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ホーム > インタビュー&レポート > 「本当に見逃してほしくないんですよ、平成最後の伝説を(笑)」 過去作を完全再現する東名阪ツアー『SPACE OPERA』開幕に向け あの頃とバンドの今を、表も裏も語り尽くす特別編! PELICAN FANCLUB全員インタビュー&動画コメント


「本当に見逃してほしくないんですよ、平成最後の伝説を(笑)」
過去作を完全再現する東名阪ツアー『SPACE OPERA』開幕に向け
あの頃とバンドの今を、表も裏も語り尽くす特別編!
PELICAN FANCLUB全員インタビュー&動画コメント

 自他ともに認める最高到達点となった初のフルアルバム『Home Electronics』を完成させたPELICAN FANCLUBの2017年は、名前に“CLUB”を含むアーティストを集めた自主企画『CLUB NIGHT』、オーディエンスがメンバーを取り囲む超至近距離フロアワンマンライブ『DREAM DAZE』に、初の海外公演となった台湾でのライブイベント『微光夢遊』への出演に加え、数多くのバンドとのスプリットツアーや共同企画も実施。1年を通して全国各地で徹底的にライブし続けた濃厚なバンドマンライフを送ったそんな4人が、’18年も早々にブチ上げるのは自らの過去作を回顧する東名阪ワンマンシリーズ『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”』だ。同ツアーでは、初日の大阪公演で『ANALOG』(‘15)、愛知公演で『PELICAN FANCLUB』(’15)、東京公演で『OK BALLADE』(’16)と、過去3作のミニアルバムの完全再現ライブ+最新のセットリストで挑む二部構成でお届け。さらに、その先に設定されたツアーファイナルは大編成での初ホール公演と、バンドの過去をたどりながら、現在、そして未来すら垣間見せるような意欲的なプログラムとなっている。そんな一大プロジェクトの開幕に向け、PELICAN FANCLUBの4人がここ1年の心の動きから『SF Fiction』『Shadow Play』という2曲の新曲、『SPACE OPERA』の核となる3作の裏エピソードに当日の見どころまでをフル解説。終始笑いと暴露話が止まらないインタビューを読めば(笑)、PELICAN FANCLUBの今が、『SPACE OPERA』が、どこよりもよく分かる!?

 
 
“かかってこいよ! ヴィクトリー!!”ってずっと叫んでて(笑)
 
 
――まずはペリカンの近況をと言うとね、最近はクルちゃん(=クルマダ・g)が呑んで潰れがちだと(笑)。
 
(一同爆笑)
 
エンドウ(vo&g)「まぁ、事の始まりはですね、11月頭にやった福岡のライブの打ち上げで、広い個室のお座敷の畳の上で、クルちゃんがいきなり三点倒立とかし始めたんですよ(笑)。僕らも“イェ〜!”とか言って盛り上げたら調子に乗っちゃって、ものすごくエモーショナルな人になって、最終的に“やってやるよ! 文句あんのか!”みたいなことを道路で叫び始めて、“かかってこいよ! ヴィクトリー!!”ってずっと叫んでて(笑)」
 
(一同爆笑)
 
エンドウ「僕とシミズ(ds)くんはそのときお酒自体呑んでもなかったので、“いや、もう帰って寝よう”って(笑)」
 
カミヤマ(b)「いやぁ〜いい話だなぁ〜(笑)」
 
エンドウ「で、ホテルの部屋に戻って横になってたら、めっちゃ騒がしい集団が廊下から近付いてきて。クルちゃんが靴も脱いじゃって置いてきたらしくて、カミヤマくんたちがその靴をロビーに取りに行ってる間にクルちゃんだけが部屋に来て…何かもうゾンビみたいになってて笑っちゃったんですよ。そしたらそのゾンビ状態で…」
 
カミヤマ「これがそのときの音声ですね(と携帯のボイスメモを再生する)」
 
エンドウ「文字に起こすの大変ですけどいいですか?」
 
クルマダ(音声)「ウ〜ウ〜…」
 
――このウ〜って何なん? これ声? え? イビキじゃなくて?
 
