「生きていることと地続きな音楽を、とにかくやっていきたい」 リリースツアーも残すは東名阪ワンマン! 黒猫チェルシーの“任務”たる『LIFE IS A MIRACLE』を語る 渡辺大知(vo)&澤竜次(g)インタビュー&動画コメント
恐るべき10代バンドと呼ばれた黒猫チェルシーも、インディーズで音源をリリースし早8年。メジャーデビューしてからも7年が経つ。4年4ヵ月ぶりとなる3rdアルバム『LIFE IS A MIRACLE』。この間にはレーベル移籍や、渡辺大知(vo)の俳優としての活動が忙しくなったりと、いろいろな変化があった。移り変わりの激しいシーンの中で、解散や休止などでバンドが一度も止まらず、じっと耐え続けたことはある意味、奇跡だと思う。とことんルーツミュージックを愛する彼らが、その名も直球な『ロックバラード』等シンプルでストレートな楽曲を、それも4人それぞれが作曲をして作り上げていったのは何より大きい。渡辺と澤竜次(g)に、この4年4ヵ月を振り返ってもらいながら、丁寧に、熱く、語ってもらった。
後は突き進んでいくだけ
――4年4ヵ月ぶりのアルバムとなりましたが、いつ頃から動いていましたか?
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澤 「レーベルを移籍して、去年の2月にシングル『グッバイ』(M-6)を出したんですけど、ずっと曲は作っていたし」
渡辺 「『グッバイ』を作る辺りからそれぞれが楽曲を持ち寄って、2年近くこのアルバムのことを考えていました」
――このアルバムの強みは、メンバー4人全員が作曲できているところですよね。
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澤 「啓ちゃん(=岡本啓佑・ds)以外は前から曲を作ってたんですけど、啓ちゃんは『青のララバイ』(M-9)が初で」
渡辺 「4人ともが曲を作れるのは、強みではありますね。多彩さというか、バラエティ感が出るというか」
――岡本くん作曲の『ロックバラード』(M-10)なんかは“ザ・黒猫”でもあるし、そのよさがより発揮されたメロディだなと感じました。
澤 「この曲は詞先なんですけど、作曲はバンド内コンペをしたんですよ。啓ちゃんの曲は受け身の作り方なんですが、アルバムの要素になっていますね」
渡辺 「『グッバイ』のさらに次へ行きたかった中で、啓ちゃんの作ってきた曲は最初に景色が浮かぶんですよ。『ロックバラード』にしても『海沿いの街』(M-12)にしても」
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澤 「がっちゃん(=宮田岳・b)も2曲書いて、結果このバランスになりましたね」
渡辺 「僕の曲は前からあった曲で、いわゆるアルバムのための新曲ではないですけど(笑)。でも、いいバランスです。曲ごとに色もついてるし、みんなが曲を持ち寄って黒猫チェルシーになっていく感じも知れましたし。全体を通しての質感に手応えがありましたし、後は突き進んでいくだけ。スタート地点に立てた自信はありますから。前作『HARENTIC ZOO』('12)は挑戦だったし、実験だったんです。いろいろと楽器を増やしてみて、こういうロックになるんだなと…初めて客観的に自分たちを見れた。“カッコいいバンドを見付けた!”と友達に教えたくなるし、普通にファンになれるというか。音としてはシンプルなんだけど、豊かだったし。今回は片意地を張った感じはなくて、ロックが好きで、音楽が好きで、出したい音をそのまま、普段の地続きで出してる感じなんです。勢いがある。ロックも好きだけど、居酒屋も好きで、普通にロックをしてる。前まではロックンロールをしたいと想っていたけど、今は普通にロックンロールをしてる」
――『M-1589』(M-1)~『スター・トレイン』(M-2)の流れに、その勢いを感じましたね。
渡辺 「『スター・トレイン』を1曲目にしたくて。でも、澤からインストを1曲目として入れるアイディアがあって」
澤 「最初から1~2曲目の流れは考えていて、コンセプトを作っていたんですよ。それぞれの好きなもの、趣味に正直にあるべきだと思っていたので」
ロックバンドとして負けないアルバムを作りたかった
――『LIFE IS A MIRACLE』(M-8)は楽曲としても、アルバムタイトルとしてもいいですね。
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澤 「“このアルバムに何が足りないのか?”と考えたら、“ギターリフでしょ!”と(笑)。そこは絶対に必要だし、やれる限り入れたいなと」
渡辺 「アルバムタイトルは最後の最後に決めたんですけど、旅をしていく感じが出ているかなと思います」
――4年4ヵ月ぶりというのもありますけど、とにかく気合いを感じるアルバムですよね。タイトルからもそれが伝わってくるので。
澤 「ロックアルバムとして真っ向に勝負したかったんです。90年代のバンドがいまだに元気な中で、若い世代である自分らが真っ向勝負したかった。任務というか」
