『eve』=前日と名付けられたアルバムには、このバンドの変わりゆく予感、変えていく意思、変わらなければならない使命感に満ちた挑戦と、いまだ途絶えることのない情熱が、ひしめき合いながら必死に自分を鳴らすような全13曲を収録。ハイエナジーでエッジィなバンドサウンドの破壊力はそのままに、プロデューサーの江口亮(Stereo Fabrication of Youth/MIM/la la larks)の手により、元来持っていたポップネスとドラマティックな楽曲の輪郭が際立つ意欲的な1枚となっている。現在は、ストイックに自己改革に勤しんだ同作を手にリリースツアーの真っ最中の飯田瑞規(vo&g)と三島想平(b)が、同郷の先輩でもある江口との関係性や、エモーショナルなエピソード満載(笑)の制作秘話、更新し続けるバンドの未来を語る、革命前夜のインタビュー。“知らない内に落っことした その希望の残骸をひとつひとつ集めて”(『希望の残骸』)、新世界に突入するcinema staffの“eve”を見届けてほしい。あなたの代わりなんて、決していない。そして、このバンドの代わりも。
三島(b) 「功を奏したと思いますね。そこで今のプロデューサー(=江口亮)に出会えたのが一番大きかったと思う。それで『YOUR SONG』(M-12)(※NHK岐阜発地域ドラマ『ガッタン ガッタン それでもゴー』主題歌)が出来て、出たとこ勝負じゃなくて“とりあえず『YOUR SONG』と『切り札』(M-5)がある。じゃあどこをどうやって埋めていこう?”みたいな作り方が出来たのは、バラエティ豊かな作品にするためにすごく重要なプロセスだったかもしれない」
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――『blueprint』以降、いろいろと思案する間もなくタイアップの話があって、やらなければいけないことが目の前にあったのもよかった、みたいな。
三島 「そうですそうです。以前で言えば、『great escape』(‘13)もそうだったよね」
飯田(vo&g) 「しかも『blueprint』を作り終えてから、新しい刺激として“次はプロデューサーを入れたいね”みたいな話をちょうどしていて。江口さんは岐阜の先輩だし、しかも『YOUR SONG』は岐阜のドラマということで、奇跡的にいろいろとうまく噛み合ってたんだなぁって、今考えると思いますね」
――それこそ『blueprint』の取材時 は、その前作『Drums,Bass,2(to) Guitars』('14)を果たして超えられるのか?っていう話から始まっていて。今回だって『blueprint』の後に何が出来るのか?みたいに、ここ数年は毎作cinema staffが極みに到達し続けてるからこそ。
三島 「今回はやっぱり、ラッキーもかなりあります。本当にそうですね。あのままやってたら、もっと煮詰まった感じが作品に出ちゃってたかもしれない。こういう方向には来てなかった気がしますね」
――ロックバンドとタイアップって毎度ある出会いじゃないけど、シネマは自分たちだけではどうにもならなさそうな時期に、いいタイミングで話が来る感じが(笑)。
三島 「ホント、その通りっすね(笑)」
飯田 「何かタイミングいいっすよね。確かに“もうどうしようかな…”って悩んじゃって何も進まなくなりそうなときにポンッと話がありますよね、ありがたいことに(笑)」
正直最初は苦手だったんですよ。当時はちょっと怖かったんで(笑)
――そもそもプロデューサーの江口さんとは、昔からの知り合いだったと。
三島 「そうですね。ステファブ(=Stereo Fabrication of Youth)は高校の頃すごい好きで、ステファブがこれからはレーベルもマネジメントも自分たちでやっていくみたいな時期に、岐阜のライブハウスで対バンして。その後、僕は大学進学で名古屋に行くんですけど、江口さんとたまたま家も近所で、普通に遊びに行ったりして」
――あの頃からシネマはシネマでバンドとして、江口さんは江口さんでミュージシャンからプロデューサーとしての実績を積んでいくという。
三島 「まさに当時は江口さんがSchool Food Punishmentとかをやってた時期でしたね」
飯田 「“今だったらこういうことをやった方がいいね”とか、ちゃんとビジョンが見えてる方なんで、本当にいろいろと信じられたというか。『YOUR SONG』がピアノアレンジで返ってきたときも、それを聴けばもうメッセージが伝わってくる。“cinema staffにこういう線もおもしろいんじゃないか?”って提案してくれてる1つ1つが、本当にcinema staffのことを理解してくれていてありがたいなぁと思いますね」
――そもそもプロデューサーを立てようとなったとき、最初に江口さんの名前が挙がったの?
