「『REAL EMOTIONS』は俺の人生の句点じゃなくて読点」 音楽人生の危機から見事に復活した山森大輔の 続いていく未来と感情を歌にした怒涛の2年間 不屈のマインドを語るインタビュー&動画コメント
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とにかくタフネス、とことんポジティブ。この男の紆余曲折の人生と、それを何度でも乗り越える姿を見ていると、笑っちゃうぐらい勇気付けられてしまう。ROCK’A’TRENCH、SKA SKA CLUBのフロントマンであり、関ジャニ∞らへの楽曲提供にLarge House Satisfactionのプロデュースなど、様々な現場でその手腕を発揮する山森大輔が、2年ぶりとなる2ndソロアルバム『REAL EMOTIONS』をリリースした。が、しかし。ここに至るまでも、彼の人生に付きまとう波乱万丈のセオリーはバックグラウンドで随時更新(笑)。1stソロアルバム『Wonderful World』(‘13)をリリースし、ようやくソロ活動も本格化といった矢先に、突然の交通事故で彼は大ケガを負ってしまう…。だが、ライブ活動の休止を余儀なくされ、ミュージシャン人生自体の危機に瀕しながら、音楽に突き動かされ這ってでも前進する不屈の男は、溢れるバイタリティで見事に大復活! 自身の音楽が持つ“あたたかさ”や“優しさ”という武器には敏感に、EDMやソウルにファンクといった音楽的好奇心には貪欲に、時に笑い、時に泣き、時に踊って恋をして、そして最後に夢を見る――全ての愛しき感情を歌にした10篇の『REAL EMOTIONS』を完成させた。シンガーソングライターとして続いていく未来への読点を語る、山森大輔インタビュー。
死なないで済んだから、グッド・レッスンでよかったのかなぁと
――アルバムは2年ぶりですけど、それこそブログ にも「間違いなく今までで一番“苦労”した作品」とありましたが、さかのぼれば、’14年の2月には、すでに5曲撮り終えたと経過報告 があったにも関わらず。
「問題のカーアクシデントが(笑)。それも今作のPVの打ち合わせに行く道すがらに(笑)」
――自転車で事故ると(笑)。まさか自分が、ですよね。
「でも振り返ると、今日も財布を落としたし、やっぱりすごくおっちょこちょいで、人として何て不完全なんだろうと(笑)。歌しか歌えない、みたいな。若かりし頃にバイクとかにも乗ってたけど、よく考えたらいつ死んでもおかしくないようなヒヤリはたくさんあったなぁ…まあ遅かれ早かれだったのかも。死なないで済んだから、グッド・レッスンでよかったのかなぁと」
――ただ、人生においても、ミュージシャンとしても想定外のスケジューリングになりますよね。
「まず3ヵ月間ライブをガッツリ飛ばしてしまって本当に申し訳なかったし、制作ももちろんそれまで通りには出来なくて。でも、右手だけでも鍵盤は弾けるし、左手もコードをガッと一音だけ弾いて録って、次のポジションに移ってまた一音録って、みたいにして。実は1ヵ所、手術の1週間後に必死で弾いたフレーズを、敢えて残した部分があるんです。『Don’t you cry~眠れぬ夜に~』(M-8)はキーがCのハ長調の曲なんでまだコードが押さえやすいから、ギターがちゃんと弾けるようになるかの確認というか、“今日これで弾けなかったらもう無理かも”みたいに自分を追い込んでジャーンと弾いたら…初めてギターを弾いた15歳ぐらいのときと同じかそれより下手なぐらいだけど(笑)、ちょっとアルペジオを弾くことが出来て、それですごく安心して。しばらく時間を置いてその曲を仕上げにかかったとき、もちろんそれより上手く弾けるようにはなったんだけど、この鬼気迫るプレイは残したいなって」
――そういう“あがき”みたいなものもしっかり曲に入って。単純に、絶望はしなかったんですか?
「事故の当日は、これは結構ヤバいかもなってドキドキしましたね。しかも内臓も脳も傷付いてるかもしれないし、翌日になったら首が動かないとかそういう症状も出るかもしれないから。たまに寝たらそのまま目覚めない人もいるらしいし。生きていられるとは思うけど、そうじゃない可能性もあるんだと思いながら、その日は眠りについたのを覚えてます。翌朝、目が覚めてよかったなって。1週間後にはギターも何とか弾けてね」
――それこそ、もう腕は元には戻らないかもしれないっていう恐怖はなかったですか?
「結構それとの戦いでしたね。でも、そのおかげでリハビリも頑張れたし」
――思ったよりも悲観的じゃないですね。
「頭を抱えて自己嫌悪に陥ったのは当日だけでしたね。翌日からはもう“這い出すぞ! 死なねぇぞ!”って(笑)」
――やっぱタフやなこの人。へこたれない(笑)。
俺の持ってる良さは“穏やかであたたかい”ところ
あとは“ポジティブ”なところ(笑)
――そして、事故から約3ヵ月後にはレコーディングが再開されて。再開することで何か変わりました?
