インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「大好きな神戸で引き続きやっていこうと思います」 広大な日本庭園を望む相楽園パーラーで 今村モータースが再び響かせた音楽という幸福 『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』ライブレポート


「大好きな神戸で引き続きやっていこうと思います」
広大な日本庭園を望む相楽園パーラーで
今村モータースが再び響かせた音楽という幸福
『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』ライブレポート

 コロナ禍の’20年を打破すべく、リゾート感溢れる空間で心地いい光と風を感じるニューノーマルなライブイベントとして9月にスタートした、『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』。六甲の山々に囲まれ、神戸の街並みと海を見渡せるKITANO CLUB solaにてその幕開けを担った神戸発のシンガーソングライター・今村モータースが次なる舞台に選んだのは、約6000坪の日本庭園を望む迎賓館が生まれ変わったTHE SORAKUEN内に位置し、四季折々の美しい自然を眺められるカフェ、相楽園パーラーだ。前回同様、万全の感染予防対策はもとより、ソーシャル・ディスタンスが確保されたゆとりあるキャパ設定のもと、ART HOUSE、太陽と虎、チキンジョージ、VARIT.という神戸の4つのライブハウスが共同で立ち上げたプロジェクト、“ジャッジメントKOBE”の尽力によりオンラインでの同時生配信も実施。料理は絶品、ひときわムーディーなシチュエーション、そこに音楽があればもう完璧。今村モータースが、日々を生きる栄養のようにその歌声を沁み渡らせた幸福な1日をレポートする。

imamuramotorseport7_zenkei.jpg

 円球状の照明が幾つも吊り下げられたラグジュアリーなフロアを見渡せる一段上がったステージに、オンタイムで今村モータース御一行が現れるや大きな拍手で迎えられる。そんな店内の雰囲気にピッタリのオープニングナンバーは『home waltz』。ichi(key・サーカスフォーカス)の牧歌的なピアニカと堕天使かっきー(b・ワダアツシとビアウマイオールスターズ/giv strange car)のふくよかなベースが、事前にサーブされた美味しい食事とお酒と共に、見る者を音でじっくり高揚させていく。「今村モータースです、よろしくお願いします」との挨拶の後に奏でた『この街の夕暮れと僕の散歩道』では、キヨシ(ds・nayuta)のカホンが散歩の歩幅を表すようなBPMで楽曲をけん引。メンバーのコーラスとichiの鍵盤がメロディを優しく彩る、何とも贅沢な時間。ディナータイムにこれ以上なくメロウなムードを演出し、序盤からこの場所、この時間帯にやる意味と意図を存分に感じさせるセットリストだ。
 

imamuramotorseport7_side.jpg

 躍動感溢れる『HAPPY』は、自然発生したクラップもろともオーディエンスとライブというかけがえない時間を分かち合う喜びに満ちていて、「今日は何も食べてないんですよ…お料理が運ばれるところで待機してたんですけど、目の前で何皿見送ったか!」と今村モータースも嘆くほど、味覚をくすぐる相楽園パーラーの料理に触れながら、「だからというわけではありませんが、食べ物の歌を(笑)」と新曲『パンとうどん』へ。“僕はパン、君はうどん♪” というファニーなかけ合いも今村モータースならではで、場は一気に和やかな雰囲気に包まれる。
 
 MCでは、「つるつるっと4曲やりましたけど…」と切り出す今村に「うどんだけにね」と絶妙な合いの手を入れてくる(笑)イクロー(g・ワタナベフラワー)。『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』についても語り、相楽園パーラーを「全部が全部素敵な場所です。だからなぜ僕はご飯が食べられないのかと(笑)」とご紹介。そして、テラスで事前収録した映像を上映するという初の試みについても説明し、「“歌わずに映像流すんかい!”と思われるかもしれませんが(笑)、昼の雰囲気もぜひ見ていただきたかったので。人生で初めてやります、VTRどうぞ(笑)」と呼びかければ、会場横のモニターにシチュエーション抜群の演奏シーンが映し出されていく。
 