――ジャンルとしてのロックバラード、もっと古い言い方をするとロッカバラードですが(笑)、そういう昔ながらのものを今の時代にアップデートできてると思うんですよ。
澤 「ロックバラードは当たり前にやりたくなるし、このターニングポイントで、どう出すかですよね。黒猫というよりロックバンドとして負けないアルバムを作りたかったので。そうじゃないと、“約4年半も何をしてたんだ?”となるので。上の世代は面白がってくれましたけど、同世代や下の世代のお客さんにも、“こういうロックバンドって、カッコよくないかい!?”って共感してもらいたい想いがありましたし。もちろん昔ながらの音楽を復元するだけでなく、ちゃんと更新させて、共感してもらいたかったので」
――時代時代で流行や旬がありますが、黒猫は自分たちの音楽を貫いている感じが、今作では特にあります。
渡辺 「流行や旬に合わせないとか、抵抗があるとかではないし、そういうものが持っている力も分かってます。だから、取り入れたいものは取り入れますし。ただ、自分たちが生きてきて感じてきた空気もあるので、今の世間がどうは関係なくて、いいとこどりをして共感してもらいとだけ考えています。まぁ、90年代の香りはあると思うんですよ。懐かしい感じというか」
澤 「今までの2枚のアルバムは大好きですけど、迷いがありながらも制作をしてきて。今回は特に、聴いてもらえれば絶対に分かってもらえる自信があります。僕らの好きなものが詰まっていますから」
渡辺 「メンバー個人個人の好きなものはバラバラなんですけど、4人が一緒になって鳴らす理由があって。共通しているところはあるし、一緒にいて楽しめる空気感がある」
澤 「全員が作曲できるのは刺激があるし、バンドを俯瞰で見ることもできますから。黒猫にも“こんな引き出しがあったんだ”と思えますし。今までは力で押し切ってましたけど、今はもう肩の力が抜けていますから、新しいものがどんどん出てきますしね」
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インディーズで1stを出したときの嬉しさを思い出しましたね
――去年2月のシングル発売まで、ベスト盤『Cans Of Freak Hits』(‘14)からリリース自体も約2年空きましたが、不安はありましたか?
澤 「不安は何度もありましたし、自分たちでCDを作る考えもありました。どういうやり方がいいのか分からない中でも、やはり黒猫はメジャーで出したかったんです。そうしたら、もう1回チャンスが与えられて…インディーズで1stを出したときの嬉しさを思い出しましたね。いや、それ以上かも。レコーディングスタジオに通うとか、曲順を決めるとか、いちいち嬉しいんですよ。次のアルバムも楽しみですしね」
渡辺 「発売日を待っているのも楽しかったですね。本当にデビューのときみたいだった。アルバムを出すまで4年半も空いたけど、バンドのことはずっと考えていましたから」
――大知くんの場合は、その間に役者の仕事もありましたよね。
渡辺 「前は好奇心のみで受けていましたが、腹を括ったのがNHKの朝の連続テレビ小説『まれ』(‘15)に出たときですね。今では表現の1つだと思ってますし、職業としては役者ではなくバンドマンですが、バンドだけをやらなきゃいけない決まりもないですから。映画も好きで監督もしましたけど、今ならそういうものと音楽を結び付けられますしね。バンドを辞めることは一度も考えなかったですし、音楽は一生飽きないものですから」
澤 「渡辺が真っ直ぐ楽しそうに俳優をやっていたら、それが一番いいと思うんです。最初は迷いもあったはずだし、生き生きはしていなかった。バンドにとっても“どうなの?”とも正直思いましたよ。でも、今は楽しそうなので。俳優とかサポートミュージシャンとか、散々浮気しまくっても、帰ってくる場所は黒猫ですから。いろいろ持ち帰ってくる気ですから。悩みは今も尽きないけど、“好きやわ~この感じ”って自分でも思わずクスッと笑うくらいなんですよ(笑)。どうせ一生悩むなら、いろいろ考えても仕方ないですから。世界一楽しいロックバンドが仕事なんで、悩みがあっても軽々と受け止めないといけないですしね。楽しいことの代償ですよ」
渡辺 「本当に今作でできたような自分を大切にしたいですね。生きていることと地続きな音楽を、とにかくやっていきたいです。カッコいいけど、すごいことでもない、その両方をちゃんと理解していたいですね。生活の中には、小さなことでも感動できることがいっぱい転がっていて、そういうものを曲に、歌詞に、込めたいです。次の作品もいろいろと意識してますし、もっと歌で掴んでいきたい。ようやく自分の歌が見えてきつつあって、新しい武器が生まれそうなんです。次の作品で、より歌を強烈にしてやりたいですね」
(2017年5月26日更新)
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Movie Comment
自信作を語り最高のライブをお約束 渡辺(vo)澤(g)からの動画コメント!
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Release
これから続いていくための日々の音楽 4年4ヵ月ぶりの3rdアルバム!
