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『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2023』
ライブレポート【3日目・12月29日(金)】 (2/3)

【R-STAGE】

●reGretGirl

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最終日、12月29日の先鋒を務めるのは地元・大阪発の3ピース。サポートを加え5人で現れると、今日が誕生日の平部雅洋(Vo&G)が"どうして今日なんだ"と吠え、うってつけの「12月29日」で元気いっぱいにスタートを切る。さらに「ピアス」、「KAWAII」と立て続けて青いロックで全開に。シンガロングが起こり、あちらこちらに我を忘れて踊る人の姿もある。すると今度は"和泉府中駅では大したドラマなんて起こんないけど、僕らが起こした奇跡の夜を歌います"(平部)とバラードの「月の色」で一変して感傷的に。また平部は"バンド始めて8年、初めてギターを持った日から苦節15年、選んだ道が今日このステージにつないでることが、何よりのバースディプレゼントです"と、これまでの歩みを歌うようにして語り、"reGretGirlで一番やさしい歌"という、自身の喪失の記憶を源泉にした「tear」で再び感動の大合唱。平部は"来年も負けんなよ。諦めんなよ。約束しよう。絶対、死ぬなよ!"と強い気持ちをオーディエンスに投げ、またも声を一つにして「ホワイトアウト」で走り出す。エネルギッシュなロングトーンも轟けば、「soak」で一層の加速。見事に全員でライブを完成させ、ついにゴールへたどり着いた。"今日、一生忘れへんと思う!"という平部の言葉に大きくうなずいた人も多かったことだろう。

Text by 服田昌子
Photo by 田浦ボン

●w.o.d.

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R-STAGEには神戸発のw.o.d.が登場。Vanilla Fudgeがビートルズをカバーした『Ticket to Ride』をSEに、中島元良(ds)、Ken Mackay(ba)、サイトウタクヤ(vo&gt)が登場すると、フロアは待ってましたと大歓声をあげる。サイトウのギターが鳴り響くと、超絶爆裂ビートが稲妻のように全身を駆け巡った。1曲目は彼らのファン層の幅をぐんと広げたであろう、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』OPテーマの『STARS』。すさまじいインパクトでフロアは湧きに湧き、サビでは拳があがる。3ピースと思えないほどの爆音が堪らない。サイトウは「w.o.d.ですよろしく」とクールに挨拶し、FM802 2022年10月度ヘビーローテーションにもなった『馬鹿と虎馬』、『1994』を連投。ノイジーでヒリヒリするロックンロールにフロアの熱量は増す一方。サイトウの歌声とがなるようなシャウト、Kenの色気たっぷりのベースプレイ、時折辛そうに顔をしかめる中島の繰り出すビートが唯一無二の音の塊となり、エッジーに会場を飲み込んでいく。11月に配信リリースされた新曲『陽炎』ではポップな要素も提示。MCでサイトウは「年末はなぜ年末っぽくなるのか?」についてゆるいトークを繰り広げる。ようやく声出しも解禁になった2023年を「今年俺ら超楽しかったっす」と振り返り「散々自由に遊んでいきましょう」と再び本編へ。『イカロス』『Mayday』と"これぞw.o.d.!"というナンバーを轟音でぶつけると、「チバユウスケに捧げます」と披露したのは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『スモーキン・ビリー』。メンバー自身も影響を受けている上、2022年にはThe Birthdayとの対バンも経験しているw.o.d.。追悼の意とリスペクトを込めて歌うサイトウの声質がハマりすぎて、あまりにも渋くカッコ良く、鳥肌が立つほどカッコ良い。オーディエンスも大興奮で、抑えきれない感情を拳に乗せて突き上げる。ラストチューンは、R-STAGEのトリに登場するTHE SPELLBOUNDの中野雅之をプロデューサーに迎えた『My Generation』でフィニッシュした。バンドの魅力が存分に発揮された渾身の35分。w.o.d.は、これからますます高く遠くへ羽ばたくに違いない。