『ファンファーレ』の映像を見守りながら、「コーラスのときのイクローさんの表情が素晴らしいですね~」と時折ちゃちゃも入れつつ、ピアニカを吹きながら同時に鍵盤を弾く器用なichiに見惚れ、ステージ上のメンバーも、フロアの観客も、グッと映像に引き込まれていく。
 

imamuramotorseport7_hiruhiki.jpg

 続く『踊るランドリー』でも、自分たちの演奏シーンを見ながら解説する副音声的な展開で、昼に撮って夜に出すというジャッジメントKOBEの技術力と遊び心が感じられるサプライズは、コロナ禍におけるライブを“今までのライブの代わり”にしないクリエイティブと心意気を感じる。「これ、本当に数時間前ですからね」と撮影を振り返った後は、再び生演奏で『鬼嫁、荒野を駆ける』へ。Ichiのピアニカと今村モータースの声に潜在する何とも言えないノスタルジーが、楽曲の世界観を何倍にも膨らませるかのようだ。
 
imamuramotorseport7_yakudokan.jpg
 そして、今村モータースのレパートリーで唯一のダンスナンバー(!?)である『ミュート』では、アコースティックでもしっかり心躍るニューアレンジに加えて、ブリッジではまさかのフリースタイルラップの披露(!)に、観客も思わず拍手喝采! なのに、「このステージと照明も相まって、何か1.5倍くらいオシャレになってる気がする」という曲終わりのMCにはノーリアクションのメンバーに、「お前らの前にもマイクついてんだろうがよ!」と今村(笑)。
 
 一転、『サイダー』ではその優しいメロディと歌声に、ゆっくりと肩を揺らすオーディエンスを見ていると、つくづくアコースティックライブと今村モータースの相性のよさを感じさせられる。「もう終盤です」という声に「えー!」と声も上がるのも頷ける感動の密度と濃度で、あっという間に時間が過ぎていく。
 
imamuramotorseport7_hineru.jpg
 ここで、12月17日(木)神戸VARIT.でのバンドワンマンライブを初告知。「久しぶりにキヨシにドラムを叩かせてやろうじゃないか!」と、自身としても今年の2月以来となる10カ月ぶりのライブハウス公演について感慨深げに語る。そして、前回のKITANO CLUB solaでも披露された新曲『雨でもないのに』では、胸に沁みる言葉の数々に身を預ける心地よさがたまらない。盛り上がるだけがライブではなく、生の歌声を日々を生きる栄養のように身体に沁み渡らせるのもライブ。そんな今村モータースからの提案のような神戸の各所でのライブシリーズは、次の『タワー』で見事に結実。神戸の街並みを描いた彼の歌を、それが生まれた場所で鳴らす。コロナ禍において一度は失われたライブという空間を、1つずつ取り戻していくような『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』の意義をこの日も大いに感じさせ、目には見えない音楽という魔法が確かにあることを確信させてくれる。
 
「大好きな神戸で引き続きやっていこうと思いますし、今日はありがたいことに今村モータースたちを見に来ていただいてますけど、『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』が続いていってほしいし。もちろんライブハウスでも音を鳴らしていきたいと思ってますので…あんまりこういう話をするとかっきーが、“そんな話はみんな分かってはるから大丈夫、さっさと歌え”って言うんですけど(笑)。本当にありがとうございました、今村モータースでした」
 
imamuramotorseport7_hitori.jpg
 ラストナンバーの『KAKOME』では、軽快なリズムに導かれた手拍子に支えられ音楽を奏でるメンバーたちが心底楽しげで、それを見るオーディエンスの顔もほころぶという、とびきりハッピーなエンディングに! そして、鳴り止まない拍手を受けたアンコールでは、今村モータースが1人で登場。
 
