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「何年か後に“フラッドはあそこから始まったよね”って
 言われるツアーになると思ってる」
最強の宣戦布告を手に、いよいよワンマンシリーズへ突入!
『a flood of circle』全員インタビュー&動画コメント

 アルバムの冒頭、凄まじい熱量で幕を開ける『Blood & Bones』に刻まれた“Blood & Bones 焼け野原でついに 出会ったね俺たち”の1行に、全てが込められている。初代ギタリストが失踪して以来、フラッドを支えたサポートギタリストは12 人。数え切れない紆余曲折と痛みを越えてついに結び付いた、4人のa flood of circle。そんなアオキテツ(g)の正式加入、旧友UNISON SQUARE GARDENの田淵智也(b)のプロデュース、リアーナなどを手掛ける世界屈指のエンジニア、ザビエル・ステーブンソンが前作『NEW TRIBE』(‘17)に引き続き参加とトピックは数あれど、ひとたびこのアルバムを再生すれば、そんな予備知識がぶっ飛ぶぐらいの生命力に満ちた、ここにしかない音楽が鳴り響く。二度目のセルフタイトルを冠した傑作ロックンロールアルバムにして気高き宣戦布告『a flood of circle』を引っ提げた、『a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-』もいよいよワンマンシリーズに突入する最強の4人に聞いた、まばゆき現在地。そう、a flood of circleはここからまた始まる――。


必然でしたね。この1年半っていう時間は


――まずは久々に4人のa flood of circleを見れたぞというところで。でも、前科があるからな~このバンドは(笑)。

渡邊(ds)「アハハ!(笑) 前科何犯か分からない(笑)」

――改めて振り返ると、最初は一般公募のオーディションでテツ(g)がサポートに選ばれて1年半ぐらい活動を共にして。どの辺りから正式加入を想定してたのかなと。

佐々木(vo&g)「この3年、サポートギタリストに(藤井)清也(The SALOVERS)がいて、爆弾ジョニーのキョウスケがいて...もちろん彼らはフラッドに情熱を持ってくれてたけど、自分の夢もちゃんとあるタイプのミュージシャンだったんで。例えば清也は、ソロで音源をリリースしたり絵を描いたり、モデル業もやってたりと自分のスタイルで生きてる。キョウスケはa flood of circleをやりながら"バンドっていいな"と改めて思ってくれたみたいで、爆弾ジョニーをもう1回やることになった。そういう意味では、俺らも背中を押すしかないというか。じゃあ自分たちのことを考えたとき、今度はもう"a flood of circleに全てを懸けられる人が欲しいね"っていうのは話してて。ゼロから出会えないかなというところで公募して、テツが応募してきたっていう流れで」

渡邊「清也、キョウスケって送り出すのもハッピーになるというか、だんだんといい空気ができてきたところでテツと出会えたので、俺らも開いたマインドで迎えられたから。そう、全ては必要だったんです!(笑) ギタリストが変わるだけでこんなにバンドが変わるのかって深い意味で理解できたからこそ、欲しいギタリスト像も明確になってきて。チームが成長できたからこそ今があるのかなって思いますね」

HISAYO(b)
「これまではこっちからスカウトじゃないけどお願いする立場だったので、"ここまで言っていいのかな?"とか、ちょっと遠慮しちゃう部分もやっぱりあって。テツの場合は最初からやる気で来てくれてるから、ある程度ガツガツ言っても大丈夫だし(笑)、一緒に作り上げてくっていう。だから募集したときも、あえて"サポート"って付けてなかったよね? 私たちとしても過去の経験も踏まえつつ、バンドの土台を作ってからちゃんとメンバーに迎える期間も作れたんで、必然でしたね。この1年半っていう時間は」

――テツにとってこの1年半はどういう時間でした?

テツ「ずっとライブばっかりやっとった中でレコーディングして、またツアーが始まって...時の流れがすごい速くて。でも、ステージに立ったら別にサポートがどうとか考えんとやってたから、実感もあんまりないままで(笑)」

――そもそもオーディションを受けたときは、テツにとってフラッドはどういうバンドだったの?