Text by ERI KUBOTA
Photo by 田浦ボン

●OKAMOTO'S

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2009年の1回目の『RADIO CRAZY』から"皆勤出演"の偉業を継続中のOKAMOTO'S。もはや同フェスの看板バンドだが、「どうしてこんなに新鮮なパフォーマンスができるんだろう」と不思議でならない。いや、余裕はもちろんある。本番直前の客前でのリハーサルでもベースのハマ・オカモトが「(本番まで)あと数分あるんですけど、お喋りしてもいいんですけども」とオーディエンスに話しかけて歓声を浴びると、「いや、『ワー』じゃないんですよ」と返して笑いを誘う場面など、その場の楽しみ方は慣れたもの。

ただ「90'S TOKYO BOYS」がスタートしてボーカルのオカモトショウがスタンドマイクを高く掲げたりしながら歌う姿などは、まるでルーキーバンドのような威勢を感じさせる。「Young Japanese」ではラップ調のボーカルを披露しつつ、ステップを踏んだりオーディエンスのハンズアップを誘う仕草だったり、手数の多いパフォーマンスも良い意味でフレッシュである。

MCではハマが「ワンマンかと思うくらいの盛り上がり、ありがとうございます。OKAMOTO'Sは今日のステージが2013年の締め。そして(『RADIO CRAZY』の)皆勤賞をいただきました」と喜びつつ、「ショウさんは先ほど、大先輩のTHE BAWDIESのステージに(ゲストで)上がられたということで。メンバー全員、特にちゃんと見ておらず...」と告白すると、場内はドッと湧き上がった。

そんな"前フリ"を受けて、ゲストボーカルとしてTHE BAWDIESのROYが登場。「Rock'n Roll Star feat.ROY」のコラボパフォーマンスでは、ノリノリでマラカスを振ってシャウトするROYの姿を、ギターのオカモトコウキが嬉しそうに見ながら演奏するところが印象的だった。また、ROYとショウのボーカルのコンビネーションも息がばっちりだった。

途中で上半身裸になるほどヒートアップしたショウ。最後は「毎日が予想できないとんでもない時代に、『RADIO CRAZY』で、音楽で繋がることができました。いろんなことがあるが、俺はみなさんの毎日を美しいと思っています。みなさんの日々が、来年、その先まで美しく続きますように」と願いを込めて、「Beautiful Days」を演奏。ロックンロールの熱を存分に振りまいて、今回の『RADIO CRAZY』も全速力で駆け抜けた。

Text by 田辺ユウキ
Photo by 田浦ボン

●Chilli Beans.

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この1年、とてつもなく飛躍を遂げたと言っても良いだろう。「今か、今か」とChilli Beans.のメンバーを待ち構えるR-STAGEのオーディエンスの密集度は、3日間の全アーティストのなかでもトップクラスだったのではないだろうか。あらためてChilli Beans.は現在、どれだけ求められているロックバンドなのかが分かる。

袖を余した大きめのロンTにサングラス姿で登場したボーカル、Moto。いきいきとした表情とプレイを見せるベース、Maika。表情を大きく崩さずにクールにそこに立つギター、Lily。そんな3人が顔を見合わせて笑顔を浮かべながら、1曲目「aaa」が始まった。

「最後まで楽しんで行ってください、あゆれでぃ?」と、英語表記ではなく日本語表記が似合うキュートな掛け声を口にしたMoto。2曲目「rose feat.Vaundy」では体を回したりするなどフリーキーなスタイルで歌い上げていく。気取らない、ナチュラルな雰囲気だ。一方、Lilyの乾いたカッティングは聴く者をヒリつかせるものがある。

「neck」ではMotoがネックレスをつかみながら「存在証明」と歌ったり、かけていたサングラスをすこしずらしたり、さまざまな表情が楽しめた。「See C Love」ではMaikaが鳴らすファンキーなベースラインに踊らずにはいられなくなった。貫禄すら感じさせるオーディエンスののせ方。それは、叩き上げでここまでやってきたバンドの強みを感じさせる。

