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「俺たちにとっては、もうここで辞めても悔いがない10年じゃなくて
 悔しい悔しいの10年なんですよ」
a flood of circleのロックンロール・サバイバルな10年を刻んだ
初ベスト『THE BLUE』インタビュー&動画コメント

 Disc1の全17曲を貫く熱き衝動と、傷だらけの歴史をまざまざと脳裏に焼き付けられたとき、これまた濃厚なアニバーサリーイヤーが始まったもんだと、胸が高鳴った。度重なるメンバーチェンジ(失踪含む)は言わずもがな(笑)、事務所もレーベルも変わりゆく波乱万丈の道中で、見事に最初のディケイドにたどりついたa flood of circle(ア・フラッド・オブ・サークル)の初のベストアルバムは、その名も『THE BLUE』。さらに初回盤のDisc2には最新曲『青く塗れ』やライブ鉄板『プシケ』等を含む新録4曲が、Disc3には佐々木亮介(vo&g)によるネイキッドな弾き語り音源集をコンパイル。結成10周年の歴史を束ねるだけでなくスクラップ&ビルドするようなチャレンジングなベスト盤は、このバンドが次の10年をしっかりと見据えて動き出していることを示している。下記の佐々木のインタビューでも、開始早々ベスト盤そっちのけでリリース前に渡航したロンドンでの初海外ライブ&レコーディングについてまくし立てるなど、どうやらこの男は前しか見ていないらしい(笑)。久々の全国ワンマンツアー『AFOC 10th Anniversary “THE BLUE TOUR -青く塗れ!-”』もいよいよ中盤戦。昂ぶる言葉の数々をキャッチして、是非あなたもa flood of circleが10年かけてたどってきた数奇な運命と、いまだ続いていく蒼き旅路に合流してほしい――!

 
 
フラッドはまだこういうことが出来るんだってことが嬉しくて
 
 
――10周年というその節目をかなり意識して去年から動いてきたと思うけど、率直な気持ちとしてどう?
 
「ベストアルバム『THE BLUE』のリリースとそのワンマンツアーに向けて動いてきた感じだったんですけど、今年の2月にロンドンに行ったのが結構デカくて。レコーディングもしたんですけど、思ったより10倍ぐらいよく出来たんですよ。もちろんツアーのことは常々考えてたんですけど、その先のイメージが広がってきちゃって(笑)。珍しく曲が先にある状態なんで、“この曲をどうやって届けよう?”みたいな感じに今はなってますね。いざ10周年に突入して、ツアーのことでいっぱいいっぱいになるかと思ってたんで、次の作戦を考える余裕があるのは、ちょっと楽しい。ロンドンでのライブがすごくおもしろかったのもあって、それがまたバンドの勢いを増した気がして」
 
――海外でのライブもレコーディングも初めてだったんよね?
 
「そうです。『グラストンベリー・フェスティバル』に勝手に応募するとか、遠回りのことはもうしてたんですけどね(笑)。姐さん(=HISAYO・b)が入って5年、事務所も新しく作って、レコード会社も移って、ちょっと落ち着いてきてる感じが良くも悪くもあったんで、何か1つ事件を起こして、自分たちにハッパをかけて先に進んだ方がいいんじゃないかって。その中で出てきたアイディアが、ロンドン行きだったんですよ」
 
――初めての海外でのライブで、レコーディングで、刺激がないわけないもんね。
 
「そうなんですよ。昔、ロンドンに住んでたこともあったんで、自分のルーツを確認したところもあったし。ただ予定では、ライブもレコーディングもハデに失敗しに行こうと思ってたんですよ(笑)」
 
――人が全然いないとか、ブーイングが上がるとか(笑)。
 
「そう思ってたんですけど、行ったら行ったで何か空気がすげぇよかったんですよね。ライブは全部で3本やったんですけど、1本目が始まる前のPUBの空気で、“これは日本で用意したセットリストをそのままぶつけるイイ子ちゃんのライブじゃダメだ”って感じて、リハの時点で曲を変えようって。PUBと言ってもライブスペースに300~400人とか入るんで、日本のハコとそんなに変わんないんですけど、日本と一番違うのは、BARスペースが本当にレストランみたいになっててメシも食えるし、呑みにだけ来る人もいる。でも、ライブスペースに入ろうと思えば入れる、みたいなところだったんで、ここにいる人たちを振り向かせるライブを、この場で思い付くことをしなきゃダメだと思って。ライブが始まっても、次の曲はこれじゃダメだと思ったらメンバーにイントロを止めさせて、バッと違う曲で入って。そういう原始的なライブバンドとしてのよさみたいなものを観せられた気がしたし、フラッドはまだこういうことが出来るんだってことが嬉しくて。それは姐さんと5年間やってきたからだと思うんですよね」
 
