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弱さも脆さもときめきも抱えて――
デビュー30周年を迎えたSIONの旅は続く
過去の遺産でも栄光でもなく、今を生きる音楽
『俺の空は此処にある』インタビュー&動画コメント (1/2)

 “夢が叶った人の言葉は 時に響かないよな/人並み外れた努力があってと分かっていても/それでも何が違うと叫びたい夜もあるのさ”(『諦めを覚える前の子供みたいに』(M-10))。’85年に自主制作盤『新宿の片隅で』で衝撃的なデビューを果たし、今年で30年。SIONは今でももがいている。そう、聴く者と同じように――。アニバーサリーイヤーに届いた新作『俺の空は此処にある』は、30周年ならではのベスト盤でもなく、随所にスペシャルゲストを迎えたわけでもない。細海魚(HEATWAVE)、井上富雄(THE ROOSTERS)、藤井一彦(The Groovers)らライブを支える頼もしい仲間たちと、今でも音楽を楽しみ、日々を言葉で刻み付けた、SIONの2014~2015年のリアルが詰まった1枚だ。そして今年もSIONは、THE MOGAMI (池畑潤二(THE ROOSTERS)/井上富雄/細海魚/藤井一彦)と共に、日比谷野外大音楽堂のステージに立つ。そう、いつもと同じように――。“悲しいのはなぜなのか 苦しいのはなぜなのか/知ってるから分かってるから/ここで終われない”(『jabujabu』(M-3))。過去の遺産でも栄光でもなく、今を生きる音楽。だからこそSIONの歌は、いつだって心を駆り立てる。SIONの歌が鳴り続けた30年と、これから先の未来に捧ぐインタビュー。

 
 
基本、諦めからなんだよね。“でもね…”っていう
 
 
――前作『不揃いのステップ』のインタビューの反響がすごくて、SIONさんからいい言葉をいっぱいもらいましたけど、そのときの話でおもしろかったのが、“スタバに行けない”と(笑)。この1年で行けるようになりましたか?
 
「あぁ~行けない! それこそこの前、京都かどっかに行ったときにね、待合室か何かに小ちゃいスタバがあったの。ここで練習するのもありかなぁ?と思ったけど、それもダメだった(笑)。勇気が出ない」
 
――アハハ!(笑) 時は流れて、アルバムは出来たけど(笑)。
 
「アルバムは出来たけど、それは出来ない(笑)」
 
――前作は2年ぶりのアルバムでしたけど、今回は1年というペースで出ましたね。ここ数年の流れ通り、まずは『Naked Tracks』(※SIONが1人で自宅録音する音源シリーズ、会場限定販売)が出てっていうことでしたけど。
 
「アルバムが出ると、歌をそろそろ書かないとって。ダメ人間ですから、何かしないといけない。それが自分にとっては音楽だから。何かね、誰に頼まれてもないのにやるんだね(笑)。今やってるのは、もう次の『Naked Tracks』のための曲作り」
 
――早い!
 
「基本アルバムが出来たら聴かないですもん。アルバムが完成したらキャンペーン・ボーイが始まるから、それに備えて初めて聴く、みたいな。それでちょっと思い出して“なるほどなるほど!”って(笑)」
 
――そう考えたら、リスナーの方が散々聴いてますね。SIONさんより曲のことをよく知ってるかもしれない(笑)。
 
「そうそう。もう代わりに喋ってくれたらいいのに(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 前作では曲を並べて、いつものメンバーにアレンジしたい曲を選んでもらうやり方でしたけど、今回はSIONさんから指名したんですよね?
 
「そうそう。これは(細海)魚(HEATWAVE)に、これは井上(富雄・THE ROOSTERS)にっていう感じで。井上とかには、俺にはないちょっとオシャレな感じに仕上げてもらったらどうか? とかね(笑)。最後の曲の『諦めを覚える前の子供みたいに』(M-10)とかは、ウッドベースとウーリッツァー(ピアノ)だけのアレンジで。ゾクゾクしましたね。予算がないのもこうやってプラスに変えていく姿勢(笑)。やるもんでしょ? ピンチをチャンスに変える。こうやって30年やってきました(笑)」
 