テツ
「高校生のときからちょこちょこライブを観に行ってて、前ギタリストのDuranも友達で遊んだりしてて...」

渡邊
「まぁ俺らも別にDuranの友達だから採用したわけじゃないけど(笑)」

佐々木
「むしろ100何人から5人まで絞ったときに、Duranから"テツってヤツ、俺の知り合いだから"みたいな連絡があって、逆に落とそうかなと思ったぐらいで(笑)」

渡邊
「アハハハハ!(笑)」

――いざ、正式メンバーにって言われたとき、テツはどう思った?

テツ
「今回のレコーディングが終わって1〜2週間ぐらいした後、スタジオに入った後に呑みに行こうってなって。そのときは"レコーディングが終わってお疲れさん"みたいな呑み会かなと思って」

佐々木
「こっちはそういうふうに誘い出しましたから(笑)」

テツ
「呑んどったら急に、"(メンバーに)なれや"って言われて..."へぇっ!?"って。めっちゃビックリしたっすね」

――何かホンマにプロポーズじゃないけど(笑)。

佐々木
「そうそう(笑)。"どう?"って聞いたら、"いや、実は待っとった。いつかなって思ってた"って(笑)」

(一同爆笑)

――かわいいな~(笑)。

HISAYO
「その直後、テツが被ってたキャップのつばを下げて、肩を揺らして...(笑)」

――ドラマやん!(笑)

HISAYO
「昭和のね(笑)。それを見て、私もちょっとウルウルきちゃったっていう」

テツ
「まぁそんなこともありました(笑)」


テツは外側にいて余白を弾くんじゃなくてa flood of circleの中にいる感じ


――そんなドラマが後に待っていたからか、今作はフラッドの歴代のアルバムの中で良い/悪いどころの話じゃなくて、シーンを見渡しても最前線にいる作品になったというか。

佐々木
「ホントそう言われたくて! フラッドの中で新しいとかはマジでどうでもよくて、"今どこを見渡してもこれが最高でしょ!?"っていうアルバムを目指してたので、今の言葉はめっちゃ嬉しいです」

――それこそギターも大きな要因な感じがするし。

佐々木
「今まではギターボーカルがギタリストがいるバンドに勝ちにいく気合いで作ってたからこそ、俺らのキャラも出てたと思うんですけど、結局ライブ自体はサポートを入れてずっと4人でやってきたんで。ちゃんとしたギタリストが俺の課したハードルを超えてきたら絶対にもっとよくなるとは思ってたんで、今回はそれをテツと実現できたのがデカかったですね」

――今まで支えてくれたギタリストは、フラッドの世界を広げたり伸ばしてくれた。でも、テツはフラッドの世界を強くしてくれたというか...幹を太くするようなギターだなと。

佐々木
「確かに。オーディションでテツを選んだ理由は結構それかもしれないですね。テツは外側にいて余白を弾くんじゃなくて、a flood of circleの中にいる感じ。"フラッドのギターに絶対しっくりくるでしょ!"っていう感覚は当時からあったと思う。あと、a flood of circleはいわゆる普通のロックンロールじゃないこともやりたがるバンドじゃないですか? そういうところに一緒に手を伸ばそうぜっていうのは今回トライしたところだと思います」

――今までは基本的に佐々木くんがギターのフレーズまで全部考えてたよね?

佐々木
「そうですね。弥吉(淳二)さんとアレンジした曲に関しては弥吉さんが弾いてくれたりはありましたけど、基本的にフレーズは自分で考えてました。今回も『ミッドナイト・クローラー』(M-2)とか、これぞと思って作ったリフは自分で弾いたんですけど、フレーズをもっと詰めなきゃなっていう段階の曲は、"もう丸ごと頼んでいい?"ってテツに投げて。だから、ギターソロとかは基本的に全部テツですね」

渡邊
「『再生』(M-6)とかはめっちゃやりとりしてたよね?」

テツ
「『再生』は録るギリギリまで悩んでました」

佐々木
「"これ普通!"とか言って、俺がなかなかOKを出さないんで(笑)」

――ギタリストが変わっていく要因として、佐々木くんが厳し過ぎるんじゃないかとちょっと思ったんだけど(笑)。

(一同爆笑)