クルマダ(音声)「ウ〜いい加減にしろコラ〜ウェ〜何笑ってんだよ~ウ~…」
 
(一同爆笑)
 
エンドウ「ずっとこんな感じなんですよ(笑)。これは面白いと思って、以後ライブで打ち上げがあったら、もう完全にクルマダくんをこう…(笑)」
 
――ワントップで差し出して(笑)。
 
エンドウ「そう(笑)。滋賀でライブがあったときも、終わってみんながワチャ〜となって。泊まりは京都だったんですけど、クルちゃんだけバイブスがすごい高まってたんで、“クルマダくん、明日会おうか!”って(笑)」
 
(一同笑)
 
エンドウ「クルちゃんが苫小牧で酔い過ぎてサイフをなくしたときも、“このまま残りたいけどお金がないから帰る”って言ったら、カミヤマくんがポンとお金を渡して(笑)」
 
――クルちゃんは残れと(笑)。もうバンドを代表して外交してこいという。
 
エンドウ「昨日のライブの出演者ともすごく仲良くなって、この後会うらしいですよ」
 
クルマダ「今日も大阪でライブがあるって言うんで、“じゃあ観に行くよ”っていう話になって。そしたらその場にいた人たちも、“私も夜なら空いてるし打ち上げだけでも顔出すわ”って、“どんだけ仲良くなってんだよ!”って(笑)」
 
――すごい。クルちゃんの社交性が覚醒してる(笑)。元からそういうタイプだったの?
 
エンドウ「元々彼がライブハウスで働いてた時代はそんな感じだったんですけど、そこから氷河期に入って(笑)」
 
クルマダ「酔っ払うとテンション的にいい部分もあるんですけど、逆にダメな部分も相当目立つというか。物をなくしたり、人に迷惑をかけてしまうところもあるんで、深酒をしないというポリシーを持ってたんですけど、福岡のときにタガが外れたかのように呑んでしまって、久しぶりにそのスイッチが入って…」
 
エンドウ「“タガが外れてたかのように”じゃなくて、外れてたからね」
 
(一同爆笑)
 
 
もう完全に、音楽のことしか考えてないんじゃないかっていう1年でした
 
 
――そんなライブ尽くしの去年は、“CLUB”と名のつくアーティストのみで送る主催イベント『CLUB NIGHT』、小キャパのフロアライブ企画『DREAM DAZE』など、コンセプチュアルなライブも多くて。ただイベントに出るとかじゃなくて、自分たちでちゃんと意志のあるライブをやってましたね。
 
エンドウ「もう完全に、音楽のことしか考えてないんじゃないかっていう1年でしたね。だから今、すごく楽しいんですよ。埋まってるスケジュール帳を見ながら、“うわぁ〜売れっ子だなぁ”って思うのが(笑)」
 
――あと、去年は初めて海外=台湾でもライブをして。これは台湾からお誘いがあったと。
 


エンドウ「実際に行ってみて、SEが鳴ってステージに僕らが入場してきたらもう…みんなが“キャーッ!”って」
 
シミズ「すごかったね。“アイドルなのかな?”って勘違いしました(笑)」
 
エンドウ「ちゃんとGoogle翻訳で挨拶を調べて、何回もメモして覚えて、実際にMCで“我们是PELICAN FANCLUB!(=僕たちはPELICAN FANCLUBです!)”って中国語で言ったんですよ。そしたらお客さんから“もう1回言って〜!” って日本語で言われて(笑)」
 
(一同爆笑)
 
クルマダ「まずメンバーで海外に行くのが初めてだったんで、それもだいぶテンションが上がって。ライブの反応もそうですし、日本人に対する街での反応もすごくよくて、夜市でも僕らが日本人って気付いて話しかけてくれたり」
 
エンドウ「タクシーに乗ってるだけで、“ジパン(=日本人)、ナンバーワン!”って(笑)」
 
――初なのにちゃんとホームでフォロワーがいるっていうね。振り返って他にも印象的なライブはあった?
 