――(笑)。そして、まぁ当然のごとく歌詞がいいんですけど、この曲の“夢が叶った人の言葉は 時に響かないよな”っていうくだりは…もうたまらんです。
 
「うん。もしかしたら、俺のことをそう思ってる人もいるかもしれない。だから、やっぱそれも含めて」
 
――いやいや! 俺はこの曲を最後にぶっ込んでくるなんて、やっぱりSIONさんはすげぇなって思いましたよ。僕らもいい大人なんで、やっぱりいろいろ事情も仕組みも分かるんです。でも…その“でも”ですよね。
 
「基本、諦めからなんだよね。“でもね…”っていう」
 
――そう考えたら、今回は特に“でもね…”の歌が多い気がしますね。
 
「そうなんだよね。往生際が悪いっていうか、しつこいっていうかね。もうカラ元気全開でね(笑)」
 
 
やっぱり、カッコいいじゃん。“今”だからね。今やってるから
 
 
――30周年なんで、何かそういう気持ちが高ぶる感じになるのかなぁとも思いきや、今作はリラックスしているとも言えるし、ある意味SIONさんの弱さも含めたムードがありますよね。
 
「フフフ(笑)。去年は青い空が必要だったもんねぇ…。あと、“30周年記念アルバム”っていうのはどうしても付くけど、やってる方からしたら次のアルバムっていうことでしかないから。ちゃんとした決め台詞でもあれば、宣伝する人も楽なんだろうけどね(笑)。ないっちゃね~」
 
(一同笑)
 
――30周年だからとか、豪華なゲストがとかじゃなくて、本当に2015年に出たSIONのニューアルバムです、という感じですよね。
 
「そういうことなんですよ。今はもうね、あんまり人を煩わせたくないんだなぁ。たかだか30周年ぐらいでさ、もういいじゃないって。25周年のときに、結構みんなに手伝ってもらったから。何か申し訳ないからね、みんな忙しいから(笑)。いいよ、俺は俺でって」
 
――でも、30周年は完全にブチ上げていい祭りですけどね。
 
スタッフ「そうですよね?(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――いや~なかなか30年は物事続かないですけどね。
 
「もうしょうがないんだよねぇ。16~17の頃、俺はこれで生きるんだって決めちゃったから。生活出来るようになるまでにはしばらくかかったけど、他に出来ないんだよね。出来る人は羨ましいけど、もうこれしかない。これを取ったら人として成り立たない」
 
――SIONさんはそういう切迫感みたいなものがいつもありますよね。
 
「頼まれてもないのに曲を書くというね(笑)。あとは、花田(裕之)もそうだけど、池畑(潤二)さん、井上…THE ROOSTERSの連中はデビュー前から一緒にやってて、何十年経ってもみんな現役バリバリ。そこがやっぱり、カッコいいじゃん。“今”だからね。今やってるから」
 
――だから、このアルバムは2015年のアルバムで、今の音楽なんでしょうね。過去の遺産として聴くものじゃなく、昔すごかった人とかじゃなく。だからSIONさんの音楽は、みんなにずっと愛され続けるのかもしれないですね。
 
 
自分で想いを書いてるときに、“あれ? これ、俺よりアイツじゃん”って
 
 
――今までの話を聞いていても、このアルバムはまさに、前作が出てからこの1年のSIONさんですよね、やっぱり。
 
「だいたいその1年の間のことを1枚のアルバムにしてるから、おもしろいよね。結局、“あ、こんときはどうもすいません”みたいになるから(笑)。日記って言うとちょっと子供っぽいけど、近いものはある」
 
――前作で己と聴く人を鼓舞したSIONさんも、今回は空を見なきゃやってられないこともあったと。
 
「そう。あとは『休みたい』(M-7)だからね(笑)」
 
――『休みたい』はね、取材メモに“SIONそのもの”って書きましたからね。休みたいとは言いながら、結局、曲を作っちゃう(笑)。
 
「アハハ(笑)。“休んでるじゃん!”って言われたけどね、それ書いたときに(笑)」
 
(一同笑)
 
――いやいや、ほぼほぼコンスタントにアルバムも出してますし、これは会ってお話しする、ステージに立つSIONさんじゃない、普段着のSIONさんに近いイメージというか。
 
「うんうん。ですね。こたつに入ってる感じのね(笑)」
 
――クレジットにあるガヤの“曙橋ブラザーズ”というのは?
 