「そもそもはミニアルバムにしようと思ってたんですよ。録った5曲にあと1曲足して」
――じゃあ本当はもう完成間近だったんだ(笑)。
「そうそう(笑)。PVも先に撮って、’14年の夏には出そうと思ってたので。それが一旦チャラになって、逆にここまできたら時間がかかってもフルアルバムにしようっていうのが一番大きなチェンジでしたね。ただ、おぼろげながらの音楽性だったり、“聴き終わった後の感覚をこういうものに”という方針は、基本的に変わらなかったですね」
――それを言葉にすると?
「自分で言うのも何だけど、俺の持ってる良さは“穏やかであたたかい”ところ、あとは“ポジティブ”なところ(笑)」
――時々、この過剰な“ポジティブさ”があるから懲りないんだなって思いますけど(笑)。立ち直りが早過ぎて(笑)。
「アハハハハ!(笑)」
――自分も自覚し、他人からも言われる山森大輔の音楽のムード=あたたかさだったり、大らかさだったり。
「(前作に引き続き)俺が作って全部演奏してるので、そこがスパーン!と伝わる作品にはしたいなぁと思いましたね。ただ、『SUNDOWN』(M-3)だけWhat’s Love?の初代ベーシストで古くからお付き合いがある現ソウル・フラワー・ユニオンの阿部光一郎さん作曲で。ちなみに3代目ベーシストは、ROCK’A’TRENCHで一緒だった河原真ですけど(笑)。その阿部さんがやっていたキューポラというインストバンドの曲を聴いてたら何だかメロディを乗せたくなって、その話を阿部さんに持ちかけたのがもう8年ぐらい前ですね。一応、そのときにメロディも歌詞もだいだい出来てたんだけど、ROCK’A’TRENCHでは出す機会がなくて、今回のアルバムを作ってる最中に、あの曲は元々すごく気に入ってるし、今回にピッタリじゃん!みたいな」
――前作の『Wonderful World』(‘13)はソロとしての第一歩でもあるし、山森大輔の音楽人生と地続きの部分がかなりあったと思うんですけど、今回はもうちょっと解放されてるというか、純粋に音楽的なチャレンジを感じます。
「今、話聞いて思ったのが、『Wonderful World』は自分の人生観をタイトルにも込めたんですけど、言葉は悪いけど“何ならこれ1枚で終わってもいい”と思えるような、かなり完結したものを出したくて。今回はそれはもう出せたので、それ以降を見据えて作ったというか、『REAL EMOTIONS』は俺の人生の句点じゃなくて読点っていう気持ち。そういう意味でもちょっと解放された感じはありますね」
やっぱりラブソングというものはすごい力を持ってる
――あと、“ラブソングが一番の反戦歌”みたいな発言もブログ にありましたが、改めてその力を再確認した?
「やっぱりラブソングというものはすごい力を持ってると常々感じてて。ずっとポップスの道を歩んできた人は当たり前のようにそれを感じてると思うけど、俺はパンクロックみたいなところから音楽に入ったから、もっと政治的なメッセージだったり、時代への不安や改革しよう!みたいな気持ちをガーッと歌ってたときに、ボブ・マーリーに出会って。『ノー・ウーマン、ノー・クライ』(‘76)とか『ワン・ラブ』(‘77)みたいな愛のメッセージを聴いて、これはすごいパワーだなと遅ればせながら気付いたのがROCK’A’TRENCHを始めるちょっと前ぐらいの時期だったんですよね。それ以降、ラブソングの力は特別なものだとずっと思ってましたね。さっき言ったように、前作で自分という人生を凝縮して語り切ったから、今作では必然的にラブソングが浮かんできたというか、表現したくなったと」
――“ラブソングは絶対に書かない”と敢えて言うロックバンドもいるし、ラブソングは多くの人を感動させられるモチーフ故にカウンターの対象にもなるものなので、ここまで純な想いで、今ラブソングを核に歌う人は案外いないのかもなと。本当に1つ1つのシーンを切り取った物語ですけど、こういうストーリーってどこから出てくるんですか?