「本当にいい夜になりました、ありがとうございました! 感じることは日々たくさんあって、曲はぽこぽこできてますんで、新しい曲でもお届けしようかなと。もしかしたら今までは、結構余分なものを持ってたんじゃないかと思うことが最近は多くて。僕には音楽があるので、歌うことができるので、それでもういいんじゃないかと。イメージしてもらいやすいのはきっと、水墨画みたいなことなんじゃないかなと思います。そんなに色は使ってないですけど、オッと目を引く瞬間があるような…そんな『モノクローム』という歌を」
 
 最後に届けた新曲の切ないメロディに聴き入るオーディエンスとひと仕事終えたメンバー…。激動の'20年が生んだ『Kitano Airy Live with ジャッジメントKOBE』に、また新たな想いをつないだ今村モータースのライブだった。
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by ハヤシマコ

imamuramotorseport7_member.jpg



(2020年12月14日更新)


Check

Set List

新曲に映像にと多彩に織り交ぜ
ハートウォームに聴かせたライブ!

 
『Kitano Airy Live
 with ジャッジメントKOBE』
11月11日(水) at 相楽園パーラー

01. home waltz
02. この街の夕暮れと僕の散歩道
03. HAPPY
04. パンとうどん(新曲)
05. ファンファーレ
06. 踊るランドリー(映像)
07. 鬼嫁、荒野を駆ける(映像)
08. ミュート
09. サイダー
10. 雨でもないのに
11. タワー
12. KAKOME(新曲)
~ENCORE~
13. モノクローム(新曲)

Live

自身のバースデーに10カ月ぶりの
ライブハウスでワンマンライブ!

 
【兵庫公演】
『この街の夕暮れと僕の散歩道
~GET BACK BOKU~』
チケット発売中 Pコード190-120
▼12月17日(木)19:30
神戸VARIT.
前売3500円
神戸VARIT.■078(392)6655
※兵庫県の「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン(2020年6月5日)」に沿って運営いたします。ご入場の際、検温をさせていただきます。37.5度以上の発熱がある場合はご入場いただけませんのでご了承ください。お客様はマスクの着用を必須とします。必ずご持参ください。その他、兵庫県のガイドラインに沿った施策へのご協力をお願いいたします。

チケット情報はこちら


Column1

今村モータースの、そして神戸
ライブシーンの新たなスタート地点
KITANO CLUB solaを
舞台に行われた『Kitano Airy Live
with ジャッジメントKOBE』
ライブレポート('20)

Column2

「僕の音楽で世界は変わらないけど
 みんなの景色は変えられる」
君の日々に響く歌を届けるために
運命の7/21神戸新聞松方ホール
過去最大の挑戦を前に
今村モータースが大いに語る('19)

Column3

神戸旧居留地を舞台に魅せた
旅の集大成にして過去最大の挑戦!
“この街”シリーズ第6弾
『この街の夕暮れと僕の散歩道
~初めてのホールワンマン~』
ライブレポート('17)

Column4

原点の風景に浜端ヨウヘイを招いた
極上のレコ発ツーマン!
“この街”シリーズ第5弾
『この街のライブハウスと
旅の始まり』ライブレポート('17)

Column5

頬をなでる爽風と世界一のつり橋
を臨む映画のような風景
“この街”シリーズ第4弾
『この街に架かる橋と僕の帰り道』
ライブレポート('16)

Column6

森のホールが誘う
山頂の絶景と木のぬくもり
“この街”シリーズ第3弾
『この街のハーブ園と空中散歩』
ライブレポート('16)

Column7

北野サッスーン邸が
昼夜で劇的に景色を変えた
“この街”シリーズ第2弾
『この街の異人館とふたつの灯り』
ライブレポート('15)

Column8

ルーツ、震災、ギター職人の道、
dozens、そして神戸――
ひらめきという羅針盤を手に
点と点を線にする今村モータースの
流浪の音楽人生を語る('15)