カミヤマ「『DREAM DAZE』っていう、俺たちの周りをお客さんが取り囲む“ゼロ距離ワンマンライブ”は、相当刺激的な体験でしたね。お客さんがもはや観てるんじゃなくて一緒に演奏してくれてるような感覚を9月の1回目で掴んで、11月の2回目は実際にお客さんにも参加してもらったんです」
 
エンドウ「事前に動画で叫んでもらう、歌ってもらう、手拍子してもらうとか内容を伝えて、実際に100人ぐらいで一斉に叫んで…負の感情とか全てを吐き出せたんじゃないかって思うぐらい、すごい光景だったよね」
 
カミヤマ「去年は他のバンドのツアーにも結構誘われたんですけどその体験が還元できたし、やっぱりこっちが示した分だけお客さんもちゃんと反応してくれるというか、“こっちがどれだけやるか”なんだって」
 
エンドウ「そこからお客さんとの向き合い方がすごく変わったんですよね。今までだったらちょっと一方的というか差し出して帰るみたいな感じだったんですけど、会話のような感覚をゼロ距離ワンマンで掴んだ気がします。詞の書き方にもすごい影響がありましたね」
 
カミヤマ「対バンライブではそれぞれのバンドにいいところがあって、全然違った武器を持ってるのを見て、逆に自分たちの武器が何なのかもだんだんと照らし出されるように分かってきて」
 
――今、改めてPELICAN FANCLUBの武器とは何だったと?
 
エンドウ「“二面性”ですね。ライブの最中にも“喜怒哀楽を音楽にぶつけよう”みたいなことを言ってるんですけど、“喜び”と“楽しさ”、“怒り”と“哀しみ”、そういう二面性のセットを僕たちの曲で反映して、お客さんがそれに合わせて感情を出してくれてるなっていうのは、観てて思いましたね、うん」
 
 
自分がどれだけその曲に感情移入できるかが勝負
 
 
――そんな中、リリース的にはフルアルバム『Home Electronics』を出した後も、新曲『Shadow Play』と『SF Fiction』の配信がありましたね。
 
エンドウ「『Shadow Play』はカミヤマくん、『SF Fiction』は僕が作った曲で。『SF Fiction』に関しては、『Home Electronics』以降の自分たちのポップさというか、今までやってきたことと新しさをミックスした1曲にしたいなと思って作った曲なんですよね。新生PELICAN FANCLUBを自分の中であざとく表現した感じです。歌詞に関しても『Home Electronics』では1曲1曲に主人公を置く書き方がメインでしたけど、その主人公を人じゃないものにして。だから、『SF Fiction』は“僕は空気”っていう歌い出しなんですけど」
 
カミヤマ「『Shadow Play』のデモ自体は『Home Electronics』を作ってるときからあって、“影送り”っていう現象を自分の理想像との対比みたいな感じにしたかったんですけど、歌詞にオチがなかったところにエンドウが“子供と大人”っていう時系列を付けてくれたことで、うまくまとまったなぁと。共作の面白いところが出たなと思います」
 
エンドウ「もらった歌詞に関しては、自分がどれだけその曲に感情移入できるかが勝負だと思ってて。だから“ザカリーやサーストン そんな風になりたい”っていうところは、実際に僕の憧れなんですよ。ザカリー・コール・スミス(ダイヴ・vo&g)とサーストン・ムーア(ソニック・ユース・vo&g)の名前を出すことによって、“エンドウはエンドウのままなんだ”っていう気持ちで歌える。今までも何回か共作してるんですけど、そこがなかなか上手くいかなかったんですよ。でも、この曲にある“小さい頃の自分が思い描いてた20歳って、もっと大人だったはずなのに”みたいな感覚って誰もが通るテーマだと思うんで、より一層感情移入できたのはありますよね」
 
――そもそも“影送り”ってどういう現象なの?
 