――そういう意味では、ロックンロールバンドとしての原点回帰というか、本当にいい刺激をもらえた滞在やね。
 
「例えば“ここは昔、ホワイト・ストライプスがやったことがあるんだぜ”とか言われると、やっぱり燃えるじゃないですか?(笑) 2日間で3本のタイトな日程だったんですけど、1日目の夜にライブして、深夜にクラブイベントに出て、その後の移動のタクシーでメンバーだけになったときに、姐さんとナベちゃん(=渡邊一丘・ds)が結構バチバチにやり合ったことがあって。セットリストをコロコロ変えた1本目は割と反応もよかったんですけど、2本目はうまく機能しなくて。残りはあと1本しかなくて、このまま帰れないみたいな話になったときに、“じゃあ何で俺たちは日本語でわざわざ飛び込んでライブをしてるのか? どうやって明日の最後のライブで勝って帰るのか?”みたいな、すごい根っこの話を改めてしたりして。最近はバンドの空気がよかったんで言い争いとかもなかったんですけど、逆にロンドンでそういうことが起きたのが、またよかった。最終的にいい話が出来て3本目のライブもやれたんで。あと3本ぐらいやってたら、もうちょっとよくなって帰ってこれたなっていう感じなんですけど(笑)」
 
――そうか、今まではほっといてもいろんな事件が起きてたのが、ちょっと安定期じゃないけど(笑)。そういうバンドの初期衝動を改めて持って帰れて、この10年を総まとめして次に進むためのベストを出せたのは、いい流れで。
 
「そう! たまたまなんですけど流れがよくなっちゃった(笑)。ロンドンに行こうっていう話はあったけど、何でリリースの直前になったのかって言うと、スタジオを抑えられた+ライブが決まりそうだったからっていう“たまたま”が本当に重なったんですよね。勇気を出して行ってみて、本当によかったなって思いましたね」
 
 
俺たちのベストは、特にストーリーは濃いめだと思います(笑)
 
 
――そしてまぁ、このベスト盤の『THE BLUE』は本当に…やっぱり流しては聴けないアルバムだなって思った。カフェで流れてるボッサアレンジのオムニバスと対極にあるアルバムだわ(笑)。
 
「アハハハハ!(笑)」
 
――ズラッと並ぶ曲名を見てるだけでも、いろいろ思い出しますね。
 
「そうですよねぇ…。俺たちのベストは、特にストーリーは濃いめだと思います(笑)。曲順も、一番最初に新しい曲を入れて、一番最後に古い曲とは決めてたんですけど、あとは時系列で。メンバーとか環境の変化だけじゃなくて、俺のソングライティングがどう変わってきたのか。ただバンドが転がってきたというよりも、本当に変化しながらここまで来てるので。逆に言うと、同じメンバーでフルアルバムを2枚作ったことがないまま途中まで来てたんで(笑)、それをズラッと並べて聴いてもらえたら、結構発見があるんじゃないかなぁ。ブックレットのクレジットにギタリストの名前をズラーッと載せたとき、ちょっと感慨深かったですね(笑)。Disc1に関しては、シンプルにシングルとリード曲がある並びにして、フラッドを聴こうと思ってもアルバムも曲もあり過ぎて、どこから聴いていいか分からない人にとって入口になってほしかったし、もうすでに好きな人にはDisc2、Disc3で楽しんでほしいのはあったんで」
 
――この曲たちを見て、“こんなことあったな~”っていうエピソードはある?
 
