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メジャー、インディー、レーベルの設立
音源流出、Twitterアイコン、そして自主イベント『生活』
怒涛の1年を駆け抜けたLOSTAGE・五味岳久(vo&b)が激白!
音楽と共に生きるすべての人に捧ぐリアル・インタビュー (4/4)

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「Twitterとかって結局は二次元の世界なんで
  つながりを現場に還元していきたいと思ったのが一番大きい」

 

――今までの話を聞いていると、LOSTAGEの自主企画のタイトルが『生活』っていうのは、ホンマにこれ以上ないタイトルやね。
 

「もう、まさにそうですね」
 

――今年も10月1日(土)に名村造船所跡地のSTUDIO PARTITAで第2回目が開催されるわけで。それこそ、去年初めてLOSTAGEがいろんなバンドを束ねて『生活』をやったわけやけど、シーンの端で我が道を突き進むバンドに見えたLOSTAGEが、みんなの中心になって、関西を盛り上げようと音頭を取ってやり始めたことがすごく意外でもあり、時代でもあるなと。
 

「端っこにいるとやっぱちょっと寂しかったっていうか(笑)。僕らもやれるって思いたかったし、やってみたいと思うようになった。まぁ協力してくれる人が周りにいたのももちろんそうなんですけど、僕らならやれると思ってくれたことに応えたいのもあったし。シーンを作ろうとかではないんですけど、僕ら発信でやれること…Twitterとかって結局は二次元の世界なんで、つながりを現場に還元していきたいと思ったのが一番大きいですね」
 

――去年1回目をやってみて実際どうやった?
 

「もうね、『生活』っていうタイトル付けた割には全然儲からない(笑)。めっちゃ楽しかったんやけど、お金にはならへんなと(笑)。それでもまぁ続けていきたいなと思ってます」
 

――トントンにもならんかった?(笑)
 

「結局、儲けの中からみんなのギャラを払うじゃないですか。事務所に所属してたら幾らかかるとか。で、いろいろかかった経費とかも引いて、結局手元に残ったのが2万円やったんすよ(笑)。あんだけ人集めて、ストレイテナーとかに出てもらって…まぁそれでも赤字にはならんかったし、やれるんやったらまたやりたいなと思ったんです。だから儲けようとは思ってないですね。あれだけ規模も大きめにしてるから」
 

――今年もやろうと決めたのはそこだと。
 

「まぁ純粋に楽しかったのもあるし、フェスとかにあんまり呼ばれないんで(笑)、そういう意味でもやっぱり、自分らで年に1回祭りみたいなのをやりたいと」
 

――フェスと言うと今年はフジロックにも初めて行ったよね。あれはどうでしたか?
 

「フジロックは純粋に、もう感動しかなかったですよ。元々フェスはあんまり好きじゃなかったんすよ。昔いわゆる商業フェスと言われてるようなものに出たこともあったりして。お金が幾らかかってとかそういう話を聞いて、こういうもんかとちょっと幻滅する部分もありつつ。そういうのもあってフェスってどうなんやろって漠然と感じてたんですけど、フジロックに行って、これはすごいなと。音楽で感動したっていうのがあったし、人のエネルギーをめっちゃ感じたし。フェスもちょっとええなって思いました」
 

――ここ1年間はすごい転機やね。吸収するものが多いし。
 

「経験値もこの1年でバーンって増えたし」
 

――今は初めてやから手探りでも楽しいやろうけど、分かった上で作る次の作品がどうなるかなと思うよね。
 

「お金お金って結構言ってきたんですけど(笑)、そのお金を飛び越えて、何か得るもんがあるのがフェスの盛り上がりだったり、リリースにまつわるプロモーションだったり、人の熱意だったり。もちろんお金は動いてるし、それを生業としてる人もいるから当たり前のことなんですけど、そこを越えて感動出来るところがやっぱり音楽にはあるなって、この1年間で改めて感じましたね」
 

――そして、ここ1年のLOSTAGEの動きを世に広めるきっかけになったのは、やっぱりTwitterが大きかったと思うんやけど。
 

「FLAKE RECORDSのDAWAさんとかに、ツールとして使えるし宣伝にもなるしやってみたらって勧められて、2年前ぐらいに始めたんですよね。まぁブログもやってたしmixiとかもそうですけど、そういう個人レベルで発信出来るメディアは出来るだけやってみて、バンドにフィードバックさせようと考えながらやってたんですけど」
 

――にしても人生ちょっと変わったよね。Twitterアイコンのイラストも含めて。元々絵心はあったん?
 

「絵は幼稚園ぐらいのときから習ったりしてて、デザインの専門学校とかにも行ってたんですよ」
 

――そうなんや!
 