カミヤマ「晴れた日に自分の影をずっと見た後、空を見るとその影の残像が空いっぱいに映るみたいな現象なんですけど、昔ながらの遊びみたいな面もあるみたいで。だからタイトルもあえて『Shadow Play』=“影で遊ぶ”にして」
 
――それも配信だけじゃなく、『Shadow Play Kit』(『Shadow Play』のCDやステッカー、ポーチなどを同梱)としても販売したり、ペリカンはライブだけじゃなくリリースでも毎回創意工夫があるのが面白いなと。
 
エンドウ「僕はCDが好きなんで買いはするんですけど、仮に今中学生、高校生だとしたら、SpotifyとかApple Musicで聴いて、“盤なんてもう記念品だな”って思っちゃう。それを避けては通れないと思うんで、だったらいろいろと付録があったらどうなんだろうとか。“CDが果たして本当に必要なのか?”っていうところから、時代と見つめ合った結果みたいな感じなんですよね」
 
 
今思うと自分たちの引き出しを一番素直に出したアルバムが『ANALOG』
『PELICAN FANCLUB』で全然毛色の違う楽曲を
アルバムにぶち込む快感を覚えました(笑)
 
 
――そして、今年は早々に『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”』と称して、過去の作品を回顧する東名阪ワンマンシリーズが始まります。
 
エンドウ「前々から完全再現ライブをやりたいとは言ってたんですけど、去年やっとフルアルバムを出せて、自分たちの足元が固まって。今、改めてこの3作を演奏したらどうなるのか? 自分たちが自分たちにすごい期待してる、いいタイミングだなと思いました」
 
――その3作を順番に振り返っていきたいんですけど、まずは初日の大阪公演で再現する『ANALOG』('15)は、PELICAN FANCLUBにとってどんな作品だったと?
 
エンドウ「当時の自分たちのサウンドって結構クリーンなものが多くて、歪むと言っても飛び道具的な扱いで、サビがない曲も多かったんですね。むしろサビがない曲がカッコいいと思ってた時期だったんで。’15年時点でのベスト盤みたいな感覚で作ったのでセルフタイトルでもいいなと思ったんですけど、“連続性”という意味で『ANALOG』というタイトルを付けたんですよ。デジタルと違ってアナログの波形は連続してるので、自分たちは『ANALOG』以降も連続していく=“続いていくぞ、ブレずにいくぞ!”っていう」
 
カミヤマ「当時は曲作りもスタジオでセッション一発でやることが多かったので、今思うと自分たちの引き出しを一番素直に出したアルバムが『ANALOG』なのかなって。“素っぴん”みたいな感じですかね(笑)」
 
クルマダ「当時は音数が少ないUSインディーにのめり込んでたりもしてたんで、聴いてたものがそのまま反映されてる感じはしますね。その中でも、デス・キャブ(・フォー・キューティー)だったりはシンプルだけど曲としてまとまってるので憧れてたし、“できるだけ少ない音でどう作れるのか?”みたいには思ってましたね」
 
――いろいろやった後にそうなるんじゃなくていきなりその観点って。ビビるわ、新人の取材でそんなこと言われたら(笑)。『ANALOG』は今聴いても、ある種のPELICAN FANCLUB節みたいなものが感じられますよね。すごく濃い根っこみたいなのがこの時点でしっかりある。
 