「あれはね、ボーカルチェックとダビングでスタジオに行ったときに、ここにコーラスが欲しいなって。そのスタジオが曙橋だったんで、そこにいたおっちゃんたちを(笑)」
 
――招集して(笑)。音に関してはコーラスも多いですし、バンドサウンドとしても円熟味だけではない楽しさも詰まっていて、いい仲間と音楽を作れている感じがすごくありますね。レコーディングが終わった後にSIONのブログでも、“今回もちゃんと人の顔が見えるアルバムになった”と書いてましたもんね。
 
「いや、そこは嬉しいよね。自分のアルバムに1ミリもイヤなものが入ってない。何かイヤじゃん。そのアルバムを思い出したときに…チッっていう(笑)」
 
――“アイツにこんなこと言われたなぁ”って(笑)。
 
「アハハ!(笑) そういうのは今回もないんで」
 
――さっきの『休みたい』で垣間見せる一面もそうですけど、今作はより聴き手に近い言葉という感じがしました。
 
「『フラ フラ フラ』(‘97)とかは飲み仲間のトラッカーのことを歌ったりしたんだけど、最近ね、自分で想いを書いてるときに、“あれ? これ、俺よりアイツじゃん”って思うことが多い。もしかしたらそういう流れが入ってるのかもしれない」
 
 

 


(2015年6月11日更新)


Check

Movie Comment

胸に残る話し声にもシビれます!
SIONからの貴重な動画コメント

Release

気心知れた仲間たちと作り上げた
グッドヴァイブな今を刻んだ最新作

Album
『俺の空は此処にある』
発売中 2778円(税別)
テイチクエンタテインメント
TECI-1444

<収録曲>
01. ONBORO
02. 唄えよ讃えよ
03. jabujabu
04. けちってる陽だまり
05. 水色のクレヨン
06. いつでもどこでも会いたい
07. 休みたい
08. 人様
09. 俺の空は此処にある
10. 諦めを覚える前の子供みたいに

Profile

シオン…’60年生まれ、山口県出身。’85年に自主制作アルバム『新宿の片隅で』で衝撃的にデビュー。’86年、アルバム『SION』でメジャーデビュー。その独特な声、ビジュアル、楽曲は、日本のミュージックシーンにおいて唯一無二の存在で、多くのアーティストから敬愛されるミュージシャンズ・ミュージシャンであり、ワンアンドオンリーの存在感で輝き続けている。リスペクトしているミュージシャン、俳優、タレントには枚挙にいとまがない。また、長年培った充実したライブには定評があり、高校生から子ども連れの40代まで、年齢、性別を越えた幅広いファンに支持されている。近年は、20~30代を中心とした客層を持つバンドとも積極的に対バンライブを行っている。特に、毎年恒例の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブは、夏の風物詩として定着している。

SION オフィシャルサイト
http://mars-music.jp/?page_id=13
http://www.interq.or.jp/rock/sion/
 

Live

SIONの歴史とは切っても切り離せない
年に一度の恒例の宴が今年も!

 
【東京公演】
『SION-YAON 2015 with THE MOGAMI』
チケット発売中
▼6月14日(日)18:00
日比谷野外大音楽堂
指定席6480円(当日7020円)
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※雨天決行。高校生以下は当日会場にて1500円返金。要学生証。


Column

後ろに歩くように俺はできていない
くじけそうなとき、今日もSIONの
メッセージと歌声に鼓舞される
絆と時代を刻んだ2年ぶりの作品
『不揃いのステップ』インタビュー

Comment!!

テイチクのまごころプロモーター
村上友菜さんからのコメント!

「私の大好きなアーティストのSIONさん。SIONさんに会うたびに心が和やかになるというか、癒されるというか…。ライブのときはあんなにカッコよく、楽曲の世界観も素敵で、みんなの憧れの兄貴的存在ですが…実はとってもシャイなのです。媒体キャンペーンのときには、女性のDJさんがお相手だと照れちゃって相手が見れないシャイボーイなのです。そんなSIONさんが喫茶店でささっと書いてくださった、通称“おにぎりニャンコ”。ご自身で飼われている愛猫タマゴちゃんがモチーフなのです。人柄を感じますね。SIONさんのビジュアルからは全く想像出来ない、かわいい絵を描くのです。昨年末の大阪・梅田AKASOのライブのとき、上手くいかないことがありしょげていた私に、いろんなことを見透かした様なSIONさんの言葉が胸に響いた。「いろんなたいへんなことがあるけど、頑張り過ぎるなよ。また会おうな」。何だか救われたような気分がして涙が出そうだった。是非6月14日(日)は、日比谷野外大音楽堂へお集まりください」