佐々木
「いやいや! むしろキョウスケに"(佐々木)亮介さん、優し過ぎますよ"って言われましたから。"受け入れ過ぎです! 俺ならキレてます!!"って(笑)」

――いやぁでも、『再生』もすごい曲だわ。泣ける。自分の葬式でかけてほしいなって思った。来てくれた人に、今までに出会った人に、聴かせたいと思うような大きい曲だなって。

佐々木
「去年は一色(徳保、つばき・vo&g)さんとか、ロフトの二代目社長のシゲ(=小林茂明)さんとか、そういう流れが一気にあったので...。"葬式"というまさにのワードが出ましたけど、少なからずそれはあったと思いますね」


本当にレコーディングしながらどんどんバンドになっていったと思うんですよ


――『再生』はもとより、フラッドの王道を力強くもメロウに鳴らした『Leo』(M-3)、ロックのヘヴィなビートに強烈なメッセージを乗せてまくし立てるような『One Way Blues』(M-4)『Where Is My Freedom』(M-8)もしかり、フラッドの戦い方で突破するんだっていう意志を今作からは改めて感じるし、とにかく生命力に溢れてるというか、本当に一枚岩になった感じが。

佐々木
「アルバムを作る段階で"じゃあテツを入れよう、レコーディングが終わったら発表しよう"とか話してたわけじゃなくて、このレコーディングであんまりしっくりこなかったら、テツも俺らから離れようと思ったかもしれないし、俺らもテツじゃないと思ったかもしれない。本当にレコーディングしながらテツのよさを再確認したところがすごくあったし、どんどんバンドになっていったと思うんですよ。それがこの生命力につながってるのかもしれない」

渡邊
「エンジニアも前作『NEW TRIBE』('17)と同じくザブ(=ザビエル・ステーブンソン)に来てもらったんですけど、今回はお互いのことを理解してる土壌がある状態からスタートできたので。ただ、今作はドラムとシンバルを別に録ったり、ポストプロダクションも結構多かったんですけど、その中でも生々しい、ライブっぽい音にしたいっていう話だったので、生命力に溢れてると言ってくれたのはすごく嬉しいですね」

――この音の近さというか、生々しさというか。

HISAYO
「『NEW TRIBE』は足し算した音が結構豪華な感じになって、良くも悪くもライブで再現したときに別モノになってたところもあったので、自分たちの武器であるライブのカッコよさが素直に出せるものっていうのは、最初からテーマとしてありましたね」

――このアルバムを思春期に聴いてたら、叫んで走り出してたような気がするわ(笑)。

(一同爆笑)

渡邊
「嬉しいけど!(笑)」

佐々木「そういうピュアさはすごい大事で。『ミッドナイト・クローラー』をプロデュースしてくれた田淵(智也、UNISON SQUARE GARDEN・b)さんも、レコーディングのときにずっと踊ってたし(笑)。あの人も身体が反応するかどうかがすごい大事で、理屈とかコードが合ってるかとかよりも、マジでグッとくるかこないかだったんで」

――すげぇ狂暴になりそうやわ、このアルバムを聴いてたら(笑)。

(一同爆笑)

――映画『アウトレイジ』('10)を観た後に言葉使いがオラオラになる、みたいな(笑)。そういう漫画チックな変化を聴いた人に与えてくれるような衝動があるなぁって。

渡邊
「まさに! 俺の中で今回は、亮介にヒーローになってほしいなと思ったんですよ。それもスーパーマンじゃなくて、バットマンみたいな、どちらかと言うとダークサイドのヒーローで。俺も映画を観た後に何か身体が動いちゃうみたいな感じの作品にしたいなと思ってたのを、今めっちゃ思い出しました(笑)」

――田淵さんとはイベントで共演して以来もう10年来の付き合いということで、一緒にやってみてどうでした?