カミヤマ「今、セッションで急に4人で曲を作れと言われたら、『ANALOG』に毛色が近い曲ができるのかなって。素のテンションでやったら多分こうだと思います」
 
エンドウ「当時は、コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザー(vo)の歌い方を僕はすごいリスペクトしてて…っていうかもうそのまんまの歌い方をしてるアルバムですね(笑)。次の『PELICAN FANCLUB』(‘16)で変わったというか、変えました。デモCDを出してたときって自分たちが実際に物販に立って売ってたんで、“この人が聴いてくれてるんだ”っていうのが目の前で分かる。でも、『ANALOG』を出したことによって全く知らない人も聴いてくれてると分かったときに、“もうちょっと掌で転がしてみたい!”みたいな気持ちが出てきて。『PELICAN FANCLUB』のテーマは、“表と裏”、“白と黒”みたいに、白かと思って見たら中身は黒だったとか、面倒臭いトリックを結構入れてて音数も多いんですよ。『PELICAN FANCLUB』はそういう“遊び”みたいなものがいっぱい詰まってたアルバムでしたね。でも、それを持って初めての全国ツアーを回って、ライブに対する意識が変わっていったんですよね」
 
カミヤマ「個人的には『プラモデル』と『Dali』がターニングポイントになってるというか。『ANALOG』は自分たちの素を出した感じだったんですけど、そこに1つ2つエッセンスを足したというか、その2曲って明らかに他の曲と違うじゃないですか。みんなそれぞれいろんな音楽を聴いてるんで、そういうところも見せたいなって。『PELICAN FANCLUB』で全然毛色の違う楽曲をアルバムにぶち込む快感を覚えました(笑)」
 
クルマダ「『PELICAN FANCLUB』もまだセッションで作ってた部分があったんですけど、みんなが『ANALOG』よりも幅を出そうとしていろんな曲ができたなって。『Chilico』でめちゃくちゃリバービーでドリーミーなサウンドをやってみたり、『プラモデル』のシューゲイザーっぽさもありつつ、途中でジャズっぽいフレーズやラップを入れてみたり、今までになかったよさが全部混ざっていく流れが、ここから始まった感覚はありますね」
 
シミズ「あと、全然違う曲が並んだなと思ったので、楽曲ごとに結構振り切ったミックスにして。例えば、さっきの『プラモデル』はドラムの音が結構遠くにあるんですよ。そういう音の距離感も立体的に表現できたのかなと」
 
カミヤマ「このアルバムからずっと采原(史明)さんが録ってくれてるんですけど、エンジニアによって全然変わるんだなっていうのを目の当たりにして、ものすごい勉強になりました。釆原さんはすごく面白い音の処理とか、僕らでは絶対に思い付かないアイデアをどんどん出してくれたのが嬉しかったですね」
 
 
『OK BALLADE』は自分の葛藤と悩み全てを発散したと同時に出来上がった
スッキリした感じのアルバムです。音も含めて
 
 
――続く『OK BALLADE』(‘16)は、PELICAN FANCLUBの音楽的な魅力に加えて、もう1つ歌詞という武器があることをハッキリ示したようなアルバムだなと。
 
エンドウ「そうですね。ただ、僕がむちゃくちゃ折れそうになってた時期で、『PELICAN FANCLUB』を出した後にすごい落ち込んでしまったんですよ。当時は大学生だったんで卒論とかいろんなプレッシャーも重なって、自分が作る曲に対しての自信のなさみたいなものも出てきて、歌詞を書いても“あ〜ダメだダメだ!”ってずーっと悩んでて。そこでメンバーに相談したら、“歌詞の原文=言いたいことをそのまま見せてくれ”って言われて。そしたら、この方がスッと入ってくるっていうことになって、それをそのまま歌詞にしようと作り始めたのが『OK BALLADE』で。『今歌うこの声が』が書けてからは短期間で一気に仕上がって、自分の葛藤と悩み全てを発散したと同時に出来上がった、スッキリした感じのアルバムです。音も含めて」
 
カミヤマ「音楽性の枝分かれがこの辺りからだんだん激しくなって、いろんな面を見せられたという面でも重要なアルバムだと思います。あと、過去のインタビューでも言いましたけど、『PELICAN FANCLUB』を出した後のライブがきっかけになって生まれたアルバムだと思いますね。そのときのお客さんのレスポンスを受けて、意志を明確に持って作ったアルバムだったんで。そういう意味では、ちょっと“狙った”というか」
 