「そうだなぁ…10周年だからこそ思うことがあるとすると、『博士の異常な愛情』(Disc1:M-4)とか」
 
――俺、この曲はホンマにめっちゃカッコいいと思う。
 
「いや俺も、めっちゃカッコいいじゃん!って改めて思って(笑)。当時はメジャーデビュー盤の『BUFFALO SOUL』(‘09)のツアーでいきなりギターの失踪事件があったんで(笑)、『博士の異常な愛情』が入ってる2ndアルバム『PARADOX PARADE』(‘09)を急遽出すことになって、相当慌てて作ったんですよね。だからツアーも短かったし、2ndの曲をあんまりライブでやってないんですよ。だから、2ndからどの曲を入れようかと改めてじっくり聴いたら、我ながら“めっちゃパンチあるじゃんこの曲”と思って(笑)」
 
――『BUFFALO SOUL』の頃はライブは観てたけど、俺がフラッドを好きになったのは、確信したのはこの曲からやから。もうハイボルテージとしか言いようがないサビ(笑)。
 
「アハハ!(笑) 1stアルバムのギターのフレーズはほぼ岡ちゃん(=岡庭匡志・元g)なんですけど、多分この辺りから自分で考え始めてるんですよ。この曲の“ガ! ガ! ガ!”っていうキメから入るイントロは、メジャーデビューしてこれからもっとデカいステージに立つときに、すげぇパンチのあるイントロを作りたいっていう欲が初めて出たフレーズだと思ってて。そのときは迷いながらやっていたことが、10年経って振り返っても、そのセンスとか感覚みたいなものはやっぱり間違いじゃなかったと思えたことで、“いろいろあったけど、これが正しい道だったんだ”って感じられて。それには、音楽的に進化しようという気持ちを、いい曲を作って、いいライブをするっていうシンプルなことを忘れなかったから、ここまで来れたんだなぁと思ってるんですよね」
 
――あと、曲間の長さもバンドの転機によって分けてたりするこだわりが。
 
「そうなんです。だから流れで聴いても、まさにカフェのボサノヴァじゃなくて(笑)、そういうストーリーを感じてもらえると思います。マスタリングにもすごいこだわりましたね」
 
 
いいものは時の洗礼を受けても残っていける
 
 
――最新曲の『青く塗れ』(Disc2:M-1)も収録されたDisc2は、4曲入りとシングルっぽい体裁で。
 
「『Miss X Day』(Disc2:M-2)は初めてアルバムに入れたんですけど、これは姐さんとセッションし始めた頃の曲で。あの頃アルバムに入れなかったのは、やっぱり当時の出来に満足してなかったのもあるんですよね。姐さんと5年やってきて録り直せたのはすごいよかったし、しかも新録の方がグルーヴがあるし、なぜか今の方が若々しいんですよ(笑)。それがすごい嬉しい。姐さんと積み重ねてきたものもそこには詰まってるし」
 
――その流れで言うと、ライブ鉄板のメンバー紹介曲『プシケ』(Disc2:M-3)も初収録って、そんなこと意識もしてなかったけど、そうだったっけ!?っていう(笑)。
 
「アハハ!(笑) 今まではライブ盤(『Before the flood three』('08)『LIVE!!! for ALL THE YOUNG ROCK'N'ROLLERS -at Zepp DiverCity Tokyo 20130616-』('13))にしか入ってなかったんですけど、それもメンバー紹介があるからで(笑)。これも姐さんとの5年間があったから今録れると思ったし、最後の『God Chinese Father』(Disc2:M-4)もそうで。これはインディーとも呼べないぐらいのどアマチュアのときの曲なんですけど、まさに原点回帰な曲だから、本当に“ガレージバンド”というか1つの部屋に機材を全部入れて、全くクリックも聴かずに録って。それは姐さんと5年間やってきた信頼関係だし、前までだったら多分出来なかったと思うんですよね」
 
――ベストだからこそ出来た遊びとか試みもいっぱいあるというか、言ったらオリジナルアルバムと違って新曲を書く負荷がないから、そういうチャレンジが出来たのかもね。
 
「あ! 今言われて初めて思いましたけど、確かにこのベストでチャレンジしたことと、ロンドンでのことは意味合いが同じかも。曲を作らなくていい=遊べる余裕がある。次の作品のことも実はもう考えてるんですけど、前よりも明らかに遊び心を持ったアイディアがみんなから出てきてて、それは確かに影響してるかも。今までそういう編集盤を作ったことなかったから、このベストの制作の時点でもう始まってたのかもしれないな。『プシケ』も、メンバー紹介を録った曲なんて収録してもしょうがないんじゃないかと思ってたのが、まさにその“余裕”があるからチャレンジ出来たし。確かに流れだったのかもなぁ」
 
