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ホーム > インタビュー&レポート > 「ヒリヒリ、ジリジリ、ザラザラした感じにしたい。 かさぶたを剥がす感覚。治ってから剥がせばいいのに、 ちょっと微妙な頃に剥がしたくなる。あの瞬間の緊張感。」 『太秦ヤコペッティ』宮本杜朗監督インタビュー

「ヒリヒリ、ジリジリ、ザラザラした感じにしたい。
かさぶたを剥がす感覚。治ってから剥がせばいいのに、
ちょっと微妙な頃に剥がしたくなる。あの瞬間の緊張感。」
『太秦ヤコペッティ』宮本杜朗監督インタビュー (4/4)

――では、和田さんとの出会いは?

 

「晋侍は、9年前に紹介されて出会ったんですが、その時は態度が悪くて嫌いでした(笑)。出会ってからも喋る必要があれば喋るけど…という感じで特に親しかったわけではなく。だけど、ベアーズで偶然会った時に「次、映画撮ることあったら僕オーディション行きます~」と言ってきてくれて。それで、映画撮る時に晋侍がそう言っていたことを覚えていたので出てもらいました。出会ったのは結構前ですが、ガッツリ喋るようになったのはずいぶん後で、それが『尻舟』だったんです」

 

――監督の感じている俳優、和田晋侍の魅力とは?

 

「役者としては大画面に映える顔をしているし、存在感がありますよね。でも僕は役者以前に人としてどの角度から見てもおもしろいと思ってます。もちろん音楽も。めちゃくちゃ礼儀正しいとことかもおもしろい。それと、やっぱり趣味が近くて普段から付き合いがあるので、言わなくても僕が求めているものをなんとなく分かっているところもあります」

 

――和田さんが手がけた音楽もかっこいいですね。曲を作ってもらう上で何か注文をされたのですか?

 

「初めに、録音の松野(泉)くんと晋侍と僕の3人で音楽の入ってない状態の本作を観たんです。そしたら音楽なしでも成立していて、それはそれで良かったんですが、そこに音楽を重ねることによって違う何かが絶対生まれると思ってお願いしました。「女性ボーカルのいい曲をひとつ入れて欲しい」とだけ指定させてもらって、ほかは基本的に自由に作ってもらいました」

 

――そうなんですか。本作は音楽だけでなく様々な音の大きさが普通じゃない。砂をザクザク掘る音とか効果音がやけに大きくないですか?

 

「砂をザクザクする音、好きなんです。聞かせたい音のポイントで過剰に大きいところがあるかもしれないです」

 

――音もですが、ザラッとした質感にヴィヴィッドな色。映像の質感にもこだわりを感じました。 

 

「映画全体を通してヒリヒリ、ジリジリ、ザラザラした感じにしたいと思っていて、撮影のときにノイズを入れて撮っていました。音楽を作ってもらう時にも、そのヒリヒリした感じというのは伝えていて。擬音で伝わりにくいかもしれませんが(笑)、それが僕の中で重要でした」

 

――ヒリヒリ、ジリジリ、ザラザラは具体的な言葉では表せない感覚ですか?

 

「かさぶたを剥がす感覚でしょうか。治ってから剥がせばいいのに、ちょっと微妙な頃に剥がしたくなるでしょ? あの瞬間の緊張感。あと、日本映画で僕が好きなのは、「これは日本にしかないな」とか「世界でも突き抜けているな」と思えるもの。例えば塚本晋也監督の『鉄男』や大友克洋監督の『AKIRA』なんです。この両作に共通するのがヒリヒリ、被爆した感というか。こういうのってもしかしたら日本にしかないのかもって思っています。『太秦ヤコペッティ』でもそれは意識していました。ただ、そういう映画って男が好きな映画だと思うんです。試写会で意外だったのは女の人の評判もよかったことです。嬉しい誤算でした」

 

 

 『太秦ヤコペッティ』は、東京より先に関西で現在上映中! と言うことは、東京での評判をツイッターなどで聞いてから「面白いらしい」と騒ぐんじゃ遅いんです。なんだか怖そうと思っている方もおられるかもしれないが家族愛の映画です。難しくありません。面白いです。カッコイイです。言い切らせていただきます。監督の言う『鉄男』や『AKIRA』が持つ日本にしか描けない独特の雰囲気を持った必見作。関西からこの作品がもつ魅力、面白さを全国へ広めて応援したい。

 

太秦ヤコペ-069.jpg

 




(2013年5月22日更新)


Check
宮本杜朗 監督

Movie Data


『太秦ヤコペッティ』

●5月24日(金)まで、シネ・ヌーヴォ
●5月25日(土)より、第七藝術劇場

【公式サイト】
http://www.uzumasa-jacopetti.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/162271/

Event Data

舞台挨拶決定!

【日時】5/25(土) 20:30の回上映後
【会場】第七藝術劇場
【料金】通常料金

【登壇者(予定)】
和田晋侍/北原雅樹

【日時】5/31(金)20:30の回上映後
【会場】第七藝術劇場
【料金】通常料金

【トークショー(予定)】
宮本杜朗監督 × 小田島等(イラストレーター)