エンドウ「聴き手との距離がすごく縮まったアルバムだなと思いましたね」
 
クルマダ「歌詞の原文を見せてくれたことで僕らの感覚も変わってきて、“歌と歌詞で勝負できる”って改めて感じた上でそれぞれの楽器を入れてるんで、意識が全然違うのは音にも表れてると思います。あとは、さっきのエンジニアの方もそうですけど、スタッフにも事前に聴いてもらって意見をもらったり、作る段階でいろんな人の耳に入ってブラッシュアップされることが、『PELICAN FANCLUB』より増えたというか」
 
――逆にそれによってどうしていいか分からなくはならなかった?
 
エンドウ「いろんな人の意見があったからこそ、“自分はそうは思わない。やっぱり本当にやりたかったのはこういうことなんだ”って分かったのもあります。それが如実に出たのが『OK BALLADE』だと思いますね」
 
――メッセージが強いのに音楽的という絶妙なバランス感があって、『OK BALLADE』でPELICAN FANCLUBの見え方が変わった気がします。『M.U.T.E』とかは、今でもレパートリーの中では異質だし。
 
エンドウ「実は元々『PELICAN FANCLUB』に入れる予定だったんですけど」
 
カミヤマ「ちょっと強いカードを隠し持ってたみたいな(笑)。大富豪で勝つパターンですよね(笑)」
 
スタッフ「あと、アルバムごとに1曲ずつ曲数が増えてきたのもちょっと、ね(笑)」
 
――確かに『ANALOG』が6曲、『PELICAN FANCLUB』が7曲、『OK BALLADE』が8曲! 何そのこだわり(笑)。
 
クルマダ「全作ミニアルバムって言ってるんですけど、ちょっとずつ増えてる(笑)」
 
エンドウ「『OK BALLADE』は元々7曲にする予定だったんですけど、こんなに自分たちでやれる範囲があるんだったら全部見せた方がいいっていうことで」
 
クルマダ「どれも抜けなかったんですよ。どれを抜いてもバランスが悪いぞみたいな」
 
――いやでも、濃い歴史を聞いてきましたね。
 
エンドウ「自分がすごいなって思うのは、この3枚って’15年の1月〜‘16年の6月までのたった1年半の出来事だったんだなって。そう考えると、濃かった…“寿命縮まってんじゃねぇか?”っていう(笑)」
 
 
もう本当に来る価値しかないですから!
 
 
――今回の『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”』は、それぞれ第一部で過去作の完全再現、第二部で今の自分たちを観せるという構成で。
 
エンドウ「もう本当に自分たちの両極端を、完全再現してる自分たちと、今の自分たちの違いをハッキリ観せたいんで、演じ方というか曲への憑依の仕方も変わると思うんですよ。そこを楽しんでもらいたいなと」
 
――これは全ヵ所観たいと思う人もたくさんいるだろうなぁ。
 
エンドウ「僕はその3作の当時着ていたライブ衣装を引っ張り出してこようかなと思って」
 
シミズ「そして完全再現なんで、音もね」
 
エンドウ「そう。だから使う楽器も当然、当時のものを」
 
――そこまでやるんや!
 
クルマダ「やりますね。配置とかも戻して」
 
カミヤマ「俺、“髪の色をどうしよっかな?”って今思った(笑)」
 
エンドウ「戻す戻す!」
 
――髪の毛傷みそう(笑)。それぞれ何色だったの?
 