佐々木「弥吉さんとかいしわたり淳治さんには斜め上のアイデアが欲しくてオーダーしてる部分があったし、"バンドにこれが足りないんじゃない?"っていうのを客観的に見てポンッと投げてくれた。今まではそれが面白かったし、ついていくのが大変だったんですけど、田淵さんは本当に等身大のa flood of circleを知ってるというか、同じものを見てきたから無茶振りの種類がちょっと違って、できるかできないかギリギリのいい線で投げてくれてる感じがして。『ミッドナイト・クローラー』は元々はテンポがすごく遅くて余白だらけの曲だったんですけど、田淵さんが"自分がフラッドに入り込める曲はこれだ!"って選んでくれたんですよね。逆に『Where Is My Freedom』とかは、"ああいう感覚を意識して取り込めてる日本人はマジでいないと思うから、このままでいいよ"って全く手を着けようとしなくて。本当にお互いがイーブンな関係でプロデュースしてもらったのは初めてだったし、燃えますよね。イーブンだからこそ、この人の前で恥はかけない、下手なプレイはできないなって」

渡邊
「俺はめっちゃ緊張感がありました。BPMが上がった『ミッドナイト・クローラー』が送られてきたとき、PCで打ち込まれたドラムがすごいUNISON SQUARE GARDENっぽくて、ドラマーじゃ逆に思い付かないフレーズだったんで。自分からは出てこないものを吸収したかったから頑張って練習して、ポジティブに自分を追い込めました」

HISAYO
「田淵くんはフラッドのよさもよく分かってくれてるから、何か言葉を交わしたわけじゃないけれども、"姐さん(=HISAYO)らしいベースを弾いてくれ"っていうことなんだろうなと思って、むっちゃ田淵節が出てるベースラインだけは取り入れさせてもらって、あとはもう自然に。みんなと距離も近いし、バンドマンとしての目線と感覚はすごい信頼してたんで委ねられた感じがします。あと、今のタイミングでよかったなと思って。バンドの関係性的にも土台ができてる状態だったから、田淵くんが入ってきても自分を見失わずにできたのかなって」

――そもそも田淵さんとこのタイミングでやろうとなったのは?

佐々木
「田淵さんにお願いしたら面白いよねっていうのは、ディレクターと3年ぐらい前から話してたんですけど、『NEW TRIBE』をザブと作ったときに、すごいアルバムができたと思ったんですよ。だからこそ、ザブとまたやるなら同じことを繰り返すんじゃなくて、何か起爆剤が欲しいなと。あと、ザブは思いっきり海外のサウンドにしてくれるんですけど、ソロでアメリカに行ったりバンドでロンドンに行ったときも、日本人ならではのテイストを出すのはすごく大事だなと感じて。今、日本には洋楽っぽくてカッコいいバンドがいっぱいいますけど、洋楽っぽいだけだと...本物を越えようもないしなぁと改めて思うことが多くて。田淵さんってめちゃくちゃジャパンナイズされたサウンドを作れる人なので、その人とザブが混ざるポイントを作れるのは俺らだけだと思ったし」

渡邊
「リリース前に友達に聴かせたときも、"めっちゃポップだね"って言われたりして。田淵さんプロデュースと伝えてなくてもそういう評判だったから、やっぱりすごいなぁと」

――ちなみに、冒頭で"カッカッカ"って鳴ってる音は?

佐々木
「あれもめっちゃよかったなぁ。田淵さんがデモにいきなりぶち込んできたんですよ」

渡邊
「リム(=スネアの縁)を叩いたんですけど、今回は音を分けて録ってるから余計に1つ1つの音が前に出てきて」

佐々木
「ポストプロダクション前提というか、素材をバラバラに録って後で作り上げるみたいな発想だから、より印象深い音になったのかもしれないですね」


ちゃんと宣戦布告できるアルバムにしたかった


――今作は1曲目の『Blood & Bones』から強烈で、"Blood & Bones 焼け野原でついに 出会ったね俺たち"の1行も、改めて決意表明な感じもするし。この時点でもうテツが入る運命が刻まれてるというか。

佐々木「実は『Blood & Bones』は一番最後に歌詞ができたんですよ。"俺たち"っていう一人称の曲を書きたい気持ちが芽生えて...アルバムを通してバンドになっていった感覚があったんで、必然的に歌詞にしたいと思えたという」