「芸大受験とかもしましたし。だから絵を描くのはまぁ好きやったんですけど、こんなことになるとは思ってなかったです(笑)。仕事も辞めましたし」
 

――改めて絵を描き出したきっかけは何だったのかっていう。
 

「最初自分のTwitterのアイコンがなかったんで、適当に自分で描いたやつを使ってたんですよ。そしたらそのちょっととぼけたテイストがいいみたいな話になって、TORAくん(8otto)とかが俺のも作ってくれと。描いたらそれをまた周りの人が見て…もう言われるがままにどんどん描いてたんです。そしたらいつの間にか何百人とかになって」
 

――すごいね。でも今や、それで個展を開いたり、『五味アイコンBOOK #oshare in DICTIONARY』が出たりするわけやんか。それについてはどうなん?
 

「それもなんかね、ちょっと恥ずかしいんですよね。そもそもバンドがあって、それで何とかしたいと思いながら片手間にやってただけなんで。それが商品になったりするのはちょっと申し訳ないなっていうのもあるんです。まぁでもそれでバンドの名前を知ってもらうきっかけになればええかなと」
 

――絵を描くこととって五味くんの中で今どんな位置付けなの?
 

「音楽ほどストイックではないし、自分に描けるもんていうのはもう分かってるんで。自分が描いたもんがお金になったり、人が喜んだり、人と人がつながるきっかけになるのは悪いことじゃない。まぁ喜んでもらえるんやったら描こうかなみたいな感じっすね。だからみんなからもう飽きたって言われたらやめようと(笑)。喜んでくれる人がいる限りは描きたいなと思っています」
 

――バンドの状況的にも、段々と光が見えてきてるよね。
 

「CDの売り上げもね、今まで落ちたことがないんです。まぁ牛歩って言われてるんですけど(笑)、ホンマに何十枚とか何百枚とかそんなぐらいずつなんですけど。ライブの動員も同じような感じで、ちょっとずつですけど増えてる。このご時勢10年やって、ちょっとだけでも増えてるっていうのはいいぞと」
 

――今はメジャーでもそんなに売れないからね。作品の内容的にはどんどん良くなってもセールスは下がっていったり。その中で微増でも増えていくのはやっぱりすごいことです。
 

「それが僕らがバンドを続けていくモチベーションにもなってるし。なんか…そこに可能性はちょっと感じてます」
 

――今回の『CONTEXT』リリースに関しては自主レーベル設立あり、流出ありと(笑)といろいろなことが起きて。ツアーが終わって『生活』まで走り抜けた後に何を感じるのかなと。
 

「『NEVERLAND』のPVを撮ってくれた人にツアーにも同行してもらったんですけど、今ドキュメントDVDも撮ってて。それを今回の一連の流れのまとめとして出したいなと。流出にしてもそうでしたけど、結構何かしらドラマがあるんで(笑)、まぁ映像にしても面白いかなって。出来たものは僕らとその監督の作品として出して、上がりから折半&回収かな。後続のというか自分らより若いバンドに、同じように(自主で)やってみたいと思わせられるようなものを見せたいなと思ってますね」
 

――それで言うと6月の野音で出演したイベント『想う壺音泉!』でも、音源流出直後でそのことについて長々しゃべったシーンがあったもんね(笑)。
 

「でもあのときのKING BROTHERSのライブで僕、ちょっと泣きました」
(※LOSTAGEのMCを受け、KING BROTHERSのマーヤ(g&vo)が「ボタンひとつでやれる音楽じゃないんや!」という熱いMCとライブで応えた)
 

――最近取材もしたけど、そのKING BROTHERSは逆にメジャーに戻ってすごく戦ってる。LOSTAGEしかりキンブラしかり、関西にちゃんと筋の通った、インディペンデントなバンドがいてくれるのは頼もしいよね。あとドラマと言うともう1つ、ブログにも書いてたPangeaでのライブではいったい何が起きたん?
 

「Pangeaは、例の音源流出後のライブで。レーベル雑務をガンガンやりながらツアーを廻ってたんですけど、かなりいいライブが続いてたんですよ。けど、めっちゃ疲れてて。ライブの合間にも削除要請のメールを夜通し送ったりして…もう精神的にかなりキてた。そもそも全然集中出来てなかったんですけど、ライブ中にその雑務のことを考え出して。具体的に言うたら、“あ、あのメール返してない”みたいな(笑)。そんなこと考えながらライブなんてやったことなかったんで、“これ何や、今俺何やってんねや”って。今やること、今考えることじゃないのに、そんなことを考えてしまって、周りの音も全然聴こえへん。そしたらもう何のために音楽やってるか分からんくなって…ライブ中にプチっと何かが切れた。“俺ちょっともう…出来ません。セットリスト終わってないすけど”ってベースを置いて、もう半泣きですよ。そしたら弟に“お前、ステージに立った以上はそれでもやれや!!”みたいなことを言われて」
 