――そもそもメンバー紹介のための曲を作るっていう発想が、少年のようでいいよね。
 
「俺の中でルーツがあるんですけど、ブルースマンは自分の名前を言うし、ボ・ディドリーは『ボ・ディドリー』(‘57)っていう曲があったりするし、ジェームス・ブラウンもメンバー紹介するし、(忌野)清志郎さんの『よォーこそ』(‘80)(RCサクセション)もそうだし、そういう流れの新しいことをやりたかった感じですかね」
 
――そして、Disc3は弾き語り音源集ですが、5~6曲とかじゃなくて11曲という大サービス(笑)。
 
「Disc1はきっちりベストとして作れてるから、何かチャレンジできないかな?って思ったときに、このアイデアが。最初は“おまけ”っていう感じだったんですけど、やればやるほど楽しくなって、裏ベストになっちゃったっていう(笑)。ほぼ全部一発録りみたいな感じですね。あとはまぁ、姐さんとかナベちゃんが弾き語りの『Trash Blues』(『ベストライド』(‘15)収録)をすごい気に入ってくれてたし、今なら出来るなと思ってやった感じですね。『花』(Disc3:M-10)とかは弾き語りで先に作ってたので、逆にコードもリズムもこっちが原曲なんですよ。そういうバンドの骨格を見せるものとしてはおもしろいかなと」
 
――『ファイト!』(‘83)(Disc3:M-11)は中島みゆきのカバーですね。
 
「1人でワンマンツアーをやったときに『ファイト!』をよくやってたんですけど、歌えば歌うほど自分にもしっくりきて、反応もよかったんですよね。主人公がいっぱい出てくる歌なんですけど、その中の1人に自分がいるような感覚で歌えるので。自分が入る余地があったのは曲の偉大さなんですけど、今改めてカバーしてみました」
 
――古着とかでも思うけど、いい服って30年前のものでも全然着られる。でも、音楽もそうだなって。いい音楽は30年前の曲でもやっぱりいい。これはもう、そのアーティストのタイミングとか時代が書かせるんだろうけど。
 
「いいものは時の洗礼を受けても残っていける。もうこれは自分に返ってくる言葉ですけど、確かに『ファイト!』はそういう曲ですよね。言葉が古くなってないんですよね」
 
 
自分で引っ張っていかなきゃ前に進めない
 
 
――ベスト盤のタイトル『THE BLUE』は、ここ最近のフラッドのイメージカラーな感じがして。『ベストライド』も大事な作品だと思うし、『LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL』(‘11)もそうやけど、転機のアルバムが“青い”。フラッドが変わらなきゃいけないときに絡んでくる色だなって。
 
「あぁ~そうかも! 言われてみれば毎回、転機=青ですね。ホントだ」
 
――『THE BLUE』になった理由は、ズバッと言い切れる言葉であるということ、あとは“ブルース”と“青春”と、そんでもってビートルズの青盤と。潔いタイトルですね。
 
「もう正解を全部言ってくれましたね(笑)。そのシンプルさと、“青”っていう色がやっぱりよかったんですよね。新曲の『青く塗れ』にもつながっていくんですけど、“フラッドの10年間って何だったんだろう?”と思ったとき、やっぱり譲れなかったものがあるってことだなぁって。“変われなかった”とも言えるし。これだけ環境が変わったのに自分が変われなかったことで、捨てられない性みたいなものを感じてしまって(笑)。結局、やってきたことが自分たちのカラーで、ベスト盤のタイトルを色で表現できたのは、すごい気に入ってるんですよね」
 
――確かに激動の10年だったけど、佐々木くん自体は変われなかった/変わらなかった。
 
「“俺は変えられなかったぞ”っていう事実が、Disc1の17曲を聴くと分かる(笑)。それをみんなに支えてもらった歴史でもあるし、フラッドがみんなを連れてきた歴史でもあるし。自分で引っ張っていかなきゃ前に進めないのはよく分かったので」
 
――ただ、ベスト盤っていつも何かしら物議を醸し出すよね(笑)。
 
「ねぇ(笑)。スピッツの最初のベスト(『RECYCLE』('99))も、メンバーが本当は出したくなかったのを知らなかったんで、中学生の頃めっちゃ聴いてたんですよね。でも、得てしてベスト盤ってそういうもんだとも思ってて(笑)。俺はベスト盤に偏見もなかったし、企画盤として録り直すよりもズバッと出した方が潔いしカッコいいなと思ってた。特にフラッドは、その歴史の変化自体がおもしろいバンドだから、意味がある作品になると思ったし」
 