三島 「そうですね。まだ他愛もない話の時点でもう、“江口さんとならやってもおもしろいんじゃない?”っていう話しがチラッと出てたんで」
飯田 「でも、正直最初は苦手だったんですよ。当時はちょっと怖かったんで(笑)」
――まぁ地元の先輩やといろいろあるよね?(笑) そういった意味では、江口さんもプロデューサーとしていろいろと経験を積んで、お互いに成長してやってみようとなったのはおもしろいですね。
三島 「いいタイミングだったと思うんですよ。江口さんも数年前はそこまで僕らのことを認めてくれてなかったと思うんで(笑)。改めて今回見てもらって、“あ、こんなにいいバンドだったの?”みたいな感じだったし」
飯田 「サウンド面ではもちろん力になってくれてますけど、精神面もというか、レコーディングの後に呑みに行ったりすると、本当に“cinema staff愛”を語ってくれるんですよ。あれだけ言ってくれたら、結構前向きになりますね」
三島 「やっぱりメンバーだけだとピリピリしがちな瞬間があるんですけど、江口さんはめっちゃ察知能力があるんです。そうならないように空気を読んでくれてる。あと、全てが早い。しかもちゃんと理由があって早い。そうすると単純に早く次の作業が出来たり、作業効率がよくなったりするし、スタジオワークには予算や時間の制約がある中で、その時間の使い方はすっごい上手だと思いました。江口さんの他の現場にも行かせてもらったんですけど、どうやったら作業がスムーズに運ぶかを常に分かってる。それは今後セルフプロデュースする場合にも活きることで」
飯田 「あと、タイトルの『eve』は千歳船橋にあるEVE studioから取ったんですけど、江口さんの共同出資してるスタジオなんですよ。だから、本当にじっくり作業できるんで。辻(g)の家はスタジオの近くだったので、江口さんと辻だけ残ってお酒を呑みながら録ったり、いろいろお試しも出来るし。すごくいい環境でしたね」
――当時は辻くんが一番江口さんに噛み付いたらしいけど、そんなことになってるとは(笑)。
飯田 「いや、もう今となっては相当仲良いですよ(笑)」
三島 「当時はお互いの本音みたいなところでぶつかったことはなかったので。今回はそこも全部話し合いましたね」
やっぱりチャートアクションを意識しないなんて無理だし
それがモチベーションになることもある
――今回のアルバムの起点となった『YOUR SONG』は、地元からのタイアップの依頼があって始まった曲ですけど、これはシネマの世界観を広げてくれましたよね。これはどういうオーダーだったんですか?
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三島 「ドラマ側はすごく信頼してくれてたみたいで、そんなに細かいオーダーは何も。逆に江口さんが“俺も1から考えたいから、絶対に弾き語りの状態で渡してくれ”って」
――この曲って弾き語りの状態で渡した段階から、こういう空気をまとってたの?
三島 「いや、ちょっとバラードっぽいぐらいですね」
――じゃあアレンジによるところが結構デカい。
三島 「デカいっす。テンポも自由にやってくださいって感じだったし、こういうビートになるとは思ってなかったですね。まずピアノが全編に乗って返ってくるとは、全く想像してなかったです」
飯田 「この曲はすっごい化けたと思います」
――これが自分たちたけで作ってたら、もうちょっと疾走してたり、ギターがジャキジャキ鳴ってたり(笑)。
飯田 「絶対してましたね~(笑)」
三島 「“レールマウンテンバイク”っていう、線路の上を自転車で走っていくところが舞台なんですよ。僕だったら絶対にチャリンコっぽいスピード感にするところをめちゃめちゃテンポを落としてきたので、“そうくるんだ!”って思いましたね。『YOUR SONG』がなかったら、“そういう発想もアリなんだ”みたいな価値観、基準がもっとバンド寄りだったと思う。“別に曲がよくなればいいじゃん”っていうモードに、今はすごくなってるから」
――いつものcinema staffの構造で三島くんが指揮を取っていたら、“俺だったらこうはしないわ”っていうこともいっぱいあるわけじゃないですか。それをポジティブに捉えられたんですね。
三島 「『blueprint』を作って、ちょっとフワッとしたところがあったんですよ。ずーっと曲を書き続ける生活でだいたいセルフジャッジしてきたから、何がカッコいいかちょっとよく分からなくなってきた、みたいな(笑)。そういうときに江口さんが、バシッと“ああしよう、こうしよう”って全部言ってくれるんで、それを1回全部信じよう、作品を作るまでは価値基準を江口さんにしてみようって決めてたからなのもありますね」
飯田 「『YOUR SONG』は、江口さんの方がむしろ“cinema staffとしてこの感じで大丈夫かな?”ってちょっと心配してたぐらいなんですよ。でも、自分ら的には『blueprint』の『孤独のルール』でもピアノと歌だけでやってたりしたんで、すんなり受け入れられたというか。新しくておもしろいなっていう気持ちの方が全然先行してましたね」