カミヤマ「完全再現はだいたい金髪で大丈夫ですけど、今の変な色の髪になり始めたのは去年ぐらいからなんで」
 
エンドウ「だから、第二部が始まる前に転換で今の色に染める」
 
――で、また次の公演のために終わったら金髪に戻す(笑)。
 
クルマダ「そう考えたら僕、メガネかけてましたね。ヒゲも生えてたし(笑)」
 
――ヒゲを生やして、転換で剃って、また次のライブまでに伸ばして、また剃って(笑)。
 
(一同笑)
 
カミヤマ「“完全再現”ですからね(笑)」
 
エンドウ「もう本当に来る価値しかないですから!」
 
――この企画の後に見えてくるものあるだろうし、次の制作に向けて過去の自分と徹底的に向き合うと。
 
エンドウ「多分、今後はなかなかできないと思うから、本当にこの瞬間を見逃してほしくないんですよ。平成最後の伝説を作りたいので(笑)」
 
(一同爆笑)
 
カミヤマ「出た! ビッグマウス(笑)。お客さんももちろん楽しみだと思うんですけど、僕ら自身のためにもなるライブだなぁと思ってて」
 
シミズ「過去を振り返ることによって今の表現もまた変わってくると思うんですよね。お客さんの反応も楽しみですけど、自分がどう感じるのかがすごい楽しみで」
 
クルマダ「当時、“何でこのギターを付けたんだろう?”みたいな感覚にたくさん陥ると思うんですよね(笑)。それを楽しみつつ、逆に“今の自分だったらこうするだろうな”みたいなところで活かしていきたいなって」
 
エンドウ「今までやってきたことに対しての自信というか、改めて“PELICAN FANCLUBってこんなにいいんだよ”って伝わればと思うんですよね。お客さんもそれぞれ僕たちを好きになってくれた時期が違うじゃないですか。そういうみんなに対しての“ありがとう”みたいな気持ちもありますね。だから…だからこそ、平成最後の伝説を(笑)」
 
(一同爆笑)
 
カミヤマ「もうプロレスっすよね(笑)」
 
エンドウ「アハハ!(笑) ちゃんと“PELICAN FANCLUBを好きでよかった”って思える、PELICAN FANCLUBにより一層ついていきたくなるようなライブにしたいですね!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2018年1月17日更新)


Check

Movie Comment

ライブとクルマダ(g)伝説を語る(笑)
メンバー全員からの動画コメント!

Release

バンドの現在進行形を刻んだ新機軸
配信シングルを2曲連続リリース!

Digital Single
『Shadow Play』
発売中 200円
Poolland Records

<収録曲>
01. Shadow Play

Digital Single
『SF Fiction』
発売中 200円
Poolland Records

<収録曲>
01. SF Fiction

Profile

ペリカン・ファンクラブ…エンドウアンリ(g&vo)、カミヤマリョウタツ(b)、クルマダヤスフミ(g)、シミズヒロフミ(ds)。’12年に結成。甘酸っぱいメロディと多幸感、そしてどこかシニカルな歌詞が魅力の新世代ドリームウェーブバンド。’14年10月にタワーレコード限定でリリースした『Capsule Hotel』が早耳音楽リスナーの中で話題に。’15年には1stミニアルバム『ANALOG』をリリース。ツアーファイナルでは下北沢SHELTERにて初のワンマンライブを開催。同年8月には2ndミニアルバム『PELICAN FANCLUB』をリリース。8月度“タワレコメン”に選出される。大きな注目を集める中、『UKFC on the Road』『スペースシャワー列伝』『SAKAE SP-RING』『MINAMI WHEEL』など各地イベントに出演。11月には渋谷 WWWでのワンマンライブを満員の会場の中成功させた。’16年6月には3rdミニアルバム『OK BALLADE』をリリース。6月末には東名阪で『PELICAN FANCLUB TOUR 2016 “CULT’URE OF PELICAN FANCLUB”』をThe Mirrazをゲストに迎え開催。9月にはDAIZAWA RECORDSの15周年イベント『代沢まつり』でウソツキ、pallyと全国5ヵ所を回る。11月には大阪CONPASS、東京WOMBにてワンマンライブ『CULT』を開催。3Dメガネを使用した演出やPeriscopeでの生配信など、新たな試みで会場を沸かせた。’17 年1月には名前に“CLUB”を含むバンドを集めた自主企画『CLUB NIGHT』を、2月にはAge Factory、パノラマパナマタウンと『GREAT TRIANGLE TOUR 2017』を開催、全国6ヵ所を回る。3月にはodolとの共同企画『凄い日』を開催。5月には待望の1stフルアルバム『Home Electronics』をリリース。東名阪ワンマンを含む7ヵ所で『PELICAN FANCLUB TOUR 2017 “Electronic Store”』を行う。9月には『SF Fiction』を配信リリース。ゼロ距離ワンマンライブ『DREAM DAZE』を開催。10月には台湾にて高雄市政府文化局が主催するライブイベント『微光夢遊』に出演。11月には『Shadow Play』を配信リリース。前回好評を博した『DREAM DAZE』、パノラマパナマタウン、mol-74との共同イベント『Exhibition Match』を開催。テスラは泣かない。とのスプリットツアー『Island Tour 2017-2018』をスタート。’18年1月19日(土)より、東名阪にて過去作の完全再現ライブツアー『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”』を開催。