――マジで(笑)。
 

「お客さんも“え? 何これ”みたいになってるし(笑)。まぁ事情を知ってる人は頑張れムードなんですけど、まぁそのときの僕にはそんなの関係ないから(苦笑)、ライブを一時中断して。結局そのまま最後の曲を泣きながらやる、みたいな(笑)」
 

――むちゃくちゃやな~。
 

「もう泣いてるんで何歌ってるかも分からへんし」
 

――すげえライブやな、それ。ドキュメントDVDに是非入れて欲しいね(笑)。
 

「もう僕、かなりキてたんで(笑)」
 

――人間丸出しライブ(笑)。
 

「ライブ中に話すことも何もいいこと思いつかへんし…あんときの俺、今までやった中でも最悪のライブでしたね」
 

――でもね、そのときは“何のためにやってるか分からんくなった”と言ってたけど、今はそうじゃないでしょ。
 

「結局、伝えたい曲がある、音楽があることをそのときは忘れてたというか。何て言うんですかね…そもそも何で人前に出て行って、自分じゃない誰かとわざわざ関わって、めんどくさいバンドをやろうと思ったのか。それはやっぱり音楽が好きやから。その音楽を好きやって集まってくれる人がいるから。音楽ってそういう余計なことを全部忘れさせてくれるエネルギーがあったのに、それを忘れてたというか。改めて自分にとって音楽って何なのかを考えてみたら、結局お金とか、ライブの動員がどうとか、CDの売り上げがどうとか、バンドがどうとか、そういうの一切関係なしにして、やっぱり音楽で感動したことがあったからバンドをやりたいと思った。なんか…それが見えんくなってたんですよね」
 

――“何で音楽続けてんの?”って言ったら、やっぱりそこっていうね。
 

「そうなんですよね。忘れがちなんすよ。特に雑務をいろいろやってると。自分の中に売る自分と作る自分がいたら、作ってるときは純度が上がるけど、売ることをやり過ぎると、やっぱり作る方の自分が弱っていってしまう。今まではバランスがうまく取れてなかったんです。経験したことがないことだから」
 

――自分の中に今までなかった割合が、一気に侵食してきてるわけやもんね。
 

「そうです。そのバランスをちゃんと取りつつやらなあかんなって思いました」
 

――今まで戦ってきた、作品の中身がどうのじゃない戦いが。
 

「いつの間にか始まってました(笑)」
 

――まぁでもやり甲斐のある戦いよね。LOSTAGEは今後どうなっていくんでしょうか? どうなっていきたい?
 

「まぁ若手じゃなくてもいいし、自分より若い人とか周りにいるバンドとか音楽に関わっている人、それをサポートしてるスタッフの人でもいいんですけど、僕らを見て、ああいうやり方っていいなとか、ああいうバンドになりたいなとか、そう思われる立ち位置を作りたいと思って。今はメジャーデビューしたいとか、みんながみんな思わないと思うんです。音楽業界も冬の時代と言われて、向かっていく目標みたいなものがあんまりないし、希望がなくなってきてる。そういう人たちの何か1つ、行ってみたい場所みたいなところを、僕らが作れたらいいなと思うんです」



Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(9月26日更新)


Check

Release

地元・奈良のライブハウスで一発録音
鬼気迫る自主レーベル第一弾作品

Mini Album
『CONTEXT』
発売中 1680円
THROAT RECORDS
DDCZ-1763

<収録曲>
1.HELL
2.12
3.楽園
4.私
5.言う
6.NEVERLAND

Book

五味岳久(vo&b)が独特のタッチで描く
世界初のTwitterアイコンイラスト集

Illustration Book
『五味アイコンBOOK
 #oshare in DICTIONARY』
発売中 1260円
並製(160×120mm) 352P
Pヴァイン・ブックス
ISBN: 978-4-86020-436-5

Profile

ロストエイジ…写真左より岩城智和(ds)、五味拓人(g)、五味岳久(vo&b)。’01年、地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。当初のツインギターの4人編成から幾度かのメンバーチェンジを経て、’10年より3人編成にて活動。90年代洋邦のあらゆるロック的音楽から影響を受け、地方発信/地域密着をモットーに、地元・奈良を拠点に独自の活動を展開し、Twitterでは兄・五味岳久の描くアイコンの似顔絵が話題となり、現在では展覧会の開催や書籍の発表にまで発展。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。’11年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立。最新作は8月3日にリリースされたミニアルバム『CONTEXT』。

LOSTAGE オフィシャルサイト
http://www.lostage.co/


Live

大阪・名村造船所跡地を舞台に
自主イベント『生活』を今年も開催!

『LOSTAGE presents [生活 2011]』
チケット発売中 Pコード147-769
▼10月1日(土) 14:30
STUDIO PARTITA
オールスタンディング4000円
[出]LOSTAGE/クリプトシティ/Z/環ROY
/toe/MINOR LEAGUE/the band apart
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可。
小学生以上は有料。プレゼント付。

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