――こんな王道のポップソングに行ってもいいのか、とは思わなかったんやね。
三島 「そう思った瞬間もありましたけど、サビの入りを聴いたときに“あ、これだったら全部OK”って思えたんで」
飯田 「やっぱりサビで辻が弾いてるギターが大きいのかもしれないですね」
――サビの裏で鳴ってるあのノイジーなギターが。
三島 「そうです。あれでアイデンティティを失ってるわけじゃないと思いましたよね」
――そういう意味では、自分たちを貫き通しつつ、旨味を残しながら、どうチャートを狙っていくかというおもしろさはあるもんね。いいヒントをもらったチャレンジでしたね。
三島 「まさにそうですね。やっぱりチャートアクションを意識しないなんて無理だし、それがモチベーションになることもある。これだけの人がちゃんと聴いてくれてるんだって視覚化されることを無視するのは違うと今は思うんで、そこは心の片隅に置きながら。江口さんもそこはすごく意識してると思うし。それは本当に勉強になりました」
――江口さんもバンドマンがたどってきた葛藤は、絶対に感じてるからね。
飯田 「もうめちゃくちゃ感じてるからこそ、バンドを13年やってきた4人にすごく共感というか応援してくれて。すっごいその気持ちが強いんですよね」
――だからハートは熱いけど、コミュニケーションの取り方がツンデレだっていうところだよね?(笑)
飯田 「アハハハハ!(笑)」
三島 「そうですそうです(笑)」
――何年か前に久々に会ったときの印象が、秘めた熱さがあるというか。それを昔は恥ずかしいからか表に出してなかったように思う。今は言葉が人を動かすことをちゃんと知っている感じがする。
飯田 「そんな感じはしますよね。今はもうエモーショナルな話をむちゃくちゃしますから」
最初はもっと辻のことだったんですよ。どう考えても辻のことだなって(笑)
――『エイプリルフール』(M-3)はザ・ラブストーリーな曲ですけど、シネマの曲って明言しないというか、ある種曖昧な部分を残す。この曲はしっかり物語が伝わってくる言葉を選んでるところが新しいですね。
三島 「そうっすね。これがなぜ恥ずかしくなく書けたかというと、最初は辻くんのことをおもしろおかしくネタにしてやろうと思って書いたから(笑)。やっぱりラブソングは上手じゃないんですよ。自分もそんなに経験値がないし、リアルには書けないんで。でも、人のことならね(笑)。ただ、ラブソングは1曲入れたいなって思ったんですよ。バラエティ豊かにしたいのもあったし。でも、おもしろおかしく歌詞にしてもOKなのは辻くんだけだと(笑)」
――辻くんはOKなんやね(笑)。
三島 「全然。っていうかまぁ、後から言ったんで(笑)」
飯田 「“これ、辻のことを書いたんだけど”って歌詞を渡されて、最初はもっと辻のことだったんですよ。どう考えても辻のことだなっていう(笑)」
三島 「これでもそこからちょっと売れ線にしてあります(笑)」
飯田 「僕もレコーディング中に辻のことを考えながら歌って」
――辻くん、これどんな気持ちでギター弾くんだろうね? こんなに好き放題の俺のこと、あの子は何も言わずに着いてきてくれたのにって…。
(一同爆笑)
――やっぱ愛想尽かすよね、普通っていう(笑)。
飯田 「“俺は自由でいたいから”って別れて。それ、いっつも同じ理由じゃねぇか!って(笑)」
――アハハハハ!(笑) ある種ブレてないっちゃブレてない(笑)。でも、この曲はめちゃくちゃパーソナルなことをピックしてるけど、ちゃんとマスに訴えかける意思を感じます。今回はアルバムに流れる空気を重たいものにしたくなかったのは何となくのコンセプトであったと思いますけど、本当に軽やかで突き抜けた印象がありますね。
三島 「それは意識しましたね、やっぱり。嬉しいですね。『blueprint』がやっぱりちょっと内省的過ぎたというか」
――そうかなぁ。俺はめっちゃ好きやけど(笑)。
三島 「アハハ!(笑) もちろんそれがダメってことじゃないですけど、江口さんも『blueprint』はちょっと重た過ぎるかもって言ってたんですよ。それも分かるし。この歳になってきて、自分のやってることに意見してくれる人って、結構少なくなってきてるから。バンドのキャリアというか、バンドが続いてるだけで素晴らしいって言われるようになってはいけないと思う。毎回ちゃんと自分たちが納得して、ちゃんと更新していくアルバムを作らないと。 “このバンドは作品云々じゃなくて”っていう風には絶対したくない。毎回作品がいいバンドでいたいと思います」
――cinema staffはその可能性を、我が道を行くだけではない存在になれるであろうものを持ってるもんね。
そこまで出す気はなかったんですけど、出ちゃいました(笑)
――『blueprint』の制作時には解散するんじゃないかっていうぐらいの状況もあって、価値観についても話し合ったというエピソード がありましたが、今回は?