――より一般的なリスナーになればなるほど、ベスト盤は最初に手に取るアルバムになる可能性は高いもんね。フラッドもそれが10年経ってようやく作れたというか、5年じゃ何がベストだよっていうことかもしれないし。
 
「そうなんですよ! やっぱり10年耐えてきた賜物でもあると思うし、カッコいい曲しか入ってないんで好きな曲を見つけてもらって、是非オリジナルアルバムまで踏み込んできてもらえれば、もっとおもしろい世界があるぞって。最近は、ライブとか音源とかフェスとか、いろんなところでついつい過剰なサービスをしてしまうというか、分かりにくい=つまらないじゃないし、そういうところにこそ、音楽の感動と奥行きがあるような気がしていて。もちろんフラッドも、革ジャンを着て、グレッチを持ってって分かりやすくしてる部分はあるけど、作ってる音楽とか言葉は、もっといろんな聴かれ方をされてみたい。だからこそ今回はアナログ盤を出したりもするし、ベストは入口という意味で出してるんで。もちろんフェスの30分も入口だけど、ワンマンに来てもらった方がずっと奥まで伝えられる。そこまでたどり着かせたいなっていうのはありましたね」
 
――それがまさにベストアルバムの、フェスの機能の1つであり、そこで終わってたら何にも始まらないからね。
 
「あと、今は何でも型にハメやすくなってる気がするし、その言葉は本当に自分にも返ってきてて。自分の作る曲とか、ファンの感じとか、そういうものがどこかで見たり聴いたりしたことがあるものになってしまうのが怖い。そうなると途端につまんなくなってくるよなって。それこそロンドンに行って、“音楽はいろんな壁を越える”って綺麗事じゃなくてマジで思ったし、そのためにロックンロールをやってるんで。だからこそ新しいチャレンジをしていきたいし、逆にそれは俺が普通だから思うんですよ。普通にやってると型にハマッちゃうのが分かってるからなんです。だから、それをブチ壊そうとしてるし、もしかしたらそういうことを思ってる人には、届いてるのかもなって」
 
――どこかにハメるんじゃなくて、新しい価値観を作る。
 
「本当にそういうことだと思ってますね。誰かが何か用意してくれるわけじゃないのは、この10年間で身に沁みて分かったんで(笑)。自分たちの居場所とか、自分たちが本当にいいものを作るしかないんですよ」
 
 
“谷あり谷あり”で来てるから、早く山を見付けたいんですけど(笑)
 
 
――まあでも、よく10年やってこれたよね。
 
「そうですねぇ。そう思うと、応援されてなかったら出来なかったこともたくさんあったなって。自分の力でやってやるぞと思ったことも、いろんなところで支えてもらってるなと思うし、それはナベちゃんと姐さんには一番思う。俺たちにとっては、もうここで辞めても悔いがない10年じゃなくて、悔しい悔しいの10年なんですよ。そういう意味では、ありがとうの気持ち以上に“次は何をしよう?”っていう気持ちもやっぱり出てくるし、この感覚を信じていけばまだいけるなって思いますね」
 
――枯れなきゃいいよね、その『花』(Disc1:M-1)が(笑)。
 
「そうですね、まだ咲いてないんで(笑)。でも、怒髪天とかSCOOBIE DOとかがいて…ああいう風に続けてる先輩を見てるとね、弱音を吐くのが本当に恥ずかしくなるんですけどね。SAが“センパーイ!”とか声をかけてくるのはめっちゃイヤですけど(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) そうか、SAは結成30周年越えで最近同じレーベルからメジャーデビューしたから(笑)。あと、よく10年を振り返って、バンドの最大の危機は? やっててよかったと思うことは?とか聞くけど、フラッドはピンチがあり過ぎてどれなんだろうっていう(笑)。
 
「アハハ!(笑) 俺、“山あり谷あり”って言ってる人が羨ましくて。“谷あり谷あり”で来てるから、早く山を見付けたいんですけど(笑)。でも、そういう這いつくばっていく根性みたいなものが、俺たちにはあると思うし」
 
――そのピンチを敢えて聞いたとしたら、何かある?
 