――去年、佐々木くんがソロアルバム『LEO』('17)を作った影響も大きかったみたいね。

佐々木
「めちゃくちゃありますね。誰か他のアイデアがあるっていうことが、どれだけ大事なことかを改めて感じて。アイデアを投げるときは毎回ズバズバ言うようにはしてたし、それがバンドを引っ張ることだと思ってやってきたんですけど...究極、どうなってもいいというか、メンバーとか周りの人を信頼してるんだから、自分の予想通りにならない方がむしろ面白いって気付けた気がして。それはMVとかでもそうで、フラッドはチームのみんなが責任を持ってやってるんで」

――テツはライブのみならず作品にもがっつり関わったレコーディングはどうでしたか? 

テツ
「ようやくライブでも自分が作ったギターの曲を弾けるんやなと思って、"やった!〜"って感じですね(笑)。それまではずっと他の人が作ったフレーズを弾いてたから。借りモノじゃないギターを弾けるのは嬉しいですよね」

――じゃあレコーディングも委ねられたプレッシャーというよりは楽しめた感じ?

テツ
「そうですね。楽しんではいたんですけど、レコーディング中にすげぇ痩せましたけど(笑)」

(一同笑)

――今作のシンプルでエッジの立ったギターの存在感は本当にすごいし、『Leo』から『One Way Blues』の流れというか落差というか...こんなバンドやっぱり他にはいないなって。

佐々木
「今年はケンドリック・ラマーがフジロック、チャンス・ザ・ラッパーがサマソニみたいに、ロックフェスでもラッパーが一番デカいステージに立つこの時代を無視する手はないでしょと思ってて。a flood of circleなりの進化というよりは...この世界にはいろんな音楽があるっていうことを、見て見ぬフリをするのはちょっと違うなと思ったので。ちゃんと宣戦布告できるアルバムにしたかったんで、そこをキャッチしてもらって嬉しいですね」

――そして、今作にはナベちゃんが作詞作曲した『Rising』(M-9)も収録されてますが。

渡邊
「毎回作ろうとはしてたんですけど形にできなくて、気付いたらレコーディングが終わってる(笑)。でもまぁ今回は、こういうタイミングでもあったし今の心境を書きたいなって。とりあえず3曲、ワンコーラスだけ作ってみんなに"どうですかね?"ってお伺いを立てたら、姐さんも"これやん!"ってすぐに返事をくれて。久しぶりだったからちょっと慣れない感じもあったけど、みんなの力を借りて言いたいことはバキッと言えたかなって。サビは初めて亮介と同じ音程でユニゾンしてるんですけど、最初は高い方のコーラスを入れようとしてたら、"やめろやめろ! 何だそのオカマみたいな声は"って言われて(笑)」

佐々木
「"プッシーボイス"ね(笑)」

渡邊
「俺は真面目に歌ってるのに、コンソールルームでみんなが大爆笑してて(笑)。でも、下のハーモニーも微妙だったからユニゾンで1回歌ってみたら、"いいじゃん"って」

――最後の『Wink Song』(M-10)はフラッドの音楽を信じてついてきてくれた人へのメッセージも感じるし。

佐々木
「『Wink Song』は最初シンセとかで作ってたんで、あんまりバンドっぽくない音だったしアルバムに入れるかちょっと迷ったんですよ。でも、ちょうどアルバムを作る直前ぐらいにメールをくれた人がいて。自分の子供がドクターヘリで運ばれちゃって、手術がうまくいかないと声が出なくなってしまうと。そのうまくいくかいかないか分からない不安なときに、"この子と一緒に頑張ろう"って前向きに思えるのが『NEW TRIBE』を聴いてるときだ、みたいなことが書いてあって...。今までだったらそういうことがあっても、もっとふわっと受け止めてたかもしれない。けど、そのときに"この人の曲を書こう"と思ったら"Wink"っていう言葉が出てきたんです。本当にその人に"聴かせたい"と思う曲を書けた気がして...それがこの曲の強さというか、その芯があるからこそ逆に、誰が聴いてもいいと思える言葉とメロディになったんじゃないかなって」


本当にここから始まる感覚がある


――そして、今作は『a flood of circle』というタイトルで。セルフタイトルって"これが俺たちです!"っていう作品に付けられるから、1stアルバムだったりベスト盤だったりすることが多いけど、聴き終わった後にこのタイトルにも頷ける、まさに代表作になったよね。テツの存在も大きかったと思うし、次のアルバムのときもいてほしいね(笑)。

(一同爆笑)

テツ
「任せてください(笑)」

――ツアーの途中経過としてはどうですか?