Album 『LIFE IS A MIRACLE』 発売中 2750円(税別) Sony Records SRCL-9322 <収録曲> 01. M-1589 02. スター・トレイン 03. Dark Night, Spot Light 04. 涙のふたり 05. 恋するハイウェイ 06. グッバイ 07. また会おう 08. LIFE IS A MIRACLE 09. 青のララバイ 10. ロックバラード 11. 飲みに行こう 12. 海沿いの街
Profile
くろねこ・チェルシー…写真左より、澤竜次(g)、渡辺大知(vo)、宮田岳(b)、岡本啓佑(ds)。’07年3月(高1の春)結成。地元神戸を中心にライブ活動を行なう。’09年春、高校卒業後に拠点を東京に移し、1stミニアルバム『黒猫チェルシー』をリリース。渡辺が映画初出演にして初主演を務めた映画『色即ぜねれいしょん』が全国公開される。同年12月には2ndミニアルバム『ALL de Fashion』をリリース。’10年にはメジャー第1弾アイテムとなる『猫Pack』をリリース。’11年6月には待望の1stアルバム『NUDE+』を、その半年後には1stシングル『アナグラ』を発表と、常にスピード感を保ちながら新しいことに挑戦。’12年3月には音源だけでなく映像も楽しめる2ndアイテム『猫pack 2』を、同10月には2ndアルバム『HARENTIC ZOO』をリリース。’14年4月には初のベスト盤『Cans Of Freak Hits』を発表。'15年8月には、渡辺が出演するNHK連続テレビ小説『まれ』から産まれたバンド、little voiceとしてシングル『涙のふたり/また会おう』を発売。その後『little voice VS 黒猫チェルシー』という形態で全国ツアーも開催。各地でソールドアウトを記録し、大きな話題を呼ぶ。'16年2月に『グッバイ』、6月に『青のララバイ』とシングルを立て続けに発売。今年2月22日には4年4ヵ月ぶりとなる3rdアルバム『LIFE IS A MIRACLE』をリリースした。黒猫チェルシー オフィシャルサイト http://www.kuronekochelsea.jp/
Live
ツアーも終盤でワンマンシリーズ突入 大阪公演が間もなく開催へ!
『黒猫チェルシー TOUR 2017 「LIVE IS A MIRACLE」』【福岡公演】 ▼4月7日(金)DRUM SON [共演]IRIKO【兵庫公演】 ▼4月9日(日)神戸 太陽と虎 [共演]愛はズボーン【石川公演】 ▼4月13日(木)金沢vanvanV4 [共演]石崎ひゅーい【群馬公演】 ▼4月14日(金)高崎TRUST55 [共演]石崎ひゅーい【静岡公演】 ▼4月21日(金)メスカリンドライブ [共演]ミソッカス【宮城公演】 ▼5月12日(金)LIVE HOUSE enn 2nd [共演]赤い公園【北海道公演】 ▼5月20日(土)COLONY
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード318-717 ▼5月27日(土)17:30 Shangri-La オールスタンディング3500円 サウンドクリエーター■06(6357)4400 ※未就学児童は入場不可。
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【愛知公演】 チケット発売中 Pコード318-696 ▼5月28日(日)17:30 池下CLUB UPSET 前売3500円 ジェイルハウス■052(936)6041
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【東京公演】 チケット発売中 Pコード318-696 ▼6月4日(日)17:30 東京キネマ倶楽部 スタンディング3500円 VINTAGE ROCK■03(3770)6900
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Column
5年目の初期衝動をかき鳴らす 黒猫チェルシー初のベスト盤 『Cans Of Freak Hits』最強説! 渡辺(vo)&澤(g)インタビュー
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「ジャンルは、フォーク・ダブ・ ハードロック・アニソンです(笑)」 黒猫チェルシーが手に入れた ポップなジャンキー・サウンド! 前作『HARENTIC ZOO』を語る
Column3
初の合宿レコーディングが生んだ サウンド+映像+ビジュアル で魅せる実験的意欲作第2弾 『猫Pack 2』を大いに語る!
Column4
20歳の蒼き衝動を爆発させた1st アルバム『NUDE+』の初々しい インタビューをプレイバック!
Comment!!
ライター鈴木淳史さんからの オススメコメントはこちら!
「黒猫チェルシーがデビューしたときの騒ぎっぷりはいまだに覚えていて、その頃は10代でデビューするバンドも多かったように思う。今やキャリアも間もなく10年の20代バンドなわけだが、ここからが本当の勝負だろう。後からデビューして追いかけてきた同世代もたくさん出てきている。フェスで盛り上げるバズらせバンドの勢い音楽であったり、シティポップやブラックミュージックを汲んだ雰囲気の音楽であったり、今ではいろいろなシーンができている。ルーツミュージックをこよなく愛し、ロックンロールで盛り上げ騒がせ踊らせることもできる正統派なはずの彼らのカテゴリーが、今の状況だと意外と曖昧に見えてしまっていたかも知れない。でも、去年出したシングル『グッバイ』を聴いたときに、ホッとひと安心した。何よりも歌が強いし、今どき誰もやらないような沁みるロックバラードを鳴らしていた。今作にはそれこそ『ロックバラード』なんていう曲も収録されている。一瞬でピークを作るのではなく、一生ピークを保つことが大切だし、どちらが難しいかは一目瞭然。必ず彼らには生き残ってほしいし、この作品を作ったことで彼らも生き残りに自信を持ったと想う。まだまだ人生は長いので、奇跡は何回でも起こせる(実際は本当に難しく険しいが)…と勝手ながら僕は信じている」