「えぇ~一番のピンチは、この間のロンドンの話し合いかな(笑)」
 
――そこまでバチバチやったんや(笑)。
 
「確かに俺は昔のピンチの記憶が薄れてるのかもしれない(笑)」
 
――そうやね。麻痺もしていくから。
 
「以前、奥さん(=筆者)とのインタビューで初めて言った言葉だったんですけど、“ロックンロールバンドは延命治療しない”って…アレは言いながら本当にそうだなって思った。だから、毎回最新のピンチが最大のピンチで、逆に今までで最高の景色っていうのはねぇ~思い付かないですね。まだ来てないんじゃないかなぁ」
 
――『FUJI ROCK FESTIVAL’12』のWHITE STAGEもよかったけどな~。あのときに楽屋で…(笑)。
 
「ジャック・ホワイトに会いに忍び込みましたと(笑)。そういう音楽ファンとして幸せな瞬間は、この10年間たくさん味わってきました。スピッツの草野(マサムネ)さんに会えたり、リアム・ギャラガーと一緒にやれたり、こないだはソロで、ザ・リバティーンズのカール・バラーのイベントに出られたり。そういうちょっとした喜びはあるけど」
 
――まだ観てない景色があるってことか。しかしまぁ超濃いベストアルバムだったわ。
 
「俺もサンプルが届いたときにビックリしました。ドシッときた(笑)」
 
 
フラッドは常に先を見てるバンドなんで、だからこそ今を観てほしい
今がライブバンドとして一番いい状態だと思ってるんで
 
 
――ベストアルバムに伴う久々のワンマンツアーも始まっていて。
 
「ロンドンに行って原点回帰みたいなこともあったし、ワンマンツアーも意識してサポートメンバーも呼んでやったりしてたんで、ロンドンの経緯が直結すると思いますね。前回の大阪はグッドモーニングアメリカとなんばHatchでやって、ライブは楽しかったしよかったけど、Hatchが出来たら万々歳と言うよりは、Hatchをちゃんと埋めて野音に行きたい気持ちがあるから。フラッドは常に先を見てるバンドなんで、だからこそ今を観てほしいのはありますね。ベスト盤という入口を単純に楽しんでほしいし、今がライブバンドとして一番いい状態だと思ってるんで。ロンドンで“俺たちは日本代表だ”って言ってきたんで(笑)、その代表のライブを観に来てほしいな」
 
――でも、本当に今まで話してきたことがある種集約された現在地みたいな曲が、まさに『青く塗れ』やね。
 


「そうですね、歌詞も言いたい放題になっちゃって(笑)。まぁ『花』でちゃんと自分たちの核が書けたので、もっと軽快な曲を作ろうと思ったし、やっぱりロンドンのことも含めて、今はバンドがすごいポジティブで楽しいんですよ。ナベちゃんも最近はしきりに楽しい楽しいって言ってて、すっごい笑顔なんですよね。『GOLDEN TIME』(‘14)を作ってる頃は根を詰めてやってたのが、今はいい意味で解放されてると思うし、今のフラッドはそういうポジティブな空気で満ちてるので。だからこそ『青く塗れ』が出来たし、ライブもその空気で出来ると思うんですよね」
 
――最初はバンドだって何だって楽しいに決まってる。でも、いろんな苦労も経験もした上で、今改めてそう思えるのは、成熟してきたとも言えるし、楽しみ方が分かってきたのもあるだろうし。
 
「メンバーとか環境が変わるたびに、毎回初期衝動はあるんですよ。でも、初期衝動ってやっぱり長く続かないから。昔は、このエネルギーを次にどうやってバズらせたらいいかが分からないから、初期衝動が終わった段階でシュン…ってなってたんですよ(笑)。今は物事が落ち着いちゃった後に、どうやってこれを楽しんで、もっとすごいものを作るかに頭が働くし、それに音楽的な答えが出せる力がついてきてると思うので。やっぱり今は自信があるんですよね。誇りにも思ってるし、それは以前はなかったと思う。よかったなと思うのは、どんどん立ち回りが上手くなるんじゃなくて、どんどん正直になってきてる気がしてて。だからこそ、『青く塗れ』の歌詞もすごい正直だし、今が一番青臭いっていう曲になったんで(笑)。ここで何か落ち着いた曲を出すんじゃなくて、こういうビート感でまくし立てる曲を歌うのは、自分たちでもいいなと思ってるところですね」
 
――10周年イヤーの前半はこのベストとツアーがあって、ロンドンで録った音もいずれは届くであろうということですけど、この1年をどう駆け抜けていくのか、改めて言葉をもらいたいなと。
 
「とりあえずロンドンで録った音がヤバい!っていうことは言っておきたくて。自分たちの新しいモードを宣言できた、明らかに先に行ってる曲になったんで。ベストのツアー自体もこれがピークで完結編ですじゃなくて、ベストなのに未来が見えるツアーになると思うんですよ。この先にみんなを連れて行けると思ってるので、まずはなんばHatchに全員集合!ということで、よろしくお願いしますと」
 
――あと最後に、さっき話の流れでも出てきた、フラッドの“譲れないもの”とは?
 