三島 「ありましたね~今回はもっと話し合いました(笑)。エモーショナルな瞬間もめっちゃありましたし、今まで触れてこなかったところとか、お互いのイメージの中で分かってる気になってたところまで、今回は結構踏み込んで、ちゃんと思ってたことを話して、その中で価値観を共有できるところを伸ばしていこうっていうことになったんで」
飯田 「ちゃんと話したことが本当に全てに影響してるというか、すごくいい方向に進んでると思うんですよ。レコーディングにしてもライブにしても、こういうプロモーションにしても、4人で話し合うことってマジで大事だなと感じましたね。話さないともうヤバい状況でもあったし」
――ちなみにそれはいつ頃ですか?
三島 「去年の12月頃ですね。制作中です」
――じゃあもうEPはそれなりに作ってきた後なんや。
飯田 「そうなんですよ。フフフ(笑)」
三島 「だから“EPの在り方ってどうだったんだ?”みたいなところからですよね。本当は俺らはどうしたいんだ? 江口さんはどう思ってる? スタッフは? みたいなところもすごい話しました。全部よかれと思ってやってたんですけど、意外と個々思ってることが違ってた、みたいな。どこまでだったら許せる/許せないみたいなことも、ちょっとヌルッとさせて来ちゃってたんですよ。“ここからアルバムの方向性を変えるか?”みたいな話もあったけど、やっぱり江口さんを信じようっていう結論が出て、『希望の残骸』(M-2)とか『エイプリルフール』は、ちゃんとみんながそれをクリアした上で、結果そういう曲が出来たのはすごいありますね」
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――『希望の残骸』なんか、まさにcinema staffの道のりそのものだと思った。
三島 「そうですね。そこまで出す気はなかったんですけど、出ちゃいました(笑)。勝手に滲み出ちゃったみたいなところは。旅の曲にしたいとは言ってたんですけど、やっぱりちょっと重なるところはありますよねぇ」
――『eve』は、今作で変わるというよりは、変わっていくぞというアルバムだと思うんで。『希望の残骸』は自分たちの今までの道中を振り返りつつ、その意志を表明しているような感じがすごいしましたね。もうこの楽曲のテイストは、cinema staffにしかないなと。
三島 「ありがとうございます、そう言ってもらえるのが、一番嬉しいですね」
“overground”は意志表示としてもそうだし
地上に光が溢れてる感じの象徴としてずっと使いたい言葉だった
――アルバムの最後を締め括る『overground』(M-13)も、“overground”という言葉をcinema staffが使ったことに意義があった気がしました。曲の中身もそうだけど、この曲が最後に入っていることも。
三島 「本当に、おっしゃる通りですね。意図してることはそういうことなんです。この曲は前奏がちょっと付いたんですよ(※実際は『YOUR SONG』のアウトロとして収録)。それが一応“underground”の位置付けで、地下から地上へっていうイメージなんですよね。実は今回のアルバムの本当に初期構想の段階で、『overground from underground』みたいなタイトルにしようかなと思ってた時期があって、その名残もあるんですけど。 “overground”は意志表示としてもそうだし、地上に光が溢れてる感じの象徴としてずっと使いたい言葉ではあって。この曲自体は実は前から出来てたんですけど、タイトルが付いてなくて。この曲だったら“overground”っていう言葉が本当すんなり入るしちょうどいいなぁって」
――でも、タイトルに“from underground”っていうある種のエクスキューズを付けずにちゃんと言い切ったのが、潔くてよかったと思います。
三島 「そうなんですよ。やっぱりそういうことじゃないというか、要らなかったですね」
――このMVは地元の岐阜で撮ったということですよね。
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飯田 「母校で撮りました。教室に入ったのが本当に10年ぶりとかなんで、懐かしかったですね。高校に通ってたときの先生がまだいて、cinema staffのことが大好きで、すごい応援してくれてるんですよね。普通にファンなぐらい」
――何かその人、Twitterで見たことある気がする!(笑)
飯田 「結構、名物先生(笑)」
三島 「最近ちょっと関係者感が出てきてる(笑)。cinema staffのクルー感が」
――かつてシネマのインタビューを上げて反応をググッてたら、堅めの仕事の人もシネマのこと好きなんだな~って思ったわ! その人やな、きっと(笑)。
飯田 「赤坂BLITZでワンマンしたときも来てくれて」
三島 「平日ですよ!?」
――えぇ~マジで!? すげぇ!