PELICAN FANCLUB オフィシャルサイト
http://pelicanfanclub.com/


Live

一部は過去の完全再現、二部は最新形
各日メニュー違いで送る東名阪ツアー

 

Pick Up!!

【大阪公演】

『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”
 -ANALOG-』
チケット発売中 Pコード346-999
▼1月19日(金)19:30
CONPASS
オールスタンディング3000円
サウンドクリエーター■06(6357)4400
※未就学児童は入場不可。

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【愛知公演】
『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”
 -PELICAN FANCLUB-』
チケット発売中 Pコード346-335
▼1月20日(土)17:00
CLUB ROCK'N'ROLL
オールスタンディング3000円
ジェイルハウス■052(936)6041
※小学生以上有料。未就学児童無料。

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【東京公演】
『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”
 -OK BALLADE-』
Thank you, Sold Out!!
▼1月22日(月)19:30
下北沢GARAGE
立見3000円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※小学生以上はチケット必要。


【東京公演】
『ONEMAN LIVE 2018 “SPACE OPERA”
 -FUTURE-』
チケット発売中 Pコード346-900
▼2月4日(日)17:30
Mt.RAINIER HALL SHIBUYA
PLEASURE PLEASURE
指定席3500円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※小学生以上はチケット必要。

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Column1

「みんなの“きっかけ”になりたい」
PELICAN FANCLUBが描いた
あの日の未来の設計図
レトロフューチャーでハイブリッド
初アルバムにして最高傑作
『Home Electronics』を語る!

Column2

「雰囲気だけの音楽をやりたくない」
変わらぬ絆と変わりゆく
バンドの覚悟と情熱が生んだ
大胆進化の『OK BALLADE』!
初登場の全員インタビュー

Comment!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはコチラ!

「去年は本当に関西にもよくライブに来ていたPELICAN FANCLUB。見逃してもまたすぐ会えると思っちゃうぐらい、何なら知らん間に来てるぐらい(笑)、膨大なライブデイズを送っていた彼らが仕掛ける’18年最初のプロジェクトが、過去作の再現ライブツアー『SPACE OPERA』です。東名阪でピックアップする音源が違うんですが、彼らの話を聴いてると全公演観たくなったな~ていうか観る価値あるな~。とは言え、そうもいかないあなたも大丈夫。改めて彼らのアーカイヴを聴き返してみて、どの時代を切り取ってもまぁ素晴らしい楽曲揃い。なので、どこに行っても絶対に感動と再発見があるはずです。大阪公演は最も過去の作品となる『ANALOG』なので一番化けるかもしれないし、『PELICAN FANCLUB』は人気曲も多いし安心して楽しめるライブになりそうだし、『OK BALLADE』は今でも個人的に大好きなアルバムなので自信を持ってオススメします。というわけでやっぱり東名阪全ヵ所見どころです(笑)。それにしても音楽はクールなのに情熱もちゃんと秘めていて、会うたびに、観るたびに惚れ直すPELICAN FANCLUB。今年も彼らに大注目です!」