佐々木
「めちゃくちゃいいツアーになってます。いずれは『A FLOOD OF CIRCUS』っていうフェスごと全バンドで巡業したいんで、まだ夢の途中っていう感じではあるんですけど、30を過ぎて、バンドを10年以上やってきて、前より夢を見てること自体がすごくいいなって思う。今は一歩一歩進んでいくのが本当に楽しみなんで、新しい出会いもいちいち嬉しいというか」

――6月からはワンマンで各地をガッツリ回りますけど、いいアルバムのツアーはやっぱりいいし、そういう意味では今作が核となって過去の名曲たちも一緒に聴けるとなると楽しみで。

佐々木
「最近、テツがすごくいいんで。昔の曲も自分のモノにしてるし、どんどん鍛えられていって、彼のおかげで昔の曲をやる勇気が出てくるというか」

――そこに新しい解釈が生まれるという。

佐々木
「そうそう! 完全にレア曲と呼ばれてるような曲も、テツのおかげでレアじゃなくなってくる。昔のフラッドしか知らないっていう人も楽しめるライブになってると思いますね」

――最後にそれぞれ今の心境と、ワンマンシリーズに向けてを。

HISAYO
「私もフラッドに入って8年目で、関わり方もだいぶ変わってきて。最初は2人が作ったものに対して音を乗せることが多かったんですけど、『NEW TRIBE』ではもうガッツリやって、今回は一番真に迫る感覚があったんで。テツの件もそうだし、本当にバンドになった1作目っていう感覚がしてるんで。あと、今まではアルバムの曲をライブで再現するのが難しかったんですけど、今回はライブを想定して作ってるから、自信のある作品で、自信のあるツアーができてると思ってます」

佐々木
「ザブとは政治の話とかも普通にしてたんですけど、今って世の中がどんどん不自由になってる気がして。例えば、ザブにとっては携帯の指紋認証でも何か情報を抜き取られてるんじゃないかと感じちゃうとか、Twitterで『ドラゴンボール』について書いたら即その広告が出てきたり(笑)。便利だけど息苦しさを感じることが多いよねって話してるときに、まさに『Where Is My Freedom』のレコーディングをしてたので(笑)。今回は世界的に見てもスタンダードな、今歌うべき、訴えるべきことが書けてる気がするんですよ。ちょっとでも不自由だなとか、世知辛いなとか、何かネガティブな感情を抱えて生きてる人には絶対にフィットすると思うし、それをポジティブに転換するパワーがあるアルバムだと思うんで、今聴くしかないでしょって言いたいし。ライブに関しては、テツが入って初めてのツアーだし、何年か後に"フラッドはあそこから始まったよね"って言われるツアーになると思ってるんですよね。だから、今観ておかないと後悔すると思うし、今観ておくと後で自慢できますよっていう気でやってます!(笑)」

渡邊
「今回のアルバムは、みんながそれぞれの持ち場で自分の能力を最大限に発揮できたと思っていて。ザブも田淵さんもそうだし、ディレクター、マネージャー...スタジオにいる全員が、足し算じゃなくて掛け算ぐらいの感覚でできた。だから、みんなの意志、チームで作ったアルバムだと思っていて。そういう意味でも、a flood of circleの新章の幕開けにふさわしい1枚というか、こんなにも濃い作品ができて、俺はちょっと感動したというか。あと、奥さん(=筆者)が言ってくれたみたいに、好きなアルバムのツアーには行きたいもんですから。俺もこのアルバムが好きなんで、最後までいいツアーになると思います!」