飯田 「で、夜行バスで地元に帰って」
三島 「そのまま授業(笑)」
――アハハハハ!(笑) もう最高!
飯田 「ブライアン・イーノとかが大好きな、本当に音楽大好きな先生なんです」
三島 「本当にいろいろ詳しくて、学生のときも教えてもらったりしてました」
――教え子からメジャーデビューするバンドマンが出てきたのは嬉しいやろなぁ。意図せず恩返しっぽい。
飯田 「『overground』のMVが公開になったとき、先生から“本当に大切なプレゼントをくれてありがとう”ってメールが来て。もう、本当にこっちがありがたいんですけどね。何かちょっとでも返せたかなとは思います」
――主催イベント『OOPARTS』もやったりもしてるし、今回の『YOUR SONG』のタイアップの話もそうやし、何かちゃんと地元とつながってるというか、確立してきましたね。
三島 「今まで関わってくださった人たちへのリスペクトの最たる形が『OOPARTS』なんで、これはバンドアイデンティティとして続けないといけないと思うし、cinema staffがどういう規模になってもそこは譲らず、ちゃんと意志表示をしていきたいと思いますね」
――『YOUR SONG』にしたって、地元のCD屋さんでcinema staffを知ったNHKの方がタイアップの話をって…今の時代にそんな美談がホンマにあるのかっていう(笑)。
三島 「アハハ!(笑) ビックリしましたけどね。でも、本当に嬉しいことです。そういう人たちのためにも、ちゃんとそこは譲らずにやっていきたいですね」
ここまで作品性が強いアルバムを、いざライブ用に解体するとどうなるのか
それがすごい楽しみですね
――今作が出来上がったとき、何か思いました? 今までの作品と違う感覚があった?
飯田 「毎回“最高のものが出来た!”とは思うんですけど、今回はそもそも向かう方向を定めて取りかかって思った以上のものが出来たんで、すごく納得がいくというか。明るいアルバムだし、何度でも聴けるなぁと思いますね。聴く時間とか聴く人に、本当に寄り添うように歌えるようになりましたし。それは江口さんとの出会いのおかげでもあったし、そのドラマのオファーのおかげでもあったし。いろいろ学んだアルバムでしたね」
――リリースツアーも始まりました。
飯田 「今回はスタジオにもすごく入って、ライブのアレンジもガッツリして、ここまで準備できたのはなかなかないんじゃないかな?」
三島 「ここまで作品性が強いアルバムを、いざライブ用に解体するとどうなるのか。本当に結構感じが違ったりするんで、それがすごい楽しみですね」
――そして、『eve』の後、革命前夜のcinema staffの次が気になりますね。
三島 「次の制作が20代最後の作品っていうのもあるんで、bloodthirsty butchersに重ねちゃってあれなんですけど、『kocorono』(‘96) (※吉村秀樹(vo&g)が30歳を目前に死んでもいいという覚悟で作ったロック史に残る名盤)を作らないといけないと思ってるんですよ。だから次はすごいプレッシャーなんですけど」
――ここである種のcinema staffの金字塔を1枚ね。
三島 「『望郷』(‘13)のときにそう思って作ったんですけど、ちょっと空回ったんで(笑)。今の空気感ならそれが出来るような気がしてて。そういういい流れのまま次の制作に入りたいなと思います」
――それでは最後の読者にメッセージを!
飯田 「『eve』でフルアルバムも5枚目になって、本当に先入観なしで、ここから聴いてほしいアルバムというか。『eve』はcinema staffの新たな入口として改めて聴くアルバムとしても完璧な1枚だと思うんで、ぜひ聴いてほしいです。もう本当にそれだけですね」
三島 「今は本当にバンドがいい状態で、そのいい雰囲気がライブでも出ればいいなぁと思いますし。もちろん演奏技術だったりは底上げされてますし、それがちゃんと素直にお客さんに伝わって、いいリアクションがあればいいなと! 皆さんとライブでお会いしたいですね」