Maikaが「すごく遠くまで人がいるのがめっちゃ見えてます」と喜び、「daylight」の曲中ではMotoがパンパンの客席を見渡しながら思わず笑みをこぼした。ステージ上には、彼女たちの素直な感情に溢れていた。人気曲「lemonade」では、Lilyの怒涛のギターソロに歓声があがり、さらbに「好きじゃないよ 君なんて」と繰り返される繊細な感情を表現した歌詞には、オーディエンスがどんどんその世界観に引き込まれていった。

「最後まで楽しんで、おいしいものを食べて楽しんでください」というMotoのMC、そして「シェキララ」の曲終盤「I Love You」と連呼するところ。すべてにおいて「『RADIO CRAZY』のステージが楽しくて仕方ない」という空気が伝わってくるパフォーマンスだった。

Text by 田辺ユウキ
Photo by 田浦ボン

●THE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Set)

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2017年6月にラストライブが開催された、BOOM BOOM SATELLITES。今回のTHE SPELLBOUNDは、そんなBOOM BOOM SATELLITESのデビュー25周年イヤーを記念し、同バンドの楽曲などを再現するスペシャルバンドセットでの登場となった。BOOM BOOM SATELLITESのメンバーとして活動したベース&プログラミングの中野雅之、中野とともにTHE SPELLBOUNDを駆動させるボーカル&ギターの小林祐介。ただオーディエンスはきっと、2016年に逝去したBOOM BOOM SATELLITESの川島道行の姿もそこに見たはずだ。

1曲目は、ビートルズのなかでも屈指のハードサウンドで知られる「HELTER SKELTER」のカバー。ゴリゴリのデジタルロックアレンジでよりバイオレンスに、そして中毒性を増す形に仕上げながら、1968年制作の同曲を革新的に見せていけるのはさすがTHE SPELLBOUNDと言える。中野のベースの太さと小林のギターのソリッド感は、『RADIO CRAZY』の3日間の出演者のなかでも究極レベルである。

「MOMENT I CLOUD」は非常に硬質的なサウンドと演奏。小林のボーカルも音の一部として捉え、舞台上でデジタル加工が施されていく。小林が声のボリュームを少しずつ絞り、ウィスパーなボーカルだけが場内にこだまし、そして再び盛り返していってダブルドラムの轟音を重ねていく展開は高揚せずにはいられない。曲に何層ものレイヤーがあり、情報量をぎっしり詰め込んだサウンドデザインとなった。

「MORNING AFTER」はなにかに迎合するわけでもなく、時代に寄り添うわけでも逆行するわけでもない、己の美学を貫き通したような構成に感動すら覚えた。中野、小林ともにベテランミュージシャンだが決して老獪さを売りにするわけでなく、とにかくギラついているところが素晴らしい。

圧巻はBOOM BOOM SATELLITESの代表曲にして日本ロックの金字塔「KICK IT OUT」だ。「ダダッ」の印象的なリフが鳴ると会場内は一気に興奮のるつぼ。狂乱、カオス――。そんな言葉がよく似合うほどオーディエンスの体を揺さぶった。

「僕たちにとってもみんなにとっても宝物みたいな曲をカバーして終わります」。2023年12月に逝去したチバユウスケさんに捧げる、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「ダニー・ゴー」で締め括ったTHE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Set)。中野は演奏後、そのままステージを去ろうとしたが、思い直したように「最高です、また会いましょう」とポツリとだけ言った。多くを語らなかったからこそ、その素朴な一言と鳴らされる音楽の重さをより感じることができた。

Text by 田辺ユウキ
Photo by タカギ ユウスケ(LiveYou)




(2024年2月 8日更新)


Check

Set List

【L-STAGE】

●Mr.ふぉるて
01. なぁ、マイフレンド
02. I Love me
03. マールム-malum-
04. アバンチュール
05. 暗い部屋の中、明るいテレビ
06. シリウス
07. あの頃のラヴソングは捨てて
08. 幸せでいてくれよ

●BIGMAMA
01. 倫理|ロジカルモンスター
02. the cookie crumbles
03. CPX
04. 物理|Time is like a Jet coaster
05. POPCORN STAR
06. 17 (until the day I die)
07. 現文|虎視眈々と
08. 荒狂曲”シンセカイ”
09. MUTOPIA
10. No.9