テツ
「個人的には、"このレコーディングがうまくいったらバンドに入れるかな?"とかいう淡い期待とか、"どういう気持ちで弾いたらいいんやろう?"みたいな揺れとか、そういう感情がこのアルバムにはいっぱい入ってるんで(笑)」

――アハハハハ!(笑) そういう想いはやっぱりあったんやね~。

HISAYO
「おぉ〜! いいね(笑)」

佐々木
「そういう意味でも、これはすごいドキュメンタリーだと思う(笑)」

テツ
「サポートギタリスト・アオキテツはこのCDに入れたから、新しいギタリスト・アオキテツの初めてのツアーは、すごくいいと...思いますよ(笑)。今までの曲はとにかく元気にやってましたけど、新しい曲は気合いも入るし」

佐々木
「a flood of circleが完成しましたっていう作品じゃなくて、本当にここから始まる感覚があるんで。このツアーにはそういう希望もあるんですよね」


Text by 奥"ボウイ"昌史



(2018年6月13日更新)


Check

Movie

告知より大阪満喫話の方が長い(笑)
a flood of circleからの動画コメント

Release

二度目のセルフタイトルを冠した
傑作ロックアルバムが誕生!

 
Album
『a flood of circle』
発売中 3000円(税別)
Imperial Records
TECI-1577

<収録曲>
01. Blood & Bones
02. ミッドナイト・クローラー
03. Leo
04. One Way Blues
05. Summer Soda
06. 再生
07. Lightning
08. Where Is My Freedom
09. Rising
10. Wink Song

Profile

ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より、HISAYO(b)、アオキテツ(g)、佐々木亮介(vo&g)、渡邊一丘(ds)。’06年結成。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収しそれをAFOC流のロックンロールとして昇華させたサウンドと、佐々木の強烈な歌声、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。’07年、初音源となるミニアルバム『a flood of circle』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘07』にも出演。’09年には1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たすものの、メンバーの失踪や脱退を経験し、’10年にはHISAYOが加入。’12年にはレーベルを移籍。以降も精力的にライブとリリースを重ね、結成10周年を迎えた’16年にはベストアルバム『THE BLUE -AFOC 2006-2015-』をリリース、初のイギリス公演を行ったほか、主催イベント『A FLOOD OF CIRCUS 2016』を実施。’17年1月にはアルバム『NEW TRIBE』を、同年8月にはブルースの聖地メンフィス・ロイヤルスタジオでレコーディングした佐々木亮介の初ソロアルバム『LEO』をリリース。’18年2月にはサポートギタリストのアオキテツが正式加入し、2度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』をリリースした。

a flood of circle オフィシャルサイト
http://www.afloodofcircle.com/

Live

リリースツアーツーマン編を経て
いよいよワンマンシリーズがスタート

 
『a flood of circle TOUR
-Here Is My Freedom-』

【千葉公演】
▼4月20日(金)千葉 LOOK
[ゲスト]locofrank
【神奈川公演】
▼5月6日(日)F.A.D YOKOHAMA
[ゲスト]TOTALFAT
【静岡公演】
▼5月13日(日)静岡UMBER
[ゲスト]バズマザーズ
【三重公演】
▼5月14日(月)CLUB CHAOS
[ゲスト]バズマザーズ
【京都公演】
▼5月16日(水)KYOTO MUSE
[ゲスト]the pillows
【福岡公演】
▼5月18日(金)小倉 WOW!
[ゲスト]THE PINBALLS
【大分公演】
▼5月19日(土)club SPOT
[ゲスト]THE PINBALLS
【岩手公演】
▼5月25日(金)club change WAVE
[ゲスト]八十八ヶ所巡礼
【福島公演】
▼5月27日(日)Hip Shot Japan
[ゲスト]八十八ヶ所巡礼
【香川公演】
▼6月1日(金)DIME
[ゲスト]THE BACK HORN
【高知公演】
▼6月2日(土)高知X-pt.
[ゲスト]THE BACK HORN
【石川公演】
▼6月8日(金)金沢vanvanV4
[ゲスト]ビレッジマンズストア
【長野公演】
▼6月9日(土)長野ライブハウスJ
[ゲスト]ビレッジマンズストア


【愛知公演】
▼6月15日(金)名古屋クラブクアトロ

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード107-958
▼6月16日(土)18:00
umeda TRAD(前umeda AKASO)
オールスタンディング3800円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【福岡公演】
▼6月23日(土)LIVE HOUSE CB
【広島公演】
▼6月24日(日)セカンド・クラッチ
【北海道公演】
▼6月29日(金)cube garden
【宮城公演】
▼7月1日(日)仙台CLUB JUNK BOX
【東京公演】
▼7月8日(日)マイナビBLITZ赤坂
 

Pick Up!!