「一番思うのは、“自分が作りたいものを作る”ということ。そして、それを譲らないということですね。自分のイメージがあって、やりたい気持ちがあるのに、誰かに抑圧されたり、何らかの条件でそれを譲ってはいけない。どれだけ損をしようが、どれだけ見え方が悪かろうが、本当に作りたいものを人に任せてはいけない。一番肝心なことを、誰かに任せてはいけないっていうことですね」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2016年5月20日更新)


Check

Movie Comment

毎度おなじみ、動画でも雄弁!
佐々木亮介(vo&g)からのコメント

Release

結成10周年を祝しレーベルの枠を越え
初のオールタイムベストが発売!

Best Album
『THE BLUE』
【初回限定盤3枚組】
発売中 3300円(税別)
Imperial Records
TECI-1487

【通常盤】
発売中 2000円(税別)
TECI-1490
※~'17年1月1日期間限定プライスダウン盤

<Disc1収録曲>
01. 花
02. シーガル
03. Buffalo Dance
04. 博士の異常な愛情
05. Human License
06. I LOVE YOU
07. Blood Red Shoes
08. The Beautiful Monkeys
09. 理由なき反抗(The Rebel Age)
10. Dancing Zombiez
11. I'M FREE
12. 月面のプール
13. KIDS
14. GO
15. Golden Time
16. ベストライド
17. ブラックバード

<Disc2収録曲>
01. 青く塗れ
02. Miss X Day
03. プシケ
04. God Chinese Father

<Disc3収録曲>
01.象のブルース
02. SWIMMING SONG
03.ノック
04.月に吠える
05.コインランドリーブルース
06.Yu-rei SONG
07.The Cat Is Hard-Boiled
08.オーロラソング
09.ホットチョコレート
10.花
11.ファイト!(中島みゆきカバー)

Profile

ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より、HISAYO(b)、佐々木亮介(vo&g)、渡邊一丘(ds)。’06年、東京にて結成。ブルース、ロックンロールをベースにしたサウンドとメロディ、そして佐々木の強烈な個性を持った歌声が話題となる。’07年、初音源となるミニアルバム『a flood of circle』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘07』にも出演。’09年には1stアルバム『BUFFARO SOUL』でメジャーデビューを果たすものの、メンバーの失踪や脱退を経験し、’10年にはHISAYOが加入。’12年にはレーベルを移籍し、ミニアルバム『FUCK FOREVER』をリリース。’13年にはアルバム『I’M FREE』を発表後、47全都道府県を廻るツアーを敢行し、そのファイナルを日比谷野外音楽堂で迎えた。その後も、サッカー2014・FIFAワールドカップをモチーフにした朝日新聞CM“サムライに告ぐ。”篇に『GO』が使用されるなど大きな話題を呼び、’14年には6thアルバム『GOLDEN TIME』を完成させ、そのツアーファイナルを六本木EX THEATERで締め括った。そして’15年、再び起こったメンバーの加入・脱退という不測の事態を乗り越え、6月には走り続けるバンドの覚悟を刻んだミニアルバム『ベストライド』を、11月には佐々木の29年間の生き様を綴ったシングル『花』をリリース。そして、結成10周年を迎える’16年、自身初となる海外ツアー『THE BLUE TOUR in LONDON -青く塗れ!倫敦編-』を経て、2月24日にはベストアルバム『THE BLUE -AFOC 2006-2015-』をリリース。さらにはリリースツアーとして国内では2年ぶりのワンマンツアー『THE BLUE TOUR -青く塗れ!-』の開催と、アニバーサリーイヤーを飾るビッグイベントが続々と決定。10周年を迎えたロックンロールバンドは、さらに転がり続けていく。

a flood of circle オフィシャルサイト
http://www.afloodofcircle.com/

Live

ベスト盤を引っ提げたツアーも中盤戦
近畿は一点集中の大阪Hatch公演!