●indigo la End
01. 名もなきハッピーエンド
02. 夜明けの街でサヨナラを
03. 瞳のアドリブ
04. 夜風とハヤブサ
05. ラッパーの涙
06. 春は溶けて
07. 夏夜のマジック
08. 名前は片想い

●ストレイテナー
01. ROCKSTEADY
02. TRAIN
03. 彩雲
04. 灯り
05. Silver Lining
06. Melodic Storm
07. シーグラス
08. ダニー・ゴー(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT カバー)

●BRAHMAN
01. Slow Dance
02. 露命
03. 賽の河原
04. SEE OFF
05. DEEP
06. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
07. BEYOND THE MOUNTAIN
08. ANSWER FOR…
09. 満月の夕
10. 今夜
11. 真善美
12. FOR ONE'S LIFE

●ハンブレッダーズ
01. BGMになるなよ
02. ユースレスマシン
03. ワールドイズマイン
04. ファイナルボーイフレンド(2021)
05. グー
06. DAY DREAM BEAT
07. ライブハウスで会おうぜ
EN. フェイバリットソング

【R-STAGE】

●reGretGirl
01. 12月29日
02. ピアス
03. KAWAII
04. 月の色
05. tear
06. ホワイトアウト
07. soak

●w.o.d.
01. STARS
02. 馬鹿と虎馬
03. 1994
04. 陽炎
05. イカロス
06. Mayday
07. スモーキン・ビリー
08. My Generation

●OKAMOTO'S
01. 90'S TOKYO BOYS
02. Boreder Line
03. Young Japanese
04. Rock'n Roll Star feat.ROY
05. この愛に敵うもんはない
06. SEXY BODY
07. BROTHER
08. Beautiful Days

●Chilli Beans.
01. aaa
02. rose feat. Vaundy
03. neck
04. See C Love
05. doll
06. daylight
07. lemonade
08. Raise
09. シェキララ
10. you n me

●THE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Set)
01. HELTER SKELTER
02. MOMENT I COUNT
03. DIVE FOR YOU
04. MORNING AFTER
05. LAY YOUR HANDS ON ME
06. DRESS LIKE AN ANGEL
07. KICK IT OUT
08. ダニー・ゴー

【Z-STAGE】

●BLUE ENCOUNT
01. MEMENTO
02. Survivor
03. VS
04. HEART
05. DAY×DAY
06. バッドパラドックス
07. PLACE
08. もっと光を

●04 Limited Sazabys
01. swim
02. Warp
03. Now here, No where
04. Kitchen
05. Galapagos II
06. message
07. monolith
08. fade
09. kiki
10. Squall
11. Keep going

●sumika[roof session]
01. Babel
02. 絶叫セレナーデ
03. ソーダ
04. ファンファーレ
05. Summer Vacation
06. 春夏秋冬
07. ふっかつのじゅもん
08. Starting Over

●Saucy Dog
01. 怪物たちよ
02. メトロノウム
03. シンデレラボーイ
04. 雷に打たれて
05. 夢みるスーパーマン
06. ゴーストバスター
07. リスポーン
08. Be yourself

●ELLEGARDEN
01. Breathing
02. Supernova
03. チーズケーキ・ファクトリー
04. Red Hot
05. Salamander
06. Missing
07. ジターバグ
08. 風の日
09. Make A Wish
10. Strawberry Margarita

その他のライブレポート

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2023』

●12月27日(水)【DAY1】はこちら
●12月28日(木)【DAY2】はこちら
●12月27日(水)~29日(金)【LIVE HOUSE Antenna】はこちら

『FM802 RADIO CRAZY
RADIO de LIVE CRAZY』

RADIO CRAZYのライブ音源のみでお送りする9時間のスペシャル放送

●日時:2月12日(月・祝)
18:00~深夜3:00までの3部構成!

■第一部 18:00~
DJ=浅井博章/土井コマキ
■第二部 21:00~
DJ=落合健太郎/田中乃絵
■第三部 24:00~
DJ=板東さえか/樋口大喜

※オンエアアーティスト詳細は後日発表予定です(すべてのアーティストの音源O.A.ではございません)