「えっとですね、『SUNDOWN』はですね、完璧に実話で(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「フラれた…(笑)。そして、『まぼろし』(M-7)でその次に違う人と…(笑)」
――アハハハハ!(笑) 時間軸としては『SUNDOWN』の人と別れて『まぼろし』の人と。
「当時、感じたことですね(笑)。でも、あとは創作かな」
――確かに、『DANGER!!DANGER!!』(M-2)とか『マスカラまつげ』(M-4)みたいな曲は、ある種ポップスとしてのラブソングに有り得るシチュエーションというか。キラキラしたシーンを切り抜いて。
「本当にそうですね。語弊があるかもしれないけど、洋楽のヒットソングで表現してるラブソングの内容みたいな。それを俺なりに日本語でやってみたという」
――『DANGER!!DANGER!!』のソウル・ファンクなアプローチは新鮮でしたね。今回のテーマの1つとして“踊れる”という要素はあると思いますけど、四つ打ちとかそういうロックなビートではない踊らせ方ですよね。
「これは、ちょっと驚かせたいなと思って書いた曲ですね。EDMがすごく流行ったじゃないですか? 何でこんなに盛り上がるんだろう? ワクワクするんだろう?って音楽的に純粋に興味深くて、めちゃ研究した時期があって。あとは、80sとかファンク/ソウルが今洋楽ではすごくアツいし、ブルーノ・マーズとかもめちゃくちゃカッコいいなと。割とアカデミックにアプローチしてアレンジした曲ですね」
――山森さんってそういうところが素直ですよね。ヘンな話、ラブソングであるとかEDMって、王道であり流行ってたりするからこそ、逆に手を出し辛いところもあると思うんで。
「このジャンルが嫌いだっていうのはなくて、“こんなおもしろいものが出てきた! ヤバいね”っていう喜びの方が大きくて。例えば、俺のヒーローだったクラッシュがディスコやレゲエをやったり、サブライムっていうアメリカのバンドもパンクやラップやファンクをやったり…そういうミクスチャー的な発想が自然とあるので、いろんなカッコいいことを“あ! 俺もそれやりたい! どうやんの? イエーイ!”みたいな(笑)。抵抗がないというか、むしろクールっていう。そういうことを愚直にやってるのもカッコいいと思うし」
――それにしても、山森さんが元々持ってる“陰”と“陽”で言うところの、9割5分“陽”というパーソナリティは何なんでしょうね?(笑) この生き様というか。
「育った環境もあると思うし、恵まれた人生だったなぁと思うけど、同時に、それなりに苦労したこともなくはない。そういうときに、“陰”に身を委ねて発散するタイプの人もいるけど、俺はそうするとより辛いなって(笑)。そこを抜け出すためにちょっと頑張って笑ってみると、いつの間にかそうなるタイプの人間だったんですよね。みんなが自分みたいになればいいのにとも全く思わないし、俺はただそういう体質の人間なんだなぁと」
――だからこそ、事故った翌日にはもう、ってことですもんね(笑)。
(2015年12月 4日更新)
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Movie Comment
大阪で起きたとんでもない事件(笑) 山森大輔からの動画コメント!
VIDEO
Release
EDMにソウルにファンクにと縦横無尽 様々な音と感情を刻んだ2年ぶりの2nd
Album 『REAL EMOTIONS』 発売中 3240円 IVY records QAIR-10017 <収録曲> 01. Julie 02. DANGER!!DANGER!! 03. SUNDOWN 04. マスカラまつげ 05. レインボー・ソング 06. コトノハ 07. まぼろし 08. Don't you cry~眠れぬ夜に~ 09. 茜空 10. ゴン太くん
Profile
やまもり・だいすけ…’78年、沖縄生まれ。東京、ニューヨークで育つ。日英のバイリンガル。東京大学法学部を卒業し、司法試験にも合格している。現在は一児の父。3歳からピアノを習い始め、 高校からバンド活動をスタート。ギター、ベース、ピアノなど多彩な楽器を演奏し、プログラミングも自身でこなす。ROCK'A'TRENCHとSKA SKA CLUBのボーカルとして活動。SKA SKA CLUBではインディーズながら15万枚のセールスを記録する。 またROCK'A'TRENCHではドラマ『メイちゃんの執事』の主題歌を始め、数々の映画、 CM曲を手がけ大きな反響を得るが’11年末に活動休止。’12年よりソロ活動を開始。’13年には1stアルバム『Wonderful World』を、’15年9月30日には2ndアルバム『REAL EMOTIONS』をリリース。愛と心の歌を奏でるシンガーソングライター。山森大輔 オフィシャルサイト http://www.daisukeyamamori.com/
Live
東阪リリースツアーで西のホームへ 大阪ワンマンが間もなく開催!
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Column
SKA SKA CLUB ROCK'A'TRENCH、そしてソロ としてたどり着いた素晴らしい世界 FUNであること、LOVEであること 山森大輔の輝ける現在地に迫る 『Wonderful World』 インタビュー&動画コメント
Comment!!
ぴあ関西版WEB音楽担当 奥“ボウイ”昌史からのオススメ!
「僕が山森さんに取材するようになったのは、ROCK’A’TRENCH時代ではなくソロになってからなんですが、東大卒で司法試験にも合格してるのに音楽なんかやっちゃってるその数奇な人生に、すごく興味が湧いたんですよね。エピソードがいちいち極端過ぎるわ!(笑) 前作『Wonderful World』のインタビュー(上記)で何とも言えない縁を感じたその後、山森さんがブログに書いてくれたこと、 嬉しかったですね。今回もそうであって欲しいと、想いを込めて書きました。『REAL EMOTIONS』に宿る熱が伝わるような、シンガーソングライター山森大輔の音楽人生をたどるアーカイヴになるようなインタビューを、これからもやっていけたらなと。あ、あと、去年僕も自転車でこけて同じく左腕を折り入院あげく手術してるところも、何だか並々ならぬ共通点と言うか因縁を感じます(笑)。原稿には載せてませんが、今回のインタビュー冒頭ではかなり骨折トークしましたよ(笑)」