 
『AFOC 10th Anniversary
“THE BLUE TOUR -青く塗れ!-”』

【千葉公演】
▼4月2日(土)千葉 LOOK
【茨城公演】
▼4月3日(日)水戸ライトハウス
【福島公演】
▼4月9日(土)Hip Shot Japan
【岩手公演】
▼4月10日(日)the five morioka
【石川公演】
▼4月14日(木)金沢vanvanV4
【新潟公演】
▼4月15日(金)新潟CLUB RIVERST
【長野公演】
▼4月17日(日)長野ライブハウスJ
【栃木公演】
▼4月22日(金)HEAVEN'S ROCK
Utsunomiya VJ-2
【岡山公演】
▼5月1日(日)岡山ペパーランド
【鹿児島公演】
▼5月3日(火・祝)鹿児島SRホール
【大分公演】
▼5月5日(木・祝)club SPOT
【愛媛公演】
▼5月7日(土)WstudioRED
【香川公演】
▼5月8日(日)DIME
【北海道公演】
▼5月13日(金)cube garden
【宮城公演】
▼5月15日(日)仙台CLUB JUNK BOX
【高知公演】
▼5月19日(木)高知X-pt.

【広島公演】
▼5月21日(土)セカンド・クラッチ

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード283-403
▼5月22日(日)18:00
なんばHatch
1Fスタンディング3500円
2F指定席3500円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【愛知公演】
▼5月27日(金)ダイアモンドホール
【福岡公演】
▼5月29日(日)LIVE HOUSE CB
【東京公演】
▼6月4日(土)STUDIO COAST
【沖縄公演】
▼6月11日(土)output


『The Deep Blue Night 2
-AFOC VS 佐々木亮介-』

【沖縄公演】
▼6月12日(日)output
[出演]a flood of circle/佐々木亮介
 

Column1

暴れるのは誰にでも出来る
踊るのはセンスがないと出来んから
a flood of circleと女王蜂が
神戸で激突! 『Kansai college
chart LIVE!』レポート

Column2

大きな愛とプライドを込めた
これぞa flood of circleな決意表明
“生き残る”より“勝ち残る”未来を
見据えて吼える『花』インタビュー

Column3

「俺たちがまた立ち上がることを
みんな分かってたのかもしれない」
“何度でも始めようぜ”
不屈のa flood of circleから届いた
希望と再生のロックンロール
『ベストライド』インタビュー

Column4

俺たちの『GOLDEN TIME』は
続いてく――幾度もの分岐点を越え
転がり続けるa flood of circleの
ツアークライマックスに捧ぐ
昨年の撮り下ろしインタビュー

Column5

強烈ロックアルバム『I'M FREE』
を手にした初の全県ツアー
afoc VS THE NOVEMBERS
灼熱の記憶蘇る京都磔磔レポート!

Column6

「反抗期だし思春期だし成長期」
強烈ロックアルバム『I'M FREE』
喪失感をガソリンにロールし続ける
a flood of circle佐々木亮介
インタビュー&動画コメント

Column7

激動の現代社会に愛を込めて
『FUCK FOREVER』!!
“LOVE”と表裏一体の“FUCK”
を言葉の弾丸に込めてぶっ放す
インタビュー&動画コメント

Column8

愛とロックンロールを手に
メンバーの脱退&加入を乗り越え
ぶっ放した『LOVE IS LIKE A
ROCK'N'ROLL』制作秘話

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「ぴあ関西版WEB毎度おなじみ流浪のロックンロールバンドAFOCのベスト盤を聴いてると、初期相応の蒼さあり、バンドとして成熟していく過程あり、“Paint It, Black”ならぬ『青く塗れ』と10年目に掲げる辺りも、本当に“らしい”というか。でもこの“らしさ”は、彼らが10年かけて築いてきたこその産物で。ベスト盤に対してインタビューでポロッと言った、“やっぱり10年耐えてきた賜物”というひと言は、まさにフラッドならではだなと。だって、10年を“耐えてきた”と言うバンドって、そうはいないですよ(笑)。そんな不屈の精神も、次の10年への覚悟も詰まった文句なしにイカしたベストアルバムは、本当に入門編には最適。この旅にすでに合流済みの皆さまは、“1stの頃の声、わっか!”とか、勝手に感情移入の走馬灯(涙)など、いろんな効用が望めます(笑)。個人的には、彼らに本格的に肩入れするきっかけとなった『博士の異常な愛情』がちゃんと入ってる安堵と共に、この曲の凄まじい破壊力に改めてノックアウトされたのでした。カッコよ過ぎるやろ!」