【大阪公演】

『テスラは泣かない。
「偶然とか運命とか」Release Tour
【10周年とかツアーとか】』
チケット発売中 Pコード111-245
▼9月7日(金)19:00
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング3000円
[共演]テスラは泣かない。
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。
 小学生以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Column1

「俺たちにとっては、もうここで
辞めても悔いがない10年じゃなくて
悔しい悔しいの10年なんですよ」
a flood of circleのロックンロール
サバイバルな10年を刻んだ初ベスト
『THE BLUE』インタビュー('16)

Column2

暴れるのは誰にでも出来る
踊るのはセンスがないと出来んから
a flood of circleと女王蜂が
神戸で激突! 『Kansai college
chart LIVE!』レポート('16)

Column3

大きな愛とプライドを込めた
これぞa flood of circleな決意表明
“生き残る”より“勝ち残る”未来を
見据えて吼える『花』を語る('15)

Column4

「俺たちがまた立ち上がることを
みんな分かってたのかもしれない」
“何度でも始めようぜ”
不屈のa flood of circleから届いた
希望と再生のロックンロール
『ベストライド』を語る('15)

Column5

俺たちの『GOLDEN TIME』は
続いてく――幾度もの分岐点を越え
転がり続けるa flood of circleの
ツアークライマックスに捧ぐ
撮り下ろしインタビュー('15)

Column6

他にもあります歴代インタビュー!

 
強烈ロックアルバム『I'M FREE』
を手にした初の全県ツアー
afoc VS THE NOVEMBERS
灼熱の記憶蘇る京都磔磔レポート!('14)
特設ページはコチラ!

「反抗期だし思春期だし成長期」
強烈ロックアルバム『I'M FREE』
喪失感をガソリンにロールし続ける
a flood of circle佐々木亮介
インタビュー&動画コメント('13)
特設ページはコチラ!

激動の現代社会に愛を込めて
『FUCK FOREVER』!!
“LOVE”と表裏一体の“FUCK”
を言葉の弾丸に込めてぶっ放す
インタビュー&動画コメント('13)
特設ページはコチラ!

愛とロックンロールを手に
メンバーの脱退&加入を乗り越え
ぶっ放した『LOVE IS LIKE A
ROCK'N'ROLL』制作秘話('12)
特設ページはコチラ!

 

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはこちら!

「フラッドと言えば“ソリッドなロックンロールバンド”というのが世の大半のイメージかもしれませんが、その地下水脈には極めて魅力的なフロントマンであり、生粋のミュージックラバーである佐々木くんの音楽的なアンテナが立っていて。ワールドスタンダードなサウンドを目指しつつ決してオリジナリティを失わないバランス感覚、今歌うべき、訴えるべきメッセージを刻み付けるようなリリックと、セルフタイトルも納得の極みを見せる最新作『a flood of circle』。『I’M FREE』('13)の’18年度版とも言える『Where Is My Freedom』しかり、彼らのボーダレスでハイブリッドなセンスと笑っちゃうぐらいの情熱を、ホントみんなと早く共有したい=フラッドのライブを観た後あーだこーだ呑みながら話したい!(笑) 本当に素晴らしいアルバムができました。あと、アオキテツは関西出身のギタリストですが、今どき珍しいハングリーさで東京に乗り込み、見事にその椅子を勝ち取った姿は、何だか頼もしくもあります。西の魔窟・味穂にて新体制のライブを観る前にテツと佐々木くんに偶然遭遇してから(笑)約2年。こんなドラマが待っていたなら、フラッドはまだまだ面白くなりそうです!」