ってます」
――俺が危惧してたのは、今までの話を聞いててもそうなんやけど、アーティストとして作品を作ることと、レーベルのオーナーとして作品をリリースすることって、目的はいっしょやけど、やっぱ違う。五味くんに関してはこれからはそれがもう共存していくしかない。純粋にアーティストとして作品だけを作ってた時代とは絶対に変わる。
「今、そうですね」
――多分もう昔の感覚には戻れないと思う。それに関してはどうなのかなと思って。これから作品も変わってくるかもしれない。
「変わってきますね、もちろん。でも今の方が健全と言うか、音楽に対してもストイックになれる環境になったと思うんです。レーベルに所属してたときは、作る自分がいて、売る担当者とかお金を計算する人とか、いろんな人が周りにいて。その人がどう思ってるのか、その人が売りたい音楽ってどんな音楽だろうとか、そういう雑念って言ったら変ですけど、そういうことも考えながら曲作ってたんで。今はそんなこと考えんでも、自分で売るわけやから」
――自分でケツ拭くと言うか、自分が頑張ればいいと。
「そうです。好きな音楽、自分がいいと思う音楽を作って、その音楽をみんなに聴いてもらうためにどうするのか、どの曲でPVを作るのか、どの曲をリード曲にするのかも、全部自分で責任取れる。だから、作るものに対しては前よりすごく純粋になれてる気がします」
――やっぱり思ったよりも考えてたね。
「そうですね。意外になんかね(笑)」
――そんなん考えなさそうやのに(笑)。
「そうなんです(笑)。結構考えてるんですよ。意外に周りの顔色とかも常に伺いながら(笑)」
――あんなキレキレの音楽やってるのに(笑)。
「まあまあ空気読むタイプなんですよ(笑)。そこまで訳分からんことは言ったりしない(笑)。当時はレーベルの人が喜んでくれたらいいなとやっぱ思ってたし、いっしょにモノ作るんで、みんながいいと思うものを作りたいじゃないですか。でもそのために余計なことまで考えてる自分が嫌やったのもあったし。人数が減るとその分余計なことも考えずに済むし、責任も取りやすいのはありましたよね」
――今回はホンマにいろんなことが分かったんちゃう? 『CONTEXT』を作ることによって。
「分かりましたね~。だからこそ“ん?”って思うことももちろんあったし。今まではね、“お店で展開してもらうから、その宣伝枠が幾ら”って言われたら、“何でそんなお金払わなあかんのですか”って」
――お店で面出しとか視聴機の展開をするからっていう話やね。
「今まではその音楽がホントにいいと思うんだったら、展開するのに金なんか取るなよみたいに思ってたんですけど、今は“そうか…じゃあ10万、20万用意します”って。おかしいなと思いながらもやるのは自分の中で矛盾してるかもしれないですけど、その流れが分かっただけでも良かった。出稿料がなくても取り上げてくれる雑誌もあるし、結局そこは人の熱意なんやなって。そういう人たちに出世払いじゃないけど、ちゃんと仕事として回せるようになったら払ってでもやって欲しいと思うし。そういうことを改めて感じました」
――『CONTEXT』はバンドの歴史上でもすごく重要な作品やけど、人としても今は人生の分岐点やね。
「そうですね。急激に成長しました(笑)。僕も今まではバイトしながらバンドやってただけの、社会人としてはダメ人間なわけで。その中でいろいろ経験して、仕事ってこういうもんなんやなって思うところが、やっぱりあったんで。その辺は個人的にもすごくいい経験やと思いました。メンバーがそれをどこまで理解してるかは、ちょっと不安でもあるんですけど(笑)」
――五味くんはTHROAT RECORDSの代表であり、LOSTAGEのフロントマンなわけで、どっちも回していかなあかんとなると、音楽ってアートでもあるけど、LOSTAGEの音楽との距離感っていうのは、やっぱり生活に密接してるね、すごく。
「僕らが生み出してるもんで売れそうなもんて、もう音楽しかないんで、そこはやっぱちゃんとお金に変えて、自分が生きてる実感を…そこから得たいなっていうのはありますね」
(9月26日更新)
Mini Album
『CONTEXT』
発売中 1680円
THROAT RECORDS
DDCZ-1763
<収録曲>
1.HELL
2.12
3.楽園
4.私
5.言う
6.NEVERLAND
Illustration Book
『五味アイコンBOOK
#oshare in DICTIONARY』
発売中 1260円
並製(160×120mm) 352P
Pヴァイン・ブックス
ISBN: 978-4-86020-436-5
ロストエイジ…写真左より岩城智和(ds)、五味拓人(g)、五味岳久(vo&b)。’01年、地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。当初のツインギターの4人編成から幾度かのメンバーチェンジを経て、’10年より3人編成にて活動。90年代洋邦のあらゆるロック的音楽から影響を受け、地方発信/地域密着をモットーに、地元・奈良を拠点に独自の活動を展開し、Twitterでは兄・五味岳久の描くアイコンの似顔絵が話題となり、現在では展覧会の開催や書籍の発表にまで発展。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。’11年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立。最新作は8月3日にリリースされたミニアルバム『CONTEXT』。
LOSTAGE オフィシャルサイト
http://www.lostage.co/
『LOSTAGE presents [生活 2011]』
チケット発売中 Pコード147-769
▼10月1日(土) 14:30
STUDIO PARTITA
オールスタンディング4000円
[出]LOSTAGE/クリプトシティ/Z/環ROY
/toe/MINOR LEAGUE/the band apart
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可。
小学生以上は有料。プレゼント付。